Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
カテゴリ:八十八十郎劇場 > 元禄江戸異聞 根来
「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(三十四)


 丹後二の丸の一室。
 差し込む月明かりに浮かんだ屏風の陰に、何やら白いものが動いている。
 ひれ伏すように屏風からはみ出した白いものに、後ろからもうひとつの白いものが覆いかぶさっていく。
「あ……ああ……羅紗様……」
 屏風の陰で犬の様に初音と羅紗がつながっていた。
 前のめりで逃げる初音を抱き寄せて、羅紗はその背中に若い乳房を押し付ける。
「お許しを! ……ああまた!!」
 激しく羅紗の腰に突き動かされながら、堪らず初音の身体が腹這いに崩れ落ちる。
 年増の裸身にぶるぶると震えが走った。
「うぐう……!」
 さらに容赦なく濡れた物を抉られながら、初音は後ろに手を伸ばして羅紗の太ももを掴む。
 うつ伏せの初音に体を預けて、ようやく羅紗はその動きを止めた。
「はあ……はあ……、果てたのか……初音……?」
 赤く上気した顔で初音は小さく頷いた。
「はあ……は、恥ずかしゅうございます、羅紗様……はあ……はあ……」
「初音………」
 まだ熱くいきり立った物を根元まで埋め込んだまま、羅紗は己が乳房の膨らみを初音の背中から浮かせた。
「私ばかりが、はしたなく事切れて……」
 弾けんばかりに固いままのものを身の内に感じながら、初音は両手で乱れた黒髪を直した。

 江戸屋敷に奉公したての頃、初音はまだ幼い羅紗姫が用を足すお手伝いをしていた。
 いつもは大人しく下を向いている羅紗のものが何故か少し起き上がっている時、まだ年も十五、六の初音は不思議な気持ちで見たものだった。
 やがて姫が十歳も目前に迫った頃、それがはっきりと屹立する様を見て以来、もう二十代半ばになっていた初音は羅紗の下の世話を遠慮することにした。
 それが今では自分を快楽に果てさせ、なおも身の内深くで熱く脈打っているのである。
 “まさか、このようなことになろうとは……”
 初音は堪らなく恐れ多い気持ちと、反面、心の奥底で身が震えるような喜びを感じていた。
 あの愛らしかった姫を、膨らみ始めた蕾の様に可憐な姫を、そして輝く様に美しく花開いた羅紗を、自分は心より愛していた。
 それは従者として、母として、そして……今は煩悩に身を焼く女として……?
 初音は猛々しく息づいているものを優しく締め付けた。

「すまぬ初音、寂しかったか……?」
 耳元で羅紗の声が聞こえた。
「お前と一緒に果てようと思うたのじゃが……」
「羅紗様……」
 再び背中に羅紗の重みが戻るのを感じながら、初音はゆっくりと目を開けた。
 覗き込んでくる羅紗の視線を横顔に感じる。
「お前はまだ子供が宿るのか……?」
「え……?」
 初音はその声から逆に顔の向きを変えた。
「はい、おそらく……」
 二つの女体が隙間なく重なる。
「あの双子たちとの出来事があって、私はお前の極みに喜びを感じるようになった。しかしそれだけではお前が寂しいのであれば……」
 熱い屹立を子宮まで届くほどに埋め込まれたまま、初音は羅紗の言葉を黙って聞いていた。
「子を宿すことは考えねばならぬし、……それにまだ私はお前のその時が……」
 後ろを向いたまま初音の顔が微かにほころんだ。
 この様に閨を共にしながら、何故か初音の脳裏に羅紗との幼いころの思い出が蘇った。
 “もう終わりましたか? ああ、まだきれいにお拭きしませんと! お待ちなさい、姫様!”
 まだ十七、八歳の初音は、そう叫んで下半身裸で走り出す羅紗姫を追いかけたものである。
「羅紗様……、では一旦私から身をお引きくださいますか?」
 身の内に響く様な快感と共に、初音を押し広げていたものがぬるぬると抜け出ていく。
 初音はゆっくりと仰向けに姿勢を変え、羅紗に向かって両足を開いた。

