Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(22)
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 五丁目橋の袂から、川反通りを、ソープ街とは反対側に歩き出します。
川反通りを、ソープ街とは反対側に歩き出します

律「あんまり、賑やかじゃないわね」
あんまり賑やかじゃない川反通り

み「ま、時間も早いしね。
 それにほら、今日は3連休の中日じゃない」
律「あ、そうか。
 つまり、社用族がいない?」
み「それそれ」
律「お店、やってるんでしょうね?」
み「大丈夫。
 ホームページに、年中無休って書いてあったもん。
 あ、この橋を左折します」
律「五丁目橋の次だから……。
 六丁目橋?」
み「ブー。
 反対です。
 四丁目橋」
律「あらそう。
 冗談で言ったのに」
み「一丁目橋まであるみたい。
 見に行ってみる?」
律「四丁目橋までで十分。
 飲み屋へGO!」
飲み屋へGO!

 四丁目橋とは反対側、左に折れます。
 一方通行の細い小路を抜けると……。
 川反通りと平行に走る通りに出ます。
 ここを右折。
『赤れんが館通り』へ抜ける

み「この通りは、『赤れんが館通り』って云うらしいよ」
律「へー。
 なんか、昔の少女マンガに出てきそうな名前ね」
み「この先に、『赤れんが郷土館』って資料館があるんだ」
赤れんが郷土館

み「旧秋田銀行本店だって。
 明治45年(1912年)の完成だから、約100年前の建物だね」
律「面白そう。
 行ってみる?」
み「行きたいところだけど……。
 開館は、16時半まで」
律「あら残念。
 それじゃ、飲み屋に直行ね。
 まだ遠いの?」
み「もう着きました。
 目の前だよ」

 まさしく目の前に、提灯の明かりが、ずらーっと並んでます。
提灯の明かりが、ずらーっと並んでます

 お酒の名前を書いた提灯に、灯がともって綺麗です。
 ここが今日の夕食処。
 『秋田川反漁屋酒場(あきたかわばたいさりやさかば)』。
秋田川反漁屋酒場

律「この提灯って、竿灯のイメージかしら?」
竿灯のイメージ

み「なるほど。
 そういう発想もありか」
律「秋田の人って、提灯が好きなのかしらね?」
秋田の人って、提灯が好きなのかしら

み「そういう噂は聞きませんが」
律「提灯の下にさがってるのは何よ?
 蜂の巣?」
蜂の巣?

み「知らないの?」
律「有名なもの?」
み「教師とか、お医者さんとか……。
 “先生”って呼ばれる人たちには……。
 常識に乏しい人が多いって聞くけど……。
 ほんとだよ」
律「失礼ね。
 確かに……。
 全否定はできないけど。
 麻生元総理が、『医者には社会的な常識が欠落してる人が多い』って言って、怒られてたわね」
み「あれはまさしく、麻生さんが正しい。
 あの人は、育ちがいいだけに……。
 発言が正直すぎて損してたね」
発言が正直すぎて損してた麻生元総理
↑若い!

律「でも、議員さんだって、“先生”って呼ばれるわよ」
み「あ、非常識な先生が、まだあったか。
 発言にブレーキがかけられないって点では、議員さんも一緒かもね」
律「だから、この下がってるのは何なの?
 鳥の巣?」
鳥の巣?

み「これは、杉玉と云って……。
 文字どおり、杉の葉っぱを玉にしたもの」
律「人間が作るの?」
み「当たり前でしょ」
杉の葉っぱを玉にしたもの

律「何のために?」
み「酒蔵の軒先に下げる習わしがあるの」
酒蔵の軒先に下げる習わし

律「へ~。
 でも、そろそろ取り替えどきなんじゃない?
 まっ茶色よ」
み「新酒が出来ると、取り替えるんだよ。
 真新しい緑の杉玉が下がると……。
 新酒が出来ましたって合図なわけ」
新酒が出来ましたって合図

律「へ~。
 面白いわね。
 Mikiちゃん、物知り!」
み「えっへん」
律「でも、何で杉の葉っぱを使うわけ?」
み「さ、早く入ろうよ」
律「何でよ~」
み「後で教えてあげる」
律「さては……。
 知らないな~」

 さっそく暖簾をくぐりましょう。
さっそく暖簾をくぐりましょう

律「面白そうなお店ね」
み「昔の商家みたいな感じだね」
昔の商家みたいな感じ

み「どうする?
 お座敷にする?」
お座敷にする?

