2017.5.6(土)
み「黙って聞け。
その人の会社は、西成区にあるそうなんじゃ。
知っとるけ、西成区?」
客「知ってますよ。
釜ヶ崎のあるところでしょ」
み「今は、“あいりん地区”と呼ばれておる」
み「路上生活者が、多く居住する。
道を歩いてても、アンモニア臭がする街じゃ」
↑釜ヶ崎の写真ではありません。犬には効かないでしょう。
客「行ったことあるんですか?」
み「ない。
『探検バクモン』で見ただけじゃ。
異常に安い弁当を売っておった。
200円くらいだったかな」
↑1パック100円で、これで200円。
み「何が入ってるのかね?」
客「知りませんよ」
み「その弁当屋のおばちゃんが強烈だったな。
虎柄のチュニックを着ておった」
↑探しましたが、似たものは発見できませんでした。これは、ワンピですね。
客「そんなの、どこに売ってるんですか?」
み「あっちでは、ポピュラーなアイテムなのであろう。
でもって、『阪神ファン?』と突っこむ太田に対して、おばちゃんは……。
『わたしゃ、巨人ファンや』とネタをかましておった」
↑いい勝負しそうですね。
客「はぁ」
み「受けない?」
客「話の筋道に取りすがるのがやっとです。
新潟に出張に来た人の会社が、西成区なんですよね?」
↑『あべのハルカス』が間近にそびえます。
み「さよう。
その人が、日常目にする風景は、だいたい想像できるじゃろ?」
客「臭いもね」
↑正規の収集場じゃないので、収集されないのでしょうね。
み「その人が新潟の街を歩いてて、驚いてた。
『どうして、ホームレスがいないんですか?』って」
↑中国のホームレス女性だそうです。美人すぎ。やらせか?
客「大阪弁じゃないんですか?」
み「翻訳した」
客「通じるでしょ、そのままで」
み「『なじぇーに、ホームレスがいないまんねん?』」
↑『サラリーマン』の画像、少ないですね。やっぱり、短命キャラだったんですね。
客「何語ですか!」
み「で、取り締まってるのか、ほかの方法があるのか、そのあたりの行政のノウハウを知りたがってな」
客「なるほど。
東京の公園にも、ありますからな。
ブルーシートのテント」
↑『代々木公園』の奥地。
み「でも、なーんもしてないのよ。
行政」
客「NPO?」
み「路上生活者支援のNPOは、新潟に存在しません」
客「どういうことなんです?」
み「単に、いないんです。
ホームレスが」
↑ホームレスではありません。お花見です(『鳥屋野潟公園』・新潟市中央区)。
客「どうしてですか?」
み「理由はただひとつだと思われる」
客「なんでしょう?」
み「相槌がうまくなったではないか」
み「出世できるぞ」
客「もう、定年です」
み「人間、一生勉強じゃ」
客「正論はいいですから、話を進めてください」
み「新潟にホームレスがいない理由は……」
客「理由は?」
み「冬を越せないからじゃ」
客「……」
み「相槌!」
客「意表を突かれました」
み「新潟の冬にホームレスなんかしてたら……。
間違いなく、凍死する」
客「なるほど」
それじゃ、冬の間だけ……」
み「どこか別の場所に移る?」
客「はい」
み「ここで、縄張りの話に繋がるんじゃ」
客「珍しく、筋道を覚えてましたね」
み「珍しくは余計じゃ。
良いか。
ホームレスという生き方は、決して楽なものではないはず」
客「ま、そうでしょうね。
収入がほとんど無いから、路上で生活してるわけですから。
食べるだけで精一杯でしょう」
み「東京とか大阪なら、NPOの炊き出しとかもあるんだろうけどね」
↑炊き出しに並ぶ列。東京の建設業界は、人手不足なんですよね。日雇い労働者がやれるような仕事は、重機がやった方が安いのでしょうか?
み「それでも、それだけで生活していけんでしょ」
客「それで生活出来たら、誰も働こうとしなくなります」
み「そゆこと。
生きるためには、空き缶を拾ったり、残飯をあさったり……。
自動販売機の返却口に手を突っこんで回らにゃならない」
↑千円札を2枚入れて返却レバーを押すと、千円札1枚と小銭で戻ってくるそうです。ホンマか?
客「大変ですね」
み「当然、実入りの良い場所には、縄張りがあるはず」
↑自販機の空き缶入れからゲットするんでしょうか? 道で拾ってたら、こんなには集められませんよね。
客「なるほど。
生死に関わる権利ですね」
み「そういう縄張りに、ほかのホームレスが入ってきて、空き缶を拾ったりしたら……」
↑ライバル出現! もちろん清掃活動です。
み「縄張りの主は、黙ってそれを見過ごすか?」
客「トラブルになるでしょうね」
↑達人同士の決闘?
み「無論。
いい場所に縄張りを持ってるホームレスは、喧嘩も強いはず。
入りこんできたヤツは、こてんぱんにやられる」
客「厳しい世界ですね」
み「修行してみるか」
客「積極的にお断りします」
み「わかったじゃろ?
冬の間だけ、ほかの場所になんか移れないってこと」
↑戦隊ものに登場した旅ガラス怪人。
客「そうか。
1年中、縄張りに張り付いていられる場所でしか……。
ホームレスという稼業は、成り立たないってことなんですね」
み「左様じゃ」
客「それで、新潟には、ホームレスがいないと」
み「大阪から来た人も、この理屈に大いに納得して帰ったそうじゃ」
み「おそらく、大阪に帰ってから、100回くらい、このネタを披露したに違いない」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
さて、ここで一息つきましょう。
↑怪獣も一休み。思い切り等身大です。
実は今、『単独旅行記Ⅲ』の連載を書き終わったところなのです。
↑「み」
すなわち、↑の★までの文章は、『単独旅行記Ⅲ』の連載前に書いてあった部分。
でもって、『東北に行こう!』は、2016(平成28)年6月6日(月)の第1349回で中断し……。
6月8日(水)から、『単独旅行記Ⅲ』の連載が始まったわけです。
まさか、『単独旅行記Ⅲ』の連載が、ここまで長引くとは思ってませんでした。
連載がようやく終わったのは、2017年(平成29)年4月8日(土)。
実に、丸10ヶ月の長きにわたってしまいました。
理由は、わかってます。
写真を山ほど撮ってきたからです。
↑写真フォルダのごく一部です。
せっかく撮ったからには、やはり紹介したい。
ということで、ほとんど9割方の写真を題材にしたんじゃなかったかな。
撮った枚数は、430枚を超えてましたから……。
紹介した写真は、400枚近くはあったはず。
『単独旅行記Ⅰ』と『単独旅行記Ⅱ』のときは……。
初日に健診を受けてました。
これが上京の目的だったんです。
『Ⅰ』のときは、心臓ドッグ。
『Ⅱ』のときは、アミノインデックス検査。
で、健診を終えたら、その日はそのまま宿に入り……。
翌日、午前中に観光して、午後、新潟に帰ってました。
『Ⅰ』では、大宮の『鉄道博物館』。
↑「み」
『Ⅱ』では、両国の『江戸東京博物館』。
↑「み」
どちらも見応えがありましたが、行ったのは、そこ1カ所だけ。
しかるに!
