Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(6)
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律「男鹿半島って……。
 どのあたりだっけ?」

 ま、律子先生じゃなくても……。
 男鹿半島に対する認識は、誰も似たようなものでしょうね。

 地図で見ると、秋田県の海岸線はほとんど起伏が無く、なだらかです。
 でも、一カ所だけ飛び出てるとこがあります。
男鹿半島の位置

 矢印が、男鹿半島。

 ちょっと余談ですが……。
 この半島の付け根には、昔、八郎潟という大きな湖がありました。
干拓前の八郎潟

 琵琶湖に次ぐ、日本第2位の面積を誇る湖でした。
 しかし戦後、食糧増産を目的として、この湖の干拓が始まりました。
 ところがその後、国は……。
 食糧増産から減反政策に、大きく舵を切ることになります。
 でも、昔は事業仕分けなんか無かったので……。
 動き出した大事業を、止めることはできませんでした。
 そして……。
 20年の歳月と、852億円の費用を投じて、約17,000haの干拓地が造成されました。
干拓後の八郎潟

 失われた広大な湿地は、もう元には戻りません。

 さて、秋田駅東口です。

み「これから乗るバスは、東口から出てるの」
秋田駅・バス乗り場

律「バスで行くの?
 乗り継ぎとか、タイヘンじゃない?
 乗り遅れて2時間待ちとか、イヤだからね」
み「わがままなオナゴじゃのう。
 大丈夫。
 これから乗るのは、定期観光バス。
 『男鹿半島めぐり・なぎさGAOコース』ってのを予約してある。
『男鹿半島めぐり・なぎさGAOコース』

 8時40分に秋田駅を出発。
 男鹿半島を一巡りして……。
 秋田駅に17時40分に帰る、丸1日がかりのおまかせコース。
 知らない土地では、お任せ観光バスに乗っちゃうのが一番だよ」
律「なんだー。
 それなら安心だね。
 ところで、“なぎさがお”って何よ?
 渚みたいな顔ってこと?」
み「そりゃ、どんな顔だい!」
律「片平なぎさ似とか?」
片平なぎさ

み「おー。
 2時間ドラマでお馴染みの顔だ。
 でも、最近見ないよなぁ。
 考えてみれば、彼女、もう50過ぎてるんだよね」
律「ほんとに?」
み「たしか……。
 昭和34年生まれじゃなかったかな?」
律「ご主人いるんだっけ?」
み「いないんじゃない?」
律「えー。
 いるよ。
 ほら、あの人。
 船越英一郎」
船越英一郎

み「あのね。
 船越英一郎は、共演者でしょ。
 2時間ドラマの」
片平なぎさと船越英一郎

律「そうだっけ?」
み「船越英一郎は、奥さんいるよ。
 誰だっけかな?
 たしか、松居……」
律「秀喜?」
松井秀喜

み「あほか!」
律「あ、松居直美か!」
松居直美

み「違う!
 えーっと……。
 あー、思い出せないとイライラする。
 そうだ、松居一代だ!
 どんなもんだいっ」
船越英一郎と松居一代

律「お見事~。
 パチパチパチ。
 ところで……。
 何の話してたんだっけ?」
み「先生が振ったんでしょ!
 “なぎさがお”から、片平なぎさを!」
律「“なぎさがお”か……。
 なんか、近い言葉が出てくる歌があったよね?」
み「そんな歌あるの?」
律「ほら、松田聖子の……。
 “なぎさがお 見せたくな~くて”」
み「それは、“涙顔”でしょ!」


律「そうだっけ?」
み「もう!
 『風立ちぬ』、好きなのに。
 “なぎさがお”が、頭にこびりついちゃったじゃないのよ」
律「それは、お気の毒さま。
 ところで、結局何なのよ?
 “なぎさがお”って」
み「“なぎさ”は……。
 たぶんだけど、男鹿半島の海岸線を走るからだと思う」
律「“がお”は?」
み「水族館の名前。
 『男鹿水族館GAO』ってのがあるの」
男鹿水族館GAO