み「あっちに、カウンターもあるけど」
カウンターもあるけど

律「2人なんだから、カウンターにしない?
 脚も楽だし」
み「そうだね」

 カウンター席は、お店の一番奥にありました。
 席からは、料理人さんの包丁捌きも見えます。
 一人で来ても、退屈しないかも。
 実際、単独のお客さんが、飛び飛びに座ってます。

律「2つ並んで空いてないみたいね」
み「やっぱ、お座敷にしようか?」

 わたしたちの声が聞こえたのでしょうか……。
 両脇の空いていたお客さんが、席をひとつ、ずれてくれました。

律「あ、すみませ~ん」

 律子先生は、お客さんに頭を下げながら……。
 空けてくれた席に、ちゃっかり座っちゃいました。

律「Mikiちゃん、どうしたの?
 突っ立ったままで」

 わたしの脚は、動きませんでした。
 そのお客さんは、着物を着てました。
 といっても、着流しではなく……。
 袴を穿いてます。
 細身の、ズボンみたいな袴です。
細身の、ズボンみたいな袴

 『剣客商売』で藤田まことが穿いてたみたいな、軽衫(かるさん)って袴。
軽衫

 後ろ頭は、きれいな白髪。
 その上には、茶の湯の師匠が被るみたいな、宗匠帽が載ってます。
宗匠帽

み『ま、まさかね……』

律「Mikiちゃんってば!
 せっかく席空けてくださったんだから、座りなさいって」
老「ほっほっほ。
 “袖すり合うも他生の縁”と言いますぞ。
 こんな年寄りと隣合って飲むのも、旅の思い出となりましょう」

 おじいさんが、ゆっくりと振り返りました。
菅江真澄
↑「秋田県立博物館」菅江真澄資料センターより

み「で、出たぁ~」
律「ちょっと、どうしたのよ?
 お知り合い?」
老「はて?
 わしは存じませぬが……」
み「す、すっとぼけおって……。
 おぬし、す、菅江真澄ではないか。
 こんなとこで待ち伏せしてるとは、大胆なヤツ」
大胆なヤツ


老「仇に出会ったようじゃの」
仇に出会ったよう

み「似たようなもんだわい。
 やぁやぁ、菅江真澄!
 ここで逢うたが百年目。
 盲亀の浮木優曇華の花咲く今月今夜のこの月を……。
 僕の涙で曇らせてみせよう」
僕の涙で曇らせてみせよう

律「Mikiちゃん……。
 お湯あたりしたんじゃない?」
お湯あたりしたんじゃない?

み「この人、江戸時代の人だよ」
律「恥ずかしいこと言わないでちょうだい。
 救急車呼ばれるわよ」
み「寒風山から、ずっとつきまとわれてるんだって」
律「わたしは初対面だけど」
み「最初の時は、時間を止めてたからね。
 帰りのバスでは、夢の中に出てきた」
夢の中


律「いいかげんにしなさい。
 ほんっとに、頭どうかしたんじゃないの」
老「面白い娘さんじゃ。
 はて。
 御新造さんだったかの?」
み「すっとぼけおって。
 わたしが独身のことくらい、知ってるくせに。
 何しろ、毎朝のオナニー、覗いてたんだからね。
 い、痛い痛いっ。
 先生、なんで耳引っ張るのよ」
なんで耳引っ張るのよ

律「ほんとに怒った。
 冗談が過ぎるわ。
 耳が千切れないうちに、座りなさいよ」
み「痛い痛い。
 耳なし芳一じゃないんだから」
耳なし芳一

み「あ~痛て。
 平家の亡霊級の馬鹿力」
平家の亡霊

律「うるさい。
 すみませんね、せっかく席譲ってくださったのに。
 普段は、これほど馬鹿じゃないんですけど。
 ほんとに、お湯に当たったのかしら?」
老「ほ~。
 『華のゆ』ですかな?」
律「え?
 どうしてわかるんです?」
み「やっぱり覗いてたなー」
やっぱり覗いてたなー

律「こら!
 まだ云うか」
老「実は……。
 覗いておりました」
律「え!」
老「というのは、もちろん嘘ですが……。
 わたしも、さっきまで『華のゆ』を利用しておりましてな。
 休憩室で休んでると……」
休憩室で休んでると