『Ⅲ』は、当初の目的だった健診が無くなり……。
2日間、丸々観光というスケジュールにしてしまったんです。
『Ⅰ・Ⅱ』では、東京行きの目的はあくまで健診で……。
そのご褒美に、翌日観光を楽しむということだったんですがね。
ま、いいじゃないですか。
別に健康をないがしろにしているわけではありません。
実はですね。
職場で毎年受ける健康診断に、自腹でオプションが付けられるようになったんです。
腫瘍マーカーによる、がん検診です。
↑わたしが受けたのとは違うようですが、だいたいこんな感じ。
去年の健診で、2回目でした。
最初の年は、自覚症状の出ない膵臓がんと肝臓がんのオプションを付けました。
↑思ったより、上にありました。
昨年は、そのほかのがんもひっくるめて、フルバージョンにしました。
自腹での負担額は、12,000円弱になりました。
でも、健康診断と一緒に受けられて、便利です。
採られた血液で検査してもらえるので、健診時間も変わりありません。
小心者で心配性なので……。
↑80年代の漫画だそうです。『りぼん』連載。知りませんでした。
安心料としては、安いものだと思ってます。
で、健康面での心配は、少し無くなったわけです。
↑1割は起こっちまうじゃねーか。
それなら、せっかく東京に行くんなら……。
丸2日、遊んだ方が楽しいじゃーんとなったわけです。
てなわけで、『Ⅲ』では、初日に『江戸東京たてもの園』。
↑「み」
2日目は、『国立科学博物館』。
↑「み」
このセットは、わたしとしてもちょっと欲張りすぎだったと反省してます。
どちらも、見て回るのに、丸半日はかかるスケールでした。
しかも、写真撮り放題。
というわけで……。
すべてをご紹介するのに、10ヶ月かかってしまったと。
↑長すぎるつけま。用途不明。
今年(2017年)も、もちろん、東京に行くつもりでいます。
でも、また10ヶ月も連載してたら、『東北!』はどうなる?
なので、今年は、あまりボリュームの大きくならないところを見学しようかと思ってます。
その代わり、すこし遠くまで足を伸ばして、移動の課程も楽しみたいなと。
↑こんなに田舎までは行かないと思います。
まだ、計画は立ててません。
今年は、仕事の案配で、日程を組むのが難しそうなんです。
いついくかも、まだ決められないです。
ひょっとしたら、5月には行けず、6月に入ってしまうかも。
となると、当然、梅雨の季節になりますので……。
野外施設は避けた方が無難でしょう。
ま、もう少し悩みます。
楽しい悩みですね。
さて、本編に戻ります。
中断直前の場面は……。
新潟にホームレスがいないのはなぜかという考察を……。
大阪から出張してきた人に語ったというエピソードを、「み」さんが「客」さんに語るシーンでした(ややこしい!)。
大阪、ホームレス、と来れば……。
やはり、西成区の釜ヶ崎が連想されます。
↑『探検バクモン』で取りあげられました。左の茶髪の方が案内人。
ホームレスじゃなくて、簡易宿泊所(いわゆるドヤ)におられるんでしょうか?
それなら、ホームレス呼ばわりは大変失礼なわけですが……。
地方の人間が、そう連想してしまうのも事実です。
ちなみに、『釜ヶ崎』という地名は、現在存在しないそうです。
元々は、大阪府西成郡今宮村に存在した字(あざ)でしたが……。
1922(大正11)年、今宮村が、新町名に改編したことにより消滅したそうです。
でも、通称としての『釜ヶ崎』は、今も残ってます。
公的な呼び方は、『あいりん地区』になってますが。
『あいりん地区』は、JR新今宮駅南側、簡易宿泊所が集中する地区の愛称です。
ところが……。
この新今宮駅前において、2017年3月、驚くべきニュースが入ってきました。
星野リゾートが、新今宮駅前の4,200坪の市有地を、18億円で買収したのです。
もちろん入札でしたが、応札したのは星野リゾートだけだったそうです。
1坪あたり、43万円。
これは、大阪の一等地としては、破格の安さです。
すぐ近くの道頓堀と比べると、70分の1の値段だそうです。
18億は、市が設定した最低売却価格とほぼ同額。
こんな一等地が、なぜこんなに安く、しかも競争もなく落札できたのかと云えば……。
ひとえに、環境が悪すぎるということです。
この土地は、昔、工場地域だったそうです。
経緯はわかりませんが、大阪市の市有地となりました。
しかし、警察署の建て替えなどのとき、仮庁舎があったことはあるようですが……。
それ以外は使われることもなく、長く更地の状態だったそうです。
早い話、問題物件。
今回の売却を一番喜んだのは、橋本大阪市長だったとか。
↑売却が決まって万歳、という画像ではありません。
星野リゾートがホテルを建てると聞いて、一番驚いたのは……。
地元大阪の周辺住民だったようです。
「“リゾート”の対義語は、“新今宮”ではないのか」という声すらあがったとか。
星野リゾートの既存ホテルは、1泊7万円からという価格設定です。
↑『星のや 軽井沢』。川に沿うようにヴィラ風のゲストルームが並びます。
さすがに新今宮では、1泊2万円程度に抑えるそうですが。
20階建て、客室数は600だとか。
↑ホテルの完成イメージ。右側の道路の対岸が、釜ヶ崎です。
エントランスから安全地帯まで、シャトルバスでも運行しないとダメなんじゃないですか?
