2017.7.1(土)
「そうなんだ。それじゃ共通の話題が多いかも知れないね。10日ほど滞在させてもらうので時間のある時は遊びにきてね」
「まぁ、お邪魔してもいいのですか? すごく嬉しいです。実はこの近所に友達がいないので退屈をしていたんです」
「え? でもここは君の地元だろう? どうして友達がいないの?」
「はい、みんな進学とか就職で都会に行ってしまって、こちらにはほとんどいないんです」
「そうなんだ。じゃあ、いつでも遊びにおいで」
「でもお仕事の邪魔をしてはいけないので程々にしますね」
「いやいや、程々なんて言わないでしょっちゅう来たらいいから」
「あ、はい。しょっちゅう来ます」
「ははははは~」
亜理紗は先ほど見せたかすかな翳りは消え、すっかり明るい表情に変わっていた。
俊介は東京における最近の出来事を亜理紗に話してやり、ふたりはすっかり打ち解けていた。
その後おもむろに今回小千谷に訪れた目的を亜理紗に語った。
「そう言う訳なので、雪女に関する昔話や情報等何でもいいので知っていたら教えてね」
「はい、分かりました。でも残念ながら私はあまり知りません。地元のお年寄りやお母さんの方が詳しいですよ。でももし何か思い出したらお話ししますね」
「ありがとう。よろしくね」
「あっ、もうこんな時間になってる。長時間お邪魔してしまってごめんなさい」
「邪魔なんてとんでもない。むしろ楽しかったよ。小千谷の隠れ里にこれほどの美人がいるとは思わなかったし。ははははは~」
「まあ、お上手を」
「いや、上手じゃなくて本音だよ。じゃあ、また話そうね」
「ありがとうございます。ではおやすみなさい……」
「おやすみ」
亜理紗は深々と頭を下げて挨拶をした後、静かに部屋を出ていった。
(礼儀正しい子だなあ。それにすごい美人だし、取材出張に新潟を選んで正解だったかも知れないなあ)
いよいよ明日から本格的に雪女に関する取材を行うことになる。
目的地はこの温泉から割りと近い山村だ。
夕食を済ませた後、俊介は明日の準備に取り掛かった。
初日は村のお年寄りたちから、できるだけ多くの民話や伝説を聴き取ることにあった。
日本の各地には、数百年にわたり語り継がれ、多くの世代に親しまれてきた数多くの民話や伝説が残されている。
それらを最も知る者は村の長老たちであり、彼らは知識の宝庫と言える。
果たしてどんな話が聴けるか、俊介は期待に胸を膨らませた。
その後資料を準備したり書物に目を通したりして過ごした俊介は、かなりの時間が過ぎたような気がしてふと時計を見たが、意外にもまだ早く午後10時であった。
都会の喧騒から隔絶した別世界にいると、時間の経過が緩やかになるのかも知れない。
外では音もなく雪が舞い落ちる。
その静けさはまるで腰元が板敷きの長廊下を歩いているようで実に慎ましやかだ。
俊介は寝床に入ってからも電気スタンドを灯して書物に目を通していたが、明朝の仕事のことを考えて、10分後には明かりを消していた。
俊介が寝入ってからどれだけ時間が経過しただろうか。
俊介は寝床の中に異様な気配を感じ、ハッと目を覚ました。
それは紛れもなく人の気配だ。
俊介は驚きのあまり慌てて布団から飛び出た。
「うわ~っ!」
「あっ…ごめんなさい……私なんです。昼間にお邪魔した亜理紗です。驚かしてしまってすみません」
「え? うそ! なんで? なんで君が僕の布団の中にいるんだ?」
「許してください…寂しかったんです…」
「えっ? 寂しいからって……それだけの理由で僕の布団の中に……?」
「本当にごめんなさい。でも私、すごく寂しいんですぅ。こんな田舎なもので話し相手になってくれる人もいませんし。今日車井原さんとお会いして、この人なら…って思ったんです。お願いです! どうか私を抱いてください!」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってよ~! そんなこと急に言われても……」
「私のような女は嫌いですか。車井原さんの好みではないですか?」
「いやあ、そんなことはないよ。君はきれいだしとても魅力的だと思うよ。だからと言って……」
「やっぱり嫌いなんですね…仕方がありません。お邪魔しました。私、戻ります」
「ちょっと、ちょっと! 嫌ってなんかいないよ。君のような可愛い子を嫌うはずないじゃないか。むしろ僕のタイプだよ、亜里沙ちゃん…だったよね? でも本当にいいの? 後悔はしないかい?」
「もちろんです。私は直感を大事にするんです。あなたと今日初めてお会いして、この人ならって思ったんです。私を抱いてくれるのですね?」
「うん……」
「嬉しい……」
亜理紗は喜びを隠しきれない様子であったが、一方俊介はまるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
あまりにも唐突ではあったが亜理紗のひたむきさに押され、俊介は流れのままにそっと亜理紗を抱き寄せた。
乙女特有の甘酸っぱい香りが漂い、俊介は心がくすぐられるような気がした。
亜理紗の長い黒髪を撫でながら、おとがいをそっと持ち上げ唇を重ねた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2017/07/01 08:31
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うーむ
あまりといえばあまりに、オイシすぎる展開であります。
据え膳食わぬはなんとやら。
鴨がネギ背負って。
しかし昔から、こういう艶福家を主人公にした小説は書かれてきました。
井原西鶴の『好色一代男』とか。
主人公の世之介は、「たはふれし女三千七百四十二人。小人(少年)のもてあそび七百二十五人」だったそうです。
初体験は、なんと7歳。
最後は、山盛りの宝と責め道具を『好色丸』に積みこみ……。
海の彼方にあるという女だらけの女護島(にょごがしま)をめざして船出していきます。
『好色一代男』は……。
男性の理想的な生き方を究極のかたちで描きだしたことで、大人気を博したそうです。
絶対に失敗しない主人公は、読んでて安心感があるんでしょうね。
『ゴルゴ13』に通じるものがあるかも。