老「お2人の元気な声が聞こえて来ました。
 そのときと、同じお声のようでしたでな」
律「まー。
 シャーロック・ホームズみたいですわね」
シャーロック・ホームズみたいですわね

律「でも、恥ずかしいわ。
 何しゃべってたのかしら。
 この人、でっかい声出してたから」
み「わたしのせいかよ!
 しかし……。
 休憩室で、わたしらの声を聞いてるのに……。
 ここに先回りして飲んでるってのは、どういうわけ?」
律「そういえば……。
 妙ね」
老「それは、わたしも不思議でした。
 どこぞに、寄られたのではありませんかな?」
律「あ。
 ほら、『四丁目橋』の袂で……。
 だいぶ道草食ったじゃない」
み「あっ。
 ソープ街か」
ソープ街か

老「ほぅ。
 それはまた、勇ましい。
 温泉の後、ソープにまで行かれたとはの」
スケベ椅子
↑スケベ椅子と称するそうな

律「行ってません!」
み「覗いてただけ!」
老「なんじゃ。
 覗いてたのは、おまえさまの方ではないか」
覗いてたのは、おまえさまの方ではないか

み「うー。
 減らず口めー」
律「Mikiちゃん、店員さんが注文取りに来てるわよ」
み「あ、すみませんね。
 さっきから、そこ立ってたの?
 あなた、アルバイト?
 そう。
 おいくつ?
 若いわねー」
店「あの……。
 ご注文を」
み「はいはい。
 もちろん……。
 とりあえずビールね」
とりあえずビール

み「念のために云っておくけど……。
 “とりあえず”って銘柄じゃないわよ」
“とりあえず”って銘柄じゃない

み「ビールにかかる副詞だからね(←副詞は名詞には係らんぞ【HQ先生談】)」
律「飲む前から、絡むんじゃないの!」
み「へいへい。
 じゃ、生ビールを2つ。
 大ジョッキ、あるよね?」
大ジョッキ、あるよね?

律「中でいいわよ」
み「そんなの、ひと飲みじゃん。
 ノド渇いてんだから。
 それとも、中2つずつにする?」
律「恥ずかしい女ね」
み「すっぴんで気取ったってしょうがないでしょ。
 知ってる人もいないんだし。
 さーて、つまみは何にしようか?」
律「“きりたんぽ鍋”食べるんじゃなかった?」
“きりたんぽ鍋”食べるんじゃなかった?

み「あ、そうだった。
 ありますよね?
 お勧め?
 じゃ、それ2人前。
 あと、どうする?
 お鍋が煮えるまで、何か頼まなきゃ」
律「ほら、あれも食べるんじゃなかった?
 セリオンのお土産屋さんで見たヤツ」
み「なに?」
律「いぶりがっこ」
いぶりがっこ

み「あ、そうか。
 じゃ、それ。
 “いぶりがっこ”」
いぶりがっこ

み「ありますよね?
 お勧め?
 なんでもお勧めなんじゃないの?
 あと、どうする?
 お鍋が煮えるまで、“いぶりがっこ”だけじゃわびしいよな」
律「ほら、あれもあったじゃない。
 “しょっつる鍋”」
み「また、鍋?
 カウンターに鍋が2つも並んだら、暑苦しいでしょ。
 でも、ハタハタは食べてみたいよな。
 鍋のほかに、ハタハタ料理ってあります?
 え?
 塩焼きにお刺身、唐揚げに天ぷら」
塩焼きにお刺身、唐揚げに天ぷら
上=左:塩焼き(600円)/右:お刺身(650円)
下=左:唐揚げ(500円)/右:天ぷら(650円)

み「お寿司もあるの?」
左:寿司ハタハタ/右:寿司ハタハタのにぎり
左:寿司ハタハタ(600円)/右:寿司ハタハタのにぎり(2貫400円)

み「先生、どうする?」
律「Mikiちゃんは、生ものダメなのよね?」
み「わたしは、天ぷらにしようかな。
 先生は、お刺身食べれば」

 えーっと。
 この文章は、秋田川反漁屋酒場さんの『秋田の郷土料理』というページを見ながら書いてるですけど……。
 不思議な記述を発見しましたので、ちょっとご紹介します。
 「ハタハタのお刺身」の画像です。
ハタハタのお刺身

