Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #150
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#150



 雪に降り込められた鞍馬・貴船の山道。
 道代と、小まめの志摩子の乗る乗用車は、道の傍らの雪溜まりに鼻面を突っ込んで止まっていた。車内は、二人きりだった。運転手は助けを求めて車を離れていた。

 後部座席に、二人は並んで坐っていた。
 乗用車の前面窓は、ほぼ雪に埋まっていた。運転手がつけっぱなしにしていった前照灯は、用を成さなくなっていた。
 車内灯はついていなかった。二人は、そのようなものがあることすら知らなかった。
 車内に閉じ込められた道代と志摩子にとっては、かすかに雪が照り返す前照灯の光が唯一の照明だった。

 ほの暗い車内で、することも無く、二人は切れぎれに会話を続けた。その視線は、時折、見慣れた、しかし目鼻立ちも判然としない互いの顔を捉えるが、ほとんどは窓外に送られていた。車の外は相変わらず雪である。風も出てきたようだ。

「姐さん、そないな……」

 道代の言葉はそれ以上続かなかった。
 「腸(はらわた)の奥まで覗かれてるような……」という、志摩子の言葉を聞いての事であった。
 追いかけるように志摩子が言葉を継いだ。

「ほんまに気色(きしょく)の悪い。いっそはっきり、押し倒されでもした方がまだましやわ」
「なに、おいやすのん(仰る)姐さん」

 道代の声が少し高くなった。

「ふん。ほんまにそないされたら、張り倒したるんやけんどな」
「姐さん……」
「まあ、おかしな目つきで見られてる、ゆうだけでそうもでけんわなあ。せやから余計腹立つんや」
「姐さん……」
「もう、あんお方の座敷は、金輪際ごめん(御免)や。覚えときや、道」
「へえ……」

 しばらく言葉が途切れた。
 が、無聊に耐え切れず、すぐに志摩子は言葉を継いだ。

「なあ、お道」
「へえ、姐さん」
「あんたともつきあい、結構、なご(長く)なったなあ」
「そうどすなあ」
「うちらが会(お)うたん、いつごろやったかいねえ」
「そうどすなあ、二年……いや、三年くらいどすやろか」
「まだそんなもんかいねえ」
「へえ。姐さんが舞妓はんで出やはって(お出になって)すぐくらいに、うちがお付きするようになりましたさかい」
「ふん」
「どないしやはったんどす、姐さん」
「いや、なんとのう、な」
「へえ」
「それなりに、いろんなことあったなあ、思(おも)て」
「そう……どすなあ」

 道代の脳裏を、過去の様々な出来事が行き過ぎた。祇園に来る前の、幼い頃のこともあったがそれらはすぐに薄れ、道代が思い浮かべる過去のことどもには、そのほとんどに志摩子がともにいた。
 いや、逆かもしれない。
 志摩子に寄り添う、影のように寄り添う。それが道代自身の内に刷り込まれた自身の映像であった。

 車のエンジンが止まった。
 車内に静寂が訪れた。
 しばらく二人は気付かなかったが、先に声にしたのは志摩子だった。

「あれ?」
「何どす、姐さん」
「えらい静かになったなあ。ちゃうか、道」
「あ……そないゆうたら」

 道代と志摩子は言葉を切り、耳に神経を集中させた。互いの呼吸音が聞こえそうな、車外に降りしきる雪の音まで聞こえるような、それほどの静寂だった。

「姐さん……」
「どないやねん、道」
「車のエンジン……止まってますわ」

 運転手がかけっぱなしにしていった車のエンジンは、確かに止まっていた。

「はあ、エンジンなあ」
「へえ」
「まあ、耳障りな音せんようになって、結構なこっちゃ」
「姐さん、何のんきなこと」
「のんきて、なんやのん、道」

 道代の声がまた、高くなった。それは悲鳴にも近かった。

「姐さん! 車のエンジン止まるゆうことは、車内の暖房も止まるゆうことでっせ」
「はあ、暖房なあ」

 志摩子の返答は、事態を全く把握していないものだった。

「姐さん! ここは京の街中やおへん。鞍馬の山中どっせ。夏やったらともかく、こないな冬の最中(さなか)、暖房のうなったらどないなるか……」
「ほれに、雪、降っとるしなあ」

 志摩子の言葉は、その内容とは裏腹の、悠然としたものだった。

「姐さん。うち、ちょと(ちょっと)人、探してきますわ」
「あほなこと言いな(言うものではない)。運転手はんがそないゆうて出ていかはって、いまだにもんて(戻って)きはらへんやないの。近くに人家なんぞない、ゆうこっちゃ」

 志摩子の言葉は、事態を冷静に分析したものだった。
 道代は少し落ち着いた。

「こないなときにバタついたらあかん。慌てたもんがドつぼにはまるんや。動いたらあかんえ(いけないよ)、道」
「へえ。へえ、姐さん」

 こないに(ここまで)肝(きも)の据わったお人やったか……。道代は、志摩子をあらためて見直す思いだった。

「ええか、道」
「へえ」
「うちらが今でけることは『待つ』。この一手や」
「へえ」
「待つのんは、救いの手か、夜が明けるか、雪が止むか。それはわからんけんど、とにかく、この車ん(の)中にじっとして動かんことや」
「へえ」
「まあ、ゆうてみたら、山登りしてて雪に降り込められ動けん、そういう状況やな」
「はあ。山登り、どすか」
「せや、ビバーク、ゆうたかなあ」