「羅紗様。こちらへ……」
 両手を開いて迎える中に、羅紗は覆いかぶさっていく。
 羅紗は下から見上げる初音の顔を見た。
 優しい眼差しが燃える様に輝いて見つめ返してくる。
「あ……!」
 反りかえったものを手に包まれて、濡れそぼったものに導かれた。
「遠慮はいりませぬ。どうぞ最後まで深く」
「うう……!!」
 初音に熱く絡み付かれて、羅紗はその裸身に震えを走らせた。
 柔らかい初音の乳房を、上から羅紗の若い乳房が圧し潰す。
 初音は優しい笑みを浮かべたまま、左手で羅紗の顔をうなじの脇に収めた。
「奥まで収められましたら、そのまま動かずに……」
 そう囁くと、初音は右手を己が下に伸ばしていく。
 羅紗と繋がったあたりに右手を押し込むと、自分の敏感な突起に指を使い始めた。
「女の極みは私が教え致します……ふう……」
「初音……」
 微妙に震えを伝えて来る初音の身体を羅紗はしっかりと抱いた。
「私は羅紗様が気をお晴らしにならないままがお可哀そうと……。今度は追ってすぐにお世話致します……う……」
 羅紗の耳元にそう囁いて、初音はその右手を忙しなく自分に使い続けたのである。

「ああ……羅紗様……そろそろ……」
 そんな声を漏らすと、初音は奥まで埋め込まれた羅紗のものを揺るがすように腰を振り始めた。
 うなじの脇に顔を埋めたまま、羅紗はそんな初音をしっかりと抱きしめる。
 疼く様な快感を伝えて来る物が、じわじわと熱く濡れたものに締められる。
「はあはあ……羅紗様、お分かりですか……? 初音はもう……はあ……もう参ります……!」
 根元まで埋め込んだ肉棒が激しく揺さぶられ、断続的に締め付けられる。
「ああ、初音!」
「だめ、だめ!! ……じっとして!!」
 夢中で腰を振ろうとした羅紗であったが、初音の両足に尻を抱き込まれてその動きを封じられた。
 二人の下半身の間で初音の右手が激しく動いているのを感じる。
「あ! ……ぐ…………ああ……お願い我慢して!!」
 羅紗の腕の中で身を強張らせると、初音の身体に痙攣が走った。
 怒張を締め付けたまま、初音の中がぶるぶると震える。
「くう………!!!」
 初音から身をもって極みを教えられた羅紗は、図らずも双子に教えられた通りに尻の穴を締め、きつく唇を噛んで快感のほとばしりを耐え忍んだ。
「はあ、羅紗様」
 断末魔の熱気を吐き出すと、信じられぬことに初音は急いでその身を起こした。
 湯気が立つ様に露を滴らせた肉棒が初音から弾き出る。
「さあ、こちらへ」
 仰向けにした羅紗に身を添わせると、初音は上向きに弾む羅紗のものを右手で掴んだ。
「あああ、初音……!」
 もうこれ以上なく硬直したものを手でしごかれて、羅紗は切ない叫び声を上げる。
「よく我慢なさいました。ほらもう、ご遠慮なく」
 そんな言葉をかけながら、初音は左手で羅紗の身体を胸に抱きこんだ。
 忙しなく怒張をしごき上げられて、羅紗の霜降りの女体がくねり返る。
「ああ、初音……!」
「さあ、ご存分に!!」
 一層深く胸の内に抱き込むと、初音は羅紗に己が乳房を与える。
 羅紗がその乳首を吸い含んだ途端、
「ぐ!!!!」
 怒張を掴んだ右手を揺るがして、羅紗の腰が鋭く跳ねた。
 握りしめた赤黒いものの先から、堰を切った様に二人の胸元に白い飛沫が飛ぶ。
 二度三度と精を吹き出す怒張を優しく初音の指がしごき上げる。
 乳首を吸い含んだまま痙攣する羅紗を見つめながら、初音はしっかりとその顔を胸に抱いたのである。

