Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(2)
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律「……。
 な、な、なんじゃこりゃ~」
み「『カラ揚げ』と『ムシ焼』でしょ」
律「そんなの、見ればわかるよ!
 でもこれ……。
 と、鳥の形してるぅぅぅぅぅ」
「せきとり」『カラ揚げ』と『ムシ焼』

み「わたしが、お腹いっぱいにしないでって言ったわけ……。
 わかったでしょ」
律「……はい。
 こんなデカいのが出てくるなら、ちゃんと言ってくれればいいのに」
み「言ったら、おもろくないじゃん」
律「でも、鳥の形してるってことは……。
 丸焼き?」
み「違うよ。
 半分。
 鳥を、真っ向唐竹割りにしてあるんだ」

律「それにしても……。
 デカい……」
み「差し渡し30センチくらいはありそうだね。
 ネットの情報では、400gくらいって書いてあった」
律「そんなもん?
 もっとありそうだよ。
 ニワトリの半身なんだからさ」
み「ニワトリったって、若鶏だけどね。
 新潟市民にとって、カラ揚げと云えばこれなんだけど……。
 やっぱり、他県人はたまげるみたいだね」
律「大いにたまげた」
み「ケンミンショーでも、取り上げられたみたいだよ」
律「こういうのって、旅の醍醐味だね」
み「おー。
 それを感じて欲しかったんです」
律「あのさ……。
 再び、あの“時価”ってのが気になってきたんだけど……。
 ひょっとして……、何千円?」
み「そんなにするわけないでしょ」
律「だって、鳥の半身だよ」
み「北京ダックじゃないんだから」
北京ダック

み「カレー味の半身カラ揚げは、新潟のソウルフード」
 庶民のお総菜なんだから」
律「だから、いくらなのよ!」
み「だいたい、700円から800円の間くらいみたい」
律「安!
 買った!」
み「もう買ってます。
 早く食べよう。
 冷めちゃうよ」
律「ちょっとタンマ。
 その前に、携帯で写真撮っとく。
 う~ん。
 比べるものがほしいな。
 そうだ。
 タバコ、タバコ。
 サイズの比較にはこれが一番」
み「禁煙しないの?」
律「するもんか」
み「臭いで、患者さんから文句が出ない?」
律「朝起きてから勤務が終わるまでは、1本も吸いませんから」
み「なんだ。
 わたしといっしょだ。
 撮れた?」
律「ばっちり」
み「病院で、新潟の『カラ揚げ』、宣伝してね。
 じゃ、食べようか」
律「あのさ。
 これって……。
 どうやって食べるの?」
み「どうやってもなにも……。
 かぶりつくしかないんじゃないですか?
 ギャートルズばりに」
肉にかぶりつくギャートルズのゴン

律「ここ出たあと、宿に入るだけなら……。
 かぶりつきもいいけどさ。
 これから、乗り物乗るわけでしょ。
 ギットギトにはなりたくないよ」
み「だって、割り箸だけで食べるなんてムリだよ。
 ナイフとフォークあるか、聞いてみる?」
律「そんなの使ったら、美味しさ半減だよ。
 メンドクサくて。
 やっぱり、手に持ってかじりつかなきゃ」
み「じゃ、どうすんのよ!」
律「いいの、持ってんだ」

 律子先生は、バッグを膝の上に載せ、中を探ってます。

律「ほら、ちゃんとMikiちゃんの分もある」

み「何これ?」
律「見りゃわかるでしょ。
 使い捨てのビニール手袋」
使い捨てのビニール手袋

み「何でこんなの持ってんのよ?」
律「わたしは医者よ。
 いつ何時、緊急の場面に遭遇するかわからないでしょ。
 たとえ旅先でも、ひととおりの処置が出来る準備をしておく。
 これが、医者の勤めです」
み「志は立派ですが……。
 それを、カラ揚げ食べるのに使っていいの?」
律「今は、緊急の場面です。
 手袋はまだあるから、大丈夫。
 カニ食べるときにも、便利だよ」
み「食事に使うの、初めてじゃないわけね……」

