Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
元禄江戸異聞 根来(五十三)
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「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(五十三)


 たどる道は緩やかにうねりながら、険しさを増す山景色を時折木立の隙間から披露する。
「若様……」
 伊織は陽に映えた山並みから鶴千代へと目を向けた。
 本来であれば、はしゃぎながら親にまとわり付く年頃である。
 ところが茶店を出てからの鶴千代は、ただむっつりと押し黙ったまま脇を歩くばかりなのだ。
「おみ足の具合はいかがですか?」
「いや……、大事ない」
 そっけない返事に幾ばくかの寂しさを覚えながら、伊織は周囲に視線を巡らせた。
 今も遥か後方を一人の虚無僧が歩いている。
 またやがて道の半丁ほど前方からは、夫婦者だろうか商人風の二人連れが降りて来る。
 しかし伊織はその足の運びから、二人が只の商人ではないと感じた。
 時折近くの林にも気配を感じることから、猿飛が言った様に自分たちは相当数の警護に取り巻かれているようである。
 これなら、何らかの騒ぎを起こさないまま敵が襲うことはなさそうに思われた。
 伊織はゆっくりと胸の奥から息を吐いた。
 初めて我が子と歩く喜びで、少しずつ身の内に暖みが広がっていく。
 微かに母の気持ちを呼び戻した時、おぼろげに自分がどうすればよいか分かる様な気がした。
 すれ違った夫婦連れが遠ざかっていくのを確かめた後、今まで幾度も思い描いていた笑みを鶴千代に向ける。
「鶴千代様。私、登りで足が疲れました。この辺りで少し休んで参りましょう」
 そう言うと、伊織は道端の手頃な倒木に鶴千代を誘った。

「さあ、お水をどうぞ。二三日の行程とは申せ、まだ先は長うございます」
 鶴千代は受け取った竹筒を黙って口元へ運ぶ。
 細い喉元が波打つのを見ながら、伊織は小さな身で国元へ向かう鶴千代をいじらしく感じた。
「若様は、まだ大石や蔓のことがご心配なのでしょう……?」
 伊織は自分の声が和らいでいるのに気づいた。
 鶴千代と二人で過ごすうちに、“伊織”の声が自ずと“菊”の声に近づいていくのである。
「うん、二人の事は確かに気がかりじゃ」
「大丈夫でございます。大石はまだ若く脈も確かでしたし、蔓は役目を終え国に戻ったと聞き及んでおります。若は茶店の主人が申していた通り、その忠義に答えて無事お国元にお戻りになることが大事……」
 方便を弄した伊織は、頷く鶴千代からつい目を伏せる。
「二人の事は分かったが……」
 しかし鶴千代の眼差しは、じっと足元の赤土に向けられたままであった。
 伊織はそんな鶴千代の横顔から遠くの山並みに目を移した。
「鶴千代様……。あなたは早くお国元の母上様の元にお帰りにならねばならぬ身です。そして先ほど申し上げた通り、私はあと二三日のお供でございます。何かお聞きになりたいことがあれば、どうかご遠慮なく……」
 足元を見つめる鶴千代の目が小さな輝きを宿した。
「常日頃母上は、私に何事かあればきっと父上が助けに来てくださるとおっしゃっていた。にもかかわらず、この度このような大事に至り、未だ父上は姿をお見せにならない……」
「わ、若さま……」
 伊織は呆然とつぶやいた。
 足元から目を上げて、鶴千代は伊織に問いかける。
「牢に助けに参った時、お前は女の格好をしておった。一体お前は……」
 伊織は顔を上げた。
「私は女でございます」
 その返事に鶴千代は頷いた。
「うん。父上が来られぬのは悲しかったが……、しかし初めて牢で会うた時から、何かお前を優しく感じて嬉しかった」
 伊織は鶴千代の顔を見つめた。
「ありがとうございます」
 返事をしながら目頭が熱くなる。
「しかし、何故お前は男の格好をしておるのじゃ……?」
 伊織は再び遠くの山並みに目を向けた。
「始めは……世の不幸に憤りを覚えたのがきっかけでした。しかし人との出会いと出来事を通じて、少しずつ考えが変わってきたように思います」
 鶴千代は伊織の穏やかな声にじっと耳を傾けた。

