2017.6.6(火)
恭子(のりこ)は目を剥いた。
(なんと……)
(おお)
(なんとそのような……)
男の肉の茎はゆばり(尿)するところ。
これは恭子自身がその目で見たことである。自身も、日々同じような体の場所からゆばりを放っている。無論、その部分の形状は、兵部のそれとは大きく異なっていることもよく承知している恭子であった。
同じような体の位置ではあるが、その形その様は大きく異なる。同じようであって同じではない。これが男と女の違いなのであろうか。
兵部さまは男。
われは女。
同じく人であって、同じ人ではない。
特に意識はせずとも、そのような事が身に染みて思われるようになってきている近頃の恭子であった。
恭子は女。すでに月のものを見るようになっていた。そして、そのことの意味するところも、無論実感は出来ないが承知している恭子であった。
(わたくしは……女)
室内を覗き込み、兵部と笹津由の秘め事を覗き見る恭子(のりこ)は、猛々しい変貌を遂げた兵部の肉の茎に目を凝らした。噛み付くように見詰めた。
その恭子の体の最奥部。日常の会話では口の端にも上ることのない秘められた部位は、滲み出る女の液に濡れていた。
その部分は……ゆばりするところ。これが今の恭子にとってのその部位である。ならば……。
(わたくしは)
(ゆばりを漏らしているのであろうか)
(兵部さまの部屋の前)
(日の光の中)
(ゆばりを漏らしたのであろうか)
(わたくしは)
(なんと、わたくしは……)
恭子は、兵部の肉の茎を思った。
(兵部さまの……)
(あの……)
(兵部さまには)
(似つかわしくも無き)
(あの……)
(ゆばりされるところ)
今の恭子(のりこ)にとって、兵部の猛々しい肉の茎はただ「ゆばりするところ」である。それを笹津由は……。
(口にしておる)
(なんと、ささつゆは……)
(はしたなくも)
(あのように、大きく口を開いて……)
(ゆばりするところを……)
そのような振る舞いは、恭子の思考の埒外にあった。
そのような事があろうとは、考えもしていなかった恭子であった。
だが今、生まれて初めて垣間見るその行いに、嫌悪の感は無かった。恭子は知らず内腿を濡らし、ただ関心の赴くまま、兵部と笹津由の行いを見つめ続けた。
それは性の戯れ、男女の秘め事。
そのことすら理解できぬまま、恭子の視線は女のものになっていた。
「おうっ」
兵部は軽く仰け反り、短い嘆声を上げた。肉茎の先端を咥え込まれての反応であった。
「ぐぶ」
笹津由が声を漏らした。いや、それは声ではなかった。単なる音であった。兵部の肉茎と笹津由の両唇。その肉と肉が擦れ合う音であり、肉の狭間から漏れ零れる液の立てる音であった。
「か、はああ」
笹津由が大きく口を開いた。含んだ兵部の肉塊をいったん吐き出す。
肉塊。
兵部の肉の茎の先端。肉色の肉塊は丸く張り詰め、笹津由の口の液に塗れ、室内に射し込む日の光を照り返していた。
(おお)
恭子(のりこ)は、知らず喉を鳴らした。だが、呑み込まれるはずの液は恭子の口中には無かった。恭子の口内は日照りに晒された田畑のように干上がっていた。
(おおお)
笹津由の開いた口から、兵部の肉茎の先と同じ色合いの肉塊がぞろりと吐き出された。蠢く肉の塊。笹津由の舌であった。
「おご」
蠢く肉色の塊、笹津由の舌が改めて兵部の肉茎に触れた。そのまま、兵部の肉茎を付け根から舐め上げる。
肉茎の裏側を、笹津由の舌が舐め上がる。上がるにつれ、舌が肉茎に触れる部分は少なくなってゆく。肉茎の先端近く、肉の塊の付け根に至った舌は、その先端のみであった。そのさらに上、肉色の肉塊には触れることなく、笹津由の舌は下がって行った。肉茎を舐め下した舌は肉茎自体の付け根に至った。そこからさらに下方には、袋に包まれた兵部の二つのふぐり、陰嚢が垂れ下がっている。
笹津由の舌は、さらに舐め下した。兵部の肉の袋を丹念に舐め下した。垂れ下がる肉袋は笹津由の舌に触れ、押されて静止することが無い。逃げ回る兵部のふぐりを、笹津由の舌が追う。追い回す。嘗め回す。吸いたてる。
兵部の肉の袋は笹津由の口の液に塗れた。二つのふぐりの、より下の位置にあるふぐりから、笹津由の口の液が糸を引いて滴った。
笹津由は、兵部の肉茎と肉袋に丹念に舌を這わせながら、左の手を兵部の腰に回し、その手指を兵部の尻に這わせた。
まだ年少の兵部とはいえ、その尻の肉は既に鍛えられた青年のものであった。固く引き締まり、笹津由の手など弾き返しそうな兵部の尻肉。その二つの尻肉の間(あわい)に、笹津由の手指が潜り込んだ。
「おお」
兵部は、その笹津由の手指の動きに、短い声で答えた。さらなる刺激を、と求めるような声音であった。
笹津由の指先が、兵部の不浄のとば口、いや、出口を探り当てた。兵部の尻穴であった。
「おおお」
笹津由の一本の指先が、兵部の尻穴を抉った。半寸にも満たない長さの指の先が、兵部の臓腑の壁を掻く。擦る。這い回る。
