2017.2.5(日)
「あなたたち、何してるの。
早く帰りなさい」
女生徒からは、あからさまなブーイングが起こった。
しかし、中年の女教師はまったく意に介さなかった。
「山中くん、ちょっといいかな?
少し、聞いておきたいこともあるし」
わたしにとっては、渡りに船だった。
女教師は、わたしの首肯を確認すると、踵を返して歩き出した。
名残り惜しそうな女生徒たちの視線を背中に感じながら、わたしは女教師に従った。
連れて行かれたのは、校舎の外れの一角だった。
新校舎が建てられるとき、仮設の校舎として使われていた建物だ。
プレハブ造りの仮設校舎は、大半が撤去されたそうだが、この区画だけが残されていた。
北側の外れで、更地にしても使い道の無い場所なので、そのまま残されたと聞いたことがある。
もともとは、片面の廊下に面して、教室が2つほど並んでいたらしい。
今は、教室だった部屋が幾つかに分けられ、『生徒指導室』という名称で使われていた。
個別の進路相談や生活指導、あるいは父母との面談などに使われる部屋だった。
「入って」
女教師に促され、部屋を入った。
わたしは、ここには1度も足を踏み入れたことが無かった。
苛めを受けていたころ、もし教師に相談していたら、入ったのだろうが。
だが、前にも言ったとおり、この担任にそんなことを相談する気にはなれなかった。
この女教師のわたしに対する視線は、苛めをする女生徒と同じだったからだ。
わたしに続いて入った女教師が、ドアに吊るされたパネルを外した。
大きなパネルには、赤文字で『使用中』と書かれてあった。
女教師は、パネルを裏返し、ドアに付いた窓の上に吊るした。
仮設材のドアの窓は小さく、廊下からは『使用中』のパネルが窓の視界を封じているだろう。
生徒指導室には、小さな応接セットが置かれていた。
「そっち側、座って。
あ、そのあたり、バネがおかしくなってるから、こっちの端がいいわ。
ほんとに、こんなのくらい、新品を買えばいいのにね。
新校舎を建ててるとき、工事事務所で使われてたものなのよ」
早く帰りなさい」
女生徒からは、あからさまなブーイングが起こった。
しかし、中年の女教師はまったく意に介さなかった。
「山中くん、ちょっといいかな?
少し、聞いておきたいこともあるし」
わたしにとっては、渡りに船だった。
女教師は、わたしの首肯を確認すると、踵を返して歩き出した。
名残り惜しそうな女生徒たちの視線を背中に感じながら、わたしは女教師に従った。
連れて行かれたのは、校舎の外れの一角だった。
新校舎が建てられるとき、仮設の校舎として使われていた建物だ。
プレハブ造りの仮設校舎は、大半が撤去されたそうだが、この区画だけが残されていた。
北側の外れで、更地にしても使い道の無い場所なので、そのまま残されたと聞いたことがある。
もともとは、片面の廊下に面して、教室が2つほど並んでいたらしい。
今は、教室だった部屋が幾つかに分けられ、『生徒指導室』という名称で使われていた。
個別の進路相談や生活指導、あるいは父母との面談などに使われる部屋だった。
「入って」
女教師に促され、部屋を入った。
わたしは、ここには1度も足を踏み入れたことが無かった。
苛めを受けていたころ、もし教師に相談していたら、入ったのだろうが。
だが、前にも言ったとおり、この担任にそんなことを相談する気にはなれなかった。
この女教師のわたしに対する視線は、苛めをする女生徒と同じだったからだ。
わたしに続いて入った女教師が、ドアに吊るされたパネルを外した。
大きなパネルには、赤文字で『使用中』と書かれてあった。
女教師は、パネルを裏返し、ドアに付いた窓の上に吊るした。
仮設材のドアの窓は小さく、廊下からは『使用中』のパネルが窓の視界を封じているだろう。
生徒指導室には、小さな応接セットが置かれていた。
「そっち側、座って。
あ、そのあたり、バネがおかしくなってるから、こっちの端がいいわ。
ほんとに、こんなのくらい、新品を買えばいいのにね。
新校舎を建ててるとき、工事事務所で使われてたものなのよ」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2017/02/05 08:10
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本日、2月5日は……
『日本二十六聖人殉教の日』だそうです。
1597年のこの日(旧暦では、慶長元年12月19日)、豊臣秀吉により、長崎で26人のキリスト教徒が処刑されました。
外国人が6人、日本人が20人。
この26人は後に。カトリック教会によって聖人に列せられたため、“日本二十六聖人”と呼ばれます。
なお、遠藤周作の『沈黙』は、江戸時代初期が舞台です。
スコセッシの映画では、イッセー尾形の評価が高いようです。
自分より20歳年上の役を演じるのに、老けメイクは使わなかったとか。
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2. ♪早よ来いHQ- 2017/02/05 08:36
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↑♪あっこちゃん
