2020.3.21(土)
キャンパスの小径には、樹冠を抜けて来た木漏れ日が散っていた。
美弥子は、空いているベンチを探した。
夏には、誰も座っていないベンチの方が多かった。
しかし、暑さの引いた今は、すべてのベンチが埋まっていた。
楽しそうに語り合う2人連れ。
並んでノートを開いている2人もいた。
これから秋が深まるに連れ……。
まさしく『学生時代』のような風景になるのだろう。
美弥子はキャンパスの広場を外れ、校舎裏に沿う園路まで来ていた。
滅多に足を踏み入れないエリアだった。
あたりは、森のような木々に覆われている。
地盤が低いのか、湿気が多い気がする。
夏場は、絶対に踏みこみたくない場所だ。
虫が多いに違いないからだ。
でも、この時季になれば大丈夫だろう。
なにしろ、空きベンチがなかったのだから仕方がない。
園路は木々の影に埋め尽くされ、木漏れ日さえ射していなかった。
人の気配もしない。
ようやく、園路が屈曲した脇にベンチを見つけた。
誰も座っていなかった。
校舎の出入口からは、だいぶ離れてしまっている。
よほどの物好きでなければ、こんなところまでは踏みこまないだろう。
木製のベンチは、背もたれのないフラットなものだった。
葉っぱが1枚、落ちていた。
美弥子はバッグからポケットティッシュを出し、ベンチの表面を拭った。
幸い、思ったほどには汚れていなかった。
美弥子は腰を下ろし、バッグを脇に置いた。
次の授業の教科書を取り出そうとしたのだが……。
美弥子の手が止まった。
人声だった。
背後に近づいて来る。
美弥子は後ろを振り返った。
ベンチの背後は、かなり古びた木製の塀だった。
耳を澄ますと、人声のほかに、かすかに機械が唸るような音が聞こえた。
電気設備かなにかがあるようだ。
「お金、親に頼んでみたんだけど……。
やっぱり、ダメみたい。
旅行に使うって言ったら、自分で稼ぎなさいって」
「それがね……。
最近、来ないのよ。
電話」
「どうしたんだろ?
刑務所かな?」
「それはないと思う。
書類送検だって言ってたから」
美弥子は、空いているベンチを探した。
夏には、誰も座っていないベンチの方が多かった。
しかし、暑さの引いた今は、すべてのベンチが埋まっていた。
楽しそうに語り合う2人連れ。
並んでノートを開いている2人もいた。
これから秋が深まるに連れ……。
まさしく『学生時代』のような風景になるのだろう。
美弥子はキャンパスの広場を外れ、校舎裏に沿う園路まで来ていた。
滅多に足を踏み入れないエリアだった。
あたりは、森のような木々に覆われている。
地盤が低いのか、湿気が多い気がする。
夏場は、絶対に踏みこみたくない場所だ。
虫が多いに違いないからだ。
でも、この時季になれば大丈夫だろう。
なにしろ、空きベンチがなかったのだから仕方がない。
園路は木々の影に埋め尽くされ、木漏れ日さえ射していなかった。
人の気配もしない。
ようやく、園路が屈曲した脇にベンチを見つけた。
誰も座っていなかった。
校舎の出入口からは、だいぶ離れてしまっている。
よほどの物好きでなければ、こんなところまでは踏みこまないだろう。
木製のベンチは、背もたれのないフラットなものだった。
葉っぱが1枚、落ちていた。
美弥子はバッグからポケットティッシュを出し、ベンチの表面を拭った。
幸い、思ったほどには汚れていなかった。
美弥子は腰を下ろし、バッグを脇に置いた。
次の授業の教科書を取り出そうとしたのだが……。
美弥子の手が止まった。
人声だった。
背後に近づいて来る。
美弥子は後ろを振り返った。
ベンチの背後は、かなり古びた木製の塀だった。
耳を澄ますと、人声のほかに、かすかに機械が唸るような音が聞こえた。
電気設備かなにかがあるようだ。
「お金、親に頼んでみたんだけど……。
やっぱり、ダメみたい。
旅行に使うって言ったら、自分で稼ぎなさいって」
「それがね……。
最近、来ないのよ。
電話」
「どうしたんだろ?
刑務所かな?」
「それはないと思う。
書類送検だって言ってたから」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2020/03/21 06:35
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今日は何の日
3月21日は、『日本手ぬぐいの日』。
注染(ちゅうせん)手ぬぐいなどの製造販売を手がける『㈱ナカニ(http://nakani.co.jp/)/大阪府堺市』が、2016(平成28)年に制定。
日付は、春を迎えて手ぬぐいの需要が高まり、生産も増え始めるころで……。
「春分の日」となることが多い3月21日としました。
地場産業の発信と、手ぬぐい文化の発展、継承が目的。
手ぬぐいに親しんで自由に活用してもらいたいとの願いもこめられてます。
記念日は、『(社)日本記念日協会』により認定、登録されてます。
この日には、手ぬぐいを使った手ぬぐい体操や注染のデモンストレーションなどのイベントが開催されます。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/10321a2.html)のページから転載させていただきました。
さらに同じページから、「注染手ぬぐいについて」を引用させていただきます。
注染とは、その名の通り染料を注ぎ、布に模様を染める技法の一つ。
折り重なった生地に染料を流し入れて染色するため、一度に20枚から30枚染めることができます。
この技法は、明治時代に大阪で生まれました。
表と裏から二度染めるので、裏表なくきれいに染まるのが特徴。
注染には多くの工程があり、すべてを職人が手作業で行うため、一つとして同じものは存在しません。
職人の手作業だからこそ表現できる……。
繊細でやさしいぼかしやにじみの何ともいえない風合いが、注染の一番の魅力と言えます。
同社では、注染の技法を活かした新たな個性的な手ぬぐいのブランド「にじゆら(https://nijiyura.com/)」を展開し……。
国内外の幅広い業界から注目を集めてます。
以上、引用終わり。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2020/03/21 06:36
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今日は何の日(つづき)
手ぬぐいが、20~30枚、いっぺんに染められるとは初めて知りました。
それは大したものです。
考案した人は、大した発明家だと思います。
しかし……。
なんで、そこで止まってしまうんですかね。
なんで今でも、「すべてを職人が手作業で行う」んですか。
ここを一段階、突破しなきゃだめでしょう。
わたしは、すべてをオートメーション化して、大量生産をしろと言ってるわけじゃありません。
第一、日本手ぬぐいに、そんな需要があるとは思えませんから。
実際、わが家には多分、日本手ぬぐいは存在しません。
目にするのは、テレビの「サザエさん」で、波平さんが乾布摩擦してるシーンくらいでしょうか。
わたしが恐れるのは、高い技術の継承が出来なくなることです。
若い職人さん、育ってるんですかね?
あと、職人さんがいても、経営者に後継がいなくなるということも考えられます。
わたしが期待するのは、機械化ではなく、AI化です。
出来れば、AIを搭載した人型ロボットがいいですね。
アイボでしたっけ?
あ、これは犬型か。
そうそう、アシモだ。
こいつに、染色技術を学ばせるんです。
上達スピードは速いと思いますよ。
なにしろ、24時間、寝食なしに学べるんですから。
職人になったら、1番の働き手になります。
24時間、寝食なしに働くんですから。
なんだか、気の毒な気もしますが。
しかも、給料はタダ。
電気代だけです。
アシモがずらっと並んで作業する、手ぬぐい工場。
話題になると思いますよ。
世界中から見学に来ます。
投資額なんて、あっという間に回収できるんでないの?