あと、釜ヶ崎ネイティブが、敷地内に入りこまないようにする対策が必要でしょう。
門を一カ所にして、衛兵でも立たせますか。
さて、それでは話を本編に戻します。
わたしも、リハビリのために、ちょっと遡って読んでみましたが……。
話があっちゃこっっちゃに飛んで、さっぱり筋道を掴めませんでした。
どうも『津軽海峡冬景色』の歌詞にいちゃもんをつけてたようです。
“こごえそうな鴎見つめ 泣いていました”という部分。
「カモメなんかダウンジャケットを着てるようなものだから凍えるわけがない」と、「み」さんが決めつけ……。
さらに、「羽根があるんだから、もし凍えそうなら、もっと南に行けばいい」と続けます。
で、渡り鳥みたいに一気に飛ぶ必要はない。
1日10キロ飛べば、3ヶ月で900キロも移動できる。
秋口から、海岸線を徐々に南下していって、真冬は九州あたりで過ごす。
春先は、桜前線を追いかけるように徐々に北上し、真夏は涼しいところで過ごす。
気楽な旅暮らしが出来るではないかと、持論(思いつき)を展開します。
↑かっぱえびせん、ゲット!
で、それに対して「客」さんが応えます。
しかし、この「客」さんって、いったい誰じゃ。
どっから一緒なんだ?
というわけで、かなり遡って読むはめになりました。
『野辺地』駅から大湊線に乗りこんだとき……。
↑懐かしい感じのホームです。
空のボックス席が無く、初老男性が1人座るボックスに相席させてもらったんでした。
本州最北端のディーゼル車に溶けこんだ風体からして、疑いもなくジモティと思っていたら……。
なんと、ベテランの“鉄”さんでした。
いかにも“鉄”として浮きあがるのを嫌い、カメラも持たず……。
列車と風景に溶けこむことを信条とする、「溶け鉄」さんでした。
↑紀行作家の宮脇俊三さん。ストーブ列車に溶けこんでます。
で、現在、列車が走ってるのは、『有畑』と『近川』の間。
『むつ市』に入ったあたりです。
それではようやく、『東北に行こう!』、再開です。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
客「近川駅ですね」
み「シンプルさ、ここに極まれりという駅だな。
最近、建て替えられたみたいだね。
トイレさえ無いっぽい」
客「待合室だけですな」
「存続させるという目的で完結してるね。
ま、致し方ないんだろうね。
さらば、近川駅」
↑反対方向(『野辺地』)に向かう画像かも知れません。
み「たぶんもう、ここに来ることは一生無いんだろうな」
客「まさに、旅の感慨は、そこに尽きます」
み「ちらちらと海が見えるね」
客「いい砂浜ですよ。
海水浴場になってます」
↑近川駅近くの『浜奥内海水浴場』。
客「山からの川が、何本も流れこんでますから」
客「さっきの、近川駅も、近川という川のほとりにあるからです。
この先の駅も、金谷沢、赤川と、川の名前が続きます」
み「あの海の向こうに見える、ずんぐりした山は?」
客「釜臥山(かまぶせやま)です」
み「おー、まさしくその名のとおりの山容だね。
けっこう高そうだけど」
客「879メートルです。
下北半島では最高峰ですよ。
頂上近くに展望台があります。
頂上には、航空自衛隊のレーダーも。
通称、ガメラレーダーと呼ばれてます」
み「なんじゃそれ?
まさか、ガメラを発見するためのレーダー?」
↑海洋堂のフィギュアを使用した画像。
客「ガメラの由来は、レーダーの覆いが、ガメラの甲羅に似てるからです」
↑動画でご覧ください。
み「何のレーダー?」
客「空自のレーダーです。
戦闘機はもちろん、弾道ミサイルも探知追尾できます。
実は、このレーダー……。
米軍最新鋭のステルス戦闘機『F22』をキャッチして、世界を震撼させました」
み「ほー。
そんなスゴいシステムがあるんだ」
客「大湊には海自の基地もあります。
津軽海峡の監視基地ですね」
み「あぁ。
津軽海峡は、公海だったね」
み「のどかな風景と思ってたら……。
このあたり、国防上の要衝だったわけだ」
客「そうです。
釜臥山の展望台に行ったときも、進入禁止の立て看板を見ました」
客「展望台からは、大湊や下北の市街地から陸奥湾まで一望できます」
み「しかし、さっきからずーっと道路が並行して走ってるよね」
客「国道279号です。
野辺地から、函館までの路線です」
み「てことは、海上国道区間があるわけだ」
客「よくご存じですな。
本州と北海道を結ぶ海上国道のうちの1路線です」
み「何路線あるの?」
客「3本です。
あとは、280号、338号です。
280号は、青森県外ヶ浜町の三厩港と北海道福島町の福島港間が海上区間です。
でも、青函トンネルが開通して以来、フェリー航路が運航されてないんです」
↑錆びた看板が残ってるのが、なんとも荒涼たる風情です。
み「それでは、国道の体をなさんではないか」
客「現在、フェリー会社を募集してるようです」
み「採算が合わないから、就航してないんでしょ」
客「そうでしょうな」
み「そんなら、運航再開は無理ではないか。
潔く、国道の看板を返上すべし」
↑大政奉還の場面とのこと(高知県香南市『龍馬歴史館』)。こんな、こじんまりしたところでやったわけ?
客「そんな殺生な。
国道になってるからこそ、国のお金で道路の維持管理が出来るんです。
県道や町道になったら、そんなお金、出なくなりますよ」
↑広島県の県道です。
み「それが、これからの日本の定めです。
2065年には、日本の人口は、今より30%も減るそうではないか」
↑こんな時代が来るなんて、高度成長期には想像もしなかったでしょうね。
客「8800万人になるらしいですな。
ま、わたしは生きてませんけど」
み「わたしは、生きてる可能性がある」
↑生きてたとしたら、おそらくこんな有様。
み「わたしの年金は、ちゃんと払われるんだろうな」
客「微妙ですね」
み「人ごとだと思って。
団塊の世代くらいが、一番幸せな一生なんじゃないかね。
55歳で定年退職して、年金もすぐもらえて」
客「すみません」
み「こうして、好きな旅行もできるわけだな。
わたしが働いて払ってる税金で」
↑働けど働けど……。
客「なんで、こんな話になるんですか」
み「あーたが不景気なことを言うからでしょ」
客「海上国道に話を戻します。
最後のひとつは、国道338号」
み「海上区間は?」
客「279号と一緒です。
青森県大間町から函館市ですね」
み「津軽海峡を渡るフェリーは、なくなったんでないの?
