Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(9)
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ガ「でも……。
 今日は時間的に、難しいかもですね」
律「古い灯台なんですか?」
ガ「1898年(明治31年)の建造になります」
み「スゴ……。
 19世紀じゃん」
ガ「『日本の灯台50選』にも選ばれてるんですよ」
み「お~。
 入道崎が『日本の夕日100選』だから……。
 50選の方が、偉いじゃん」
律「灯台の数が少ないからじゃないの?」
み「日本には、いくつ灯台があるんだろ?
 ガイドさん、ご存じ?」
ガ「すみませ~ん。
 そこまでは……」
律・み「ですよね」

 ガイドさんに代わってお答えしましょう。
 (財)日本海事広報協会の、『灯台のいろいろ』によると……。
 現在、日本にある灯台の数は、3,300あまりだそうです。

 しかし……。
 こんな財団法人があるなんて、初めて知りましたね。
 国土交通省所管の財団法人だそうです。
 Wikipediaによると……。
-------------------------------------------------
「海の日」、「海の月間」を中心とした各種イベントの開催、資料類の作成・配布、年間を通じた全国の青少年を対象とした海事施設の見学会、乗船体験会等の実施、また、船員及びその留守宅家族向けの旬刊新聞「海上の友」や一般国民向けの隔月間雑誌「らめーる」の発行等の各種事業を実施し、海事知識の啓発活動を展開している。
-------------------------------------------------
 ということをやってるそうです。
 仕分け対象に、ならなかったのかね?

律「あそこになにか、モニュメントみたいなのが見えますけど……。
 何ですか?」
入道崎・モニュメント

ガ「あ、あれならわかります!
 『北緯40度線』を示すモニュメントです」
み「へー、面白そう。
 行って見ようよ」
律「ガイドさん、時間まだありますよね?」
ガ「もうちょっとだけ、大丈夫ですね。
 じゃ、わたしがお写真、お撮りしましょう」

み「でも、ここってほんと、真っ平らだよね」
入道崎・真っ平ら

律「整地したわけじゃないんですか?」
ガ「自然の地形です」

 これが北緯40度線のモニュメントです。
入道崎・北緯40度線のモニュメント

律「何で、2つに割れてるんですか?」
ガ「この割れ目を、北緯40度線が通ってるんです」
み「なんか、ヤラシイ形だね」
律「ヤラシイのは、あんたの頭。
 ほかにも、同じようなモニュメントがあるみたいですけど……」
入道崎・北緯40度線のモニュメント

ガ「みんな40度線のモニュメントです」
入道崎・北緯40度線のモニュメント群

ガ「一直線に並んでるんですよ」
入道崎・一直線に並ぶ北緯40度線のモニュメント

み「このモニュメントも、入道崎の火成岩?」
ガ「はい。
 火成岩の一種、安山岩だそうです」
律「おー。
 安産とは、縁起がいいじゃない。
 撫でとこっと」
ガ「え?
 おめでたですか?」
律「わたしが?
 そう見えます?
 まー、どうしましょ」
み「お世辞に決まってるでしょ」
ガ「いえいえ、とんでもない」
律「ほら、みなさい」
み「真に受けるんじゃないの。
 まさか、これから産む気じゃないでしょうね?」
律「あら、わからないわよぉ。
 まだまだ現役ですもん。
 ガイドさん、わたしっていくつに見えます?」
ガ「えー。
 お若くてらっしゃいます」
律「まさか……。
 18くらい?」
み「おい!」
ガ「おいくつでしょう?
 そうですね……。
 28歳くらい?」
律「何か奢らなくちゃね。
 Mikiちゃん、財布出して」
み「何で、わたしが財布出すのよ!
 3割方お世辞でしょ」
律「28の3割増しって、いくつよ」
み「三十……、六か」
律「いい線いってるじゃないの」
み「この人、40だよ」
ガ「えー!!
 うそー!
 絶対見えませんわ!」
律「訂正します。
 まだ、39です」
み「そうだっけ?」
律「そうなの!
 わたしはもう、歳を取らないことに決めたの」
み「根性入ってますね」
律「じゃ、39歳の記念を残さなきゃ。
 ガイドさん、お願いします」