律「なんだ……。
 『男鹿水族館』は、わかるけど……。
 後に続く、GAOってなんなのよ?」
み「愛称でしょ」
律「どういう意味?」
み「わかりそうだけどな」
律「ヒント!」
み「もう、言ってるよ。
 『男鹿水族館』」
律「そりゃ、聞いてるけど……。
 どこがヒントなの?」
み「案外ニブい人だね。
 読者はきっとわかっちゃってるよ」
律「くっそー。
 悔しいけどわからん。
 教えて」
み「男鹿を反対読みしてみ」
律「……、“がお”。
 何と単純な……」
み「その単純な答えもわからなかったくせに」
律「複雑ならわかるの。
 単純すぎて、意表を突かれたんだよ」
み「負け惜しみ女め……。
 でも、男鹿の逆さ読みだけじゃなくて……。
 一応、意味づけされてるみたいよ。
 “Globe(地球)”“Aqua(水)”“Ocean(大海)”で、GAO」
男鹿水族館GAOのロゴ

律「また、そうやって繋げるわけ。
 恐るべし、秋田……。
み「ま、後付けっぽいけどね。
 しかし……。
 先生のおかげで、頭から“なぎさ顔”が抜けんわ……」
律「ところで、何時発なの?」
み「8時40分!
 さっき、言ったでしょ」
律「読者だって忘れてるよ」
み「あ、大事なこと忘れてた!」
律「何よ?」
み「乗車券買わなきゃ」
律「予約してるんじゃないの?」
み「もちろんしてるよ。
 この『なぎさGAOコース』は……。
 1週間前に予約が入らなければ、運休になっちゃうんだ」
律「ぶらっと来ても、乗れないってわけね」
み「運行される便に空席があれば、当日の飛び込みでもオッケー。
 でも、運休が決まっちゃった便を復活させることはできないよ」
律「なるほど。
 やっぱり、予約したほうがいいんだね」
み「そゆこと。
 それじゃ、割り勘ね。
 おひとり、5,300円です」
律「こういう料金って……。
 安いのか高いのか、わからんよな」
み「このコースは、絶対お得。
 丸9時間かけて男鹿半島を回って、この値段なんだから。
 しかも、男鹿水族館を始め……。
 施設の入場料が、みんな込み込み」

 案内所で乗車券を買って、乗り場に戻ると……。
 小さなバスが入って来ました。
秋田中央交通・小型バス

律「これなの?
 でっかい観光バスかと思ってた」
み「予約人数によって、配車されるバスが違うんだよ。
 てことは……。
 今日のお客は、8人以上ってことだね」
律「これより小さいバスがあるの?」
み「7人以下の場合は、ジャンボタクシーになる」
ジャンボタクシー

み「早い話、ミニバンだね。
 だから、予約が7人で、ジャンボタクシーが配車されてるときは……。
 飛び込み参加は出来ないんじゃないかな?」

 東口バスターミナル4番に並んでたのは……。
 わたしたちのほかには、ほんの数名でしたが……。
秋田駅・東口バスターミナル

 バスが入ったのを見たのでしょう、さらに数人が参集して来ました。

 そのうち一組は、いかにも怪しいカップル。
 男は、50代前半くらいでしょうか?
 町工場の社長みたいな感じ……。
 連れてる女性は……。
 ぜったい奥さんじゃないですね。
 30くらいの、派手なミニスカ女。
 ウェーブのかかった栗色の髪をしきりに気にしてる。
 “祝開店”の花輪が、光背みたいに見える感じ。
“祝開店”の花輪

 間違いなく、水商売でしょうね。

 もう一組、2人連れがいます。
 こちらは、若い女性。
 学生っぽい。
 と言っても、ビアンカップルではなく……。
 仲のいい友達のようです。
 今の時代、外見だけでは、都会人かどうか、わかりにくくなってますけど……。
 この2人からは、純朴そうな雰囲気が、湯気のように立ち上がってます。
 たぶん、地元の大学じゃないかな?
 でも、男鹿半島一周の観光バスに乗ろうというからには……。
 出身は、秋田県以外。
 山形とか岩手とか、隣接する県じゃなかろうか。
東北地方の県