じゃなくて、春(何を言っておる)
>校舎のはずれ
♪あっこちゃん来るかと校舎のはずれまで出てみたが……
まったく何の関係もない歌が脳裏に。
失礼しました。
>日本二十六聖人
反射的に『沈黙』が浮かんだんですが、違いますね。
映画は録画してあるんですが、まだ見てません。消去する前に見なければ(よくやるんですよ)。
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3. Mikiko- 2017/02/05 12:01
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あっこちゃんの歌
作曲は、小林亜星なんですね。
作詞はなんと、井上ひさしでした。
スコセッシの映画『沈黙‐サイレンス‐』は、劇場公開されたばかりです。
録画されたのは、篠田正浩監督『沈黙 SILENCE(1971年)』では?
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4. 雄弁は銀ハーレクイン- 2017/02/05 15:41
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沈黙
ああ、そうです、SILENCEの方でした。
主演;ディヴィド・ランプソン(知らぬ)
丹波哲郎、三田佳子、岩下志麻
狐狸庵先生、脚本にも噛んではります。
スコセッシ監督のも楽しみですね。
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5. Mikiko- 2017/02/05 18:22
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時間分
見るには、そうとうな覚悟が要ります。
海外の正直な書評には、「早く終わってほしいと思った」というのもありました。
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6. 明日はまたHQ- 2017/02/05 20:11
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↑明日の風が吹くのだ
『風と共に去りぬ』の主人公、スカーレット・オハラ。
劇中の最後の決め台詞です
覚悟って……
映画はたいがい2時間から2時間半くらいです。
2時間41分、何ほどのこともありません。まあ、中身が問題ですが。
『風と共に去りぬ』なんて3時間42分という大作ですが、全く飽きさせません。
『ラストエンペラー』は3時間39分。
『戦争と平和』3時間30分。
『大脱走』3時間10分。
いやぁ~映画って、ホントいいもんですね~(水野晴郎)
さいなら、さいなら、さいなら(淀川長治)
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7. Mikiko- 2017/02/06 07:25
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スカーレットが……
「吹くのだ」なんて言うんですか。
バカボンのパパですよ。
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8. 紅・小原ハーレクイン- 2017/02/06 08:25
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↑スカーレット・オハラの和訳?
「吹くのだ」
まあ、字幕ですから。
この直前には「タラへ帰ろう」と呟きます。
タラは鱈ではありません(米国人は鱈は食わん……かどうかは不明)。
実は私も、映画一気見はあまりしません、というかできません。そんなにヒマじゃないし、しんどいし……。
で、休み休みのとびとび見。何日かかかることもあります。
で、何本かを“同時進行”で見たりします。
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9. Mikiko- 2017/02/06 19:53
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この映画は……
確実に見たという記憶があります。
スカーレットが、小間使いにウェストを計らせたところ、48㎝で……。
「やだ、太っちゃった」という台詞があったのです。
大いにムカついたので、このシーンはよく覚えてます。
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10. クラークはーれくいん- 2017/02/06 22:51
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・ゲーブル、ヴィヴィアンの相手役です
48㎝
スカーレットを演じたヴィヴィアン・リー、当時の実際のウェストサイズだそうです。
胴体を円筒と考えると、この場合その直径は15.3㎝。
当時彼女は25歳くらい、人間とは思えません。
ヴィヴィアンは、この映画の演技でアカデミー主演女優賞を取りました。