Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
カテゴリ: 八十八十郎劇場
「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(二十九)


 お竜一家代貸は帳場の上でその因業な顔をさらに歪めた。
「何も無しで助けてくださいとおっしゃっても、うちじゃどうすることも出来ませんねえ」
「お願いします。こちらのお手伝いでも何でもやりますから、どうか建替をお願いしたいのです」
 あまり見栄えのしない装いではあったが、三十路に差し掛かった品の良い女が頭を下げている。
 物はいいが年月を経た古着を着て、後ろで束ねていた浪人の髪をやっと髷に結った陣内伊織は、単身若の居所を探りに一家に乗り込んでいたのである。
「そう言われても、あっしらも商いで飯を食ってますんでねえ……。なにか用立てに役立つものがないと……」
「ですから、こちらのお手伝いを何なりとと申し上げているのですが……」
「ここの手伝いなんざ裏の婆さんで事足りるんでさあ……。もっとも奥さまみたいにおきれいな方なら、お気持ち次第でもっと稼げる仕事をご紹介出来るんですがね」
 代貸しは強面に意味深な笑みを浮かべた。
「と申しますと……?」
「なあに、きれいな着物を着て、ちょっと野郎に笑っていただければいいんでさあ」
 伊織はその顔を険しくした。
「無礼な。そのようなことを」
「じゃあ仕方がねえ、帰っていただきましょう。何でもするって言うから教えてやったのに、うちじゃあ面倒みきれませんね」
 代貸しは唇を曲げて伊織の顔を睨んだ。
「お願いです。ほ、他に何か、掃除でも飯炊きでも……」
「しつこいねえ、駄目だったら駄目なんだよ! おい、お客様のお帰りだ、表へご案内しな」
 若い者が二三人伊織に駆け寄ると、両側からその手を掴む。

 その時、廊下の奥から女の声がかかった。
「もう、うるさいねえ。何を騒いでんだい!」
 帳場の大きな声を聞いて、奥から一家を束ねるお竜が姿を現した。
 途端に腰を低くした代貸がお竜に答える。
「い、いえ、このお方が建替をお望みなんですがね。何も担保がない上に、掃除飯炊きだけじゃあ話にもならないんで帰ってもらおうと……」
「ふうん……」
 そう返事をして、お竜の気だるそうな眼差しが伊織に向けられる。
 すると何故か伊織の方に向き直ったお竜の瞳が輝いた。
「おい何してんだ。早く連れて行け」
 改めて代貸が若い衆を急かせた時……。
「まちな!」
 鋭い一喝に若い者の動きが止まる。
「お前たち、よくお話も聞かないうちに失礼なことをするんじゃないよ」
「親分、話しならもうあっしが聞いたんですけどねえ……」
 情けない顔に変わった代貸は親分にそう告げた。
「お前は黙ってな! お前じゃこの奥様の都合が分かるもんかい」
 目をつぶって首をすくめた代貸しから、お竜は伊織に顔を向ける。
「あなたのような奥さまがうちなんかにおいでになるには、きっと余程の訳がおありなんでしょう」
 優しいまなざしを向けられた伊織は、じっとお竜の顔を見つめた。
「うちの者が失礼を致しました。あたしが改めて奥でお話をうかがいましょう。さあこちらへどうぞ」
「そ、それはありがとうございます」
 伊織の顔が輝いた。
 代貸しはお竜の耳元に顔を近づける。
「親分、こないだも一人雇ったじゃないですか。そう続けちゃあ……」
「汚い顔を近づけるんじゃないよ。さあ奥さま、どうぞこちらへ……」
 再び代貸しを睨みつけた後、えびす顔のお竜は伊織を連れて奥へと姿を消した。