兵部は、絶え入るような嘆息を漏らした。
「ほおおおお」
「いかがか、兵部殿」
「よき、かな……」
「およろしき、と」
「おお、ささつゆ……」
兵部は、更に求めるように笹津由に呼び掛けた。
その要求は、聞かずとも笹津由には承知のことであった。笹津由は、今一方の手を、兵部の肉茎の先端に当てた。兵部の先端は濡れそぼっていた。濡れた肉の先端を笹津由の指先が這い回る。指の動きは滑らかであった。笹津由の指の先は、濡れた肉茎の先端を隈なく這い回った。
笹津由の口は再び兵部のふぐりに向かった。舐めるのでもなく吸うのでもなかった。笹津由は大きく口を開け、愛しいものを我が体内に囲い込むかのようにふぐりを口内に収めた。無論二つは入らない。残された今一つのふぐりが笹津由の鼻先に軽く当たる。二度、三度……。入れてくれと幾度も戸を叩く、あの天邪鬼のようであった。
笹津由は、その両手と口唇で兵部の股間を弄い続けた。兵部の肉茎とふぐりと尻穴を、笹津由の両手と口唇は嬲り続けた。
(なんと……)
心中で嘆息する恭子(のりこ)は、兵部の部屋の前にあって室内を覗き見しながら、全身を凝り固まらせていた。両手は固く胸前で握りしめ、指の一本すら動かせなかった。
恭子の股間はいまやしとどに濡れそぼっていた。陰部からにじみ出た恭子の女の液は、その両腿の間(あわい)を伝い降り、膝の辺りまで濡らしていた。しかし、恭子にはその感覚はもはや無かった。恭子は、その全身を目と耳に変え、兵部と笹津由の絡み合いにすべての意識を注いでいた。
凝り固まった恭子の全身の一部が動いた。
右と左の、両の腕であった。
胸前で固まっていた左右の腕がぎごちなく動いた。右の腕は衿元に、左のそれは腰の前のあたりに。
コメント一覧
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1. 冬の兆しハーレクイン- 2017/06/06 11:49
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本格的に始まりました
女官にして乳母、笹津由のフェラチオです。
相手は、恭子の幼馴染兵部。兵部卿宮。
自ら乳を与えた兵部のちんこをしゃぶるかねえ笹津由はん、です。
が、まあエロ話の世界で近親相姦は立派な一ジャンル。まして兵部と笹津由は血縁でも何でもありません(たぶん)。何を憚ることがありましょうや(大ありじゃ)。
いずれにしましても、このシーンは恭子に「春を目覚め」させるためのもの。淫乱斎王恭子誕生の大事なシーンですが、熱演笹津由の霊験あらたか。何やら高ぶってきました様です、恭子ちゃん。
次回が楽しみですねえ(自分で言うな)。
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2. Mikiko- 2017/06/06 19:50
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笛吹童子
口を使った行いは……。
いにしえ、「口取り」「雁が音」「尺八」「千鳥の曲」などと呼ばれたそうです。
性が、タブー視されるようになったのは明治以降で……。
昔の日本人は、今よりずっとおおらかだったのです。
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3. 笛吹の爺ハーレクイン- 2017/06/07 02:41
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↑竹取の……のパクリ
♪ヒャラーリ ヒャラリコ
ヒャリーコ ヒャラレロ
誰が吹くのか不思議な笛だ
…………
たんたんたんたん
たんたんたんたん……
初めはラジオドラマだったそうです『笛吹き童子』。
戦後すぐくらいで、映画化もされたようですが、わたしは見ていません。が、歌はなぜか覚えています。もちろんうろ覚え。
ヒャラーリ ヒャラリコ
の次は
“ヒャレーロ ヒャラレロ”と覚えてまして、ここでもう違ってます。さらに、
“どこで鳴るのか不思議な笛は”
で、
“ぼんぼんぼんぼん……”
映画の主演も山城新伍だと思ってましたが、東千代之介・中村錦之介(後の萬屋)でした。
まあ、人の記憶なんてそんなものです(お前と一緒にするな)。
尺八
は無論知ってますが、他は……。
「雁が音」「千鳥の曲」なんて謡曲かなんかにありそうです。
海外にもこんな命名あるんでしょうか。
あるとするとフルート、はおかしいか。“クラリネット”かな。
こいつの親戚(大叔父くらい?)に「バスーン」てのがありますが、これじゃ大きすぎて入らんか。
そういえば、中学校の友人に、エッチすること自体を「バスーン」とわめく野郎がいましたが、これは擬音語?
