2020.8.1(土)
女性は、ひとつのベンチを目指し、歩み寄って行った。
埠頭に向かって、右から5番目のベンチだった。
男が指定したベンチだった。
間違いない。
男は、橋から埠頭に降りる階段を駆け下りた。
呼吸を整え、ベンチに近づいていく。
色の褪せた木製ベンチの背もたれと、白い日傘。
日傘の持ち主は、すでにベンチに座っていた。
男は、その背後で立ち止まった。
女性は気配に気づいたようだが、振り向かなかった。
「赤木さん……。
ですよね」
「ええ。
脅迫者さん。
振り向いてもいいかしら?」
「ぼくがベンチに座ります。
隣を空けてくれますか」
日傘が左に動いた。
男は右から周りこみ、ベンチに腰を下ろした。
日傘の下の顔が、ようやく見えた。
女性は、黒いサングラスをかけていた。
しかし、白髪が渓流のように流れるグレイヘアは、見まごうべくもなかった。
女性は男を見て、ニヤリと笑った。
「なんだか、想像どおりの人だったわ」
「いかにもあんな隠し撮りをしそうな、ステロタイプってこと?」
「そうね。
脅迫状の文体どおりだった。
ヤクザじゃなさそうとは思ってたけど」
「ヤクザどころか……。
犯罪はこれが初めてです。
といってもまだ、脅迫状を送っただけですけど。
隠し撮りは狙ってたわけじゃなく、偶然撮れたんです」
「ほんとに、悪いことは出来ないものね。
カーテン開けっぱなしで、あんな窓辺でしたのは……。
あのときこっきりなのに。
それを偶然、撮られるなんて。
神様って残酷ね」
「どうりであの後、まったく撮れなかったはずだ」
「あなた……。
わたしのお店にも来たことあるんじゃない?」
「よく覚えてましたね。
相手してくれたのは、店員さんだったのに」
「お客さんの顔を忘れないのは、商売の基本よ」
「なるほど」
埠頭に向かって、右から5番目のベンチだった。
男が指定したベンチだった。
間違いない。
男は、橋から埠頭に降りる階段を駆け下りた。
呼吸を整え、ベンチに近づいていく。
色の褪せた木製ベンチの背もたれと、白い日傘。
日傘の持ち主は、すでにベンチに座っていた。
男は、その背後で立ち止まった。
女性は気配に気づいたようだが、振り向かなかった。
「赤木さん……。
ですよね」
「ええ。
脅迫者さん。
振り向いてもいいかしら?」
「ぼくがベンチに座ります。
隣を空けてくれますか」
日傘が左に動いた。
男は右から周りこみ、ベンチに腰を下ろした。
日傘の下の顔が、ようやく見えた。
女性は、黒いサングラスをかけていた。
しかし、白髪が渓流のように流れるグレイヘアは、見まごうべくもなかった。
女性は男を見て、ニヤリと笑った。
「なんだか、想像どおりの人だったわ」
「いかにもあんな隠し撮りをしそうな、ステロタイプってこと?」
「そうね。
脅迫状の文体どおりだった。
ヤクザじゃなさそうとは思ってたけど」
「ヤクザどころか……。
犯罪はこれが初めてです。
といってもまだ、脅迫状を送っただけですけど。
隠し撮りは狙ってたわけじゃなく、偶然撮れたんです」
「ほんとに、悪いことは出来ないものね。
カーテン開けっぱなしで、あんな窓辺でしたのは……。
あのときこっきりなのに。
それを偶然、撮られるなんて。
神様って残酷ね」
「どうりであの後、まったく撮れなかったはずだ」
「あなた……。
わたしのお店にも来たことあるんじゃない?」
「よく覚えてましたね。
相手してくれたのは、店員さんだったのに」
「お客さんの顔を忘れないのは、商売の基本よ」
「なるほど」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2020/08/01 06:39
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今日は何の日
8月1日は、『ホームパイの日』。
「ミルキー」「ルック」「カントリーマアム」などの人気菓子をはじめとして……。
洋菓子などの製造販売で知られる『㈱不二家(https://www.fujiya-peko.co.jp/)/東京都文京区大塚』が制定。
日付は、「ホームパ(8)イ(1)」と読む語呂合わせから。
サクサクとした食感が魅力の、ナンバーワンブランドのパイ「ホームパイ」を……。
より多くの人に味わってもらうことが目的。
記念日は、2017(平成29)年、『(社)日本記念日協会(https://www.kinenbi.gr.jp/)』により認定、登録されました。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/10801l2.html)のページから転載させていただきました。
さらに同じページから、「ホームパイについて」を引用させていただきます。
パイの美味しさに欠かせないバターを贅沢に使っているのはもちろん……。
ホームパイには、美味しいこだわりがもう1つあります。
それは、富士裾野工場の敷地地下を流れる富士山の天然水。
清らかな天然水を汲みあげてパイ生地を仕込むことで、パイの味わいがより引き立ちます。
製法にこだわりを重ねて重ねて、とびきりのサクッサクッ食感を生み出してます。
ホームパイがこんなにサクッサクッである秘密は……。
自社製の発酵種(ルヴァン種)を使った、こだわりのオリジナル生地にあります。
富士裾野工場の発酵専用部屋で、発酵種をいちから育てることによって風味と食感がアップ。
その生地をじっくりと丁寧に焼き上げて、味わい豊かな700層のパイに仕上げてます。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2020/08/01 06:40
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今日は何の日(つづき)
引用を続けます。
1968(昭和43)年に発売されたホームパイは、2018(平成30)年で発売50周年を迎えました。
これを機に、健康志向のエキストラバージンオイルが入ったホームパイが新登場し……。
品質とパッケージデザインを一新してます。
以上、引用終わり。
不二家の製品って、普通にスーパーとかで買えるんですかね?