 例の水商売女は、ときどき律子先生を窺ってます。
 目線には、対抗心というか、敵意というか……。
 かなり冷たいものがあります。
冷たい目線

 でも、むしろキケンなのは、女子大生のコンビですね。
 この2人も、ちらちら律子先生を窺ってるんだけど……。
 その目線は、明らかに“憧れ”色に染まってます(↓水着姿ではありませんが……)。
“憧れ”色の目線

女子学生1「こんな方と、1日男鹿半島を巡れるなんて……。
 幸せ!」
女子学生2「でも、隣にいる小猿女はなに?
 付き人かしら?」

 2人の頭からは、こんな吹き出しが生えてました。

 乗客は、あと2人。
 男女1人ずつですが、連れではないみたいですね。
 男の方は……。
 学生でしょうか?
 なんとなく、「鉄道研究会」に入ってそうな感じ。
鉄道研究会

 黒縁のメガネをずりあげながら……。
 女子大生コンビを気にしてる様子。
 でも、残念ながら……。
 彼女たちは、鉄道くんに興味は無さそうです。

 もう1人の女は……。
 う。
 暗い……。
 たぶんですが……。
 ハイミスでしょう。
 これに関しては、人のことは言えませんがね。
 歳は、わたしと律子先生の中間くらいかな。
 30代後半って感じです。
 なんか……。
 さんざん貢いだ男に捨てられての……。
 傷心旅行って感じですね。
 まさか、海に飛び込みに来たんじゃあるまいな。
飛び込み

 しかし自殺なら、観光バスには乗らないと思うし……。
 イマイチ、目的が不明です。

 乗客は以上、総勢8名。
 ま、袖すり合うも多生の縁と申します。
 今日1日を過ごすみなさん……。
 楽しく行きましょう。

 さて、もう乗ってもいいようです。
 可愛いバスガイドさんに迎えられ、バスに乗り込みます。
可愛いバスガイドさん

 乗客数8名は、車種が小型バスになる最小人員。
 小型バスの定員は20名くらいですから……。
 すごく贅沢な旅になります。

 2人連れは、自然と2人掛けの席を取ってます。
 右側の席に入り込もうとした律子先生を、腕を取って引き戻します。

み「そっちはダメ」
律「なんで?」
み「後でわかる」

 律子先生を、進行方向に向かって左側の窓際に押し込み……。
 わたしも、その隣に座ります。
 後から入って来た女子大生2人組は……。
 大胆にも、通路を挟んだ右側の座席に入りこみました。
 このバスで右側の座席を選ぶというのは……。
 まったくコースを予習してないか……。
 あからさまに律子先生が目当てか。
 たぶん……、両方でしょうね。
 振り返ると、右側に座りこんでる人は、けっこういました。
 ていうか、左側の座席を取ったのは……。
 わたしたちのほかでは、鉄道くんだけ。
 ま、彼は当然、コースをわかってるでしょうからね。