 ガイドさんに携帯を渡し、2人でポーズ。

律「どっちが若く見えるかなぁ?」
み「図々しいヤツ!」
ガ「いきますよ~。
 はい、チーズ」

 パチリ。

 秋の日が、燦々と降り注ぐ入道崎。
秋の日が、燦々と降り注ぐ入道崎

 律子先生と2人で撮った写真。
 宝物が、またひとつ出来ました。

律「でも、こんな平らな岬なんて初めて見た。
 海が目の前に見えるんだから……。
 あの先で、急に落ちこんでるわけよね」
入道崎・平らな岬

ガ「入道崎は、日本海の荒波が削った海岸段丘なんです」
入道崎は、日本海の荒波が削った海岸段丘

み「へ~。
 てことは、半島が隆起したわけだね」
律「そうなの?」
み「海岸段丘ってのは、陸地が隆起してできるんだよ」
ガ「隆起したときは、半島じゃなくて島だったんですよ」
み「あ、そうか……。
 それでわかった」
律「なにが?」
み「ほら、海沿いを走りだしてから、突然景色がかわったじゃない。
 最初は、平らな砂浜が続いてたのに……」
男鹿半島の付け根・平らな砂浜

み「それが急に、岩だらけの崖になった」
男鹿半島・岩だらけの崖

律「確かに、そうだったね」
み「つまり、岩だらけの部分が……。
 海底から隆起した火山島、“男鹿島”ってわけだよ。
 で、半島の付け根の砂浜は……。
 川が運んで来た堆積物によって、男鹿島と本土が繋がった部分ってわけ」
律「なるほど」
み「だから、八郎潟は……。
 男鹿島まで繋がった南北の砂州に挟まれて、取り残された海だったってことだね」
八郎潟は、取り残された海

ガ「すごーい。
 こちらのお客さま、学者さんですか?」
律「そんな風に見える?」
ガ「ぜんぜん見えませんでした」
み「なんじゃそりゃ!」
律「この人はね、知識が著しく偏ってるだけ」
ガ「でも、スゴいです」
み「ま~な。
 しかし、見事な海岸段丘だね。
 どのくらい持ち上がったんだ?」
律「崖の高さは、30メートルあります」
み「30メートルって……。
 ビルの9階くらいあるよ」
ビルの9階

律「飛び降りたら、即死だわ」
み「こっから身投げする人も、いるんじゃないの?」
律「こわ~」
ガ「それでは、そろそろバスの方へお願いします」
み「は~い」
律「ちょっと、Mikiちゃん!」
み「何よ?」
律「あの人……」

 先生の指は、断崖の方を指してます。
 その指の先には……。
 女性の後ろ姿。
 断崖を覗きこむようにしてます。

律「何か、ヤバそうな雰囲気じゃない?」
み「まさか……。
 でも、あの後ろ姿……。
 あっ。
 ガイドさん、ガイドさん!」
ガ「そろそろ、バスの方へ」
み「それどころじゃないの!
 ほら、あの人!
 一緒のバスに乗ってる人じゃない?」

 黒っぽいジャケットに見覚えがあります。
 間違いなく……。
 例の、根暗ハイミス(人のことは言えんが)。

ガ「そ、そうみたいですね」
み「やっぱり……。
 飛び降りに来たんだ」
ガ「そんな!」
律「ガイドさん、何とかしなきゃ」
ガ「すみません。
 わたし、高所恐怖症で……。
 キャビンアテンダントへの夢は、それで諦めました」
キャビンアテンダントへの夢