 初音は膝を崩して茣蓙(ござ)に座り込んでいた。
 その胸に優しく羅紗を抱いたまま、何故かその顔に優しい笑みを浮かべている。
「はあ……ふう……」
 荒い息を吐いている羅紗の顔に視線を落とすと、初音は右手でふぐりを揉み上げ、怒張から残りの露を絞り出す。
「初音は羅紗様がこのように気をお晴らしになり嬉しゅうございます。せめて今宵は、このまま心安くお休みくださいますよう……」
 初音はゆっくりと羅紗を茣蓙に横たえ、枕もとの桶で白布をしぼった。
 若いころお世話した様に、羅紗の下を清め始めたのである。
 血筋を浮べていたものが徐々に白布になびき始めると、羅紗は初音の胸に顔を埋めて目を閉じた。
 “伊織様、桔梗様……。私も一命を賭して祈っております。どうか、どうか無事鶴千代様を羅紗様の元に……”
 外から差し込む青白い月の光を見つめながら、初音は心の中でそう呟いた。


 小浜の旅籠の一室。
「甲賀ですって!!」
 お蝶は目を見開いてそう口走った。
 血相を変えた横で、桔梗は驚きの表情を浮かべる。
「どうしたのだ、この者はこれまでも私を助けて……」
「大石様は何も知らないんですよ」
 俯いた蔓をお蝶は恨めし気に睨み付けた。
「こいつらは忌まわしい術を使う連中です。あたしの仲間も大勢こいつらの手にかかって、もがき苦しんだ挙句に死んでいったんだ」
 蔓は冷たい眼差しを上げる。
「死にざまはともかく、仲間を失ったのはお互い様じゃないのかい?」
「なんだって!」
 いよいよ気色ばったお蝶に慌てて桔梗は腰を浮かせた。
「いや、短い間ではあったが、私はこの蔓のことはよく分かっている。自分の役目は終えたというのに、私を助けようと……」
 根来との死闘はもちろん、河原で冷え切った身体を温め合った蔓は桔梗にとってもう仲間を越えた存在だった。
「ふん、どうやって取り入ったのか知りませんが、こんなやつらをまともに信じたらろくなことにゃなりませんよ」
 そんな思いをよそに、お蝶は腕を組んでそっぽを向く。
 黙って成り行きを見守っていた紫乃が口を開く。
「まだ未熟な私ではありますが、ここで忍び同士の因縁を持ち込むのはどうかと……」
 紫乃はゆっくりと立ち上がった。
「伊織様が不在の中、大事を前にこれでは……。私はしばらく表を歩いてきます」
 紫乃は戸襖を開けて外へ出ていく。
 日本海に面した宿の一室で、残された三人を重苦しい沈黙が包み込んだ。

「とにかく」
 三人の視線を感じながらお蝶は憤然と立ち上がった。
「とにかく、こいつと一緒に動くなんざ、あたしゃ金輪際ごめんですね!」
 しかし蔓を見おろしながらそう言い放った指先は、何故か襖の引手に掛からなかった。
 廊下に面した引き戸が音もなく開いていたのである。
「い、伊織様!」
 その声に桔梗と蔓も揃って顔を上げた。
 開いた襖の間で、妙齢の奥方姿が灯火に揺らめいていた。
「よ、よかった、御無事で……」
 夢中で肩先に縋り付くお蝶を伊織は片手で抱きとめる。
 大石桔梗は居住まいを正すと、やおらその両手を茣蓙についた。
「陣内伊織様、やっとお会いできました。幼き頃の面影、ようやく今ここに結ぶことが出来ました」
「あなたは……?」
 訝し気な表情で見おろす伊織に桔梗は口をひらく。
「江戸家老の一子、大石桔梗。羅紗様の命を受け、伊織様をお助けするため馳せ参じました」
 伊織は桔梗の顔をじっと見つめた。
 少年の様な凛々しい顔に、少しずつ幼い少女の面影が重なっていく。
「き、桔梗様!」
 伊織はその顔を輝かせた。
「ご立派になられて……」
 微かに潤んだ瞳が蝋燭の灯りに揺らめく。
「江戸のお庭で手を引いて歩いたお姿を思い出しました」
 見つめ合った二人の姿に、お蝶もつい口元をほころばせ、腕組みを解いた蔓も穏やかな眼差しを向けたのである。
元禄江戸異聞 根来(三十三)目次【マッチロック・ショー】フェアリーズ・パーティ(Ⅰ)
「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(三十三)