 「生でお召し上がりください」って、どういうことだ?
 秋田では、刺身を生以外で食べる風習があるんでしょうか?
 そういえば、「大分に行こう!」で……。
 お刺身を炙って食べたよな。
 『Mikiちゃん焼き』と名付けたっけ。
 秋田には、ほんとにそう言う食べ方でもあるんでしょうか?
 ネットを探してみたら……。
 「金目鯛の炙り刺身」なるレシピがありました。
 秋田じゃないけど。
 料理用バーナーで炙るそうです。
金目鯛の炙り刺身

 さらに、「太刀魚の炙り刺身」なるレシピも。
太刀魚の炙り刺身

 どうやら、「炙り刺身」という料理は、普通に存在するようです。
 考えてみりゃ……。
 「高知に行こう!」で、結局食べそこねましたが……。
 「鰹のたたき」なんて、「炙り刺身」そのものだよね。
鰹のたたき

 余談でした。
 お話を続けます。

律「お刺身ねー。
 でも、さっきから気になってるんだけど……。
 あの、すみません。
 それって、なんですか?」

 律子先生が、真澄(?)じいさんのお皿を指さしました。
真澄じいさんのお皿

老「これですかの。
 何に見えます?」
律「ポテトチップス、じゃないですよね?」
老「これは、『比内地鶏の鶏皮せんべい』と云います」
律「美味しそう。
 これにしよう」
み「夕べ、ニワトリはたらふく食べたろうに」
ニワトリはたらふく食べた

律「鶏肉の連チャンなら、ぜんぜん平気よ。
 コラーゲン、たっぷり取れそうだし」

 ということで……。
 さっそく、ビールが来ました。
ビールが来ました

み「デカっ」
律「それじゃ、とりあえず乾杯」
み「何に乾杯?」
律「秋田の夜に」
秋田の夜に乾杯

み「それじゃ……。
 かんぱーい」
律「かんぱーい」
み「うめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
律「ヤギか、あんたは」
ヤギか、あんたは

律「でも、ほんと美味しい」
み「五臓六腑に染み渡るぅぅぅ、ってやつだね」
律「オヤジなんだから。
 鼻の下に泡着いてるわよ」
鼻の下に泡着いてる

律「サンタクロースみたい。
 ちょっと!
 手で拭かないの!
 おしぼりがあるでしょ」
み「手で拭くのが、生ビールの醍醐味なの」
律「ほんとにもう。
 でも、醍醐味ってどういう味なんだろ?」
醍醐味ってどういう味?

み「それは……。
 マスミンに聞けばわかるよ。
 ダテに年取ってないから」
律「マスミンって誰よ?」
み「あなたの隣のおじいさん」
律「何でマスミンなの?」
み「名前が、真澄って云うんだよ。
 桑田真澄と同じ字」
桑田真澄と同じ字

み「だから、マスミン」
律「どうして、お名前まで知ってるのよ?」
み「もちろん、名字も知ってるぞ。
 菅江」
律「ほんとに知り合いなの?」
み「さっきも言ったでしょ。
 寒風山で、さんざんウンチク聞かされたんだから」
律「おかしいじゃない。
 わたしは初対面なんだから」
み「ま、わたしが選ばれたってわけだね」
律「ん?
 聞き捨てならんことを。
 Mikiちゃんとわたしが比べられて……。
 Mikiちゃんが選ばれたってこと?」
み「そのとおり」
律「納得いかん」
み「わたしの方が、ウンチクの語り甲斐がありそうだったからでしょ。
 先生にウンチク語っても……。
 馬の耳に何とやらで、面白くないって思ったんだろ」
馬の耳に何とやら

律「それはそれで、失礼ね」
み「ねー、マスミン」
老「ほっほっ、ほ。
 何のことですかな?」
み「すっとぼけちゃって。
 それじゃ、鶏皮が来るまでの場つなぎに……。
 とりあえず語っていいよ。
 醍醐味の意味」
老「わしの話は、突き出し代わりかの?
 まぁ良い。
 ツマミのひとつに語って進ぜよう。
 『醍醐』というのは、乳製品の熟成度を表す段階のひとつなんじゃよ。
 乳製品は……。
 熟成に従って、『乳(にゅう)』『酪(らく)』『生酥(しょうそ)』『熟酥(じゅくそ)』『醍醐(だいご)』の五味(ごみ)に分けられた。
 あとのものほど美味であったわけじゃな。
 すなわち、醍醐味とは、“最高の美味”を意味したわけじゃ」
醍醐味とは、“最高の美味”