み「み、右に同じ」
律「あんたもスッチーになろうと思ってたの?」
み「違うよ。
 高所恐怖症が、同じってこと。
 こうなったら、先生しかいません。
 行ってきて」
律「何でわたしなのよ!」
み「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」
清水の舞台から飛び降りる気持ち

律「飛び降りてたまるかい!」
ガ「どうしましょう」
み「つ、釣り竿借りてこようか?」
律「そんなもの、借りてどうすんのよ?」
み「こっから竿を振って……。
 針を襟首にひっかけるの」
律「そんな器用なこと、でけるかい!
 釣りキチ三平じゃあるまいし」
釣りキチ三平じゃあるまいし

み「ここはやっぱ、ガイドさんだね。
 匍匐前進すれば、なんとか行けるんじゃないの?」
匍匐前進すれば、なんとか行けるんじゃないの

ガ「そんなぁ」
律「あ、Mikiちゃん、あの人」

 なんと!
 モニュメント脇を、鉄道くんが通りかかってくれました。

律「すみません!」
鉄「へ?」
律「あれ、見てください。
 あの人」
鉄「あ、同じバスの人だ」
み「そんなことは、わかってるの!」
鉄「あ、あなたがたも同じバスの人じゃないですか。
 ガイドさんまでいる」
み「ノンキなこと言ってないで!
 早く助けて!
 あの人、飛び込んじゃうよ!」
鉄「えー!」
律「まさか、高所恐怖症とは言わせないわよ」
鉄「一応、大丈夫ですけど……」
み「早く行って!」
鉄「わ、わかりました。
 でも、みなさんもついてきてくださいよ。
 僕ひとりじゃ、止めきれないかも知れません」
み「男でしょ!」
鉄「追いつめられた人って、スゴい力出すっていいますから」
律「火事場の馬鹿力ってやつね」
鉄「気づかれないように近づいて……。
 僕が飛びつきます。
 そしたらみなさんは、僕の体に抱きついてください」
み「おい!」
鉄「何です?」
み「スゴくいい役じゃないか?」
鉄「そんなこと言ってる場合ですか!
 じゃ、気づかれないように……。
 ゆっくり近づきますよ」

 鉄道くんは、へっぴり腰のまま歩み始めました。
 新入りの泥棒みたいな、いかにも怪しい足取りです。
新入りの泥棒みたいな、いかにも怪しい足取り

 わたしたち3人も、同じ姿勢で続きます。
 端から見たら、どんな一団に見えたでしょう。

 OLさんは背中を丸め、足下を見つめてます。
 なんとか気づかれずに、近づけました。

 鉄道くんは、両手を前に差し出したものの……。
 鳩みたいに首を振って、タイミングを取ってるばかりで……。
 いっこうに飛びつこうとしません。
 じれったいやつ!
 怒りを込めて、背中を突いてやりました。

鉄「うわっ」

 鉄道くんは、ものの見事につんのめり……。
 OLさんに、後ろから抱きつきました。

OL「ぎゃー!
 何するんですか!
 離してください!」
み「離すんじゃないよ」
OL「痴漢ー。
 助けてー」
鉄「ち、違います!」
OL「何が違うのよ!
 こんなことしながら!
 離してー」
み「離すなよ!」
OL「あなたたち、いったい何なんですか!
 人が襲われてるのに、けしかけるみたいなこと言って!
 あ、あなたたち、同じバスの人!」
み「早まっちゃいけませんって!
 とにかく、落ち着いて!」
OL「こんな目にあって、落ち着いてられますか!
 後ろから抱きついてる人を、どうにかしてください!」
み「そうはいかないよ。
 離したら、崖から飛びこむつもりでしょ!」
OL「何言ってるの、あなた?」
律「Mikiちゃん……。
 ひょっとして、誤解かも」
み「何が誤解よ」
律「飛びこむつもりじゃ、なかったんじゃないの?」
み「そんなバカな!
 あなた……。
 今、ここから飛びこもうとしてましたよね?」
OL「してません!」
み「でも、崖っぷちで、下の方見てたでしょ」
OL「イヤリングを探してたんです!
 落っことしちゃったから」
み「え……」
律「Mikiちゃん、やっぱり誤解だよ。
 ちょっと、鉄道くん」

 鉄道くんは、何も耳に入らないらしく……。
 OLさんにしがみついたままです。

み「おいこら!」

 まだ、しがみついてます。

み「こいつ……。
 わざとじゃないのか?」
律「これ以上やったら、ほんとの痴漢よ」
み「成敗してくれる」

 思い切りハンドバッグを振り、後頭部を張り倒します。

 バシッ!

