2017.10.3(火)
「今……ひとつ、と」
「左様」
笹津由の言葉をそのまま繰り返す恭子(のりこ)。その声には溜息のようなものが混じっていたろうか。
まだ、御座るのか。
をみな(女)が洞(うろ)の働き。
をみな(女)が液を出(いだ)し……、
子を出し……。
この上何を……。
そのような恭子の心中の声が聞こえたか、笹津由は言葉を継いだ。
「出(いだ)すばかりには御座りませぬぞ、姫」
「出すにあらず、と」
「左様」
「ならば……入るる……」
「左様」
「なに、を……」
その問いには即答せず、笹津由は恭子(のりこ)の記憶を喚起した。
「覚えておいでか、姫」
「なに、を、におじゃりましょう……」
「今のこの吾らが問答、そもそもの題目は何でありしか、じゃ」
「それは……」
「それは?」
「子は……如何にして、成さるるか……」
「そうじゃのう、で、その為に要すること、何であったかのう」
「をみな(女)が体内の卵に……」
「む」
「をのこ(男)の成せし精の液を合わする……」
「うむ」
「その為に、精の液ををみな(女)が体内に注ぎ入るる……」
笹津由は莞爾と笑んだ。
「そうじゃのう、よう覚えておいでじゃ、姫」
恭子(のりこ)は無言。笑みを浮かべた顔を軽く下げ、笹津由の称賛に応えた。
「で、姫よ」
「あい」
「その、精の液の注ぎ口、それがここじゃ」
己が陰唇を巧みに掻き開き、笹津由が指し示す示指の先はゆまり(尿)が孔、尿道口から少しく動き、をみな(女)が洞(うろ)、膣口に移った。
笹津由が「ここ」と指し示す示指の先には、をみな(女)が洞(うろ)が黒々と口を開いていた。
恭子の唇から、溜息交じりの声が漏れた。
「そ……」
「む」
「そこ、が……」
「うむ」
「をみな(女)が洞(うろ)……が……」
「ふむ」
「精の液の……注ぎ口、と……」
「左様じゃ、姫よ」
「……あい」
「をみな(女)が洞(うろ)は、子を成すための液の入り口であり、成されたる子の出口であるのじゃ」
恭子(のりこ)は暫(しば)し絶句した。何の応答する術も無い恭子であった。
笹津由は、その恭子に追い打ちを掛けるかのように言葉を継いだ。
「子を成す……これは言うまでもなく人にとり極めて大事なること」
「…………」
「その大事のことに、をみな(女)が洞(うろ)は、斯く斯様に深く関わっておじゃる」
「…………」
「更に言わば、その働きの一つ、をみなが液を出だすことも、子を成すに関わりある働きなのじゃ」
「…………」
「をみな(女)が洞(うろ)無くして、子の成さるる事あり得ぬ」
「……師よ……」
ようやくひと声漏らした恭子(のりこ)は口を再び閉じた。無言のまま、改めて笹津由の股間に目を遣る。
帳(とばり)を立て回した仄暗い室内。
仰臥位。両膝を立て、両の脚を大きく開いた笹津由の陰(ほと)は、その膝、脚の狭間にあってさらに仄暗い。
しかし、恭子の目には光の射すやに見えた。
輝く女陰。
その見えぬ光に射抜かれた恭子(のりこ)の目はしかし、過たず、笹津由のをみな(女)の洞(うろ)を捉えていた。
仄暗い股間から射す光り。恭子にしか見えぬ玄光の中にあって、をみな(女)の洞(うろ)は、一際(ひときわ)黒々と、深淵のとば口であるかに黒々と開いていた。
恭子は、その深淵に誘われ、知らず手を伸べた。
笹津由のをみな(女)の洞(うろ)と、恭子の片手の指は、互いに呼び呼ばれ、惹かれ合うように近づいた。いや、近づいたのは手指のみ。をみな(女)の洞(うろ)は待った。悠然と待ち受けた。震えながら近づく手指を、声なき声を掛けながら待ち続けた。
(来〔こ〕よ)
(来よ)
(こちらへ)
(疾〔と〕く)
(疾く来られよ)
(ここじゃ)
(こちらじゃ)
(我はここに……)
指の先が笹津由の陰(ほと)の直前にまで至ったとき、恭子(のりこ)の唇をこじ開け、掠れた声が漏れた。
「師、よ……」
応える笹津由の声音も少し掠れていた。
「ふ、む……」
「宜しき、か」
「宜し、とは?」
「触れて……」
「無論……」
「失礼をば……」
「存分、に」
伸べた恭子(のりこ)の右の手。その手の中指(ちゅうし)の先が笹津由のをみな(女)の洞(うろ)のとば口、濡れ濡れと柔らかな肉襞(ひだ)に触れた。恭子の指は、何の障碍(しょうげ)も無く洞の中に吸い込まれた。中指に引かれ示指も……。揃えた中指と示指。恭子の二本の指は、笹津由の膣内に取り込まれ、確(しか)と収まった。
「む……」
笹津由のをみな(女)の洞(うろ)。その肉壁は、取り込んだ恭子(のりこ)の指をきつく締め付けた。