み「わかった。
 バンドのゴダイゴは……。
 五番目の醍醐ってことなんじゃないの?」
バンドのゴダイゴ

律「そうなの?
 後醍醐天皇から来てると思ってた」
後醍醐天皇から来てる

み「そうか。
 それもありか。
 専門家の意見をどうぞ」
老「それは知らん」
み「なんだよ。
 これで終わり?」
老「終わりじゃ」
み「まぁ、いいか。
 話の長い男は嫌われるからね。
 でも、まだ鶏皮来ないなぁ」
老「よかったら、わしのを食べなさい」
み「うそー。
 いいのぉ?」
老「もちろん、あんたらのが来たら、返してもらうがの」
み「けち」
律「Mikiちゃん!
 すみませんね。
 でも、ほんと美味しそう。
 ちゃんとお返ししますから、1枚いいですか?」
老「どうぞどうぞ」
律「それじゃいただきます。
 !
 美味しいー。
 なんてジューシーなんでしょ。
 華やかな脂が、口の中で弾ける感じ」
み「食べ物紀行みたいだね。
 じゃ、わたしも1枚もらいます」
老「あげるんじゃありませんぞ。
 お貸しします」
み「けち」
けち

み「じゃ、わたしが1枚脱ぐから、鶏皮1枚ちょうだい」
老「積極的にお断りじゃ」
み「なに!
 あ、そうか。
 あなた、衆道さんだったね」
衆道さん

律「いったい何のこと?」
み「先生は、わからんでいいよ。
 夕食がマズくなるから。
 今日は、もろきゅうは頼まんぞ」
今日は、もろきゅうは頼まん

み「それじゃ。
 1枚“お借り”します。
 どれどれ。
 ん!
 ほんと、こりゃ美味しいわ。
 ビールのツマミには、最高だね」
律「もっと上手いこといいなさいよ。
 物書きでしょ」
み「だって……。
 ほんとは食べてないんだから……。
 書けないんだもん」
律「なにそれ」
み「でも、美味しいことは確かだよ。
 有名だもんね、比内鶏って」
有名だもんね、比内鶏

老「確かに有名じゃの。
 しかし、これは比内鶏ではない」
み「え?
 だってさっき、『比内鶏の鶏皮せんべい』って言ってたでしょ」
老「よくメニューを見なさい」
律「Mikikoちゃん、『比内地鶏』って書いてあるわよ」
み「ほんとだ。
 でも、おんなじ鶏なんじゃないの?
 どこかのお店の看板に……。
 『比内鶏』って書いてあったの見たよ」
お店の看板に『比内鶏』って書いてあった

老「もし、そのお店が……。
 ほんとうに『比内鶏』を食べさせてたとしたら……。
 大変なことじゃよ」
律「どうしてです?」
老「比内鶏は、国の天然記念物じゃからな」
比内鶏は、国の天然記念物

老「それを食べたりしたら、文化財保護法違反となる」
文化財

み「げ。
 そうなんだ」
老「今、俗に比内鶏と呼ばれ、食に供されておるのは……。
 比内地鶏のことなんじゃよ」
比内地鶏

老「それを、看板に『比内鶏』と掲げるのは……。
 表示上、問題があるじゃろうな」
律「どう違うんですか?」
老「もともと比内鶏は、秋田県北部の比内地方(現在の秋田県大館市)で、古くから飼育されてきた家禽じゃ」
比内地方

老「縄文時代以前から存在した鶏でな……」
縄文時代
↑奥さん色っぽい!

老「品種改良もされていない。
 ほぼ野鶏と云ってよいじゃろ。
 肉質はヤマドリに似て、風味はいいんじゃが……」

↑あしびきの山鳥の尾のしだり尾の……

老「成長が遅いうえに繁殖率が悪く、病気にもかかりやすい。
 ま、だからこそ、天然記念物になったわけじゃろうがの」
み「なるほどー」
老「で、この生産性の低さを解消するため……。
 別の種を掛け合わせる試みが行われた。
 結果、数百種の中から選ばれたのが……。
 アメリカ原産の、強健で多産なロードアイランドレッドじゃ」
強健で多産なロードアイランドレッド

老「つまり……。
 雄の比内鶏と雌のロードアイランドレッドを掛け合わせた一代限りの雑種、これが比内地鶏なんじゃよ。
 いわゆる“F1(一代交配種)”というやつじゃな」
み「マジ、うまいっす。
 ほんとにジューシーだね」
老「比内鶏の特徴である濃厚な脂の旨味を、見事に受け継いどるようじゃな」
比内鶏の特徴である濃厚な脂の旨味