「男は男の姿形を持って生まれ、女は女の姿を持って生まれて参ります。しかし私、その心は同じではないかと……」
「心は同じ……?」
 無垢な眼差しを向ける鶴千代に伊織は頷いた。
「命を授ける、命を生み出すという役割こそ違いますが、男であれ女であれ、どちらも好きになることが出来、そしてどちらの生涯も全うすることが出来るのでございます」
 二人の眼差しの先で、青い空に浮かんだ雲がゆっくりと動いていく。
「どちらの生涯も……」
 鶴千代はぽつりと呟いた。
「ええ。私が剣を差して若をお守りしているように……」
 鶴千代は伊織へ顔を向けた。
「もしやお前が、母上がおっしゃっていた……」
 伊織は立ち上がった。
「さあ参りましょう。暗くなる前に次の宿を見つけねばなりません」
 帯に差した大小を直すと、笑顔で鶴千代を振り返る。
「なぜ私が男の格好をしているのか、鶴千代様がそれをお尋ねになるとは思いませんでした」
「よし、参ろう!」
 鶴千代も満面の笑みで立ち上がる。
「用をお済ませにならなくて大丈夫ですか? ああそれから、山でご用をお済ませになる時は御身を高く……。低いとお尻を虫に刺されますよ」
「そ、そんなことは……、分かっておる!!」
「あははは……」
 一転顔を赤らめて歩いていく若を、伊織は笑顔で追ったのである。


 白く煙った布団部屋に寝転がって、お蝶は生気のない顔にうっすらと笑みを浮かべていた。
 だらしなく纏った襦袢の間から、熟れた女の身体が垣間見える。
 悪夢が過ぎ去った後、現実に戻った自分は幸せだった。
 悪夢……?
 そう、悪夢に違いない。
 暗く深い井戸に落ち込んだような絶望感。
 冷たく身を引き絞る痛みと、茹だる様な熱にうなされる。
 だが夢が覚めさえすれば何も心配する必要などない。
 あの薬さえ吸えば悪夢から覚め、
 当たり前のように幸せな自分に戻ることが出来るのだ。

 夢……?
 お蝶は微かに眉を寄せた。
 何故か悪夢のさなかにも悦びがあった。
 もう何度も中年の太った女に抱かれ、狂おしい快楽の極みを味わったのである。
 それはまるでお蝶にとって地獄の中の救いのように感じられた。
 そしてその救いの神は、悪夢から覚める薬をお蝶に与えた。

 本当に夢……?
 再びお蝶は胸の内につぶやく。
 とうとう昨夜は求められるままに、以前命の遣り取りまでした双子の女達とも身体を重ねた。
 そして獣のように絡み合いながら、身体を貫く快感に歓喜の涙さえ流したのである。
 どうしてあんなことを……。
 お蝶は左右に首を振った。

 “いずれにしても、あたしは幸せじゃないか……”
 悪夢はいつでも消し去ることが出来る。
 何も心配することなどないのだ。
 “伊織様だって、きっと今頃は若を送り届けてみんなと喜んでるに違いない……”
 その時急に、お蝶の心に切ないものがこみ上げてきた。
 “伊織様……、伊織様!!”
 お蝶は硬く目を閉じた。
 “いいや、こんな地獄に落ちたあたしなんかを、伊織様は気にしなくてもいいんだ。そうだ、そうだとも……”
 お蝶は大きく息を吐いた。
 “伊織様だって幸せに違いないさ。今のあたしのように……“
 伊織の存在さえ何故か遠く霞んでいくように感じた。
 そしてお蝶の顔に、再びうっすらと笑みが戻った。

「ずいぶんご機嫌じゃないか、お蝶……」
 中年の女が布団部屋に入って来た。
 年のころは四十半ばか、いささか油の乗りすぎた身体をお蝶の脇に沈める。
「うふふ……」
 愛想笑いを浮かべたお蝶を、載寧はにんまりと見返す。
「お蝶、気持ちいいか?」
「ああ、とってもいい気分だよ」
「そりゃあよかった。今日はね、ちょっと頼みあるんだけど……」
「あんたが言うことなら……。何だい?」
「いいよ、入って」
 載が呼ぶと、廊下から目つきの鋭い女が入って来た。
 引き締まった体を鹿皮の衣裳で包み、黒い髪を頭上に黒紐で束ねている。
「お蝶、あんた夜の技上手なの知ってる。きょうはこの女、喜ばして。そしたらもう、あんた仲間と同じ。いつでもあんたの好きなものあげる」
 載寧の言葉を聞くと、お蝶は舐めるように沙月女の身体を見上げた。
「どっかで見たような……。でもあたし、こんな苦み走った女、好きだよ」
 お蝶は沙月女の顔を見つめながら、ゆっくりと襦袢の腰ひもを解いた。
「へえ……。地下牢で見た時に比べると、ずいぶん丸くなったじゃないか」
 沙月女はお蝶を見下ろしながら鹿皮の上下を脱ぎ捨てた。
 色浅黒く細身で引き締まった身体ながら、その乳房と臀部は量感を持って盛り上がっている。
「うふふ、いい身体……」
 お蝶は襦袢を脱ぎながら、沙月女に場所を開けた。
 輝くように白く滑らかな身体に目を奪われつつ、沙月女はその横に身を横たえる。
「どこが弱いか、どうされるのが好きか、きょうはあたしが確かめてあげる……」
 お蝶は上から沙月女にそう囁くと、浅黒い肌にゆっくりとその白い裸身を重ねていった。