「そうですか旦那様がそんなことに……」
 お竜はうなだれた様子の伊織を見つめながら呟いた。
「お名前はなんとおっしゃるんで?」
「名前は……どうか私の名だけで許してください。私の名は、菊といいます」
「菊様……。う~ん、まあ、いいでしょう」
 伊織はお竜に考える暇を与えず口を開いた。
「御台所調達の金子を盗まれたとあっては、これはもう調達役の落ち度。保管場所は役目内のものにしか知らされていないゆえ、身内の不祥事かともおっしゃっておられましたが、事ここに至っては世話役の旦那様の不手際に……。おそらく三日内ほどで都合出来なければこの一件は明るみに出てしまうかと……」
 口上を済ませると、伊織は俯いたまま口を閉じた。
「ふうん……、あたしらにゃよく分かりませんが、悪くすれば旦那様は切腹……?」
 伊織はすすり泣きの声を漏らす。
「うう……もしそのような事になれば、私はともかく残された子が不憫で……」
 その様子をじっと見つめていたお竜は、やがて背筋を伸ばして膝を叩いた。
「分かりました。なんとかお役にたちましょう」
「え! ほ、本当ですか!!」
 伊織はその細面を輝かせた。
「でもね菊様、代貸も申しました通り旦那様の名前もお聞かせ願えなければ、何か建替の代わりの物がないとねえ……」
「そ、それが……うちにはそんな大金に代わるものなど………」
 眉を寄せた伊織を見つめるお竜の瞳が輝きを増す。
「菊様……、あたしゃ普段こんな仏心は起こさないんだけど、なんだったら菊様が代わりでもいいんですよ……」
「え……?」
 怪訝な表情を浮かべながら、案の定食い付いた相手の顔を伊織はじっと見た。
 だが一家に入り込む手立てにはなっても、やはりお竜に身を任せてしまうのには抵抗があるのも確かなのである。
 “ね、伊織様。若様を助けたいお気持ちはあたしだってよく分かります。でもそんな悪党に伊織様が汚されることにでもなったら、あたしは身が切られるよう……。お願いだから、くれぐれも無理はしないでおくんなさいね……”
 すがるような眼差しで送り出したお蝶の顔が、伊織の脳裏によみがえった。
「先ほどそれはお断りしたはず……。身を売るなど旦那様に申し訳が立ちません」
「代貸が言うように、誰にでもと申し上げちゃいませんよ」
 お竜の顔に淫靡な微笑みが浮かぶ。
「菊様のようなおきれいな奥方と仲良くするのは初めて。どうです? ……あたしだけに、その肌を許しちゃくれませんか……?」
 やはりと胸の内で溜息をつきながら、伊織は仕方なく驚いた顔をお竜に向けた。

「そのようなことはとても……。書ものや家事なら何でも言う通りに……、でもどうかそれだけは……」
「へえ~?」
 お竜は不機嫌そうに顔を歪めて、俯いた伊織の顔をのぞき込んだ。
「そんな事をおっしゃって。奥さまは本当にお家や旦那様の事を案じてらっしゃるんですかねえ……」
「え……? ど、どういうことです、それは……」
 伏し目がちに口を開いた伊織にお竜はしたり顔で答える。
「まだ十五六の田舎娘だって、家のためには健気に身体を張るんですよう。失礼ですがお楽しみの後にお子まで授かった奥さまが、そんな覚悟もお出来にならないようでは少々考えが甘もうはござんせんか?」
「そ、そんな! 楽しみだなどと……」
「まあ、奥さまの様な上品な奥方様は神妙に、そう、かしこまっておみ足をお開きになったのかもしれませんがね。う、うっふふふ……」
 つい含み笑いを漏らしたお竜は、鼻先をその細い指で隠した。
「く……人の弱みにつけ込んで、あ、あまりに無礼な……」
 伊織は悪党の言いように内心嫌悪を覚えながら、悲しみに身を震わせる奥方を演じた。
「ま、まあお気を悪くされたでしょうが、下世話なあたしらの冗談ですよう」
 少々取り繕うような笑みを浮かべたお竜であったが、すぐさま真顔に戻って続ける。
「でもね菊さま、あなたの命綱はあたしが持ってる。そしてこの命綱は、必ず旦那様やお家を助けることが出来るんですよ」
 伊織は顔を上げてお竜の顔を見た。
「あとはね、奥さまがこの命綱を握るだけなんだ。そう……、あとはそのお気持ちひとつなんですよ」
「わ、私の気持ち……」
「そうですとも」
 畳を擦って膝がにじり寄ると、お竜の両手が伊織の左手を取った。
「なあに旦那様には黙ってりゃ何も知れやしませんよ。書物や裁縫で家計を支える良妻でさあ……。い、いえ、書物でなくとも本当に健気な奥さまに変わりはありませんがね」
 伊織の左手がひんやりと湿ったお竜の手に包まれる。
「ねえ奥さま。なにも好いた惚れたの付き合いとは申しておりません。先々のめどがおつきになるまでお手伝いして、その代わり奥さまはあたしの……ね……?」
 硬くした左手の指をお竜の指に優しくほぐされる。
 そのまま指が絡みつくと、お竜の左手が伊織の肩を抱き寄せた。
「あ……」
 か弱い声を上げてみせながら、おぞましさに身の毛がよだつのを伊織は感じた。
「や、やめてください……」
「いいから全部あたしに任せて。女同士は初めてでしょう?」
「いや、こんなこと……。女同士でこんなことは間違っています!」
 さすがに頭の中で言葉が空回りするのを覚えながら、伊織はお竜の身体を押し返そうとする。
「ふうう、女の体は女の方が……。奥さま、極楽を見せてあげますよ……」
「や、やめて!」
 女の悲鳴を上げたものの、伊織の脳裏にお蝶の顔が浮かんだ。
 柔らかい身体が融け合って目くるめく快楽に堕ちてゆく様は、悔しいがお竜の言葉に頷かざるを得なかったのである。
「うん? 嫌ですか? ね、少し我慢して……ね、悪くはしないから……ね?」
 この上もなく好みの女に挑んで、興奮したお竜もその言葉尻を微かに震わせた。
「ひ……、少し考えねば……。……ああ! お願いですから、またこの次の時に……」
 そんな伊織の哀願にもかかわらず、乱れた胸元からお竜の片手が覗きこんで、首筋を熱い吐息が撫でる。
「い、いや………やめ……あ!」
 首をすくめてお竜の息を避けようとした途端、姿勢を崩した二人の身体が畳の上に倒れこんだ。
「いやあ……」
 力ずくでお竜の身体を跳ね除ける訳にもいかず、首筋にねっとりと唇を受けながら伊織は悲痛な声を上げた。
 そしてまた悲しいことに、お竜の唇が這いまわる辺りから全身に鳥肌が立つような刺激を受けたことも確かだったのである。
元禄江戸異聞 根来(二十八)目次【マッチロック・ショー】フェアリーズ・パーティ(Ⅰ)
「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(二十八)