み「なるほど。
 マスミンは、本物の比内鶏を食べたことがあるわけね?」
老「もちろんじゃよ」
律「え?
 天然記念物は、食べちゃいけないんでしょ?」
老「天然記念物になったのは、昭和17年のことじゃからな。
 わしが食べたのは、それ以前ということになる」
み「ま、江戸時代も、それ以前には違いがないけどねー」
江戸時代

律「また、わからんこと言う。
 でも、ほんと味が濃いって感じよね。
 歯ごたえもあるし」
老「噛みごたえがありながら……。
 加熱しても、固くなりすぎない。
 これも、比内鶏の特徴を受け継いどるな。
 鍋物には最適というわけじゃ」
比内鶏・鍋物には最適

律「ブロイラーの味とは、違いますか?」
ブロイラーの味とは、違いますか?

老「まったく違う。
 実は……。
 比内鶏とロードアイランドレッドを掛け合わせただけでは……。
 比内地鶏と認定されないんじゃよ」
み「え、そうなの?」
老「生まれだけでなく……。
 育ち方も規定されとる。
 すなわち……。
 ①28日齢以降で、平飼いか放し飼いで飼育されていること」
比内地鶏・平飼いか放し飼い

老「②28日齢以降で、1平方メートルあたり5羽以下で飼育されていること。
 ③雌は孵化日から150日間以上、雄は100日間以上飼育されていること」
み「へー。
 つまり、自由に歩き回れる状態で飼われてなきゃダメってこと?」
比内地鶏・自由に歩き回れる状態で飼われてなきゃダメ

老「そのとおり」
律「なるほど。
 ブロイラーとは違うわけですね」
老「実は……。
 これだけ厳しい規定が設けられたのには、ある事件がきっかけなんじゃ。
 平成19年に……。
 大館市の飼育業者が、長年表示偽装を行っていたことが発覚しての」
大館市の飼育業者が、長年表示偽装を行っていたことが発覚

老「以来、比内地鶏ブランドは、厳しい認証制度となった」
比内地鶏ブランドは、厳しい認証制度

み「偽装はいかんよね。
 その会社、倒産?」
老「破産じゃよ。
 会社更生など不可能。
 事が発覚した1週間後には全従業員を解雇、営業を停止したが……。
 取引先からの賠償請求額が大きすぎて……。
 再建など、とてもムリだったというわけじゃ」
み「報いは強烈だね」
報いは強烈

老「偽装は、いつか発覚する。
 そして、すべてを失う。
 この偽装で、いったいどれほどの利益を得ていたのか……。
 大した利益では無いはずじゃ。
 もし莫大な利益が出てたとしたら……。
 とっくの昔に発覚してたじゃろうからな」
律「長いこと、偽装してたんですか?」
老「どうやら、創業当時の1985年からやっとったらしい」
み「20年以上!
 よくバレなかったよね」
老「たしかに不思議じゃ。
 おそらく……。
 そんな偽装をしても、やっと利益が出るくらいの経営だったんじゃろ。
 川反で札束を巻くような羽振りなら、もっと早く疑われてたじゃろうからな」
大尽遊び

老「それに……。
 わしが思うに、この社長は、従業員から好かれていたんじゃないかな?」
律「どうしてです?」
老「偽装してることは、当然従業員も知っておったはずじゃ。
 従業員を大事にしない人なら……。
 とっくの昔に、クビになった従業員が密告してたじゃろ」
み「ひょっとしたら、そんなに悪いことしてる自覚が無かったんじゃないの?」
老「どうやら、そのようじゃ」
悪いことしてる自覚が無かった

老「そうでもなければ、あんな帳尻の合わない商売は出来ん。
 コツコツ稼いで、ドカンと失う。
 相場と一緒じゃよ」
相場と一緒

老「典型的な負けパターンじゃな。
 コツコツ100連勝しても、ドカンと1敗したら、それでゲームオーバー。
 食品偽装などというのは……。
 結局、まったく割りに合わない行為なんじゃよ」
律「その社長さん、どうなったんです?」
老「よく覚えてないが……。
 詐欺容疑で立件されたんじゃないかの」
み「いっそ、川反で大尽遊びして……」
大尽遊び2

み「早いうちにバレちゃえば良かったのにね」
老「そうじゃな」
東北に行こう!(21)目次東北に行こう!(23)



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