そういえば、例の四十八手などと称する体位のバリエーションにも、いろいろ優雅な名称がありますね。「臼取り」くらいしか思いつきませんが。
何か一つ出してみますかね。
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4. Mikiko- 2017/06/07 07:28
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『雁が音』
これは、わかります。
張り出した部分を、“カリ”と云いますからね。
『千鳥の曲』は……。
ちと、わかりずらい。
琴の名曲でした。
男性が仰向けに寝て、女性がその脇に座ります。
で、フェラをするわけです。
女性が琴を弾く様子に似てることから、この名が付いたとか。
風雅ですね。
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5. 和楽器経験無しHQ- 2017/06/07 14:34
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千鳥の曲
時代もので琴を弾くシーンで奏されるのは、たいがいこれですね。
理由① いい曲だから
理由② 有名な曲だから
理由③ 初心者向けの易しい曲だから
理由④ 作者がこれしか知らないから
一度聞いてみたいものです、千鳥の曲。
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6. Mikiko- 2017/06/07 19:45
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YouTubeで……
↓聞いてみました。
https://www.youtube.com/watch?v=-PXbz9DXn8s
有名なんですかね?
まったく聞き覚えが無いです。
↓琴ならやはり、『春の海』でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=29WgFkhv62w
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7. なんでも……HQ- 2017/06/07 21:15
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↑あるんだなあ、YouTube
『千鳥の曲』
有名……は、「その道では」ということでしょう。
わたしも聞いたことありません『千鳥の曲』。文字を見たことはありますが(なんのこっちゃ)。
『春の海』
琴じゃなく、厳密には箏(こと;しょう)です。
似たような楽器ですが、どこがどう違うのかは、よく知りません。
尺八との合奏曲ですが、尺八のパートはいろいろな楽器で行われるようです。わたし、フルートでこのパートを吹けます。出だしの数小節だけですが。
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8. Mikiko- 2017/06/08 07:18
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琴と箏
わたしたちが“琴”と思ってるのが、実は“箏”だそうです。
ほんとうの“琴”には琴柱がなく……。
指で絃を押さえて音を変えます。
すなわち、大正琴のような楽器が、“琴”だったんです。
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9. ギター侍ハーレクイン- 2017/06/08 08:54
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↑懐かしいね、どうしてるのかなあ
ほんとうの“琴”
これがよくわからないんですが「指で弦を押さえる」だけじゃ上手く音程を変えられないと思うんですよね。
琴柱の代わりと云いますか……もっと低い、ギターで云う「フレット」(ネック;弦を張ってある柄のような部分、に沢山埋め込んである金属棒)みたいなのがあるんじゃないかなあ、と思うんですが。
でも、バイオリンなんかにはフレットは無いし……。
箏の琴柱は動かせますから、調子を自由に設定できます。
琴はそうはいきません。サックスのテナーやアルトのように、何通りか調性の異なるものがあるのかもしれません。
ちなみに琴柱は「ことじ」。
金沢兼六園の名物は、その形状から琴柱(正式には徽軫;ことじ)灯籠ですね。
「ことじ」。
女性の名前に使えそうですね。
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10. Mikiko- 2017/06/08 19:55
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老女の尊称に……
刀自(とじ)というのがあります。
わたしがこの呼び名を知ったのは、横溝正史の推理小説だったと思います。
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11. トラジはーれくいん- 2017/06/08 22:38
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刀自
広辞苑によりますと「トヌシ(戸主)」からきた言葉だそうです。「刀」も「自」も万葉仮名でそれ自体に意味はなく、音を借りただけ、ということですね。
名前の下に付して用いることもよくあるとか。
「琴路刀自」てな具合でしょうか。