 さーて、ピッチピチの手袋をはめ……。
 律子先生は、カラ揚げを両手で持ち上げました。
 わたしは、蒸し焼きを……。

律「それじゃ……」

 目線を合わせ、ニッコリ。
 本日、至福の瞬間です。

み「いっただきま~す!」
律「いっただきま~す!」
み「肉汁がこぼれるっ。
 ほれほれ」
『せきとり』カラ揚げ・肉汁

律「それじゃ、さっそく一口……。
 ウマい!
 ていうか、これ、カレー味じゃん!」
み「さっき、言ったでしょ!
 『カレー味の半身カラ揚げは、新潟のソウルフード』だって」
律「ごめん、聞いてなかった」
み「聞けよ……」
律「こんなの初めて~。
 美味しいね~」
み「また聞いてないな……。
 カレー味カラ揚げの発祥は、この『せきとり』なんだよ」
律「聞いてるわよ。
 すごいアイデアだと思う」
み「前にも言ったけど……。
 養鶏業をやってた関さんが、屋台で、飼ってたニワトリを揚げて売り始めたわけ。
 これが『せきとり』の起源」
律「ふむふむ。
 “関の鳥屋”で『せきとり』だったね」
み「屋台ったって、飲み屋じゃないんだよ。
 総菜屋だね。
 近所の主婦が、夕食のオカズとして買いに来る屋台。
 だから、こんな住宅街の真ん中で始めたわけ」
律「なるほどー」
み「鳥を細かくパーツに切り分けちゃうと……。
 捨てるとこが出て、もったいない。
 下ごしらえにも時間がかかる。
 で、鳥を、真っ向唐竹割りにして、半身ずつ揚げちゃったわけ」
律「半身サイズは、発祥時からなんだね」
み「そう。
 で、味付けなんだけど……。
 最初は、砂糖醤油を考えたんだって。
 でも、漬け置きしなきゃならないとか、手間がかかるので断念」
律「ふむふむ」
み「そこで思いついたのが、これ。
 カレー粉をまぶして揚げたところ……。
 子供たちにばかうけしてね。
 当時は、電子レンジの無い時代でしょ。
 持ち帰って、夕食に出すところには、鳥はもう冷えちゃってるわけ。
 でも、カレー粉の味付けは、冷えても美味しかったそうよ」
律「わたし、冷えたカレー、大好き」
み「あれ、美味しいよね」
律「そっちの蒸し鳥も美味しそうだな。
 ちょっと交換しよう」
み「うん」
律「うわっ。
 何、このプルプル感。
 に、肉がとろけてるぅぅ」
『せきとり』ムシ焼き・ぷるぷる

み「鶏ガラのスープで蒸してあるそうだよ」
律「コラーゲンのカタマリって感じじゃない。
 骨からお肉が、ぺろりんって外れるよ」

バリ、バリバリバリ。

律「ちょっとMikiちゃん、何その音?」
み「軟骨かじってる音に決まってるでしょ」
律「骨まで食べるの?」
み「骨じゃなくて、軟骨。
 コラーゲンのカタマリ。
 医者でしょ?」
律「鳥の医者じゃないもん」
み「律子先生は、止めといた方がいいよ」
律「何でよ?」
み「お年のせいで、歯が弱ってらっしゃるから」
律「バカにすな!
 いくつも違わないでしょ!」

