2017.9.26(火)
「はおっ」
これは恭子(のりこ)。
近づけた顔、その鼻先を笹津由の股間に弾き返され、仰け反りながら上げた悲鳴であった。
「おひっ」
これは笹津由。
恭子の額に陰核を押し潰され、腰全体を跳ね上げながら上げた悲鳴、いや、嬌声であった。
両者の声はそれぞれそれ一つのみ。
笹津由は首を擡(もた)げた。左の腕を曲げ、肘を突いて軽く上体を起こす。恭子を見やりながら言葉を掛けた。
「姫、大事おじゃらぬか」
恭子は鼻先に当てていた片手を戻し、仰け反らせた顔を戻して居住まいを正した。軽く頭を下げる。
「大事……おじゃりませぬ」
「左様か、痛(いと)うしたのではあるまいの」
「大事おじゃりませぬ、わたくしこそ、ご無礼申し上げました」
「なんの、ただ、いきなりじゃったでのう」
「まことに、ご無礼をば……」
「いやいや、こちらこそ済まぬことであった」
恭子(のりこ)と笹津由は互いに目を見交わした。軽く微笑み合う。
恭子はすぐにいつもの調子に戻った。笹津由に声を掛ける。
「師よ」
「うむ」
「今一度、確かめさせていただいて宜しいか」
「尿(ゆまり)が洞(うろ)、いや、孔じゃな」
「あい」
「ご覧(ろう)ぜよ」
いうなり笹津由は、仰臥位に直った。改めて股間に手をやり、陰門を開く。
「さあ姫、ようくご覧(ろう)ぜよ」
「あい」
「ただし、ゆるりと、の」
「あい……」
端座のまま、恭子は両膝のそれぞれ外側に左右の手を突いた。ゆっくりと両の肘を折る。深く折る。恭子の上体がゆっくりと前に傾き、その顔が笹津由の股間に近づく。慎重に、ゆっくりと、ゆっくりと恭子の顔が笹津由の股間を目指し下降する。恭子の鼻先が笹津由の陰門に触れんばかりに近づいた。
両の掌を敷き栲(しきたえ;敷布団)に、両の肘を深々と折り、頭(こうべ)は、仰臥する笹津由のそれと同じほどに低く垂れ……恭子の姿勢は笹津由に頓(ぬかず)くやに、いや、何ものかに祈りを捧げるやに見えた。
「ここ、ですぞ」
ここ、と指し示す笹津由の示指の先は、過たず自身の尿道口を指していた。
「ここに、我が食指の先におじゃるぞ」
幾重にも帳を立てた室内、笹津由の両脚と恭子(のりこ)の頭(こうべ)の陰になる笹津由の股間は仄暗い。
一心に瞳を凝らす恭子は、笹津由の示指の先に、針で突いたかのような小孔をようやく認めた。
「おお」
恭子は知らず、嘆息交じりの声を一つ漏らしたか。
耳聡く聞きつけた笹津由は問いかける。
「お分かりか、姫」
「あい、何と……」
「む」
「何と小さき……」
「そうじゃのう」
「をみな(女)の液を出だす洞(うろ)に比べ……」
「左様」
恭子は少しく顔を引いた。笹津由の視線を捉え問い掛ける。
「何故、斯様に小さきにありましょうや、師よ」
「姫よ、尿(ゆまり)の孔が小さしと申すより、をみな(女)が液の洞(うろ)が大き、と申すべきにあろうかのう」
恭子(のりこ)は、笹津由と見合ったまま小首を傾げた。
「しかし師よ、いずれの穴も液を出だすとば口にありまするに、何故斯様に大きさが……」
笹津由は仰臥のまま、軽く首を擡(もた)げて恭子を見詰めた。その視線は、そして掛ける言葉は変わらず、弟子に対する師のものであった。
「姫よ」
その語調に込められた笹津由の意図を、恭子は敏くも感じた。
大事のことぞ。
これより、大事の事を陳(の)ぶるぞ。
確(しか)と、お聞きあれ……。
恭子は姿勢を戻した。両手は両の腿の上、背筋を伸ばし頭(こうべ)を上げる。普段は希に、神殿に額ずく折にのみ取る端座であった。笹津由の声掛けに即答する。
「あい」
「尿(ゆまり)が孔は、確かに尿を出だすのみにあるが……」
「あい」
「をみな(女)の液の洞(うろ)、先ほど姫が指を入れられし穴が出すは、をみな(女)の液のみに非ず」
「それは…………」
「姫よ」
「あい」
「子は……」
「あい」
「をみな(女)が体内に成せし子は、十月十日の日満つるとき、このをみなが洞(うろ)よりこの世に生まれ出(いづ)るのじゃ」
恭子(のりこ)は、暫時絶句した。わが師笹津由の言葉が直ぐには理解できなかった。ややあって、掠れる声を絞り出す恭子であった。
「そ……」
笹津由は無言。
「その、ような……」
恭子は、生まれ出たばかりの赤子(あかご)を見たことは無い。しかし、下働きの女官が、時に大きな腹を抱えて立ち働く様を垣間見ることはあった。