「さあ、もうここで案内も最後だ」
 振り返った秋花に紫乃は頷く。
「まだ会ってないのは、布団部屋の女だけさ。まあ仲間と言うにゃ、まだ早いかもしれないけどね」
 背後の春花の声を聴きながら、紫乃は秋花の先導で廊下の奥へと足を進めた。

 中からうめき声が聞こえたような気がして、引き戸の前で思わず秋花と紫乃は顔を見合わせた。
 しかしすぐさま秋花の顔に意味深な笑みが浮かぶ。
「どうやら何かやってるみたいだね。秋ちゃん、少し開けてみなよ」
 後ろの春花の声に秋花は戸襖を三寸ほど引き開けた。
 途端に再びぐずり泣くような女の声が聞こえて、中を覗いた秋花の目が輝く。
「ふふふ紫乃さん、あんたにゃ少し刺激が強いかもしれないけど、今後の為に中を覗いてみるかい」
 後ろから肩に添えられた春花の手に押されて、紫乃は戸襖の隙間から布団部屋の中を覗き込む。
「は……!!」
 紫乃は息を呑んだ。

 引き締まった女の身体が、汗に光りながら布団から反り上がっていく。
「んああ~~…………!!」
 強張った声を上げて、女の浅黒い身体に痙攣が走った。
 その下半身に目を映した時、
「あ……く……!」
 口から出そうになった声を紫乃は危うく飲み込んだ。
 左右に首を振りながら、反り上がった女の下半身にお蝶が貪り付いていた。
 目眩に体が揺らいで、紫乃は秋花の両肩を掴んでようやくその姿勢を保つ。
「あはは、腕は立ってもやはりおぼこか……。紫乃さんにゃ、少々薬が強すぎたみたいだね」
 からかう様な口調に、秋花は振り返って春花を睨む。
「可哀そうじゃないか春ちゃん。いきなりこんな濡れ場を見ちゃあ、お嬢様は取り乱しちまうさ。さ、部屋に帰って少し休みなよ。この道なら追い追い、あたしが教えてあげるからね」
「ふん……」
 支え合って廊下を戻る二人を春花は鼻で笑った。
 戸襖の前に立って中を覗き込む。
「もう仲間と呼んでも早かなかったようだね……」
 そう呟くと、春花もゆっくりと布団部屋から自分の部屋へと踵を返した。
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2018/02/15 07:41
    • 「男は男の姿形を持って生まれ、女は女の姿を持って生まれて参ります」
       「しかし私、その心は同じではないかと……」

       本文中、伊織が鶴千代に語る一節です。
       このあたりのこと、踏みこんでいけば、哲学に通じるでしょう。
       「人間とはなんぞや」という根本に関わる命題です。
       どうしても、持って生まれた身体になじめず、そちらを変えてしまう生き方もあります。
       もちろん、わたしは否定しません。
       人生は一度しかなく、生まれてくる性は選べません。
       どう生きるか。
       まさしく、自分と向き合い、自分で答えを見いだすしかありません。
       そして、その答えもまた完全ではなく、生きる過程で揺らいでいくものでしょう。
       こんなことを考えてたら……。
       なぜか、一生懸命雪道を歩いてる自分の姿を、後ろから見てるような気持ちになりました。

    • ––––––
      2. 八十郎
    • 2018/02/17 18:55
    • 貴重なコメントをいただき、有難うございました。
      こちらを拝見せぬままカンパリの云々など書き込みをして、少々反省しております。

      生きていくうちに様々な苦労があるのは間違いないところでしょうが、一生懸命歩いて行く自分の後ろ姿を見ているMikikoさんは素晴らしいと思います。
      私などは、なるべく見ないようになってしてますが。(笑)

      連日書き込みし過ぎてすみません。
      私のすることはコメントではなくて、本文を書くことでした。
      (五十四)途中までで、まだあがっておりません。(涙)
      明日にはお送りできることを祈念して失礼します。

      今度は本当に自重しますので、どうか皆様お気軽に書き込みを。






    • ––––––
      3. Mikiko
    • 2018/02/18 07:49
    • こちら……
       今日も昨日も、雪の空。
       本日も、最高気温は1度の予報。
       今週1週間も、ずっと雪。
       哲学的な気分になるほど、長い冬が続きます。

       「五十四」の投稿日は、3月1日です。
       そんなに急がなくても大丈夫ですよ。
       投稿をするころには、春になっててほしいものです。

       コメントをいただくことは、わたしの生きがいです。
       自重などと言わず、どんどんお願いします。
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