ボリ、ボリボリボリ。

み「ははは。
 わかったわかった。
 まだまだ若いよ」

 大きな音を立てながら軟骨をかじり始めた2人を……。
 常連風のおじさんが、目をまん丸にして見てました。

み「ふ~。
 食った」
律「あんなに大きかったのに、ぺろりと食べちゃったね」
ニワトリの骨格

み「久々に、充足感のある食事であった。
 やっぱ、獲物の形した肉を平らげるのって……。
 食いながら、気分が高ぶる」
律「ヘンな方向に高ぶらないでよね」
み「それは先生でしょ」
律「でも、さすがに満腹した。
 もう食べられません。
 ビールも入らない。
 発車時間は、まだいいの?」
み「まだまだ、たーっぷりある」
律「えー。
 それまで、どうすんのよ」
み「次の店、行こう」
律「出発前から、ハシゴ?」
み「どうせここは、9時半で終わりなんだ」
律「9時半!
 何でよ?」
み「もともと、総菜屋だからね」
律「そういえば、さっきから……。
 持ち帰りのお客さんが、ひっきりなしだね」
み「みんな、晩のオカズに買って帰るわけ」
律「創業当時からの役割は……。
 テレビに取り上げられるようになっても変わらないってわけね」
み「そゆこと。
 身を持って体験してると思うけど……。
 『カラ揚げ』ひとつ食べれば、お腹いっぱい。
 あのボリュームなんだから。
 だから、9時半閉店で正解」
律「なるほど。
 たしかに、もうビールも入らないよ。
 カンペキに妊婦腹。
 ほら見て」
妊婦腹

み「出すな!」

 次に予定してるお店は、腹ごなしに歩いても行ける距離ですけど……。
 やっぱり、妊婦腹に旅行バッグじゃ辛いです
 携帯でタクシーを呼びましょう。

 タクシーを待つ間に、お勘定。
 時価の『カラ揚げ』と『ムシ焼き』。
 この日は共に、750円。
 2本で、1,500円。
 『焼き鳥』が4本で、520円。
 頼んだ食べ物はこれだけ。
 ほかに、お通しのお新香と、お皿に付いた生キャベツがありますけど……。
 もちろん、タダです。
 食べ物の合計が、2,020円。
 次に、飲み物。
 ビールのジョッキは680円。
 ひとり2杯ずつで、4杯。
 計、2,720円。
 飲み代の方がかかっちゃったな。
 合計、4,740円。
 ひとり頭、2,370円です。
 ま、宴会の1次会としては、安くあがったんじゃないの?

 精算を済ませると同時に、外でクラクションが鳴りました。

律・み「ごちそうさまでした~」

 引き戸を出たところに、タクシーが待ってました。

み「東堀通りの9番町まで」

 新潟の街中を、大ざっぱに説明しておきます。
 新潟駅から、萬代橋で信濃川を渡ったところが、新潟市の中心街です。
 ここは、新潟島という地域。
新潟島

 信濃川と、関屋分水路、そして日本海に囲まれた島なんです。
 で、この信濃川と平行して、5本の通りが走ってます。
 信濃川に近い方から……。
 上大川前通り、本町通り、東堀通り、古町通り、西堀通り。
上大川前通り、本町通り、東堀通り、古町通り、西堀通り

 これらはメインの通りで、もちろん、このほかにも通りはあります。
 で、この通りと直行して、たくさんの小路が走ってます。
 つまり新潟島では、信濃川と平行する道路を「通り」、それと直行する道路を「小路」と呼ぶんですね。
 道路の広さなんかは、関係ありません。
 柾谷小路は6車線ありますし、東新道通りは自転車ですれ違うのがやっとです。

 で、通りには、小路で区切られた区画ごとに、「番町」という地番が付いています。
 信濃川の上流側が1番町。
 下流に下るに従ってナンバーが増えます。
 番長の若い上流側を、上(かみ)、下流側を、下(しも)と呼びます。
 番町は、通りごとに違いますが、11番町~14番町まであります。
 1番町から、14番町まで歩くと、30分くらいはかかるでしょうか。

 この新潟島地域は、自然に出来た街ではありません。
 江戸時代の初めに、街ごとここへ引っ越してきたんです。
 元の街は、もっと海に近い砂丘の上にありました。
 でも、信濃川の流れが変わって……。
 砂丘の麓にある川港が浅くなり、大きな船が入れなくなりました。
 で、それまで信濃川の中州だった今の場所に、街ごと引っ越して来たんです。
 というわけで、最初から計画されて作られた街なので……。
 碁盤目とまではいきませんが……。
 ある程度わかりやすくなってます。
 なので、東堀通りの9番町と云えば……。
 だいたいどのあたりか、わかるわけです。

 タクシーは、あっという間に着いちゃいました。
 運ちゃんには申し訳ない。

律「さっきよりは街中みたいだけどさ。
 なんか、閑散とした場所だね。
 飲み屋なんか、あるの?」
み「飲み屋街は、そっちの坂内(ばんない)小路を折れたとこと……。
 通り1本向こうの古町通りにある。
 あ、昼間なら、ここからでも、『鍋茶屋』の裏っかわが見えるんだけどな」
律「有名なお店?」
み「弘化3年(1846年)創業の料亭」
新潟・鍋茶屋