青函トンネルが出来て」
↑青函トンネルと云えば、この曲です!
客「確かに、青函連絡船は廃止されましたが……。
フェリー航路は残ってますよ。
津軽海峡フェリーが、1日2便就航してます。
所要時間、90分ですね」
↓『青森-函館』航路もあります。
み「そうなの?
青函トンネルが出来たんだから、フェリーなんていらないでしょ」
客「誤解されてるようですが……。
青函トンネルは、鉄道トンネルです。
道路は通ってません」
↑本州側の入口。
み「なぜじゃ!」
客「排気ガスとか、抜けないんじゃないですか?」
み「じゃ、青函連絡船はなんで廃止したの?」
客「青函連絡船は、鉄道連絡線です」
↑岸壁まで伸びる線路と船尾がくっつき、貨物列車がそのまま乗りこめました。干満の調整はどうやったんでしょう?
客「鉄道はトンネルが通ったので、鉄道連絡船が廃止されるのは理の当然でしょ」
み「で、国道をつなぐ海上連絡線は残ってると」
客「左様です」
み「納得できん」
客「してくださいよ。
ところで、お昼は食べられましたか?」
み「話題を変える気だな」
客「連絡船に執着してもしょうがないでしょう」
み「青森駅で、立ち食い蕎麦を食べた」
↑青森駅ホームの『八甲田』(現在は、ホームのお店は無くなってます)。
客「それはまた、粋なものを食べましたな」
み「であろう。
わたしの大好物、天玉そばじゃ」
↑『八甲田』のおしながき。
み「あーたは食べてないの?」
客「はい。
ちょっと乗り換えが慌ただしくて」
客「大湊に下りたら、美味しい海鮮をいただこうかと。
よろしければ、ご一緒にと思ったんですが」
み「やっぱり、海鮮攻撃だな」
↑こんなののどこがいいんですかね?
客「なんです、それ?」
み「わたしは、生魚が苦手なのじゃ」
客「え。
それは、もったいない」
み「生魚を食うヤツは、猫の血が混じってるに違いない」
↑欲張りすぎ。
客「そんなことをここらで言ったら、怒られますよ」
み「海鮮丼とか、やたらと高いのも気に食わん」
客「ウニがてんこ盛りなんだから、仕方ありません」
↑『築地・鮨國』3,200円。途中で吐くと思います。
み「なんであんなのを食うかね」
客「美味しいからです」
み「ヒトデの血が混じってるに違いない」
↑仮面ライダーに出てきたヒトデンジャー。造形、結構イケてますね。
み「天玉そばの方が、よっぽどいいです」
↑『新潟庵(新潟駅新幹線ホーム)』の天玉そば。いつか食べたい。ただし、ネギ抜きで。
客「青森まで来て、張り合いがありませんな」
み「名物に旨い物なし」
客「またそういうことを」
み「駅そばなら、どこも間違いありません」
↑『新潟庵(新潟駅在来線ホーム)』。ここで食べることを、今年のテーマのひとつにしたいと思います。
客「そりゃそうですが」
み「ところで、今、どのあたり」
客「『近川』を出てから、『金谷沢』『赤川』も過ぎました」
み「もう過ぎたの?」
客「時間的にちょっとおかしいですがね」
み「仕方あるまい。
おそらく、何も書くことがない駅だったんじゃろ」
客「それはそれで失礼ですよ」
み「すると次は……」
客「終点の『大湊』の一つ前、『下北』です」
み「なんと!
下りねばならぬ」
客「え?
『大湊』まで行かないんですか?」
み「『下北』からバスに乗る」
↑大間崎がゴールと云うことは、下北も通ったんですかね? さとう珠緒さん、この撮影時は40歳。若いですよね。
客「大湊線に乗ったのは、今日が初めてではない?」
み「初めてですが」
客「次に来る予定は?」
み「こんな地の果てに、何度も来るわけなかろ」
客「声が大きいです。
それじゃ、もう一生、大湊線に乗ることはないかも知れないでしょ」
み「まず、ないですな」
客「そんな。
それじゃ、『下北』から『大湊』を乗り残すことになりますよ」
み「あのな。
わたしは、JR全線踏破をしようってわけじゃないの。
あなた、やっぱり宮脇俊三の亡霊じゃないの?」
客「宮脇さんは、わたしの心の師です。
わたしは、大湊線は、今日で32度目ですが……。
一度も終点まで乗らなかったことはありません」
み「アホじゃ」
客「失敬な。
棺桶に入るとき、後悔しますよ」
↑秩父の『ジャランポン祭り』。
客「あー、あのとき、大湊まで行かなかったのが、今生の名残りだと」
み「棺桶に入るとき、意識があったら大変じゃ」
客「ものの例えです」
み「31回も乗ったんなら、1回くらい途中下車してもいいでしょ」
客「そうはいきませんよ。
これで、大鵬の優勝回数に並ぶんですから」
↑巨人・大鵬・卵焼き。このフレーズの創作者は、堺屋太一だそうです。
み「どういうつながりがあるんじゃ!」
客「こだわりと言っていただきたい」
み「大湊を下りたら、病院を訪ねなさい。
脳波が異常です」
客「残念ですが、ここでお別れですね。
しかし、お連れの方、よく寝てますね」
み「無防備なヤツ。
ティッシュを持ってないか?」
客「コヨリを作るんですか?」
み「なぜわかる?」
客「そのネタ、さっきやったばかりじゃないですか。
コヨリで、鼻の穴をくすぐるんでしょ」
客「あまりにも馬鹿馬鹿しくて、脳の皺に刻まれました」
み「下らんことばかり覚えてると、大事なことを忘れるぞ」
↑周りの人は大迷惑。
客「大事なことって何ですか?」
み「他人の大事なことが、わたしにわかるかい」
客「もういいです。
早く起こしてあげてください。
半分寝ぼけてると、タラップから転げ落ちたりしますよ」
み「先生、律子先生」
客「起きませんな」
み「先生、急患です!」
律「は、はい。
すぐ行きます」
↑急患対応。
客「跳ね起きましたな。
医者の鏡です」
律「じ、地震?