 屋敷の中に静寂が戻って、陣内伊織はそっと寝床から身を起こした。
 お竜をはじめ根来の一味は早朝から何処かへ出かけたようである。
 廊下に面した戸襖から顔を出すと、右手は明かりの灯った帳場に人の気配がする。
 大引け後に遊郭の世話から戻って来たのか、飯炊きの老婆に食い物を催促する若い衆の声が聞こえた。
 逆に左へ目を転じると、小さな池を巡って奥へと渡り廊下が続いている。
 寝床脇の手拭いを掴んで伊織はそっと廊下へ出た。
 まだ辺りは薄暗い中、手拭いを池の水で絞りすぐさま部屋へ取って返す。
 急いで伊織は襦袢を脱ぎ、自分の身体を丹念に拭き始めた。
 女同士の睦みごとで、身体中にお竜の匂いが染み付いているような気がしたからである。
 再び胸の内に言いようのない悲しみがこみ上げる。
 “ゆるして、お蝶さん……”
 気持だけは負けないつもりだった。
 だが無念にも体がお竜に屈した時、何もかもが白い霧に覆われた様に我を忘れたのも確かであった。
 伊織は固く両目を閉じてその身体を清め続けた。

 いつの間にか外の光に障子紙が白く映えて、その中に格子桟が黒い線を描いている。
 身繕いを終えた伊織は、再び心の中に強い心が戻るのを感じた。
 “それもこれも、無事若様をお救いするため……”
 両膝の上で固くこぶしを握り締めて、伊織はその切れ長の目を開く。
 お竜たちが出かけている間は、若の居場所を探る絶好の機会に違いなかった。
 先ほど池に手拭いを浸した時、まだ薄暗くてよく分からなかったが、渡り廊下は椿の中木を合図に小さな離れと蔵に向けて分かれている様に見えた。
 離れは床下まで池が入り込んでおり、格好はいいがいかにも無防備な建物である。
 やはりもう一方の蔵のような建物は調べておかねばならないと感じた。
 そう心に決めて立ち上がろうとした時、外の廊下のきしむ音に伊織はその動きを止めた。

 静々とした足音が表から近づいてくる。
 やがて建具が戸襖から障子に変わったところで、身体の前に膳を抱えた女性の影が障子紙に映り込んだ。
 その上品な影はゆっくりと奥へ動いていき、やがて池に向かって消えた。
 急いで伊織は立ち上がって障子を細く開ける。
 自分と同じ年頃だろうか、上品に髪を結いあげた女性の姿が蔵の前に見えた。
 その女性は袖から出した鍵で扉を開けて中に姿を消した。
 “よし、一か八か……”
 伊織は障子を開けて廊下へ出ると、足音を忍ばせて蔵へと向かった。
 根来のいない屋敷に残ったのは限られた人数である。
 若を見つければ、もう相手を切り破ってでもここから助け出す覚悟だった。
 蔵の前に立つと、伊織は大きく息を吐いて扉の取っ手を掴んだ。
 意を決して扉を引き開け中に身を躍らせると、薄暗がりに忙しない視線を巡らせる。
 “なに……?”
 伊織は呆然と立ち尽くした。
 中には若の姿どころか、先ほど入ったはずの女の姿さえ見えなかったのである。
 “こ、こんなばかな……”
 蔵の中央に進んだ伊織は周囲に隈なく目を配る。
 しかし貸し賃のかたであろうか、中には家財道具や骨董が所狭しと並べられているばかりであった。
「奥さん、奥さん!」
 その時、帳場の方から自分を呼ぶ代貸しの声が聞こえた。
 素早く蔵を出ると、伊織は離れの裏手へと回り込む。

「申し訳ありません。あまりお庭がきれいだったもので、つい拝見しておりました」
 頭を下げる伊織の顔を、廊下の上から代貸が睨み付けた。
「勝手に中をうろうろしてもらっちゃ困るんだ。さあまかないの手伝いをして、その後あんたも飯にしな」
「は、はい。ではすぐに……」
 急いで勝手場に向かう伊織の背中に再び代貸の声がかかる。
「明日には潮影の仲間も帰ってくる。あんたの寝る場所も無くなるから、通いで手伝いしな。親分からおあしは半分預かってるから夕方渡すが、残りは奉公次第だな」
 伊織は足を止め代貸を振り返った。
「はい、有難うございます」
 頷いた代貸の顔が醜くほころんだ。
 “根来の一味も帰ってくる。もう早めに勝負をかけなければ……”
 もう伊織はあの蔵の中に若がいることを確信していた。
 どんなカラクリかは分からないが、女が中で姿を消したのがその何よりの証拠だったのである。