 朝凪の海辺に立ち並んだ竿の間に捌かれたタコや魚が気だるそうにぶら下がっている。
 もう朝の仕事を終えたのか、かごを抱えた漁師のかみさん連中が何やら声高に笑いながら遠ざかっていった。
 しかし誰もいなくなった海辺に何処からか場所に似合わぬ若い女が姿を現した。
 少々派手な着物を緩く纏った案配は、どうやらそこいらの町屋に奉公している女の様子ではない。
 くるりと見回した先に何かを見つけて、突然その女は小走りになった。
 目立たぬように小さく竿に結ばれた白手拭いを掴み取ると、再び急ぎ足で町の方へ引き返していく。
 やがて砂地から土へと地べたが変わる辺りで、女の姿は一軒の小さな漁具小屋の中へと消えた。

「おかえり……どこ? ……あ、あんた? ………あんた! どうしたのその目は!!」
 女は薄暗い中に眼帯を付けた飛燕を見つけて叫んだ。
「元気そうだね……」
 壁を背にして座ったまま飛燕はつぶやいた。
 女は裾を乱してそばに走り寄る。
「ね、どうしたのこの目は! やられたのかい!? もう見えないの? ねえったらもう!!」
「そんなに近づけば、どのみち見えやしないよ」
 肩先に取りすがった女を、飛燕は肩を揺すって振り払う。
 呆然と見つめる女に、飛燕は無造作にアゴをしゃくった。
「そっちに、そっちに離れて立て」
 覚束ない足取りで立ち上がった女を、飛燕は首をかしげる様にして片目で見つめる。
「脱げ……」
「え……?」
「脱いであたしに見せておくれ。殺し合いの合間も、あたしはお前の身体を時々思い出すんだ」
 その言葉を聞いた途端、柄にもなく女の顔に羞恥の色が浮かんだ。
 崩れ気味の丸髷を両手で整えると、緩めの帯を解いて派手な着物を脱ぎ捨てる。
 腰紐を解きながら何故か女は飛燕に背を向けた。
 なで肩がゆっくりと赤い襦袢から脱ぎ出ていく。
「いつも客にそうしてるのかい……椿?」
「なんだって!」
 突然振り向いた女は、鬼気迫る形相で飛燕を睨みつけた。
「そんな名前を呼ばないで!」
 その顔をじっと見つめ返しながら、静かに飛燕は口を開く。
「あたしの目は半分になったけど、お前は変わらない……。咲、きれいだよ……」
 目を怒らせた女の顔がみるみる泣き顔に変わる。
「もう、あんた! ……会いたかった」
 夢中で抱きついてくる咲を抱きとめると、飛燕は脱げかかった襦袢を乱暴にその身体から引き剥がす。
 三十路前の匂い立つような女の裸体が藁床の上に転がった。
 弾む乳房に獣のようにかぶりつきながら、飛燕は片手で自分の黒装束の紐を解き始めた。