み「確か、明治41年に火事で全焼して……。
 今の建物は、明治43年の建築。
 文化庁の有形文化財になってる」
鍋茶屋・有形文化財

み「この東堀通りから見る裏っかわも、なかなか面白いんだよ」
東堀通りから見た鍋茶屋

律「ところで、この道路、やけにだだっ広く感じるんだけど……。
 夜のせい?」
み「この道路は、東堀通りって云って……。
 昔は、文字どおり東堀という堀が流れてたんだ。
 堀の両側に、道路が付いてた」
新潟・昔の東堀

み「今は、堀が埋められて……。
 道路2本と堀が、1本の道路になったわけ」
律「それで広いのか」
み「あ、そうだ。
 夜だから見えないけど……。
 この通り沿いの、ちょうど鍋茶屋の向かい側に……。
 もうひとつ、全国的に有名なお店がある」

み「『加島屋』っていうんだけどね」
加島屋

律「それも料亭?」
み「じゃなくて、水産物の加工品を売るお店。
 こちらは、安政二年(1855年)の創業。
 高級品だぞ~。
 さけ茶漬けなんか、200gの瓶で、2,310円」
『加島屋』さけ茶漬け

律「高かっ」
み「ま、贈答品でもらうかしないと、ちょっと食べれないね。
 でも、一口食べると……」
律「ゴクリ……」
み「世に出回る鮭フレークの類とは、まったく別の食べ物であることがわかるよ」
律「お酒の締めに良さげだね」
み「絶品です。
 あれが待ってると思えば、みんなお家で飲みたくなるんじゃないの?」
律「すぐそこなら、買って来たいな」
み「残念ながら、もう閉店時間過ぎてる。
 たしか、19時までだったな」
律「早……」
み「本店の2階には、食事処もあるから……。
 昼間来るといいよ」
『加島屋』食事処

律「おのれ……。
 夜に連れてきてそんなこと言うか……。
 東京でも買える?」
み「オンラインショップがあるよ」

律「ところで、わたしたちはどこで飲むのよ?」
み「目の前」
律「『きた山』……。
 これも、有名なお店?」
み「有名な蔵元のアンテナショップ」
律「なんて云う蔵元?」
み「石本酒造」
律「案外……、普通の名前。
 ほんとに有名なの?」
み「ほら、お酒の名前が書いてあるでしょ」
律「鳥食べたせいか……。
 鳥目で」
み「老眼じゃないの?」
律「うるさい!
 どれどれ……」
『きた山』看板

律「『越乃寒梅』!
 知ってる!
 患者のお父さんから、1本もらったことがある。
 美味かったなぁ」
み「石本酒造は、『越乃寒梅』の蔵元だよ」
律「そこのアンテナショップなら、『越乃寒梅』が飲めるわけね」
み「当然。
 普通酒から大吟醸まで、ぜんぶ揃ってる。
 それどころか……。
 鍋に『越乃寒梅』を4合も注いだ、超豪勢なしゃぶしゃぶまでいただけます」
『きた山』越乃寒梅を4合も注いだ超豪勢なしゃぶしゃぶ

律「よし!
 入ろう」
み「待ちなさい。
 『きた山』は、予約が必要なの。
 それに、ここも9時半までだしね」
律「また、9時半!
 それなら、何でここに降りたのよ!」
み「わたしたちが入るのは、こっち」
『越乃寒梅 Manjia』

み「『きた山』の2階が、ダイニングバーになってるわけ」
律「ほー。
 でも、ここも10時までじゃん!」

 さっそく、階段を上がりましょう。
『越乃寒梅 Manjia』階段

律「へー、いい雰囲気じゃない」
『越乃寒梅 Manjia』内部

み「だろー。
 と言いつつ、わたしも初めてなんだけど」
律「なんだ、行きつけのお店じゃないの?」
み「外でお酒飲んでる時間なんてないの。
 早起きして、小説書かにゃならんのだから」
律「寂しいヤツ」
み「何とでも言え。
 石本酒造の本社の方なら、ときどき脇を通るんだけどね。
 柴垣に囲まれてて、ちょっと会社には見えないよ」
石本酒造の本社