 物陰から竜神一家の入り口を窺いながら、お蝶は小さなため息をついた。
 早朝から物々しくお竜たちが出かけた後は、拍子抜けするほど何事もなく時が過ぎた。
 しかし静かな時が流れるほど、胸を締め付けるように不安は大きくなっていく。
 “伊織様はどうしたのかしら……?”
 それとなく店の中を窺っても、伊織の姿を見つけることは出来なかった。
 “こうなったら紫乃様に応援を頼んで、あたしは客を装って中に入ってみるか……”
 お蝶は物陰から姿を現わすと、竜神一家に背を向けて歩き始めた。

 しかし宿へと急ぐはずのお蝶の足取りは、何故か途中で検討外れに向きを変えた。
 たびたび道端の店先を覗き込みながら、まるで暇つぶしに散歩しているようにさえ見える。
 やがて一軒の露店に立ち止まると、お蝶は並べられた小さな手鏡のひとつを手に取った。
 色っぽい年増のお出ましに、慌てて腰を上げた店の親父が満面の笑みを浮かべる。
「この鏡も姐さんみたいな別嬪に使ってもらえりゃ本望でさあ。出来たらあたしが鏡になってお役に立ちたいくらいで、えっへへへ……」
「まあ、そんなお上手言って。うふふ、じゃあ褒められついでに、ちょっと化粧でも直そうかしら……」
 ぱっちりした二重瞼を瞬かせてお蝶は手鏡を覗き込む。
 手鏡の中に五六間後ろからそれとなく様子を窺う行商女の姿が映った。
「ごめんね、おじさん。あいにく今は持ち合わせがないの。今度通った時には必ずもらうからね」
「姐さん、この鏡なら差し上げたいとこだけど、もう一度お顔拝見したいんで今日んところは我慢しまさあ。えっへへへ……」
 好色そうな主人に片目をつぶると、お蝶は鏡を置いてそのまま町外れへと歩き去っていく。

 やがて人影の無い杉林に足を踏み入れたお蝶は、ひとつの切り株に腰を降ろして白い首筋に手拭いを使った。
 懐に手を入れて手拭いをしまい込むとふらりと立ち上がる。
 そのまま数歩進んだ時、突然振り返ったお蝶が右手の鉄つぶてを投げた。
 木の幹から身を乗り出していた行商の女は、慌ててつぶてを避けて地面に転がった。
 さらに裾を乱して突き進みながら、お蝶は再びつぶてを投げつける。
 女が袖を振って包むようにつぶてを避けた時、飛びかかったお蝶の右手にはもう逆手に握られた短刀が輝いていた。
 仰向けのまま女の左手がお蝶の右手首を掴む。
「ま、待て!」
「お前、根来の仲間か!」
「違う! 根来じゃない!」
「でもお前、忍びじゃないか!!」
 互いの手を掴んだまま、二人の女の身体が杉の落ち葉の上を転がる。
「まて! まて!!」
 その時、近くから走り寄った若侍の声が杉林に響いた。
「我々は根来ではない! 竜神一家を見張るあなたを見つけて、余人を交えず話す機会を待っていたのだ」
「な、なんですって……?」
 組み合ったままお竜の動きが止まった。
「あなたは、あなたはお蝶さんではないか?」
「……ど、どうしてあたしの名前を……?」
 お蝶の返事を聞いた途端、大石桔梗の顔が輝いた。
 あらためて組み合った女の顔を見ると、お蝶はゆっくりと右手の小刀から力を抜いた。