 さて、8:40。
 バスは、秋田駅を定刻に出発しました。
 秋田市街を抜けると……。
秋田市街

 やがて、朝方バスに乗ったセリオンが見えて来ました。
秋田港・セリオン

 知ってる人に会ったような懐かしさを感じましたが……。
 バスは素っ気なく通り過ぎてしまいます。

 すぐに海が見えてきました。
秋田港・セリオン近くの海

 歓声と共に……。
 たちまち、座席の移動が始まりました。
 そう。
 海は、左側に見えるんです。
秋田港・セリオン付近の航空写真

 このまま海岸線に沿って、男鹿半島の下側から入り……。
 半島を、時計回りに回ります。
 つまり、海はずっと左側に見えるわけですね。

 しばらく、なだらかな海岸線を走ると……。
 なんと!
 また、塔が見えて来ました。
セリオンを過ぎて、再び塔

 すかさずバスガイドさんが解説してくれます。

ガ「この塔は、天王スカイタワーと申します。
 高さは59.8メートル。
 展望室からは、八郎潟から男鹿半島、鳥海山まで一望出来ます」
天王スカイタワーからの眺め

律「セリオンよりは、だいぶ低いね」
み「セリオンは、143メートルあるからね」
ガ「お客さま、よくご存じですわ~」
み「調べあげて来ましたから」
ガ「それでは、問題です。
 天王スカイタワーで、セリオンより高いものがあります。
 それは何でしょう?」
み「げ。
 いきなり問題振られちゃったよ」
律「調べ上げて来たんでしょ。
 ほら、答えて」
み「わ、わからぬ……」
律「ガイドさん、降参みたいで~す」
ガ「それは……。
 入場料です。
 セリオンはタダですが……。
 天王スカイタワーは、400円かかりま~す」
み「……」
律「でも、セリオンに似てますよね」
ガ「ニセリオンと言う方もおられるようで~す」
律「秋田の人って、塔が好きなの?」
み「わたしに聞かないでちょうだい」

 ここらの海は、砂浜です。
男鹿半島の付け根・砂浜

 遠く見える島みたいなのが、これから向かう男鹿半島。

 しばらく行くと、バスが速度を緩めました。

ガ「左手をご覧ください」
客「おぉ」

 どうやらここはもう、半島の付け根のようです。
 男鹿半島の番人が立ってました。
男鹿総合観光案内所に立つなまはげ

 そう、男鹿半島と言えば、この方々ですね。

ガ「こちらは、男鹿総合観光案内所に立つ、なまはげです。
 高さは、15メートルあり……。
 世界一の高さを誇っております」
律「世界一って……。
 こんなの、秋田にしかないでしょ」
み「ま、“秋田一=世界一”だろうから……。
 嘘は言ってないけどね」
ガ「こちらの施設では、観光案内のほか……。
 パソコンをお使いいただける情報コーナー……。
 軽食喫茶コーナー、展示休憩スペースなどがあります。
 軽食コーナー「カメリア」の“わかめ昆布ソフトクリーム”は、ここの名物になってます。
男鹿総合観光案内所「カメリア」の“わかめ昆布ソフトクリーム”

 わかめと昆布を、ミキサーして混ぜてあるそうです。
 さっぱりとした抹茶のような風味ですよ。
 250円!
 安い!
 ぜひお試しあれ!
 でも、残念ながら……。
 今日は寄りません」
律・み「ありゃりゃ」

 なまはげに出会って……。
 いよいよ男鹿半島に入るんだという実感が湧いて来ましたね。
 わくわくです。

 さて、バスはなまはげに別れを告げ、またしばらく海岸線を走ります。
 海は、穏やかに凪いでます。
 あれは、港でしょうか。
秋田・船川港

 厳しい冬を前にした、つかの間の静けさでしょう。

 さて、秋田駅を出発してから、1時間と5分。
 9:45です。
 バスは、最初の目的地に停車しました。
 鵜ノ崎という海岸です。

 ここで何をするかと云うと……。
 単なるトイレ休憩です。
 停車時間は、10分。
 夏には、県内外からの訪問客で、大賑わいとなる海岸です。
 なので、↓のような水洗トイレも完備されてるんですね。
鵜ノ崎海岸・水洗トイレ

 シャワーもありました。
鵜ノ崎海岸・シャワー

 でもこれって、丸見えだよな。
 ここで裸になっても、いいんだろうか……。

 律子先生は、当然のことながら……。
 トイレに直行でした。
 当たり前だよね。
 ラーメンと冷やしのスープを、みんな飲んじゃったんだから。

 わたしはトイレは大丈夫そうなので……。
 駐車場から、海岸を眺めてみます。
 千秋公園同様、ここも「100選」に選ばれてます。
 「日本の渚・100選」。
「日本の渚・100選」鵜ノ崎海岸