 十年ほど前、咲は飛燕が役目先で手篭めにした女だった。
 当時まだ何も知らない田舎娘だった咲は、そこいらでは見たことのない無頼な女に興味を持った。
 頼りがいのある姉のように慕った飛燕に突然犯された時、咲は声も出ないほどの恐怖と喪失感を覚えた。
 しかしずるずると身体を許すうちに、次第にその冷たさの陰に隠れた女の優しさに溺れていった。
 やがては操を奪ったその女と睦み合う時、目くるめく肉の喜びさえ覚えるようになっていったのである。
 一方人情を捨て去ったはずの飛燕にしても、ただの田舎娘と思った咲と逢瀬を重ねていくうちに、その猛々しい情念に次第に惹かれていったことも確かであった。
 二十歳を前にして不幸にも身売り奉公に出た咲は、時折訪れる飛燕を心待ちにする暮らしを続けていた。
 今回の大仕事で長く会えなかった飛燕を前にして、椿という源氏名を捨て、愛する女との再会に胸を躍らせる咲だったのである。

「はあはあ……ああ……んぐうう……ああああ……」
 薄暗い漁具小屋の中で、咲の生々しい呻きが再び昂まり始めた
 柔らかみを帯びた肌がうっすらと桃色に染まり上がって、恥ずかしくも大股を広げた狭間で飛燕の引き締まった尻が弾んでいる。
 くびれた腰のうねりに伴って、恥丘の前にあてがった飛燕の右手が咲の濡れたものを抉りこんでいるのだ。
 たまらず咲が飛燕の乳房に手を伸ばすと、飛燕は左手で捻り上げるようにしてその手を土間に押し付けた。
 激しく咲の身体を苛みながら、いつも飛燕は自分が触られるのを嫌うのである。
 自分の股間からは熱い露が溢れているにもかかわらず、咲がそれに触れるのを飛燕は許さなかった。
「うぐううむ……」
 まるでお仕置きでもするかの様に、汗ばんだ脇の下から乳房の上を飛燕の唇が這い回る。
 しかし激しく責め苛まれながらも、咲は飛燕の優しさを感じていた。
 容赦なく濡れたものを指で蹂躙されても、そこに激情に任せた恐怖を覚えることはなかった。
 女同士でなければ分からない身体の感触が、二人の情事をよりいっそう激しいものにしていたのだ。
「あううう~………あんたあ……」
 咲は泣き声を上げた。
「いいのか?」
「ああ~ん……いいの、いいのよう!」
 その甘え泣きは快感のほとばしりであると同時に、咲が絶頂を極めかかる合図でもあった。
「こうか……?」
 弾む乳首を無造作に吸い含むと、鍛え上げた飛燕の全身の肉が躍動し始める。
 組み敷かれた咲の上で、背中から腰の筋肉が汗に濡れ光って蠢く。
「ああそうだよう……あんた……ああいい! ……ああもうだめ! ああもう外しそう!!」
 激しく同性に蹂躙されながら、咲は否応もなく飛燕に合わせて腰を振った。
 音を立てて乳首を吸い離すと、飛燕は咲の顔をじっと見つめる。
「んぐうう……ああっ! ……あんた! ……ああだめ!!」
 間近に飛燕が見下ろす前で、椿の裸体がブルブルと震えた。
「あぐううう……!!」
 突っ張った両足の指が強張って広がる
 しどけなく唇を開くと、咲の眉間に深い縦皺が刻まれた。
「はあ、あっ……!」
 飛燕の指を食い縛ったまま土間から尻を持ち上げると、弓なりの裸体に二度三度と極みの痙攣が走る。
 咲の浅ましい断末魔の顔を飛燕はじっと見つめた。
「うぐうう………」
 不思議なことに燃え上がった咲の身体を抱きながら、飛燕もその口から低い唸り声を漏らしたのである。