律「本社って、どこにあるの?」
み「うちから、そう遠くないところ。
 新潟市江南区の北山」
新潟市江南区北山

律「それで、アンテナショップの名前が『きた山』なのか」
み「そゆこと」

 カウンターもありますが……。
『越乃寒梅 Manjia』カウンター

 窓際のテーブル席に座りましょう。
『越乃寒梅 Manjia』テーブル席

律「『せきとり』とは……。
 さすがに雰囲気違うね」
み「お腹出したりしないでよね」
律「するかい!」

 メニューを見ると……。
 コース料理を始め、フランス料理風の名前が並んでます。
『越乃寒梅 Manjia』メニュー

律「日本酒でフランス料理か……。
 オトナだねぇ」
み「淡麗辛口の越乃寒梅は、ワインと飲み口が似てるのかもね」

 しかしながら……。
 ニワトリを半身食べてきた腹には、もうフランス料理の入る余地はありません。
 「シーザーサラダと生ハム」を一皿取って……。
 あとは日本酒を楽しみましょう。

律「ひとつの銘柄なのに、いろんな種類があるね。
 大吟醸とか本醸造とか……。
 何がどう違うのよ?」
『越乃寒梅』ラインナップ

み「わからぬ。
 わたしは、白ラベル(普通種)しか飲んだこと無いもん」
律「それじゃ……。
 せっかくだから、大吟醸というヤツを頼んでみようか」
み「おー。
 それじゃ、ぬる燗で飲んでみようよ」
律「えー。
 冷やで飲むんじゃないの?
 病院の先生が、得々とウンチク垂れてたよ。
 越乃寒梅は、冷やに限るんだって」
み「それは、偏った見解らしいよ。
 冷やでしか出さないお店もあるみたいだけど……。
 冷やでしか飲めない日本酒なんて、あるもんか。
 ……、と叔父ちゃんが言ってた。
 ワインにだって、ホットワインってのがあるんだからね」
律「なるほど」
み「ネットでも、越乃寒梅のぬる燗は最高だって、呑んべらしいオヤジが書いてた。
 第一、蔵元直営のアンテナショップが、燗酒出してるんだからね」

 ほどなく、「シーザーサラダと生ハム」と、お銚子が運ばれて来ました。
『越乃寒梅 Manjia』「シーザーサラダと生ハム」

律「ちょっと、妙な取り合わせだけど……。
 これまた、旅の醍醐味だね」
み「それじゃ、2度目の乾杯」
律「カンパーイ」
み「カンパーイ」

律「ん?
 美味しい!」
み「だしょー」
律「お燗も、いいもんだね~。
 なんか、冬が楽しみになったぞ」
み「フレンチとも合いそうだよね」
「越乃寒梅 Manjia」の料理
↑「越乃寒梅 Manjia」の料理

律「絶対合う。
 でも、越乃寒梅のぬる燗飲みながら、フレンチが食べれるお店なんて……。
 東京にあるかな?」
み「自分で作ればいいでしょ。
 料理」
律「痛いとこ突いてくれるじゃない。
 ぜったい結婚できないって思ってきたから……。
 そういう家庭的なことからは、ずっと目を逸らして来たの」
み「わたしと同じじゃん」
律「あんたの場合は、単なる怠け者でしょ」
み「痛いとこ突いてくれるじゃない。
 ま、その通りだけどね。
 毎日料理作るくらいなら、結婚なんてしたくない」
律「未婚の女2人、日本酒呑みながら結婚論か……」
み「止めよう。
 酒が不味くなる」
律「だよね。
 せっかく、越乃寒梅飲んでるんだからさ。
 確か、雑誌で取り上げられてブレークしたんだったよね」
み「そうそう。
 『酒』っていう雑誌で、“幻の酒”として取り上げられたのがきっかけ」
雑誌『酒』