ペコちゃんのお店だけでなく。
今、楽天を見たら、普通に通販では買えるようです。
それなら、スーパーでも売られてるでしょう。
↓ホームパイのページです。
https://www.fujiya-peko.co.jp/homepie/
「ホームパイ」は食べたことありませんが……。
一時期、土日のお昼に、アップルパイを食べてたことがあります。
本格的なパイではありません。
スーパーのパンコーナーに置かれてる、ビニール包装の商品です。
美味しかったですよ。
何より安かったし。
難点は、生地がポロポロ零れることですかね。
そうそう。
↑の説明を読んで、驚いたことがあります。
「700層のパイ」という下り。
そうですか。
700層ですか。
こんなのもちろん、手造りでは出来ませんよね。
機械ならではの製品でしょう。
わたしは決して、機械製造を低く考えてはいません。
むしろ逆です。
わたしが嫌いなフレーズは……。
「手造りにこだわってます」。
だから、こだわるなよ。
そんなことにこだわり過ぎるから……。
技術の継承が出来ず、結局、大事な文化が失われていくんです。
むしろ、機械に「こだわり」を移植していくべきじゃないですか。
しかし、遅きに失したかも知れませんね。
このコロナ禍で、事業継続を断念するお店、少なくないでしょうから。
続きはさらに次のコメントで。
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3. Mikiko- 2020/08/01 06:40
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今日は何の日(つづきのつづき)
ところで。
パイって、どうやって作るんですかね?
これまで考えてみたこともありませんでしたが……。
「700層」で、俄然興味が出ました。
例によって、Wikiを引いてみました(原典⇒https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4)。
どうやら、わたしが思い描くパイは、「折りパイ」という製法で作られたもののようです。
↓以下、作り方の手順です。
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1.ふるった小麦粉に水と塩を加えて均一になるまで混ぜる。
2.溶かしバターを加えてさらに混ぜ、しばらく休ませる。
3.生地を四角く伸ばし、冷しておいたバターの塊を包む。
4.バターを包んだ生地を麺棒などで平たく叩き伸ばす。
5.平らになった生地に打ち粉をし、麺棒で平らに伸ばす。
6.生地を三つ折にしてしばらく休ませる。
7.最初の伸ばしと直交する方向に再度伸ばし、三つ折にする。
8.この工程を合計5~6回行い、最後に生地を数時間休ませて完成。
9.これを適宜切って具材を包んだり、パイ皿に伸ばして具材を盛って焼きあげる。
+++
これができるのは、パイ職人とヒマ人だけです。
あのサクサクの食感が生まれるわけは、↓のとおり(同じページより)。
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パイ生地中には多量のバターが含まれる。
加熱によりバターが溶け、沸騰する際に生地中に気泡を生じ、さっくりした独特の食感を生み出すことが出来る。
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いずれにしろ……。
手造りで「700層」は絶対に無理なことがわかりました。
これですよ。
手造りでは出来ない製法。
機械にしか出来ない物造り。
人的な後継者が求めづらい今こそ……。
この道を突き進めていくべきですよ。
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4. 手羽崎 鶏造- 2020/08/01 11:21
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えっ、パイの日って、
ホームパイなのですか?
大手スーパーでは売っていますよ。
パイの日は「オッパイ」の日に
すべきだと思いますな。
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5. Mikiko- 2020/08/01 12:04
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こちら
午前中、何度か土砂降りがありました。
ちょうどその合間、スーパーに行ったのですが……。
ホームパイは発見できませんでした。
パイの日は、3月14日だそうです。
といっても、円周率の「π」ですが。
東海と関東甲信、梅雨明けしましたね。
新潟は北陸なので、まだです。