2016.12.19(月)
どうやら、この部屋で写された写真らしい。
椅子に座る女性。
傍らに立つ男性。
その男性は、貸金業というイメージからは程遠い雰囲気の人だった。
十分、俳優としてやっていけそうなほどの美形だ。
薫の父親なんだから、当然だろうが。
女性は、さっき会った薫の母に違いないのだが……。
雰囲気が、まったく違った。
このころはまだ、尋常な精神が宿っていたようだ。
その女性は、赤ん坊を抱いている。
男性の前には、幼児が立っていた。
この幼児が姉で、女性に抱かれているのが薫だろう。
幼児は、水兵服のようなスタイルだった。
下はズボンだ。
父親がヨットを所有していたからだろうか。
姉の子供のころは、思いがけず活発な少女だったのかも知れない。
「昔話は、またおいおいにしてあげる。
そのうち、思い出すかも知れないしね」
姉はわたしからフォトフレームを取り上げると、元の位置に戻した。
「自分の部屋、わかる?」
わたしは首を振るしかなかった。
「けっこう重症ね。
家に帰っても、何も思い出さない?」
思い出すもなにも、初めて入った家なのだ。
困った顔をするほかなかった。
そんなわたしを見て、姉は、にっこりと笑った。
「嘘ついてるようには見えないわね。
もっとも、記憶がないふりをする理由もないし。
でも、ほんと楽しい。
これから、ひとつひとつ教えてあげるね」
姉は、わたしの顔を覗きこむと、コケティッシュに笑った。
「こっちよ。
2階」
姉が歩みだした先には、階段があった。
大理石の壁面に沿いながら上がっていく階段だ。
銀色の柵のような手すりが付いている。
まさか、純銀製ではあるまいが。
わたしを先導しながら、階段を上っていた姉が、急に振り向いた。
わたしは、ドギマギして目を伏せた。
ずっと、姉の尻を見ながら上っていたから。
小さな、締まった尻だった。
あの病室で、この尻に顔を埋めたのだ。
しかし、ストッキング越しだった。
生の尻が見たいと、心から思った。
やはり、心も男になりつつあるのだろう。
股間に違和感を感じた。
ペニスが形を変えながら膨れていくのが、はっきりとわかった。
椅子に座る女性。
傍らに立つ男性。
その男性は、貸金業というイメージからは程遠い雰囲気の人だった。
十分、俳優としてやっていけそうなほどの美形だ。
薫の父親なんだから、当然だろうが。
女性は、さっき会った薫の母に違いないのだが……。
雰囲気が、まったく違った。
このころはまだ、尋常な精神が宿っていたようだ。
その女性は、赤ん坊を抱いている。
男性の前には、幼児が立っていた。
この幼児が姉で、女性に抱かれているのが薫だろう。
幼児は、水兵服のようなスタイルだった。
下はズボンだ。
父親がヨットを所有していたからだろうか。
姉の子供のころは、思いがけず活発な少女だったのかも知れない。
「昔話は、またおいおいにしてあげる。
そのうち、思い出すかも知れないしね」
姉はわたしからフォトフレームを取り上げると、元の位置に戻した。
「自分の部屋、わかる?」
わたしは首を振るしかなかった。
「けっこう重症ね。
家に帰っても、何も思い出さない?」
思い出すもなにも、初めて入った家なのだ。
困った顔をするほかなかった。
そんなわたしを見て、姉は、にっこりと笑った。
「嘘ついてるようには見えないわね。
もっとも、記憶がないふりをする理由もないし。
でも、ほんと楽しい。
これから、ひとつひとつ教えてあげるね」
姉は、わたしの顔を覗きこむと、コケティッシュに笑った。
「こっちよ。
2階」
姉が歩みだした先には、階段があった。
大理石の壁面に沿いながら上がっていく階段だ。
銀色の柵のような手すりが付いている。
まさか、純銀製ではあるまいが。
わたしを先導しながら、階段を上っていた姉が、急に振り向いた。
わたしは、ドギマギして目を伏せた。
ずっと、姉の尻を見ながら上っていたから。
小さな、締まった尻だった。
あの病室で、この尻に顔を埋めたのだ。
しかし、ストッキング越しだった。
生の尻が見たいと、心から思った。
やはり、心も男になりつつあるのだろう。
股間に違和感を感じた。
ペニスが形を変えながら膨れていくのが、はっきりとわかった。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/12/19 07:55
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今朝のニュースで……
オランダの地盤沈下の様子が報じられてました。
文字どおり、地面が沈んでいるんです。
「世界は神が造った、しかし、オランダはオランダ人が造った」という言葉があるように……。
もともと、海を干拓して造られた国なので、地盤が軟弱なんだそうです。
日本みたいに山のある国は、山を崩して海を埋め立てればいいですが……。
オランダには、山がありません。
どうするかと云うと……。
少ない土を使い、堤防を作って、海を囲いこむんです。
で、中の海水を抜く。
これで、陸地を作ります。
新しい陸地は、当然、海面より低くなります。
雨水などは、強制的に排水しなければなりません。
オランダ名物と云えば風車ですが……。
あれはすべて、排水機なのです。
