2016.10.31(月)
でも……。
どうして?
わたしは、上半身を起した。
身体のどこにも痛みは感じない。
脚を動かしてみたが、麻痺などもまったく無い。
しかし……。
やっぱり、距離感がおかしい。
爪先までの距離が遠いのだ。
わたしは、脚元から布団を剥いだ。
青い縦縞のパジャマの脚。
わたしの脚は、こんなに長くはなかった。
脚を回し、床に下ろす。
スリッパを履く余裕も無かった。
テレビ台の手鏡に駆け寄る。
両手で持ちあげ、覗きこむ。
「うわっ」
鏡を取り落としそうになった。
わたしじゃない。
鏡に映ってるのは、わたしじゃなかった。
鏡を掴み直し、もう一度覗きこむ。
知ってる顔だ。
鏡の中には……。
もう一人の薫がいた。
わたしと同姓同名のクラスメイト、山中薫だった。
わたしがいじめられる原因となった男だ。
そう。
男なのだ。
女より綺麗だけど。
でも、どういうこと?
混乱した頭で、室内を見回す。
ベッドは、ひとつ。
どうやらここは、個室のようだ。
むろん、あの継母が、わたしを個室などに入れるわけがない。
とすればここは、山中薫の親が契約した部屋だろう。
どうなったんだろう?
もちろん、本物のわたし、“山中かをる”の身体は?
そのときだった。
扉がノックされたのだ。
わたしは慌てて布団に滑りこんだ。
逃げも隠れもする必要がないことは、布団に潜ってから気づいた。
看護師さんだろうか。
落ち着いて、事情を聞かなければ。
心を落ち着けようと、天井を見つめる。
なんだか怖くて、足音の方を向けなかった。
「あれ?
薫。
あなた、気がついたの?」
どうして?
わたしは、上半身を起した。
身体のどこにも痛みは感じない。
脚を動かしてみたが、麻痺などもまったく無い。
しかし……。
やっぱり、距離感がおかしい。
爪先までの距離が遠いのだ。
わたしは、脚元から布団を剥いだ。
青い縦縞のパジャマの脚。
わたしの脚は、こんなに長くはなかった。
脚を回し、床に下ろす。
スリッパを履く余裕も無かった。
テレビ台の手鏡に駆け寄る。
両手で持ちあげ、覗きこむ。
「うわっ」
鏡を取り落としそうになった。
わたしじゃない。
鏡に映ってるのは、わたしじゃなかった。
鏡を掴み直し、もう一度覗きこむ。
知ってる顔だ。
鏡の中には……。
もう一人の薫がいた。
わたしと同姓同名のクラスメイト、山中薫だった。
わたしがいじめられる原因となった男だ。
そう。
男なのだ。
女より綺麗だけど。
でも、どういうこと?
混乱した頭で、室内を見回す。
ベッドは、ひとつ。
どうやらここは、個室のようだ。
むろん、あの継母が、わたしを個室などに入れるわけがない。
とすればここは、山中薫の親が契約した部屋だろう。
どうなったんだろう?
もちろん、本物のわたし、“山中かをる”の身体は?
そのときだった。
扉がノックされたのだ。
わたしは慌てて布団に滑りこんだ。
逃げも隠れもする必要がないことは、布団に潜ってから気づいた。
看護師さんだろうか。
落ち着いて、事情を聞かなければ。
心を落ち着けようと、天井を見つめる。
なんだか怖くて、足音の方を向けなかった。
「あれ?
薫。
あなた、気がついたの?」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2016/10/31 07:39
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ここまで書けば……
みなさんにもおわかりでしょう。
章題の『あいつがわたし?』は、もちろん……。
山中亘(ひさし)の名作『おれがあいつであいつがおれで』のパクリです。
この作品は、大林宣彦で映画化もされてます(『転校生』)。
こちらの語り主の名前、「山中薫・かをる」は、パクリであることの宣言ですね。
でも、性転換フィクションは、これが嚆矢では無いようです。
サトウハチローの『あべこべ物語』(原題は『あべこべ玉』、TBSドラマ『へんしん!ポンポコ玉』原作)が元祖だとか。
最近では、『君の名は』も同様のシチュエーションのようです(見てませんが)。
これら、男女の身体が入れ替わるというのは、大変魅力的な設定です。
しかしわたしには、先人たちの作品に、大いなる不満がありました。
思春期の男女にとって、相対する性の体というのは……。
ひっじょーーーーーーに、興味がある事柄だと思います。
もし、性が入れ替わったら……。
まず我が身となった逆の性の体のことで、頭がいっぱいになるのではないでしょうか。
先人の作品には、これが書かれてない。
ま、児童文学やジュブナイルでは、仕方ありませんけどね。
ということで、わたしの『あいつがわたし?』からの章では……。
はからずも男性の体を手に入れてしまった女子高生の、『ヰタ・セクスアリス』を描きたいと思ってます。
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2. 変身願望ハーレクイン- 2016/10/31 10:23
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?入れ替わり
おっさんと若い女性が入れ替わる話を読んだことがあります。
浅田次郎『椿山課長の7日間』(ちょっとうろ覚え)
このおっさん。入れ替わった直後にやったことは、自らの(女性の)体を、心ゆくまでいじくりまわすことでした。
男というものはしょうのないものですが、気持ちはよくわかります。
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3. Mikiko- 2016/10/31 19:44
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そういう小説があったんですか
しかし、おっさんはいただけませんな。
読む気がしません。
男女入れ替わり。
平井和正に『ダブル・セックス(1969年)』、筒井広志(康隆に非ず・故人)に『オレの愛するアタシ(1982年)』という作品があるようです。
共に未読と思われます。
筒井広志の表題は、『おれがあいつであいつがおれで(1979年)』を意識したものでしょう。