恭子の脳裡に先ほどの、初めて笹津由の膣内に指を差し入れた、その感覚が鮮やかに蘇った。恭子は声にならぬ声を、いや、明らかな女の肉の声を、その唇の間から漏らした。
「おおおお」
二度、三度……笹津由は。笹津由のをみな(女)の洞(うろ)は、明らかな意思をもって恭子の指を締め付けた。
「おお、おおおお」
仰け反り、天を仰ぐ恭子(のりこ)。
その恭子に、笹津由は声を掛けた。いや、問い掛けた。
「おわかりか、恭子姫」
「……あい?」
「これが」
さらに膣を締めながら笹津由は言葉を継ぐ。
「精の液を、みなが体内に注ぎ入るる」
「…………」
「これが、その手立てにありまするぞ」
「これ、が……」
「左様」
「をのこ(男)は……」
「おう」
「指の先よりも、精の液を出(いだ)すものにありまするか」
笹津由は、苦笑交じりに答える。
「然(さ)に非ず」
「…………」
「今、我が胎内に入れておらるる姫が指」
「…………」
「これはものの譬え」
「…………」
「実際には、あれ、じゃ」
笹津由は我が傍ら、左側に顔を向けた。
そちらには兵部、北の兵部卿宮(ひょうぶのきょうのみや)が、変わらず安らかな寝息を立てている。兵部の姿勢は、笹津由に同じく仰臥位。
笹津由は右手を差し上げ、我が体越しに「あれ」と、その兵部の股間を指差した。
股間の男根は今、天を突いて聳(そそ)り立っていた。
「おおおお」
恭子(のりこ)は、その手指を笹津由の陰(ほと)に預けたまま声を上げた。この声は半ば悲鳴であった。
「なん、と……」
初めてではない。
先程、部屋の外から、全裸で絡み合う笹津由と兵部を垣間見たとき、兵部の男根はやはりこのように天を突いて屹立していた。笹津由は、この野太い男根を口にしていた。そして口元より漏らしたあの白濁液。
兵部は男根より、をのこ(男)の精の液を出(いだ)した。確かに……。
「し……師よ……」
「おう」
「ならば、をみな(女)が体内に、をのこ(男)の精の液を注ぎ込む、その手立てとは……」
「うむ」
「あの……兵部さまの、あの……」
男根の呼称を、未だ知らぬ恭子(のりこ)であった。
「兵部殿のあれ、あれは『はせ』と申す」
「は、せ……」
「玉の茎、と書き申す」
「玉茎(はせ)……」
「陰茎、陽根、男根、……下(しも)つ方にては、更に様々に呼ぶようじゃが」
「…………」
「我らが間にては玉茎で宜しかろう」
「玉茎(はせ)……」
「姫が先程、垣間見られしが如く」
「…………」
「をのこの成す精の液は、玉茎より出(いだ)さるるもの」
「あ……い……」
「精の液をば、をみな(女)が体内に注ぎ入るる手立ては」
「…………」
「をのこ(男)の玉茎(はせ)をば、をみな(女)が洞(うろ)に収(おさむ)る、いまが今の、姫が指の如くにの」
知らず、指を引こうとする恭子(のりこ)であったが、しっかとその指を捉えた笹津由のをみな(女)の洞は、それを許さなかった。
「而(しか)して後、玉茎が先より精の液を出だす……斯くして精の液は、をみな(女)が体内に注ぎ込まるるのじゃ」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2017/10/03 09:12
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笹津由センセの実践的性教育講座 今回のテーマは挿入、および射精です。
が、今は座学のみ。実践編は次回を乞うご期待、というところですが、まさか生娘恭子にいきなりやらせるわけにもまいりませんでしょう。さあ、どうしましょうか。
作者のふとした気の迷いから始まりました『アイリス』平安京編。いよいよ佳境でございます。
次回あたりより、恭子は人生初のアクメを経験することになります。で、話は野宮神社に戻る、と。
しかし兵部の野郎、眠りながらのピンコ勃ちです。いいなあ、若いって。
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2. Mikiko- 2017/10/03 20:04
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夜間陰茎勃起現象
いわゆるひとつの、いい日朝立ちです。
夜中に立つのは、夜立ちと云うそうです。
昼立ちと云う言葉は、無いみたいですね。
夕立ちもありませんね。
昔は、膀胱に溜まった尿が前立腺を刺激し、その結果勃起が起こると考えられていましたが……。
にゃんと!