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2. ハーレクイン- 2017/07/01 11:09
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据え膳食わぬは男の恥
恥かどうかはさて置き、食わないのは「あんた、不味そう」と言うも同然。「そげな失礼、言えまへ~ん。いっただっきまーす」。
まあ、男というのはしょうの無い生き物です。
据え膳。
何を隠そう、わたし経験あります。
学生時、お相手は人妻でした。これで人生、誤ったんだよなあ(人のせいにするんじゃねえ)。
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3. Mikiko- 2017/07/01 12:21
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据え膳
美人局でなくて?
ひょっとして、下宿のおばさんとか。
AVで、ありますよね。
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4. ハーレクイン- 2017/07/01 16:27
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下宿のおばさん
あったりい、どんどんパフパフ。
今頃どうしてるかなあ。しかし、かなりやばい話題だなあ。
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5. Mikiko- 2017/07/01 18:37
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当たりなんですか
そのおばさんは、下宿人とことごとくそういうことをしたてわけ?
そんな経験があるのなら、それを書けばいいんでないの。
リアリティの強みが出ると思います。
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6. ハーレクイン- 2017/07/01 22:03
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ことごとくって……
下宿人はわたし一人でしたから、そんなに「発展」していたわけではありません。
リアリティ
事実をそのまま書くのがリアリティではありません。それじゃドキュメンタリーだよ。
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7. Mikiko- 2017/07/02 08:10
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下宿人が1人
その奥さんは、未亡人かなんかですか?
ほかに住んでる家族はいなかったんですか?
下宿人1人で食べていけるんなら……。
やっぱり、遺産とかがあったんですかね。
下宿人を置くのは、もちろん、あっちの欲求処理用。
1人しか置かないのは、わざとだったんじゃないの?
一緒にお風呂に入ったりもしたんじゃないですか?
完全に、AVの世界です。
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8. ハーレクイン- 2017/07/02 11:04
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未亡人……
ではありません。
旦那が女を作って家出てっちゃったんです。金は入れてたようですが。
子供がいましたので家では出来ません(初めの一発、は家でしたが)。ラブホとかモーテルですね。お風呂はもちろん一緒に入りました。
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9. Mikiko- 2017/07/02 12:25
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『未亡人下宿』
じゃなかったんですね。
でも、旦那がいないことに変わりありません。
お風呂は、ホテルで入ったんじゃ面白くありませんよ。
家の内風呂のことです。
子供がいても、下宿人の部屋なら出来るのでは?
声を殺すところに、風情があります。
昭和ですなぁ。
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10. ハーレクイン- 2017/07/02 17:06
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旦那がいない
いやそれがね、時々戻って来おったのですよ。
一度、出くわしたことがありますが、別に血の雨は降りませんでした。
内風呂
もちろん入ってましたが、ご一緒したことはありません。そもそも狭くて無理。
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11. Mikiko- 2017/07/02 18:18
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狭いところに……
無理矢理入るのが、味わいではありませんか。
いっそ、子供も一緒に入れましょう。
うーむ、創作意欲をそそられます。
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12. ハーレクイン- 2017/07/02 21:14
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創作意欲

おお、これは……。
新作かな、と思いましたが『由美と美也子』が終わるはずも無し。エピソードの一つとして登場、かな。
女性はいっぱいいるし、子供は……やはり涼太か。
問題は男ですが、う~ん。











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