小学校の道徳だったかで習った逸話ですが……。
オランダの少年が、堤防から水が漏れてるのを見つけました。
破堤したら、街が海に飲みこまれていまいます。
人に知らせに行く時間が無いと判断した少年は、堤防の破れ目に腕を突っこみます。
冬でした。
翌朝、凍死した少年が発見されます。
腕は、堤防に突っこんだままでした。
少年は、命と引き換えに、街を守ったのです。
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2. 浅き夢みしHQ- 2016/12/19 08:40
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>これから、ひとつひとつ教えてあげる
何を教えてくれるというのでしょうか、姉さん。
まあ、あれしかないか。
オランダの干拓地
確か、『ポルダー』と云ったかな。
身を挺して堤防を守った少年の話はあまりに有名ですが、嘘っぱちや、という声もあるようです。が、まあ、自らが作った土地への、オランダ人の思いというのを、考えさせられる話ではあります。
白土三平『カムイ伝』に、この話のパクリエピソードがあります。
今朝のニュースと云いますか……
昨夜、FIFAクラブワールドカップ決勝戦、鹿島アントラーズvs.レアルマドリードの試合がありました。わたし、ずっと見てましたが、結果は鹿島2-4レアルで、鹿島は残念ながら準優勝でした。
惜しかったと言えば惜しかったんだけどね。前・後半終えて2-2の同点。延長後半にロナウドが立て続けに2ゴール。これまでは本気やなかったんかい、と言いたくなるような圧倒的な攻撃でした。
まだまだ世界は遠いか、と感じちゃうほどの実力の差、かもしれませんが、いやいや、強いのはロナウドだけやんけ、とも言えなくも……。
鹿島の2点はいずれも芝崎。これも見事でした。こぼれ球を押し込んだ、なんてものではなかったです。ただまあ、レアルDFのプレスもも一つでしたか。
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3. Mikiko- 2016/12/19 19:53
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ハンス少年の逸話
アメリカの小説の中のエピソードのようです。
しかし、その逸話が独り歩きします。
感激したアメリカ人がオランダに大挙して押し寄せ……。
ハンス少年が救った、ハーレム市の堤防を訪ね歩くこととなりました。
最初は根気強く応対してたハーレム市民も、やがて面倒くさくなり……。
テキトーな堤防の近くに、ハンス少年の銅像を建てたそうです。
サッカー。
善戦も惨敗も、負けは負けです。
善戦を讃えているうちは、進歩は無いと思います。
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4. 誰か讃えて;アホHQ- 2016/12/19 20:52
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ハンス
って云うんですか。
アメリカの小説って何なんだろうね。で、その小説の舞台がオランダはハーレム市の堤防、というわけ?
鹿島アントラーズ
マスコミは、善戦を讃えまくっているようです。
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5. Mikiko- 2016/12/20 07:24
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その帽子、ドイツんだ
メアリー・メイプス・ドッジの『銀のスケート - ハンス・ブリンカーの物語』という小説だそうです。
↓岩波少年文庫で出てますが……。
https://www.amazon.co.jp/%E9%8A%80%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%88%E2%80%95%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E5%B0%91%E5%B9%B4%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%97%E3%82%B9-%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%B8/dp/4001120054
残念ながら、絶版のようです。
堤防の話は、この小説の中のエピソードだとか。
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6. ネーデルラントHQ- 2016/12/20 12:55
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この帽子、オランダ
メアリー・メイプス・ドッジ『銀のスケート - ハンス・ブリンカーの物語』
うっとこの図書館にあるようです。
正月用に借りてみるかな。