(あの……)
(あの、腹の膨らみ具合から察するに……)
(赤子の大きさは……)
容易に察しのつく恭子であった。
「赤子が……」
「うむ」
「赤子が、をみな(女)が洞(うろ)より出(いづ)るとは……」
「考えもつかぬとてか、姫」
「……あい……」
「戯れを申しおるにはあらぬぞ、姫」
「…………」
「赤子は、間違いのうここより出(いづ)るのじゃ」
ここ、と笹津由は我が膣口を指し示すが、もはや恭子(のりこ)には目を遣る余裕はなかった。あらぬ方に目を送りながら、恭子は言葉にならぬ言葉を出(いだ)すしかなかった。
「そ……その……」
笹津由は淡々と言葉を継いだ。
「この、をみな(女)が洞(うろ)は伸縮自在、要に応じ緊(きつ)う締まるも、大きゅう開くも自由自在」
「…………」
「子を成したる我の体感せしことじゃ」
「…………」
「さらに、子の生まるる処に幾度も立ち会いし我の見しことじゃ」
「…………」
「宜しきか、恭子姫」
笹津由の声が少しく大きくなった。その声掛けは、恭子を叱咤するやに、また、励ますやに聞こえた。
「……師よ……」
「おう」
「わたくしにも……わたくしにもその、をみな(女)の洞(うろ)、御座りまするのか」
「無論の事」
「ならば、我もまたその洞(うろ)より子を出(いだ)す、と……」
「無論」
「…………」
「ご心配召さるな、姫」
「…………」
「こ(是)は、古(いにしえ)より並べてのをみな(女)の為せし事」
「…………」
「しかも、いまが今ということにはおじゃらぬ」
「…………」
「姫が子を成すまでには、是より様々なことどもを知り、為さるる、その上でのことじゃ」
「…………」
「この、今の我らが問答もその一つ」
「…………」
「案ぜらるること、何一つおじゃらぬ」
「……あい……」
ようやく、ひと(一)声返す恭子(のりこ)であった。
「さて、姫よ」
暫時の後、変わらず仰臥位のまま、笹津由は恭子に声を掛けた。
「あい」
「をみな(女)が洞(うろ)の働き、今一つ有り申す」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2017/09/26 15:07
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すみません
今朝は、やけに時間があるなと思ってたら……。
投稿を忘れてました。
申し訳ないので、会社から投稿しました。
お詫びいたします。m(_ _)m
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2. ハーレクイン- 2017/09/26 22:25
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ボケたか、Mikik
は、ともかく……、
会社から投稿など、危ないことは止めましょう。
それはともかく……、
『アイリス』性教育編、ではなくて平安京編。
いよいよ佳境、と申しますか究極の中だるみ、と申しますか……。
ふとしたことから始まりました、エロ斎王恭子とエロ女官笹津由、さらにはここ数回、全く忘れ去られておりますエロ貴公子兵部、北の兵部卿宮の物語。ようやく先が見えて参りました。
あと数回、総選挙の投票日までには(何の関係が)宮中を離れ、野宮神社に戻る算段が付きました。今しばらくのご辛抱、じゃなくてお付き合いを宜しくお願い申し上げます。
さらにともかく……
女官笹津由の実践的性教育講座
今回のテーマは『をみなの洞(うろ)』
膣、膣口です。
女性器、女性の外部生殖器と申しますと、何と申しましても膣でしょう。
その膣の働き。
笹津由センセは出産から始めました。
生徒の恭子姫は、少しビビっておりますが、これはまあ無理からぬところでしょうか。
さらに今回のラスト、センセのセリフです。
「をみなが洞の働き、今一つあり申す」
これが今回のヒキ、次回をなにとぞ乞う!ご期待。
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3. Mikiko- 2017/09/27 07:35