鉄「痛っ!」
み「離しなさいよ」
鉄「だって、さっきは離すなって……」
み「都合のいい方だけ聞くんじゃない!」
律「この人、飛びこむつもり、無かったみたいよ」
鉄「えー。
 そんなぁ」
律「とにかく、離してあげて」

 鉄道くんは、初めて自分のしてることに気づいたように……。
 OLさんの体から飛び離れました。

鉄「す、すみませんでした」

 ジャリッ。

 鉄道くんの足下で、小さな音がしました。

鉄「あれ?」

 鉄道くんが足を上げると……。
 靴の下には、秋の陽を受けて小さく光るものが。

OL「あった……」

 OLさんがしゃがみ込みました。
 光るものをつまみ上げます。

 それは……。
 貝殻のイヤリングでした。

OL「これを、探してたんです。
 でも……。
 割れちゃった」
鉄「す、すみませんでした!」

 鉄道くんが、OLさんの前に土下座しました。

OL「いいえ……。
 いいんです。
 いえ。
 ありがとう」
鉄「え?」
OL「このイヤリング……」
 崖から捨てるつもりだったんです」
入道崎・崖

OL「で、バッグから出したら、片方落っことしちゃって。
 捨てるつもりだったのに、落としたら惜しくなって……。
 探してたんです」
律「どうして、捨てようとしたの?」
OL「振られたんですよ。
 これをくれた男に……。
 でも、おかげで吹っ切れました。
 踏んでくれて、ありがとう」

 OLさんが、芝生に手を突いたままの鉄道くんに……。
 手を差し伸べました。
 鉄道くんは、泣き笑いのような顔をあげ……。
 おずおずと、その手を握ります。

OL「あなたたちは、恩人です。
 どうもありがとう。
 じゃ、見届けてください。
 わたしが、過去にさよならをするところを」

 OLさんが手の平を開きました。
 もう片方のイヤリングが、そこにありました。
 OLさんは、割れたイヤリングを重ねると……。
 もう一度、手の平を握りしめました。

OL「えいっ」

 止める暇もありませんでした。
 大きく一閃した腕が……。
 空高くイヤリングを投げ上げました。

全「あ」

 秋の空に、高く舞い上がったイヤリングは……。
 崖を越えたところで、キラリと光りました。
入道崎・秋の空

OL「さようなら!」

 貝殻のイヤリングは、秋の空気に吸いこまれていきました。
貝殻のイヤリングは、秋の空気に吸いこまれていきました
↑イメージ

み「あ~ぁ」
律「ほんとに、よかったんですか?
 イヤリング……」
み「きみ。
 崖降りて、拾って来て」
鉄「む、ムリっす!」
OL「いいんですよ。
 男鹿の海に、わたしの未練は消えました」
律「魚が飲みこんじゃわないかな?」
み「あ……。
 それで思い出した。
 こんな話があったんだって。
 ノルウェーの首都、オスロでのこと」
ノルウェーの首都、オスロ