揺れてる」
み「騒がしいやつ。
下りるよ」
その人の会社は、西成区にあるそうなんじゃ。
知っとるけ、西成区?」
客「知ってますよ。
釜ヶ崎のあるところでしょ」
み「今は、“あいりん地区”と呼ばれておる」
み「路上生活者が、多く居住する。
道を歩いてても、アンモニア臭がする街じゃ」
↑釜ヶ崎の写真ではありません。犬には効かないでしょう。
客「行ったことあるんですか?」
み「ない。
『探検バクモン』で見ただけじゃ。
異常に安い弁当を売っておった。
200円くらいだったかな」
↑1パック100円で、これで200円。
み「何が入ってるのかね?」
客「知りませんよ」
み「その弁当屋のおばちゃんが強烈だったな。
虎柄のチュニックを着ておった」
↑探しましたが、似たものは発見できませんでした。これは、ワンピですね。
客「そんなの、どこに売ってるんですか?」
み「あっちでは、ポピュラーなアイテムなのであろう。
でもって、『阪神ファン?』と突っこむ太田に対して、おばちゃんは……。
『わたしゃ、巨人ファンや』とネタをかましておった」
↑いい勝負しそうですね。
客「はぁ」
み「受けない?」
客「話の筋道に取りすがるのがやっとです。
新潟に出張に来た人の会社が、西成区なんですよね?」
↑『あべのハルカス』が間近にそびえます。
み「さよう。
その人が、日常目にする風景は、だいたい想像できるじゃろ?」
客「臭いもね」
↑正規の収集場じゃないので、収集されないのでしょうね。
み「その人が新潟の街を歩いてて、驚いてた。
『どうして、ホームレスがいないんですか?』って」
↑中国のホームレス女性だそうです。美人すぎ。やらせか?
客「大阪弁じゃないんですか?」
み「翻訳した」
客「通じるでしょ、そのままで」
み「『なじぇーに、ホームレスがいないまんねん?』」
↑『サラリーマン』の画像、少ないですね。やっぱり、短命キャラだったんですね。
客「何語ですか!」
み「で、取り締まってるのか、ほかの方法があるのか、そのあたりの行政のノウハウを知りたがってな」
客「なるほど。
東京の公園にも、ありますからな。
ブルーシートのテント」
↑『代々木公園』の奥地。
み「でも、なーんもしてないのよ。
行政」
客「NPO?」
み「路上生活者支援のNPOは、新潟に存在しません」
客「どういうことなんです?」
み「単に、いないんです。
ホームレスが」
↑ホームレスではありません。お花見です(『鳥屋野潟公園』・新潟市中央区)。
客「どうしてですか?」
み「理由はただひとつだと思われる」
客「なんでしょう?」
み「相槌がうまくなったではないか」
み「出世できるぞ」
客「もう、定年です」
み「人間、一生勉強じゃ」
客「正論はいいですから、話を進めてください」
み「新潟にホームレスがいない理由は……」
客「理由は?」
み「冬を越せないからじゃ」
客「……」
み「相槌!」
客「意表を突かれました」
み「新潟の冬にホームレスなんかしてたら……。
間違いなく、凍死する」
客「なるほど」
それじゃ、冬の間だけ……」
み「どこか別の場所に移る?」
客「はい」
み「ここで、縄張りの話に繋がるんじゃ」
客「珍しく、筋道を覚えてましたね」
み「珍しくは余計じゃ。
良いか。
ホームレスという生き方は、決して楽なものではないはず」
客「ま、そうでしょうね。
収入がほとんど無いから、路上で生活してるわけですから。
食べるだけで精一杯でしょう」
み「東京とか大阪なら、NPOの炊き出しとかもあるんだろうけどね」
↑炊き出しに並ぶ列。東京の建設業界は、人手不足なんですよね。日雇い労働者がやれるような仕事は、重機がやった方が安いのでしょうか?
み「それでも、それだけで生活していけんでしょ」
客「それで生活出来たら、誰も働こうとしなくなります」
み「そゆこと。
生きるためには、空き缶を拾ったり、残飯をあさったり……。
自動販売機の返却口に手を突っこんで回らにゃならない」
↑千円札を2枚入れて返却レバーを押すと、千円札1枚と小銭で戻ってくるそうです。ホンマか?
客「大変ですね」
み「当然、実入りの良い場所には、縄張りがあるはず」
↑自販機の空き缶入れからゲットするんでしょうか? 道で拾ってたら、こんなには集められませんよね。
客「なるほど。
生死に関わる権利ですね」
み「そういう縄張りに、ほかのホームレスが入ってきて、空き缶を拾ったりしたら……」
↑ライバル出現! もちろん清掃活動です。
み「縄張りの主は、黙ってそれを見過ごすか?」
客「トラブルになるでしょうね」
↑達人同士の決闘?
み「無論。
いい場所に縄張りを持ってるホームレスは、喧嘩も強いはず。
入りこんできたヤツは、こてんぱんにやられる」
客「厳しい世界ですね」
み「修行してみるか」
客「積極的にお断りします」
み「わかったじゃろ?
冬の間だけ、ほかの場所になんか移れないってこと」
↑戦隊ものに登場した旅ガラス怪人。
客「そうか。
1年中、縄張りに張り付いていられる場所でしか……。
ホームレスという稼業は、成り立たないってことなんですね」
み「左様じゃ」
客「それで、新潟には、ホームレスがいないと」
み「大阪から来た人も、この理屈に大いに納得して帰ったそうじゃ」
み「おそらく、大阪に帰ってから、100回くらい、このネタを披露したに違いない」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
さて、ここで一息つきましょう。
↑怪獣も一休み。思い切り等身大です。
実は今、『単独旅行記Ⅲ』の連載を書き終わったところなのです。
↑「み」
すなわち、↑の★までの文章は、『単独旅行記Ⅲ』の連載前に書いてあった部分。
でもって、『東北に行こう!』は、2016(平成28)年6月6日(月)の第1349回で中断し……。
6月8日(水)から、『単独旅行記Ⅲ』の連載が始まったわけです。
まさか、『単独旅行記Ⅲ』の連載が、ここまで長引くとは思ってませんでした。
連載がようやく終わったのは、2017年(平成29)年4月8日(土)。
実に、丸10ヶ月の長きにわたってしまいました。
理由は、わかってます。
写真を山ほど撮ってきたからです。
↑写真フォルダのごく一部です。
せっかく撮ったからには、やはり紹介したい。
ということで、ほとんど9割方の写真を題材にしたんじゃなかったかな。
撮った枚数は、430枚を超えてましたから……。
紹介した写真は、400枚近くはあったはず。
『単独旅行記Ⅰ』と『単独旅行記Ⅱ』のときは……。
初日に健診を受けてました。
これが上京の目的だったんです。
『Ⅰ』のときは、心臓ドッグ。
『Ⅱ』のときは、アミノインデックス検査。
で、健診を終えたら、その日はそのまま宿に入り……。
翌日、午前中に観光して、午後、新潟に帰ってました。
『Ⅰ』では、大宮の『鉄道博物館』。
↑「み」
『Ⅱ』では、両国の『江戸東京博物館』。
↑「み」
どちらも見応えがありましたが、行ったのは、そこ1カ所だけ。
しかるに!