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投稿忘れは……
前にも自分の回でやってるので、ボケたわけではありません。
いずれにしろ、申し訳ありませんでした。
会社から投稿が出来たのも……。
データを、ネット上に保存してあるからです。
お寺の中には、「胎内巡り」ができるところがあります。
うちの檀那寺にも、似たシステムがありますが……。
暗くないので、ほんとの「胎内巡り」とは違うでしょう。
「胎内」と云うからには、観音さまとかの女身の中なんでしょうね。
男性の仏では、入るのが肛門になってしまいますし。
女身の「胎内」への入口であれば、当然、膣口です。
信者に巡られると、観音さまも気持ちがいいんでしょう。
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4. ハーレクイン- 2017/09/27 08:51
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換骨奪胎
という語がありますから、『胎』は広く「人体の内部」とも考えられそうですが、どうも女性、特に母体の内部、つまるところは『子宮』のようです。
胎児、という語もありますからねえ。
ここまでどう書いてきたか、少しチェックしてみましたが、女性の場合は『胎』『胎内』、野郎の場合は『体内』と書き分けてきました様です。やれやれ、ですね。
体内巡りとは異なりますが、奈良東大寺は大仏殿に、潜り抜け柱、ってえのがあります(名称はテキトー)。
堂内で天井を支える太い柱の根本が大きく刳り貫いてあり、この穴を潜り抜ければ極楽往生……とまでは云っていないようですが。
現在のわたしがやれば、まず嵌まり込んで抜けられないでしょう。君子危うきに近寄らず(誰が君子や)。
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5. Mikiko- 2017/09/27 19:48
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東大寺の柱
『ブラタモリ』で見た記憶があります。
桑子さんのころです。
くぐり抜けは、修学旅行生に人気だそうです。
抜けなくなったアホはいないんですかね?
新潟県には、文字どおりの『胎内市』があります。
市名の由来は、市域を流れる『胎内川』です。
この川の名前の由来は、容易に想像できます。
ヒントは、扇状地。
ここまで言うと、タモリさんなら即答でしょう。
つまり、中流域の扇状地では……。
川が地上から消え、伏流水となって地下を流れるわけです。
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6. ハーレクイン- 2017/09/27 20:40
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>抜けなくなったアホ
ネット検索しましたら、そういう話がありました。
が、よくよく読めば与太話でした。
胎内川は……
伏流水。
言いたいことは分りますが、『胎』の語が生々しくて、もひとつピンときません。
そうえいば、懐かしの久保田祐佳アナが、タモリと組んで番組をやるとか聞きました。ブラタモリではなさそうですが、さて。
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7. Mikiko- 2017/09/28 07:19
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胎内川という名前
伏流水になる川は、全国の扇状地にたくさんあるはずですが……。
不思議と、胎内川という名称は、新潟県にしかないようです。
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8. ハーレクイン- 2017/09/28 08:33
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胎内川
>新潟県にしかないようです
新潟人の、いや越後人の独特の感性の成せる業でしょうか。