 道代は、ふと心が軽くなる自分を覚えた。

「えらい言葉、知ったはります(ご存じです)なあ、姐さん」
「ふん。前にな、座敷にいやはった若いお人におせて(教えて)もろた(いただいた)んや。なんや、お供、てな感じのお人やったけんど、聞いたら、京大の学生はんや、ゆうことやった」
「きょうだい! へえ、そらあたいしたもんでんなあ」

 道代は中学校も出ていない。小学校すらろくに通わないまま、今の置屋に奉公するようになったのだ。学生、それも京都大学など、道代には想像の埒外、目も眩むような雲の上の存在だった。

「でな、道」
「へえ、姐さん」
「こうゆ(云)うとき、まずやらんならんこと、なんや思う?」
「さあ、それは……大声で助けを呼ぶ、やおへんわ(ではないでしょう)なあ」
「ふん。ちょっとはわかっとるやないか、道」
「いやあ、なんもわかりまへん。何ですやろ、姐さん」

 道代は、志摩子を見つめた。
 志摩子は少し唇を綻ばせ、おもむろに答えた。

「今、うちらが持っとるもん、なんやろか、ゆうことや。学生はんは、装備品のチェック、ゆ(言)うてはったなあ」
「はあ。そうびひん、どすか」
「せや(そうだ)。道、今あんたが持っとるもん、身につけてるもん、みいんな確かめるんや。うちもやる」
「へえ。姐さん」
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #149】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #151】

コメント一覧
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    • ––––––
      1. 道草食いハーレクイン
    • 2016/05/31 12:57
    • 長くなっております
       志摩子女将の昔語り。
       いや、「道代語りの志摩子物語」でしょうか。
       始まりましたのが『アイリス#143』からですから、今回で8回を数えることになりました。ほんの2,3回で切り上げるはずだったのですが、あれこれ枝葉を書いてしまう悪い癖が出ております。まあ、書いていて楽しいことは楽しいんですが。

       それにしても「小まめ物語」。
       始まってから一度もエッチシーンがありません。まあ、道代も小まめの志摩子もまだ小娘。しょうがないと言えばしょうがないのですが、かくてはならじ。
       『アイリス』は変態舞妓小説です。次回以降を乞う、ご期待。

       で、ようやくキーパーソンの「相馬の旦さん」が登場しました。今のとこ名前だけですが。
       このおっさんさえ出してしまえば、先は見えました、「小まめ物語」。あと数回で切り上げて、「花よ志」に戻りたいと思います。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2016/05/31 19:47
    • 運転手は……
       どうしたんでしょうね。
       遭難しましたかね。

       車は、当然のごとくガス欠です。
       でも、着物なら、それほど寒くないのでは?
       舞妓なら、振り袖です。
       袖の中に頭を突っ込めば、だいぶ暖かいでしょう。
       新聞紙があれば心強いですが、車中には無いかな。

       でも、この車って、タクシーですよね。
       タクシー無線って、山中じゃ通じないんですかね?

    • ––––––
      3. ♪運転手は君だ~HQ
    • 2016/05/31 22:46
    •  ↑しゃしょうはぼくだ~

      タクシー
       じゃないです、ハイヤーです。#149に↓書きましたぞ。

      >道代と、小まめの志摩子は送迎用のハイヤーの車中にいた。

       タクシー無線は、当時(終戦後数年目)はなかったでしょう。

      >着物なら、それほど寒くないのでは?

       これこれ。
       そのあたりを次回に書くのではないか。
       冬の貴船の山道。車中とはいえ暖房無し。しかも雪中。
       これをどう乗り切るかが次回のテーマです。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2016/06/01 07:36
    • タクシーとハイヤー
       別の車なんですか?
       呼ぶと来るのがハイヤーで、手を上げて停めるのがタクシーかと思ってました。
       そう言えば、ハイヤーには、黒塗りの大型車があるような気もします。

       タクシー無線が初めて運用されたのは、昭和28年の札幌だそうです。
       それまでは、会社が運転手と連絡を取る手段は、無かったんですかね。

    • ––––––
      5. うちのは三菱の軽HQ
    • 2016/06/01 12:39
    • タクシーは
       そこらを流してるやつ(電話でも呼べますが)、ハイヤーは予約の貸し切り、でしょうね。
       車種や装備も違います。
       タクシーは、はで派手塗装で、車種もお手軽(カローラ?)。
       ハイヤーは黒塗りで豪華車種(ベンツ?)、じゃないですかね。

      タクシー無線は昭和28年から
       ふうん。
       ということは「無線無し設定」は、ぎりぎりセーフということですね。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2016/06/01 22:03
    • ハイヤー
       企業などの得意客を持ってないと、それ用の車は抱えてられないですよね。

    • ––––––
      7. タクシー呼んでHQ
    • 2016/06/01 23:27
    • 得意客
       そういう意味では、京都のハイヤー業界、とくに花街近くは悠々とやってけるでしょうね。
       大阪では……苦しいかな。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2016/06/02 07:32
    • なるほど
       料亭が、帰るお客にハイヤーを呼ぶんですかね。
       もちろん料金は、接待側の会社に請求されるんでしょう。

    • ––––––
      9. 接待番宣ハーレクイン
    • 2016/06/02 17:49
    • 料金は接待側に請求
       「当然どす」(「花よ志」女将志摩子)
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