み「今から30年くらい前の話だけど……。
 当時15歳のロバート少年が、フィヨルドに釣りに行った」
フィヨルドに釣りに行った

み「で、4キロもある大きなタラを釣りあげたの」
4キロもある大きなタラを釣りあげた

み「ロバート少年は、近くに住むおばあちゃんに、そのタラを持ってった。
 おばあちゃんは大喜びで、さっそく得意のタラ料理を作ってくれることに。
 で、ロバート少年がテレビを見ながら待ってると……。
 キッチンから、おばあちゃんの悲鳴が聞こえた。
 ロバート少年は、驚いてキッチンに飛びこんだ。
 おばあちゃんは、シンクの前に呆然と立ってたの。
 シンクの中には、切りかけのタラ。
 おばあちゃんは、血だらけの手の平を見つめてる。
 一瞬、手を切ったのかと思ったけど……。
 どうやら、違うらしい。
 ロバート少年に気づいたおばあちゃんは……。
 そっと、手の平を見せてくれた。
 おばあちゃんの手には、小さな指輪が載ってたの。
 そして、驚くべき事実をロバート少年に告げた。
 なんと、タラのお腹から出てきたその指輪は……。
 おばあちゃんが若いころ……。
 フィヨルドで泳いでるときに失くした、結婚指輪だったんだって」
律「スゴ……。
 それって、実話?」
み「もちろん!
 まったく作ってないよ(Mikiko注・ほんとうに実話です)」
律「ひょっとしたら……。
 あのイヤリング、天然の真鯛が食べちゃったかも?」
 そうだ。
 あなた、また男鹿にいらっしゃいよ」
み「わかった。
 そして、石焼き鍋を注文するわけだ」
律「そうそう」
み「で、鯛茶漬けを食べてると……」
美野幸・鯛茶漬けを食べてると

律「歯にガリッと当たる」
み「それが、今投げたイヤリングってわけね」
OL「おふたりとも、すごい想像力ですね。
 でも、そんなふうに、想像力を羽ばたかせると……。
 生きることが、楽しくなりそう。
 今日までのわたしは、自分の回りのことしか見えてませんでした。
 みなさん、ほんとにありがとう。
 今日からは、顔を上げて生きていきます」
み「うむうむ」
律「よかったよかった」

 ガイドさんは感極まったらしく、鼻を啜りあげてます。

み「あ」
律「何よ、いい場面で?」
み「出発時間……。
 過ぎちゃってるんじゃ?」
ガ「あ~~~。
 カンペキに過ぎてますぅ。
 みなさん、バスにお急ぎくださ~い」

 振り向いて、初めて気づきましたが……。
 われわれ5人は、すっかり注目の的になってました。
 人垣まで出来てます。
 ま、ムリもありませんよね。
 崖っぷちで揉みあってたかと思うと……。
 突然泣き出したり……。
 思い切り挙動不審集団でしたから。

ガ「どいて~。
 どいてください~」

 挙動不審の仕上げに、5人そろって猛ダッシュ。
 芝生広場を駆け抜けます。
入道崎の芝生広場を駆け抜けます

OL「きゃっ」

 振り向くと、OLさんがつまずいたようです。
 大きく上体が泳ぎ、両手を宙に突き出しました。
 なんと、その手を!
 脇を走ってた鉄道くんが、がっしりと掴みました。
脇を走ってた鉄道くんが、その手をがっしりと掴みました

 2人寄り添って走って来ます。

 ようやく芝生広場を抜け、駐車場に駆け込みました。
入道崎の駐車場

 バスの窓から、女子大生2人組がこちらを指差し、何か言ってます。

「すみませ~ん」

 ガイドさんが、真っ先にバスに駆け込みました。

「はぁ。
 はぁ」

 息が切れて、謝罪の言葉も出てきません。
 やっぱ、運動不足だな。
 頭を下げながら、席にヘタリ込みます。

女子大1「どうされたんですか?」

 後ろの女子大生が、クビを伸ばして来ました。

律「ごめんなさいね。
 この人が、飛んでもない勘違いしちゃって」
み「あ、あんたが言い出したんでしょ!」
律「そうだっけ?」
み「このアマ……。
 ま、もとはと言えば……。
 あの人が人騒がせだったんだよ」