『Ⅲ』は、当初の目的だった健診が無くなり……。
2日間、丸々観光というスケジュールにしてしまったんです。
『Ⅰ・Ⅱ』では、東京行きの目的はあくまで健診で……。
そのご褒美に、翌日観光を楽しむということだったんですがね。
ま、いいじゃないですか。
別に健康をないがしろにしているわけではありません。
実はですね。
職場で毎年受ける健康診断に、自腹でオプションが付けられるようになったんです。
腫瘍マーカーによる、がん検診です。
↑わたしが受けたのとは違うようですが、だいたいこんな感じ。
去年の健診で、2回目でした。
最初の年は、自覚症状の出ない膵臓がんと肝臓がんのオプションを付けました。
↑思ったより、上にありました。
昨年は、そのほかのがんもひっくるめて、フルバージョンにしました。
自腹での負担額は、12,000円弱になりました。
でも、健康診断と一緒に受けられて、便利です。
採られた血液で検査してもらえるので、健診時間も変わりありません。
小心者で心配性なので……。
↑80年代の漫画だそうです。『りぼん』連載。知りませんでした。
安心料としては、安いものだと思ってます。
で、健康面での心配は、少し無くなったわけです。
↑1割は起こっちまうじゃねーか。
それなら、せっかく東京に行くんなら……。
丸2日、遊んだ方が楽しいじゃーんとなったわけです。
てなわけで、『Ⅲ』では、初日に『江戸東京たてもの園』。
↑「み」
2日目は、『国立科学博物館』。
↑「み」
このセットは、わたしとしてもちょっと欲張りすぎだったと反省してます。
どちらも、見て回るのに、丸半日はかかるスケールでした。
しかも、写真撮り放題。
というわけで……。
すべてをご紹介するのに、10ヶ月かかってしまったと。
↑長すぎるつけま。用途不明。
今年(2017年)も、もちろん、東京に行くつもりでいます。
でも、また10ヶ月も連載してたら、『東北!』はどうなる?
なので、今年は、あまりボリュームの大きくならないところを見学しようかと思ってます。
その代わり、すこし遠くまで足を伸ばして、移動の課程も楽しみたいなと。
↑こんなに田舎までは行かないと思います。
まだ、計画は立ててません。
今年は、仕事の案配で、日程を組むのが難しそうなんです。
いついくかも、まだ決められないです。
ひょっとしたら、5月には行けず、6月に入ってしまうかも。
となると、当然、梅雨の季節になりますので……。
野外施設は避けた方が無難でしょう。
ま、もう少し悩みます。
楽しい悩みですね。
さて、本編に戻ります。
中断直前の場面は……。
新潟にホームレスがいないのはなぜかという考察を……。
大阪から出張してきた人に語ったというエピソードを、「み」さんが「客」さんに語るシーンでした(ややこしい!)。
大阪、ホームレス、と来れば……。
やはり、西成区の釜ヶ崎が連想されます。
↑『探検バクモン』で取りあげられました。左の茶髪の方が案内人。
ホームレスじゃなくて、簡易宿泊所(いわゆるドヤ)におられるんでしょうか?
それなら、ホームレス呼ばわりは大変失礼なわけですが……。
地方の人間が、そう連想してしまうのも事実です。
ちなみに、『釜ヶ崎』という地名は、現在存在しないそうです。
元々は、大阪府西成郡今宮村に存在した字(あざ)でしたが……。
1922(大正11)年、今宮村が、新町名に改編したことにより消滅したそうです。
でも、通称としての『釜ヶ崎』は、今も残ってます。
公的な呼び方は、『あいりん地区』になってますが。
『あいりん地区』は、JR新今宮駅南側、簡易宿泊所が集中する地区の愛称です。
ところが……。
この新今宮駅前において、2017年3月、驚くべきニュースが入ってきました。
星野リゾートが、新今宮駅前の4,200坪の市有地を、18億円で買収したのです。
もちろん入札でしたが、応札したのは星野リゾートだけだったそうです。
1坪あたり、43万円。
これは、大阪の一等地としては、破格の安さです。
すぐ近くの道頓堀と比べると、70分の1の値段だそうです。
18億は、市が設定した最低売却価格とほぼ同額。
こんな一等地が、なぜこんなに安く、しかも競争もなく落札できたのかと云えば……。
ひとえに、環境が悪すぎるということです。
この土地は、昔、工場地域だったそうです。
経緯はわかりませんが、大阪市の市有地となりました。
しかし、警察署の建て替えなどのとき、仮庁舎があったことはあるようですが……。
それ以外は使われることもなく、長く更地の状態だったそうです。
早い話、問題物件。
今回の売却を一番喜んだのは、橋本大阪市長だったとか。
↑売却が決まって万歳、という画像ではありません。
星野リゾートがホテルを建てると聞いて、一番驚いたのは……。
地元大阪の周辺住民だったようです。
「“リゾート”の対義語は、“新今宮”ではないのか」という声すらあがったとか。
星野リゾートの既存ホテルは、1泊7万円からという価格設定です。
↑『星のや 軽井沢』。川に沿うようにヴィラ風のゲストルームが並びます。
さすがに新今宮では、1泊2万円程度に抑えるそうですが。
20階建て、客室数は600だとか。
↑ホテルの完成イメージ。右側の道路の対岸が、釜ヶ崎です。
エントランスから安全地帯まで、シャトルバスでも運行しないとダメなんじゃないですか?