この説は、現在、否定されてるそうです。
知りませんでした。
レム睡眠時に起こる身体各所の運動の一種だそうです。
定期的に海綿体内に血液を送ることによる勃起力のメンテナンス作業、ストレス解消作業であるといわれてるとか。
ほんまかー。
朝、目覚めるのは浅い眠りのレム睡眠のときが多いため……。
朝立ちが起こりやすいのだとか。
兵部くん、レム睡眠なんですね。
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3. ハーレクイン- 2017/10/03 23:19
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勃起力メンテナンス
面白―い、座布団一枚!
無論、何事にもメンテは欠かせませんが、わたしのちんこは長いことほったらかしです。
なんとか勃起はするんですが(ホンマかあ?)朝立ちも、夕立ちとも無縁になり果てました。
そういえば、議員や候補が朝の駅頭で、出勤途上の人々に我が政策と実績をがなり立てる。あれを『朝立ち』と称するそうです。
レム睡眠
逆説睡眠とも。
体は動かず、大脳のみが活発に活動するそうです。
いわゆる『夢』はこの時に見るとか。
兵部の野郎、どんな夢を見てるのかなあ。
♪夢は夜ひらく~
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4. Mikiko- 2017/10/04 07:28
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寝てる間に、脳は……
「まだ勃つんやろか?」
「おー、勃った勃った」
とか、やってるんですかね?
街頭演説。
駅前の「駅立ち」、スーパー前の「スーパー立ち」などもあるそうです。
なお、道路に立つのは「道立ち」ではなく……。
もっともポピュラーな名称、「辻立ち」になるようです。
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5. ハーレクイン- 2017/10/04 17:38
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スーパー立ち
聞き初めです。
言葉もそうですが、実際見たことありません。
●立てば這え這えば歩めの親心
↑立てと這えが逆だって。
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6. Mikiko- 2017/10/04 19:59
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『希望の党』
小池さんの「選別します」の性悪発言以来……。
風向きが変わってきました。
枝野さんが、「清心」イメージで好感度高いようです。
彼は、声がいいのも利点です。
中学・高校と、合唱部だったそうです。
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7. ハーレクイン- 2017/10/04 23:42
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選別します
今年の流行語大賞になったりして。
枝野合唱部
パートはテナー(テノール)かな。
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8. Mikiko- 2017/10/05 07:28
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枝野語録
新党結成前、民進党本部を出たときに……。
1人カラオケで、欅坂46の『不協和音』を歌いたいと漏らしてたとか。
https://www.youtube.com/watch?v=mg--6QzubhM
まさしく、この歌詞にぴったりの心境だったんでしょうね。
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9. ハーレクイン- 2017/10/05 17:52
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枝野和音
ユーモアがあるのか、エスプリなのでしょうか、はたまた「まんまやんけ」というべきでしょうか
♪不協和音を
僕は恐れたりしない
嫌われたって
僕には僕の正義があるんだ
殴ればいいさ
一度妥協したら死んだも同然
支配したいなら
僕を倒してから行けよ!
(欅坂46『不協和音』)
なかなかの歌詞なんでYou Tubeで聞こうと思ったら、いくらやってもエラーになります、なんでやねーん。
他の曲の歌詞も少し覗きましたが、なんかすごいね。
全然イメージと違います、欅坂。
またtryしてみましょう。
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10. Mikiko- 2017/10/05 19:56
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さっぱりわからん
YouTubeに入って……。
「欅坂 不協和音」で検索しても聞けないんですか?
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11. ハーレクイン- 2017/10/05 23:37
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いや……
載せはった
https://www.youtube.com/watch?v=mg--6QzubhM
をGooleにコピペしました。
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12. Mikiko- 2017/10/06 07:26
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Gooleじゃダメです
Googleにしなはれ。
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13. ハーレクイン- 2017/10/06 12:37
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Goole
おもしろーい。
座布団三枚!
しかし、グールじゃ『食屍鬼』だよ。
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14. Mikiko- 2017/10/06 19:41
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その座布団は……
自分にということですか?
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15. ハーレクイン- 2017/10/06 21:26
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Miさんに……
座布団三枚!