 と言いつつ、OLさんを振り向くと……。
 ヘンな具合になってます。
 釣られて振り向いた女子大生も、驚いたようです。

女子大「うそ……」

 なんと、あのOLと鉄道くんが……。
 一番後ろの座席に、並んで腰掛けてます。
 OLさんは自分の水筒を開け、鉄道くんにキャップを手渡してました。
OLさんは自分の水筒を開け、鉄道くんにキャップを手渡してました

女子大1「いつの間に、あんなことに?」
女子大2「お昼前までは、違ってたよね」

 女子大生の頭からは、「?」が吹き出してました。

律「どうやら……。
 わたしの勘違いのおかげってわけね。
 さしずめわたしは、2人のキューピットってとこ」
さしずめわたしは、2人のキューピットってとこ

み「さっきは、わたしに押しつけたクセに!」

 バスは、とっくに走り出してます。
 しきりに謝ってたバスガイドさんも、ようやく息が整ったようです。

ガ「これから向かいますのは、真山神社(しんざんじんじゃ)でございます。
 参詣の後、男鹿真山伝承館のほうで、なまはげの実演を見ていただきます。
 その後は、なまはげ館の見学になります」

 入道崎を出て、しばらくは海岸沿いを走ってたバスですが……。
 やがて、海は見えなくなりました。
男鹿半島の山の中

ガ「真山というのは、男鹿半島にある山の名前です」
男鹿半島・真山

ガ「本山(ほんざん)、寒風山(かんぷうざん)とともに、古くから山岳信仰の霊場となっております。
 真山神社の創建は古く……。
 景行天皇の時代と伝えられております」
み「景行天皇!
 ウソでしょ……」
景行天皇

律「聞いたこと無い天皇だわ。
 いつごろの人?」
み「確か、第12代の天皇。
 半分神話の世界だよ」
天皇系図

み「↓日本武尊(ヤマトタケルノミコト)のお父さんなんだからね」
日本武尊

み「紀元前13年の生まれということになってる」
律「そんな時代から天皇がいたの?」
み「いるわけなかろ。
 まだ弥生時代なんだから。
 ↓卑弥呼が現れる250年も前」
卑弥呼

み「しかも、景行天皇の亡くなったのが、紀元後130年とされてる」
律「ちょっと……。
 何年生きたのよ」
み「143年」

ガ「景行天皇の御代……。
 武内宿禰(たけのうちのすくね)が男鹿を視察したおり、使命達成・国土安泰・武運長久を祈願し……。
 ニニギノミコト、タケミカヅチノミコトの主祭神を祀ったのが、真山神社の始まりとされております」
み「また出た!
 武内宿禰!」
律「有名人?」
み「昔のお札にも擦られてる」
昔のお札にも擦られてる武内宿禰

み「この人も、半分神話の世界の人。
 景行天皇の時代から、仁徳天皇の時代まで生きたことになってる」
律「結局、何年生きたの?」
み「283年」
律「ウソでしょ……」
み「天皇家の歴史を古くみせるため……。
 景行天皇みたいに、1代の天皇の在位年数を、実際より長くしてしまったせいだよ。
 だから、武内宿禰のように、何代もの天皇に仕えた人の年齢が、異常に長くなったとされてる」
律「なるほど」
み「もうひとつの考え方は……。
 武内宿禰は、1人じゃなかったって説」
律「あ、わかった。
 昔は、子供がお父さんの名前を継いだわけよね」
み「そうそう。
 “武内宿禰”を襲名したってわけ」

ガ「この真山神社は、“なまはげ”ゆかりの地となっております。
 毎年2月に行われる、“なまはげ柴灯祭り(せどまつり)”が有名です」
真山神社・なまはげ柴灯祭り

律「どんなお祭りなんですか?」
ガ「柴灯(せど)というのは、柴のかがり火のことです。
 雪山から下りてきた15体のなまはげが、柴灯火(せどび)の揺れる境内で、雄叫びをあげながら乱舞します」
律「面白そうなお祭りね」
み「灯火があるってことは、当然夜祭りだね」
なまはげ柴灯まつり