 なんと、200メートル沖まで歩いて行けるという……。
 全国でも珍しい遠浅の海岸なんですね(↓遠くに見える山は、鳥海山)。
遠浅の鵜ノ崎海岸

 なので、海水浴場と云うよりは……。
 磯遊びのメッカ。
 磯には、小魚やカニ、エビ、ウミウシなどが、うようよいます。
鵜ノ崎海岸の生き物

 子供を連れてきたら、きっと帰りたがらないでしょうね。

 あと、鵜ノ崎には、もうひとつ見所があります。
 海に沈む夕日です。
 ここの夕日は、ちょっとスゴいようです。
鵜ノ崎に沈む夕日

 彼女を連れてきて、プロポーズしたら……。
 うっかりうなずいちゃうかも?

 でも、日本海に沈む夕日では、新潟も負けませんよ。
柏崎市「夕日が丘公園」
↑柏崎市にある、その名も「夕日が丘公園」

 さて、トイレ休憩も終わりです。
 バスに戻りましょう。

律「あー、すっきりしたぁ」
み「下品なこと言わないの」
律「あんな小説書いてて、よく言うわ」

「あのー」

 頭の上から声が降ってきました。
 振り向くと、例の女子大生2人組が……。
 わたしたちの後ろの席に立って、見下ろしてました。

学1「こちらの席に座っても、よろしいですか?」

 よろしいですかって……。
 もう、網棚に荷物まで上げてるじゃん……。

学1「パンフレットの地図見ると……。
 こちら側の席の方が……。
 眺めがいいみたいなので」
学2「お邪魔でしょうか?」
律「どうぞどうぞ。
 ぜんぜん大丈夫ですよ」
み(心)『大丈夫じゃないわい!
 ほかにも席があるじゃんかよ!』
学1「よかったぁ。
 それじゃ、お言葉に甘えて……」
学2「お邪魔します」
み(心)『ほんまに邪魔じゃ』

 とうとう2人は、座りこみました。

 さて、バスは再び走り出します。
 鵜ノ崎からは、一転して岩場の海が続きます。
鵜ノ崎海岸から続く岩場の海

 しばらく走ると……。
 バスガイドが立ち上がりました。
 でも、おかしな格好をしてます。
 進行方向を向いて……。
 わたしたちに背を向けて立ってるんです。
 バスガイドが、肩越しに振り向きながら……。
 左手を上向けて、窓の方を指しました。

ガ「左手をごらんください」

 乗客の顔がいっせいに窓を向きます。
 でも、さっきから変わらない海が続いてます。
 バスガイドは、窓を指した左手を見ながら、黙ってます。
 乗客の視線が、バスガイドに戻りました。

ガ「一番高いのが、中指でございます」
一番高いのが、中指でございます

 う。
 バスガイドの使う、古典的なギャグですね。
バスガイドの使う古典的なギャグ

 子供のころ、遠足で聞いた気がします。
 まだこんなこと言うんだ……。
 笑った方がいいのかな、と思ったとき……。

「わはははは」

 背後で笑い声があがりました。

 思わず振り返ると……。
 町工場の社長が、鼻の穴まで広げて笑ってました。
 バスガイドさんの顔には、満足げな笑みが浮かんでます。
バスガイドさんの顔には、満足げな笑み

 良かったね。
 外さないで。
 大笑いの社長に、親近感が湧いてきました。
 でも、ひょっとしたら……。
 ほんとに面白かったのかな?
 子供のころ、家が貧しくて、遠足に行けなかったとか?
貧乏神