み「昭和30年代後半のこと。
 そこから、地酒ブームが起こったんだよ」
律「それまでは、新潟でも有名じゃなかったの?」
み「たぶんね。
 料亭なんかには、全く置いてなかったみたいだよ」
律「なんで?」
み「昔は、濃厚甘口が主流だったから。
 県内のお酒は、ほとんど淡麗辛口なので……。
 新潟の料亭では、わざわざ県外からお酒を買ってたんだって」
律「えー。
 こんなに酒どころなのに。
 じゃ、そのころ、越乃寒梅は、どういう人が飲んでたの?」
み「近隣のお百姓さんでしょ。
 蔵元のある江南区北山ってのは……。
 大昔の海岸砂丘が連なる地域でね。
 北山、砂山、丸山、大江山、藤山、西山、松山、直り山、平山、細山、笹山……。
 “山”の付いた地名が、一直線に並んでる。
 この“山”は、みんな砂丘なんだよ。
 砂丘以外は、亀田郷という低湿地。
 なので、人々は砂丘の上に住んだわけ。
 砂丘ごとに部落が出来て、“山”の付いた地名になったんだろうね」
律「いつくらいの話?
 江戸時代とか?」
み「とんでもない。
 あのあたりの砂丘からは、縄文時代の遺跡が出ます」
律「縄文!」
み「縄文前期(約6,500年前)の深鉢型土器が出土したあたりには、大江山公園が整備されてる」
大江山公園

律「そんな昔から、新潟に人がいたとは……。
 ギャートルズじゃない」
ギャートルズ

み「あれって、石器時代じゃないの?」
律「そうだっけ?」
み「歴史は、得意でないわけね」
律「バリバリの理系ですから。
 それじゃ、石本酒造も、縄文時代からあるわけ?」
み「あるかい!
 石本酒造は、驚くほど古い蔵元じゃないよ。
 創業は、明治40年」

律「で、石本酒造は……。
 料亭なんかに納めるお酒じゃなくて……。
 近隣のお百姓さんたちが飲むお酒を造ってたってわけね。
 そんなんで、やっていけんの?」
み「やっていけたから、今あるわけですよ」
律「不思議だなー。
 お百姓さんがちびちび飲むだけで、蔵元が持つもんかね?」
み「ここから先は、わたしの想像だから……。
 話半分に聞いてちょうだい。
 石本酒造の近くに、父の実家があるんだ。
 古くからの農家でね。
 その家では、代々、越乃寒梅を飲んできたわけ」
律「おぉ、豪勢じゃない」
み「だから……。
 昔は、無名の地酒だったわけ」
律「あ、そうか」
み「で、父とか、父の兄なんかの飲みっぷりを見ると……。
 “ちびちび飲む”なんてもんじゃないのよ。
 もう、都会の人がビール飲むくらいのペースで、日本酒を飲む」
律「すご」
み「2人とも、酒が元で死んじゃったけどね。
 ま、あの調子で、365日晩酌するんだからさ。
 つまり、こーゆー飲み方をする客が、たくさん付いてれば……。
 十分、個人客相手でやっていけたんじゃないかな?
 料亭みたいな大量納入先が無くても」
律「なるほど」
み「で、お百姓さんたちが……。
 越乃寒梅を愛飲した理由も推測できるんだ」
律「美味しいからじゃないの?」
み「昔の、いわゆる美味しいお酒ってのは、濃厚甘口だったと思う」
律「じゃ何で、お百姓さんたちは、越乃寒梅を飲んだわけ?」
み「さっき言ったとおり……。
 大量に飲むからだよ」
律「は?」
み「つまりだね。
 濃厚甘口のお酒なんて……。
 とても大量には飲めないでしょ。
 口が飽きてしまうからね。
 その点、越乃寒梅は……。
 さらさらと水のように飲めるわけ。
 つまり、大量飲酒に向いてるんだよ」
律「へー。
 これって、Mikiちゃんが考えたの?」
み「うんにゃ。
 実は……。
 叔父さんの私見」
律「お父さんのお兄さんって人?」
み「違う。
 母方の叔父。
 母の弟。
 父の実家に、法事なんかで呼ばれてるうち……。
 あのあたりの農家の人たちの飲みっぷりを見て、思いついたらしい。
 こんな説唱えてる人は、ほかにいないだろうから……。
 あんまり喧伝しないでよね」
律「話のタネには面白いな」
み「でも、この石本酒造も偉かったんだよ。
 太平洋戦争後は……。
 外地米の輸入が途絶えた上に、引揚者や復員兵によって人口が増加して、米不足が深刻になったんだって。
 で、『三倍醸造』というのが認められた」
律「何、それ?」
み「Wikipediaから、プリントして持ってきた」
律「何でそんなの持ってるわけ?」
み「深く追求しない!」