あと、釜ヶ崎ネイティブが、敷地内に入りこまないようにする対策が必要でしょう。
門を一カ所にして、衛兵でも立たせますか。
さて、それでは話を本編に戻します。
わたしも、リハビリのために、ちょっと遡って読んでみましたが……。
話があっちゃこっっちゃに飛んで、さっぱり筋道を掴めませんでした。
どうも『津軽海峡冬景色』の歌詞にいちゃもんをつけてたようです。
“こごえそうな鴎見つめ 泣いていました”という部分。
「カモメなんかダウンジャケットを着てるようなものだから凍えるわけがない」と、「み」さんが決めつけ……。
さらに、「羽根があるんだから、もし凍えそうなら、もっと南に行けばいい」と続けます。
で、渡り鳥みたいに一気に飛ぶ必要はない。
1日10キロ飛べば、3ヶ月で900キロも移動できる。
秋口から、海岸線を徐々に南下していって、真冬は九州あたりで過ごす。
春先は、桜前線を追いかけるように徐々に北上し、真夏は涼しいところで過ごす。
気楽な旅暮らしが出来るではないかと、持論(思いつき)を展開します。
↑かっぱえびせん、ゲット!
で、それに対して「客」さんが応えます。
しかし、この「客」さんって、いったい誰じゃ。
どっから一緒なんだ?
というわけで、かなり遡って読むはめになりました。
『野辺地』駅から大湊線に乗りこんだとき……。
↑懐かしい感じのホームです。
空のボックス席が無く、初老男性が1人座るボックスに相席させてもらったんでした。
本州最北端のディーゼル車に溶けこんだ風体からして、疑いもなくジモティと思っていたら……。
なんと、ベテランの“鉄”さんでした。
いかにも“鉄”として浮きあがるのを嫌い、カメラも持たず……。
列車と風景に溶けこむことを信条とする、「溶け鉄」さんでした。
↑紀行作家の宮脇俊三さん。ストーブ列車に溶けこんでます。
で、現在、列車が走ってるのは、『有畑』と『近川』の間。
『むつ市』に入ったあたりです。
それではようやく、『東北に行こう!』、再開です。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
客「近川駅ですね」
み「シンプルさ、ここに極まれりという駅だな。
最近、建て替えられたみたいだね。
トイレさえ無いっぽい」
客「待合室だけですな」
「存続させるという目的で完結してるね。
ま、致し方ないんだろうね。
さらば、近川駅」
↑反対方向(『野辺地』)に向かう画像かも知れません。
み「たぶんもう、ここに来ることは一生無いんだろうな」
客「まさに、旅の感慨は、そこに尽きます」
み「ちらちらと海が見えるね」
客「いい砂浜ですよ。
海水浴場になってます」
↑近川駅近くの『浜奥内海水浴場』。
客「山からの川が、何本も流れこんでますから」
客「さっきの、近川駅も、近川という川のほとりにあるからです。
この先の駅も、金谷沢、赤川と、川の名前が続きます」
み「あの海の向こうに見える、ずんぐりした山は?」
客「釜臥山(かまぶせやま)です」
み「おー、まさしくその名のとおりの山容だね。
けっこう高そうだけど」
客「879メートルです。
下北半島では最高峰ですよ。
頂上近くに展望台があります。
頂上には、航空自衛隊のレーダーも。
通称、ガメラレーダーと呼ばれてます」
み「なんじゃそれ?
まさか、ガメラを発見するためのレーダー?」
↑海洋堂のフィギュアを使用した画像。
客「ガメラの由来は、レーダーの覆いが、ガメラの甲羅に似てるからです」
↑動画でご覧ください。
み「何のレーダー?」
客「空自のレーダーです。
戦闘機はもちろん、弾道ミサイルも探知追尾できます。
実は、このレーダー……。
米軍最新鋭のステルス戦闘機『F22』をキャッチして、世界を震撼させました」
み「ほー。
そんなスゴいシステムがあるんだ」
客「大湊には海自の基地もあります。
津軽海峡の監視基地ですね」
み「あぁ。
津軽海峡は、公海だったね」
み「のどかな風景と思ってたら……。
このあたり、国防上の要衝だったわけだ」
客「そうです。
釜臥山の展望台に行ったときも、進入禁止の立て看板を見ました」
客「展望台からは、大湊や下北の市街地から陸奥湾まで一望できます」
み「しかし、さっきからずーっと道路が並行して走ってるよね」
客「国道279号です。
野辺地から、函館までの路線です」
み「てことは、海上国道区間があるわけだ」
客「よくご存じですな。
本州と北海道を結ぶ海上国道のうちの1路線です」
み「何路線あるの?」
客「3本です。
あとは、280号、338号です。
280号は、青森県外ヶ浜町の三厩港と北海道福島町の福島港間が海上区間です。
でも、青函トンネルが開通して以来、フェリー航路が運航されてないんです」
↑錆びた看板が残ってるのが、なんとも荒涼たる風情です。
み「それでは、国道の体をなさんではないか」
客「現在、フェリー会社を募集してるようです」
み「採算が合わないから、就航してないんでしょ」
客「そうでしょうな」
み「そんなら、運航再開は無理ではないか。
潔く、国道の看板を返上すべし」
↑大政奉還の場面とのこと(高知県香南市『龍馬歴史館』)。こんな、こじんまりしたところでやったわけ?
客「そんな殺生な。
国道になってるからこそ、国のお金で道路の維持管理が出来るんです。
県道や町道になったら、そんなお金、出なくなりますよ」
↑広島県の県道です。
み「それが、これからの日本の定めです。
2065年には、日本の人口は、今より30%も減るそうではないか」
↑こんな時代が来るなんて、高度成長期には想像もしなかったでしょうね。
客「8800万人になるらしいですな。
ま、わたしは生きてませんけど」
み「わたしは、生きてる可能性がある」
↑生きてたとしたら、おそらくこんな有様。
み「わたしの年金は、ちゃんと払われるんだろうな」
客「微妙ですね」
み「人ごとだと思って。
団塊の世代くらいが、一番幸せな一生なんじゃないかね。
55歳で定年退職して、年金もすぐもらえて」
客「すみません」
み「こうして、好きな旅行もできるわけだな。
わたしが働いて払ってる税金で」
↑働けど働けど……。
客「なんで、こんな話になるんですか」
み「あーたが不景気なことを言うからでしょ」
客「海上国道に話を戻します。
最後のひとつは、国道338号」
み「海上区間は?」
客「279号と一緒です。
青森県大間町から函館市ですね」
み「津軽海峡を渡るフェリーは、なくなったんでないの?