 そんなこと考えてたら……。
 たとえ不倫旅行でも、許せる気になりました。
 良かったね。
 愛人連れて旅行できる身分になれて。
 観光バスだけど。

ガ「今度は、ほんとに左手をご覧ください」

 バスガイドは、ようやく乗客の方に向き直り……。
 窓の外を指しました。
 バスが速度を緩めます。

ガ「あそこにゴジラがおります」
ゴジラ

律・み「なにー」

 いるわけないと思いつつも、身を乗り出さずにはいられません。
 松井秀喜がいるわけじゃないよな?
松井秀喜

律「Mikiちゃん、ほら、いた!」
み「え?
 どこどこ?」
律「あの岩よ」
み「あ”」
ゴジラ岩

ガ「夕焼けにシルエットが浮かぶときは……。
 ほんとうに鳴き声が聞こえそうです」
夕焼けのゴジラ岩

律「ゴジラの場合も、鳴き声って云うの?」
み「わたしに聞かないでちょうだい」

 さて、ゴジラ岩を過ぎて間もなく……。

ガ「左手をご覧ください」
律「また?
 こんどは何?
 ガメラ岩?」
ガメラ

ガ「違います」
律「げ、聞こえちゃった」
み「先生は声が通るんだから、気をつけてちょうだい」
律「ほんと、ひそひそ話が出来ないんだよね。
 でも、何が見えるんだろ?」
み「また、出た~」
律「何が?」
み「ほれ、あそこ!」
門前のなまはげ

律「ゴジラから、また“なまはげ”に戻るわけ!」
ガ「こちらは、『門前のなまはげ』と呼ばれております。
 門前というのは、ここらあたりの地名です。
 高さは、9.99メートルになります」
律「なんで10メートルにしないの?
 建築規制?」
ガ「違います」
律「げ、また聞こえちゃった」
ガ「この近くには、長楽寺というお寺(上)と、赤神神社(下)というお社があります。
長楽寺と赤神神社

 昔はひとつだったのですが……。
 明治以降、神仏分離令により、お寺と神社に分けられたそうです。
 門前という地名は、このお寺と神社の“門前”という意味ですね。
 で、その赤神神社の方に、五社堂というお堂があります」
赤神神社・五社堂

み「神社にお堂?」
ガ「昔は神仏混合でしたから。
 神社から五社堂に向かう道には、“山門”もありますし……」
赤神神社・山門

ガ「五社堂には、観音菩薩像も安置されてます」
赤神神社・五社堂の観音菩薩像

み「見事に混合してますね……」

ガ「で、この五社堂へ登る石段の数が、999段なんです。
 なまはげの高さ、9.99メートルは、これにちなんでるわけですね」
律「でも何で、五社堂の石段は、999段なの?」
ガ「よくぞ聞いて下さいました!
 石段には、こんな伝説があるんです。
 むかしむかし……。
 漢の武帝が、男鹿にいらっしゃったそうです」
漢の武帝

み「う、うそこけ……」
律「武帝って、いつごろの人よ?」
み「確か、紀元前1~2世紀ごろ」
律「そんなら、キリストより古いんじゃない」
み「日本は、弥生時代のど真ん中だよ」
弥生時代

ガ「続けさせてもらってよろしいですか?」
律「どうぞ」
ガ「そのとき武帝さんは、白い鹿の引く飛車に乗り、五匹のこうもりを従えて来たそうです」
み「はぁ」
ガ「順繰りに解説してる時間が無いので……。
 いきなり、話をはしょりますね。
 鬼が、村人と賭けをしました」
み「は?
 漢の武帝はどうしたの?」
ガ「はしょりました。
 門前のなまはげの下には、伝説を記した銘板が掲げられてます」
門前のなまはげの下・伝説を記した銘板