『米と米麹で作ったもろみに清酒と同濃度に水で希釈した醸造アルコールを入れ、これに糖類(ぶどう糖・水あめ)、酸味料(乳酸・こはく酸など)、グルタミン酸ソーダなどを添加して味を調える。こうしてできた増醸酒は約3倍に増量されているため、三倍増醸酒・三倍増醸清酒などと呼ばれる』(Wikipedia)

律「う……。
 二日酔いがキビシそうだな」
み「でも、石本酒造は……。
 その流れに乗らず……。
 昔からの作り方を変えなかったそう」
律「それが……。
 雑誌に取り上げられて、突然ブレークしたわけね」
み「そう。
 でも、作り方を変えてないから……。
 大量生産が利かない」
律「それで、プレミアが付いたりするんだね」
み「バブルのころには……。
 札束を送り付けてくる会社もあったそうだよ。
 もちろん、そのまま送り返したそうだけど」
律「下品な会社。
 今ごろ、潰れてるだろうね」
み「かもね」

み「そろそろ、ラストオーダーかな」
律「え、今何時?」
み「9時半」
律「どう考えても、早いよなぁ」
み「どうする?
 何か取る?」
律「いいよ。
 口から、鳥が出てきそうなんだもん」
み「出すなよ」
律「シーザーサラダもまだ残ってるしね」
『越乃寒梅 Manjia』シーザーサラダ

み「お酒だけ、もう1杯飲もうか?」
律「時間は、まだいいの?」
み「もうちょっと、時間潰したいかな。
 看板までいようよ。
 9時半は、料理のラストオーダーで……。
 お酒は、10時10分前まで大丈夫みたいだよ」
律「そうか。
 じゃ、名残の1杯と行きますか。
 なに飲もうかな……」
み「焼酎、飲まない?」
律「えー。
 せっかく、越乃寒梅のお店に来てるのに?」
み「越乃寒梅の焼酎だよ」
律「何それ?」
み「日本酒を絞ると、酒粕が残るでしょ。
 その酒粕から造られた焼酎が、いわゆる粕取り焼酎」
律「カストリ?
 なんか、いいイメージないな」
み「そのカストリ焼酎は……。
 戦後の混乱期に作られた、粗悪な密造酒のことでしょ。
 焼酎とは名ばかりで……。
 メチルアルコールを水で薄めたものまであったそうだよ」
カストリ酒を飲む人たち

律「メチルアルコールって、メタノールのことでしょ。
 アルコール燃料なんかに使われる……。
 有毒じゃないの」
メチルアルコール

み「三合飲めば目が潰れるとか言われたらしい。
 余談だけど……。
 そこから、3号で潰れるような雑誌を……。
 カストリ雑誌って云ったんだって」
カストリ雑誌

律「いわゆるカストリ焼酎は……。
 清酒の酒粕から作られる焼酎じゃなかったわけね」
み「まったくの別物。
 清酒が醸造される地域では、焼酎といえば粕取り焼酎のことだったんだけど……。
 粗悪な密造酒と混同されて、大迷惑だったみたいだよ」
律「そりゃ、気の毒だ」
み「石本酒造の粕取り焼酎は、越乃寒梅の金無垢以上を絞った酒粕から造られ……。
 5年熟成されたものだそうです」
律「乗った。
 それ飲もう。
 話のタネになる。
 病院にも、呑んべの先生はたくさんいるけど……。
 越乃寒梅の粕取り焼酎なんて、きっと誰も飲んだことないよ。
 帰ったら自慢できる」

み「来た来た」
越乃寒梅の粕取り焼酎

律「一瞬、お冷やと間違えるね」
み「それじゃ、本日ラストの乾杯」
律「カンパ~イ」
み「カンパ~イ」

 チ~ン。
東北に行こう!(1)目次東北に行こう!(3)



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