「よかった。やっと見つけることが出来た」
 立ち上がったお蝶に、大石桔梗はその顔を輝かせた。
「あなたはいったい……?」
「私の名は大石桔梗と申す。羅紗様の命を受け、伊織様を助けて若をお救いするため丹波より参った」
 桔梗はその少年の様な瞳でお蝶を見つめた。
「そうですか、羅紗姫様のご命令で……」
 やっと蔓も身を起こすと、三人はほどよく並んだ切り株に腰を降ろした。
 その表情を険しくして、桔梗はお蝶に問いかける。
「ときに今、伊織様は何処に……?」
 お蝶も鋭い眼差しで桔梗を見返す。
「お武家の奥方に身を変えて竜神一家に入り込んでおられます。でも、それから様子が分からなくて……」
「やはりそうか……」
 表情を曇らせたお蝶を見ながら、桔梗も腕を組んで凛々しい眉を吊り上げた。
 その横顔を窺いながら蔓が静かに口を開く。
「桔梗様、こちらも忍びが二人になりました。根来たちが顔を揃えぬうちに手を打てるかもしれません」
 桔梗は蔓にうなずいた。
 二人のやり取りにお蝶も上体を乗り出す。
「実はあたしの方にも一人助っ人がいるんです。時が惜しゅうございます。早速宿で手筈を決めましょう」
「うむ」
 深くうなずいてお蝶を見つめた後、何故か桔梗はその口元を緩めた。
「やはりお蝶さんであったか、まったく羅紗様よりお聞きした通りの方であった」
 襟元に手を当てたお蝶は、切り株の上で居住まいを正した。
「まあ、どんな風にお聞きになったんですか?」
 一瞬記憶をたどって目をさ迷わせた桔梗だったが、やがてお蝶にまっすぐ向き直った。
「とてもきれいな、というか色気のある方と聞いたと思う……。いやしかし、現にその通りであった」
「まあ! お若いのにお上手ねえ……。お世辞でも、いい男に褒められるとやっぱり嬉しゅうござんすよ……」
 傍らで蔓が珍しくその相好を崩す。
「ふ、いい男ねえ……」
「え、えへん、では早速……。お蝶さんは宿に向かってくれ。我らは各々離れてその後を追う」
「わかりました」
 再び顔を引き締めて立ち上がった三人は、各々周囲をうかがいながら歩き始めたのである。


 もう城の外を夕暮れが赤く包んでいる。
 夕餉の膳に箸を置いた羅紗は小さなため息をついた。
 階段のきしむ音に顔を上げると、長いまつげを二三度瞬かせた。
「羅紗様……」
 廊下から姿を現わした初音は、お膳の上に置かれたままの箸を見てそうつぶやいた。
「初音か……」
「そのように召し上がらねば、お体に障ります」
 襖を締めて初音は羅紗の前に身を寄せた。
 心配そうにのぞき込む初音から、羅紗はじっと顔を伏せたままである。
「十年前江戸に向かう道中で、人は生きていくうちに呪われるのだと教えてくださった方がおった。初音……、私は、私はもう、呪われてしもうた……」
 羅紗は茣蓙に片手をつくと、耐え切れぬように固くその目を閉じた。
「呪われたなど、羅紗様、なぜそのような……?」
 じっと目を閉じたまま、羅紗はその重い口を開く。
「鶴千代のことを思うと、心配で心が張り裂けそうに痛む。じゃ、じゃがあの双子たちとの忌まわしいひと時を思い出すと、何故苦しみを忘れるような気がするのじゃ……。そ、そしてそんな時、私の身体も……うううう………」
 とうとう羅紗の目から茣蓙の上に透明なしずくが落ちた。

「羅紗様……!」
 膝を擦って近づくと、初音は羅紗の肩をしっかりと抱いた。
「お労しい羅紗様……」
 泣きぬれた頬に初音は自分の頬を重ねる。
「羅紗様に降りかかる呪いはこの初音も一緒に被ります……。そして、そして、私があの世に持ち去りまする……」
「初音!」
 羅紗は初音の顔を見つめた。
 やつれた表情を初音もじっと見返す。
「その時一刻でも苦しみが薄らぎますか? お身体が、その……元気におなりですか?」
「そ、それは……」
 口ごもった羅紗に、初音はその表情を和らげて口を開く。。
「鶴千代様のことは伊織様や桔梗様に任せて、今私たちに出来ることは無事を祈ることだけです。でも、このようにご心痛のままでは羅紗様はお身体を壊してしまいます」
 初音は羅紗を抱きよせて、その顔を胸に抱えた。
「子供の頃の様に私にお甘えください」
 そう呟きながら、初音の手が羅紗の下半身へと伸びていく。
「あ……、初音……」
 着物の裾を初音の手がかき分けた時、羅紗は一瞬身を抗わせた。
「羅紗様、何もかも忘れて私に甘えて……」
 初音の手が優しく太ももの肌に触れた時、羅紗はその瞳をゆっくりと閉じたのである。
元禄江戸異聞 根来(三十二)目次元禄江戸異聞 根来(三十四)
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