ガ「もっと詳しく知りたい方は……。
 こちらをご覧ください」

ガ「さて、お立ち会い。
 鬼と村人が、どんな賭けをしたかと云いますと……。
 鬼が一夜にして千段の石段を築くことが出来たら……。
 毎年ひとりずつ、村娘を差し出すというもの」
律「ひどいじゃないの!
 村人は、そんな賭けを受けたの」
ガ「さようです」
律「許せん!」
ガ「わたしに怒られても……。
 で、翌日、日が暮れるとさっそく鬼が現れ……。
 石段を築き始めました。
 あれよあれよという間に、石段は積み上がり……。
 とうとう、999段まで出来てしまいました。
 このままでは、毎年ひとりの娘を差し出さなければなりません!」
律「そんな賭けなんか、効力無し!
 無効よ!」
ガ「話を続けていいですか?」
み「どうぞ」
ガ「石段が999段まで積み上がった、その時!
 村人のひとりが、ニワトリの鳴き真似をしました。

『コケコッコー』
アサー

 朝が来たと勘違いした鬼は……。
 千段目の石段を放り出し、山へ逃げ帰って行きました。
 というわけで、五社堂の石段は、999段なんです」
五社堂の石段は、999段

律「その村人、偉い!
 初代江戸家猫八じゃないの?」
初代江戸家猫八の墓

み「違うと思います」

 お話を先に進めましょうね。
 ゴジラ岩を過ぎたあたりから、バスの進行方向が北に変わってます。
男鹿半島・ゴジラ岩を過ぎたあたり

 もう、男鹿半島の先っぽの方まで来たんですね。
 少し行くと、バスは大きな駐車場に入りました。

ガ「こちらは、バスの中からの見学になります。
 あそこに見えますのが、“大桟橋(おおさんばし)”と書いて……。
 “だいせんきょう”と読ませる、男鹿西海岸を代表する景勝地となっております」
「桟橋?
 そんなもん、どこにも見えんで」

 後のセリフは、町工場の社長です。

ガ「『大桟橋(だいせんきょう)』は、自然が造りだした桟橋です。
 日本海の荒波が、長い年月をかけて、大きな岩をくり貫きました」
大桟橋(だいせんきょう)

社「おぉ、あれか。
 下を潜れそうやのー。
 ひとつ、このバスで潜ってみてくれるか」
ガ「承知いたしました。
 それではこれから、救命胴衣をお配りいたします」
救命胴衣

社「マジかよ!」
ガ「ウソです。
 でも、海上遊覧船なら、ほんとに潜りますよ」
男鹿・海上遊覧船

社「怖い姉ちゃんや。
 しかし、ぎょうさん魚がおりそうやのぅ」
ガ「クロダイやマダイがよく釣れるそうです」
クロダイやマダイ

ガ「でも、この岩場には、舟でなければ行けません」
社「遊覧船から、釣りは出来へんのか?」
一本釣り

ガ「もちろん……。
 出来ません!
 他社の宣伝をするようでアレですが……。
 海上遊覧船はお勧めです。
 男鹿のほんとうの景観は、海から見て初めてわかるものです。
 かつて海賊が隠れ家にしたという『孔雀の窟(こうじゃくのくつ)』なんかは……」
孔雀の窟(こうじゃくのくつ)

ガ「海からしか見えないですし。
 こちらの『大桟橋』も、上からじゃ、全容は見えてません。
 奇岩怪石の続く磯場から、一気に山に駆けあがる傾斜こそが、男鹿ならではの景観です」
男鹿ならではの景観

ガ「男鹿海上遊覧船は、この先の男鹿水族館前から出ております。
 9:00、10:00、11:00、13:30、15:00の1日5便。
 所要時間は50分。
 料金は、大人1,500円、子供750円。
 ただし、乗客数5名以上で運行となりますので……。
 お誘い合わせてのご利用をお勧めします。
 なお、冬は海が荒れますので……。
 11月から4月末までは、運行しておりません」

律「へー。
 乗ってみたいな」
み「わたしはパス。
 怖そうだから」
律「船が怖いの?
 フェリーに乗って来たじゃない」
み「戦艦みたいなフェリーと、吹けば飛ぶような遊覧船を一緒にしないでよ。
 安心感が大違い」
律「大丈夫だって。
 事故があったなんてニュース、聞かないじゃない。
 このバスツアーに組み込んであればいいのにね」
み「あったら申し込んでないわい」
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