2019.8.7(水)
わたしは雑誌を手に取ると、時刻表と一緒にレジを済ませた。
店番は店主の妻らしく……。
怒ったような顔で、時刻表と雑誌を紙袋に詰めてくれた。
わたしが買って帰ったのは、写真の投稿誌だった。
もちろん、まっとうな写真じゃない。
恋人の裸などを撮った写真だ。
そのころは、デジカメなんて無い時代だった。
すべて、フィルムだ。
普通の素人は、写真の現像なんて出来ない。
といって、恋人の裸の写真を、写真店に出すわけにはいかないだろう。
そういう写真は、現像を断られるとも聞いてたし。
で、そういう写真のフィルムは……。
こうした投稿誌に送られることが多かったんだと思う。
編集部がそれらを現像し、一冊の雑誌に仕立てて売るわけだ。
原価は現像代だけだから、雑誌社としてもいい商売だったんじゃないかな。
で、雑誌を買って帰った日、さっそく妻に見せた。
妻は、文字どおり食い入るように、裸の女が連なるページを見ていたよ。
「どう?
これ、やってみない?
編集部で目線を入れてくれるから、誰だかわからないよ」
「だって……。
編集の人には見られるわけでしょ」
わたしは唾を飲みこんだ。
はなからの拒絶じゃなかった。
これはいける。
「じゃ、これなんてどう」
わたしは、写真の一枚を指で押さえた。
映っている裸の女は、サングラスをかけていた。
「これなら、編集部にも顔を見られない。
きみ、ひとつ持ってたよね。
ちょっとかけてみて」
わたしは、渋るふりをする妻の手を引きあげ、洋箪笥の前に立たせた。
たしか、どこかの引き出しに入っていたはずだ。
妻は困った顔を作りながらも、一番上の小引き出しを引いた。
アクセサリーなどと並んで、サングラスが畳まれていた。
わたしが取りあげ、妻に渡す。
「かけて」
店番は店主の妻らしく……。
怒ったような顔で、時刻表と雑誌を紙袋に詰めてくれた。
わたしが買って帰ったのは、写真の投稿誌だった。
もちろん、まっとうな写真じゃない。
恋人の裸などを撮った写真だ。
そのころは、デジカメなんて無い時代だった。
すべて、フィルムだ。
普通の素人は、写真の現像なんて出来ない。
といって、恋人の裸の写真を、写真店に出すわけにはいかないだろう。
そういう写真は、現像を断られるとも聞いてたし。
で、そういう写真のフィルムは……。
こうした投稿誌に送られることが多かったんだと思う。
編集部がそれらを現像し、一冊の雑誌に仕立てて売るわけだ。
原価は現像代だけだから、雑誌社としてもいい商売だったんじゃないかな。
で、雑誌を買って帰った日、さっそく妻に見せた。
妻は、文字どおり食い入るように、裸の女が連なるページを見ていたよ。
「どう?
これ、やってみない?
編集部で目線を入れてくれるから、誰だかわからないよ」
「だって……。
編集の人には見られるわけでしょ」
わたしは唾を飲みこんだ。
はなからの拒絶じゃなかった。
これはいける。
「じゃ、これなんてどう」
わたしは、写真の一枚を指で押さえた。
映っている裸の女は、サングラスをかけていた。
「これなら、編集部にも顔を見られない。
きみ、ひとつ持ってたよね。
ちょっとかけてみて」
わたしは、渋るふりをする妻の手を引きあげ、洋箪笥の前に立たせた。
たしか、どこかの引き出しに入っていたはずだ。
妻は困った顔を作りながらも、一番上の小引き出しを引いた。
アクセサリーなどと並んで、サングラスが畳まれていた。
わたしが取りあげ、妻に渡す。
「かけて」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2019/08/07 06:02
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今日は何の日
8月7日は、『月遅れの七夕』。
「七夕」は、本来は旧暦7月7日の行事ですが……。
明治5年の改暦以降では、新暦の7月7日や月遅れの8月7日に行われるようになりました。
1872(明治5)年までの暦は、旧暦とよばれる「太陰太陽暦」で……。
1873(明治6)年1月1日から、「グレゴリオ太陽暦」に改暦されました。
このとき、1月1日の正月元旦をはじめ……。
旧暦の月日による伝統行事は、すべて新暦の同月同日に移行されました。
中央政府や出先機関は率先して新暦で行事を行いましたが……。
地方では、旧暦で行事を行う風習も残りました。
上記の記述は、こちら(https://zatsuneta.com/archives/108072.html)のページから転載させていただきました。
なお、1ヶ月遅れの8月7日ではなく……。
旧暦の7月7日に「七夕」を行う地域も残ってます。
秋田県、三重県、鳥取県、島根県がそうだそうです。
なんか、典型的な「地方」ですね。
横溝正史の伝奇小説の舞台になりそうな。
実は、今年の旧暦7月7日は、新暦に直すとぴったり8月7日なんです。
こんなことも珍しいんじゃないでしょうか。
ちなみに昨年は、8月17日でした。
来年はもっとズレて、8月25日です。
今年の8月7日の七夕は、「月遅れの七夕」兼「旧暦の七夕」なわけです。
「最強の七夕」と呼んでもいいんじゃないでしょうか。
続きは次のコメントで。
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2. Mikiko- 2019/08/07 06:02
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今日は何の日(つづき)
でも、残念ながら新潟県は……。
新暦7月7日が七夕です。
8月に「七夕」をやる地域は、県内のどこにもありません。
「地方」じゃない証拠です。
これは、何度も書いたことですが……。
七夕とお盆はセットなんです。
「七夕」は本来、「棚機」と書きます。
「機(はた)」で織った衣服を、「棚」に置くのです。
これは、お盆に帰ってくるご先祖さまのための衣服。
なので、お盆の前に七夕があるわけ。
東京みたいに、7月がお盆の地域は……。
七夕は、7月でいいわけです。
8月7日の七夕で有名なのは、やはり仙台でしょう。
その仙台は、お盆も8月。
これも正しい。
新潟みたいに、七夕が7月なのに……。
お盆が8月というのは、マチガイということです。
ま、今は「棚機」としての意味が無くなってますから……。
仕方の無いことでしょう。
でも、「七夕」は、やっぱり8月にした方がいいですよ。
7月7日は、梅雨の真っ盛りじゃないですか。
でも、7並びで語呂がいいですからね。
なかなか、8月7日には移行しづらいでしょう。
いっそ、国民の祝日にすればいいんです。
子供は夏休みで関係ありませんが……。
本来、男女のお祭りなわけですから、子供は関係なし。
そうだ。
この日は、織姫と彦星の逢瀬を思い……。
夫婦が仲良く、ひとつの布団で寝る日にしましょう。
ちょっと、暑苦しい時期ですが。
ご主人、帰ってこなかったりして。