み「寒いぞ~」
律「そうかぁ。
 真冬の北緯40度だもんね」
み「平壌(ピョンヤン)より北なんだから」
ガ「でも男鹿半島は、内陸部よりは寒くないんですよ」
律「どうしてなの?」
み「あ、そうか……。
 わかった!
 対馬海流だ。
 佐渡が暖かいのと一緒」
ガ「そのとおりです。
 日本海を、暖流の対馬海流が流れ上がってるからなんです」
日本海を、暖流の対馬海流が流れ上がってるから

ガ「お客さま、やっぱり学者さんですね」
み「えっへん!」
律「また、調子に乗る」
ガ「奥のお山には、約千種類の植物が自生してるんですよ」
み「へ~。
 行ってみたいな」
ガ「今日はちょっと、難しいですね」
み「残念」

ガ「さてみなさま。
 これから、伝承館で“なまはげ”の実演を見ていただく前に……。
 “なまはげ”ゆかりの真山神社に参詣していただきます。
 しっかり拝んでおけば、きっと“なまはげ”さんに伝わって……。
 実演でも、やさしくしてもらえるかも知れませんね」

 13:20、真山神社に到着です。
 山門の向こうに、階段の参道が続いてます。
真山神社・山門の向こうに、階段の参道が続いてます

律「由緒ありげな神社ね」
み「やっぱり、山の神社はいいな」

律「あっ」

 山門の真下で、律子先生が声をあげました。

み「なに?」
律「あれ見て……」
み「あ」
真山神社・山門下の包丁

 さすが、“なまはげ”ゆかりの神社ですね。

 えっちらおっちら、参道を登ります。
真山神社・えっちらおっちら、参道を登ります

 ようやく、本殿が見えてきました。
真山神社・本殿が見えてきました

み「やっと着いたぁ」
律「さすが雰囲気あるわね」
真山神社・杉木立

 朝からずっと、海の風景ばかり見て来ましたが……。
 そこは真山ならぬ、“深山”の様相。

律「ほら見て、あの大きな木。
 ひょっとして、武内宿禰手植えの松とか?」
真山神社・榧の木の巨木

み「松じゃないでしょ」
律「何の木よ?」
み「針葉樹は、あんまり詳しくないんだ」
律「あ、立て札があるみたい」
真山神社・榧の木の立て看板

律「これ、何て読むの?」
み「わ、わからん……」
律「学者じゃないの?」
み「国語学者じゃないもの」
ガ「こちらは、榧(かや)の巨木になります。
 慈覚大師の手植えと伝えられておりますので……。
 樹齢は、1,000年を越えております」
律「やっぱり、手植えじゃないの」
み「植えた人が違うでしょ。
 ジカクって、どういう字を書くんですか?」
ガ「慈悲の“慈”に、“覚える”です」
み「一瞬……。
 違う字を想像しちゃったね」
律「あんたの頭の中は想像できるわ」
み「てことは、先生も同じ字を想像したってことじゃない。
 痔核……」
痔核

律「アクセントが違うじゃないの。
 そもそも、いつごろの人よ?」
み「1,000年以上前でしょ。
 この木の樹齢が、1,000年越えてるんだから。
 詳しくは、ガイドさん、どうぞ」
ガ「慈覚大師のお生まれは、西暦794年になります。
 桓武天皇が平安京に都を移した年。
 つまり、平安時代の始まった年です。
 最後の遣唐僧として唐にわたり、天台宗を大成させました」
遣唐船

ガ「慈覚大師というお名前は、諡号(しごう)と云いまして……。
 お亡くなりになった2年後の貞観8年(866年)……。
 清和天皇から賜ったものでございます。
 生前のお名前は、円仁さまと申します」
慈覚大師・円仁
東北に行こう!(8)目次東北に行こう!(10)



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