 咲は藁床から半身を起こすと飛燕の身体に自分の着物をかけた。
 再び身を横たえて仰向けの飛燕の肩に頬を乗せる。
「ねえ……、もうそんな危ない仕事はやめておくれよ。あんた一人ぐらい、あたしがどうやってでも食べさせてあげるから。……ね?」
 相変わらず黙ったままの飛燕を咲は上目遣いに見上げる。
「あんたの仕事がらみの口利きだとは思うんだけど、置屋の待遇がずいぶん良くなってさ。上がりの割戻しまで見なおしてもらったんだよ。だからさあ……」
 咲の顔から肩先を引くと、飛燕は不意にその身体を起こした。
「あたしからこの仕事を取ったら何が残る」
「え……?」
 立ち上がって装束を付け始めた飛燕を咲は呆然と見つめた。
「あ……、あたしがいるじゃないか」
 衣装を着こむ飛燕の手が止まった。
 その両手がゆっくりと藁床に座りこんだままの咲に差し伸べられる。
「なに……?」
 覚束なげに上がった咲の両手を掴み上げると、飛燕はその裸身を強く抱きしめた。
「な……なに……?」
「そんなことより、お前は早く年期が明けることを考えな」
 思わず咲は顔を上げて飛燕の顔を見つめた。
「あんた……」
「それに今度の仕事がうまくいけば、お前の年期明けなど訳もない見返りがある。お前はすぐにでも田舎に帰れるよ。そうしたら、あたしのことなんか忘れな」
 それを聞くやいなや、咲は両手で飛燕の身体を突き離した。
「今さらあたしがそんなことで喜ぶとでも思ってるのかい!!」
 飛燕は咲の顔をじっと見つめた。
 大きく見開かれた咲の両目がみるみると潤んでいく。
 飛燕は顔を落とすと黙って装束の帯を結ぶ。
 そのまま背を向けて出口へと向かった飛燕は、引き戸の手前でふとその足を止めた。
「また会いに来てもいいかい?」
 咲はその泣き濡れた顔を上げる。
「あたりまえじゃないか、そんなこと!」
 飛燕が引き戸を開けると、もう昼近くになった外の光が暗い小屋の中に差し込んだ。
「あたしは、いつもこうして帰って来るとは限らないんだよ……」
 耐え切れずに漏れた咲の泣き声と共に、飛燕の姿は明るい小屋の外へと消えた。


 海端の松林に足を踏み入れて、行商の若い娘はその頬かむりを片手で取り去った。
 そのまま汗を拭いながら一本の切り株に腰を下ろす。
「はあ……」
 肩を落とした娘は元気のないため息を漏らした。
「桔梗様」
 娘の尻が一寸ほども切り株から飛び上がった。
「なんだ葛、脅かすな」
 背後の木立から口をへの字に曲げた葛が姿をあらわす。
「成果が出ぬとて油断なすっちゃいけません。気が入っていれば、桔梗様なら私の気配などお気づきになるはず」
 桔梗はさすがに神妙な顔で切り株から立ち上がった。
「うむ、お前の言うとおりだ……。このようなことでは、お役目を果たすどころか伊織様に顔向けも出来ぬ」
 少し表情をゆるめた葛が桔梗に問いかける。
「まだ伊織様のお姿は……?」
 また溜息をついた桔梗は首を横に振った。
「小さい頃の面影が頼りとは申せ、まだそれらしき人影にも出会わぬ。せっかく竜神一家が怪しいと目星を付けても、動く事さえ出来ぬままだ」
「時は惜しゅうございますが、ここは焦らず伊織様を見つけましょう。なにもうお着きであれば狭い町です、そのうち検討がつくのは間違いありません」
 その言葉に桔梗は改めて眉を上げて頷いた。
「で、お前の方はどうであった?」
「ええ」
 葛は一段声を落として桔梗に身を寄せる。
「港の方に動きがあります。どうやら荷を迎える準備か、人足が片付をする廻りを例の根来が見張っている様子で……」
「ふうむ……、それはお前の方の一件だな……。して竜神一家の方は……?」
「ええ、こっちはあまり変わったことはありませんが、ただ……」
「ただ……?」
 桔梗は言葉を切った葛に目を向けた。

「最前、今まで見たことのない女の方が一家に入って行ったんです」
「ほう……」
「女の方と言ったのは……、どう見てもあれはお武家の方」
「竜神一家にお武家の女人が?」
 目を光らせた桔梗に葛はゆっくりと頷いた。
「以前から出入りの浪人の内儀はいましたが、先ほどの方はもっと上品でその何と言うか………、そう……凛々しい……」
「凛々しい?」
 葛は小さく頷いた。
「上品ですらりとした、とてもお美しい方でした。そう何故かあたしは……、その方を凛々しく感じました」
 桔梗は黙ってその眼差しを海の方へと向けた。
 どうしてかは分からぬが、葛の言葉が自分の記憶の片隅に響くような気がしたからである。
元禄江戸異聞 根来(二十七)目次元禄江戸異聞 根来(二十九)
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