青函トンネルが出来て」
↑青函トンネルと云えば、この曲です!
客「確かに、青函連絡船は廃止されましたが……。
フェリー航路は残ってますよ。
津軽海峡フェリーが、1日2便就航してます。
所要時間、90分ですね」
↓『青森-函館』航路もあります。
み「そうなの?
青函トンネルが出来たんだから、フェリーなんていらないでしょ」
客「誤解されてるようですが……。
青函トンネルは、鉄道トンネルです。
道路は通ってません」
↑本州側の入口。
み「なぜじゃ!」
客「排気ガスとか、抜けないんじゃないですか?」
み「じゃ、青函連絡船はなんで廃止したの?」
客「青函連絡船は、鉄道連絡線です」
↑岸壁まで伸びる線路と船尾がくっつき、貨物列車がそのまま乗りこめました。干満の調整はどうやったんでしょう?
客「鉄道はトンネルが通ったので、鉄道連絡船が廃止されるのは理の当然でしょ」
み「で、国道をつなぐ海上連絡線は残ってると」
客「左様です」
み「納得できん」
客「してくださいよ。
ところで、お昼は食べられましたか?」
み「話題を変える気だな」
客「連絡船に執着してもしょうがないでしょう」
み「青森駅で、立ち食い蕎麦を食べた」
↑青森駅ホームの『八甲田』(現在は、ホームのお店は無くなってます)。
客「それはまた、粋なものを食べましたな」
み「であろう。
わたしの大好物、天玉そばじゃ」
↑『八甲田』のおしながき。
み「あーたは食べてないの?」
客「はい。
ちょっと乗り換えが慌ただしくて」
客「大湊に下りたら、美味しい海鮮をいただこうかと。
よろしければ、ご一緒にと思ったんですが」
み「やっぱり、海鮮攻撃だな」
↑こんなののどこがいいんですかね?
客「なんです、それ?」
み「わたしは、生魚が苦手なのじゃ」
客「え。
それは、もったいない」
み「生魚を食うヤツは、猫の血が混じってるに違いない」
↑欲張りすぎ。
客「そんなことをここらで言ったら、怒られますよ」
み「海鮮丼とか、やたらと高いのも気に食わん」
客「ウニがてんこ盛りなんだから、仕方ありません」
↑『築地・鮨國』3,200円。途中で吐くと思います。
み「なんであんなのを食うかね」
客「美味しいからです」
み「ヒトデの血が混じってるに違いない」
↑仮面ライダーに出てきたヒトデンジャー。造形、結構イケてますね。
み「天玉そばの方が、よっぽどいいです」
↑『新潟庵(新潟駅新幹線ホーム)』の天玉そば。いつか食べたい。ただし、ネギ抜きで。
客「青森まで来て、張り合いがありませんな」
み「名物に旨い物なし」
客「またそういうことを」
み「駅そばなら、どこも間違いありません」
↑『新潟庵(新潟駅在来線ホーム)』。ここで食べることを、今年のテーマのひとつにしたいと思います。
客「そりゃそうですが」
み「ところで、今、どのあたり」
客「『近川』を出てから、『金谷沢』『赤川』も過ぎました」
み「もう過ぎたの?」
客「時間的にちょっとおかしいですがね」
み「仕方あるまい。
おそらく、何も書くことがない駅だったんじゃろ」
客「それはそれで失礼ですよ」
み「すると次は……」
客「終点の『大湊』の一つ前、『下北』です」
み「なんと!
下りねばならぬ」
客「え?
『大湊』まで行かないんですか?」
み「『下北』からバスに乗る」
↑大間崎がゴールと云うことは、下北も通ったんですかね? さとう珠緒さん、この撮影時は40歳。若いですよね。
客「大湊線に乗ったのは、今日が初めてではない?」
み「初めてですが」
客「次に来る予定は?」
み「こんな地の果てに、何度も来るわけなかろ」
客「声が大きいです。
それじゃ、もう一生、大湊線に乗ることはないかも知れないでしょ」
み「まず、ないですな」
客「そんな。
それじゃ、『下北』から『大湊』を乗り残すことになりますよ」
み「あのな。
わたしは、JR全線踏破をしようってわけじゃないの。
あなた、やっぱり宮脇俊三の亡霊じゃないの?」
客「宮脇さんは、わたしの心の師です。
わたしは、大湊線は、今日で32度目ですが……。
一度も終点まで乗らなかったことはありません」
み「アホじゃ」
客「失敬な。
棺桶に入るとき、後悔しますよ」
↑秩父の『ジャランポン祭り』。
客「あー、あのとき、大湊まで行かなかったのが、今生の名残りだと」
み「棺桶に入るとき、意識があったら大変じゃ」
客「ものの例えです」
み「31回も乗ったんなら、1回くらい途中下車してもいいでしょ」
客「そうはいきませんよ。
これで、大鵬の優勝回数に並ぶんですから」
↑巨人・大鵬・卵焼き。このフレーズの創作者は、堺屋太一だそうです。
み「どういうつながりがあるんじゃ!」
客「こだわりと言っていただきたい」
み「大湊を下りたら、病院を訪ねなさい。
脳波が異常です」
客「残念ですが、ここでお別れですね。
しかし、お連れの方、よく寝てますね」
み「無防備なヤツ。
ティッシュを持ってないか?」
客「コヨリを作るんですか?」
み「なぜわかる?」
客「そのネタ、さっきやったばかりじゃないですか。
コヨリで、鼻の穴をくすぐるんでしょ」
客「あまりにも馬鹿馬鹿しくて、脳の皺に刻まれました」
み「下らんことばかり覚えてると、大事なことを忘れるぞ」
↑周りの人は大迷惑。
客「大事なことって何ですか?」
み「他人の大事なことが、わたしにわかるかい」
客「もういいです。
早く起こしてあげてください。
半分寝ぼけてると、タラップから転げ落ちたりしますよ」
み「先生、律子先生」
客「起きませんな」
み「先生、急患です!」
律「は、はい。
すぐ行きます」
↑急患対応。
客「跳ね起きましたな。
医者の鏡です」
律「じ、地震?
揺れてる」
み「騒がしいやつ。
下りるよ」