Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(1)
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 これは、第556回から連載中の「東北に行こう!」を、『紙上旅行倶楽部』の1本としてまとめたものです。

 さて、例によって……。
 突然始まりました、紙上旅行倶楽部!

 記録的猛暑だった2010年も、10月を過ぎ……。
 過ごしやすくなって来ましたね。
 そう。
 天高く、馬肥ゆる秋。
 例年は、秋になると物寂しさを感じるんですが……。
 今年は違います。
 待ち焦がれた秋です。
 そして、秋と言えば……。
 旅の季節。
 女心と秋の空、とはよく言われますが……。
 秋の心は、旅の空。
 “旅愁”という言葉があるくらいですから……。
 旅と云えば、やはり秋でしょう。
 それではまず、「旅愁」を鑑賞し、旅心を養いましょう。
------------------------------------------
【旅愁】訳詞:犬童球渓/作曲:ジョン・P・オードウェイ


更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む
こいしや故郷 懐かし父母
夢路にたどるは 故郷の家路
更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む

窓うつ嵐に 夢も破れ
遥けき彼方に こころ迷う
こいしや故郷 懐かし父母
思いに浮かぶは 杜の梢
窓うつ嵐に 夢も破れ
遥けき彼方に こころ迷う
------------------------------------------

 切ない気分が、さざ波のように寄せて来ましたね。

 さて、今回……。
 どこへ行くのか、ということですが……。
 去年の秋の旅は、福島でした。
 由美ちゃんと行きましたね。
 「SLばんえつ物語」号、アクアマリン福島……。
「SLばんえつ物語」号とアクアマリン福島

 うぅ。
 何もかも、皆懐かしい……。
何もかも、皆懐かしい

 やはり、秋の旅心は、北へ向かうようです。
 と言っても、北海道の秋は寒すぎです。
 もう行ったしね。
 でも、新潟から北となると……。
 東北しか無いわけです。
 というわけで、方角的には、まさしく「東北」方面を目指すつもりですが……。
 東北と云っても、いささか広うござんす。
 とりあえず、最初に行く県は決まってますが……。
 1つの県だけで帰ってくるのは、もったいないので……。
 いくつかの県に、おじゃますることになると思います。
 というわけで、表題を「東北に行こう!」としました。

 で、旅のコンセプトですが……。
 イネさんからは、こんなリクエストをいただいてました。

『温泉と自然を巡るローカル線の旅』
ローカル線温泉旅

 本人も言っとりましたが……。
 じじむさいですね。
 リクエストをいただいたときは、「ロートル線」などと揶揄してしまいました。
 しかし、高く澄んだ秋の空は……。
 わたしの心に、敬老精神を芽生えさせました。
 リクエストに、お応えいたしましょう。
 三題噺のようですが……。
 東北、ローカル線、そして温泉。
 これらはやはり、切っても切れない縁で繋がってるようです。

 さて、いきなりですが……。
 本日、2010年10月8日から、旅は始まります。
 ほんとは、もっと早く旅行記の連載を始めるつもりだったんですが……。
 乾癬レポートが長引いてしまい……。
 出発日ぎりぎりになってしまいました。
 日程を11月にずらそうかとも思ったんですが……。
 東北は、10月いっぱいで閉まっちゃう施設がけっこうあるんですよ。

 てなわけで……。
 みなさん!
 準備はいいですか?
 秋の東北へ、一緒に出かけましょう。

 さーて……。
 今回のお供は、誰かな?


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
●10月8日(金)1日目

 さて、本日は、2010年10月8日。
 明日、9日の土曜日からは……。
 11日、月曜日の体育の日まで、3連休という方も多いでしょう。
2010年10月」カレンダー

 今日は、その3連休を控えた金曜日。
 もちろん、お休みではありません。
 でも、この日を旅行初日としたからには……。
 有給取って4連休?
 と思われるかも知れませんが……。
 今年はもう、だいぶ有給を消化しちゃってるんです。
 有給は、冬に備えて取っておかないと……。
 大雪で電車が動かないとき、休めなくなる。
 あと、インフルエンザに罹るかも知れないし。
 民間の零細企業は……。
 病気になっても、有給で休むしか無いんです。

 さて、というわけで……。
 今日は丸1日、働いてきました。
 定時で退社すると、真っ直ぐ新潟駅へ。
 秋の日暮れは早く、すでに真っ暗です。
夜の新潟駅

 いつもなら、このまま電車に乗って帰るんですが……。
 今日は、違います。
 旅の初日です。
 会社にいるときから、すでにソワソワしてましたけど……。
 駅に着いてみると、もう気分は「いい日旅立ち」。
 見慣れた駅の景色も、旅色に変わって見えます。

 わたしが、まず向かったのは、コインロッカー。
新潟駅・万代口のコインロッカー

 朝、ここに、ボストンバッグを預けてます。
 会社まで持ってったら、いろいろ聞かれて面倒なのでね。

 さて、そろそろ時間です。
 と言っても、電車に乗るわけではありません。
 相棒のお迎えです。
 前々回の由美ちゃん、前回の美弥子ちゃんもそうでしたが……。
 今回も、東京から旅の相棒が来てくれるんですね。
 18:36着の「とき335号」に乗って来ます。


 定期を使って在来線の改札を抜け、新幹線の改札口に向かいます。
新潟駅・新幹線改札口

 改札前で待ってるうち、旅への期待で……。
 うんちが出そうなほど、わくわくしてきました。

 地団駄踏みながら待つこと数分。
 「とき335号」到着のアナウンスが流れました。
 乗客が、改札へ向かって来ます。
 中の1人が、片手を高くあげました。
 前回の相棒、美弥ちゃんは、異常に目だって閉口しましたが……。
 今回の連れは、さすがにあれほどではありません。
 でも、やっぱりカッコいいです。
 細身の長身に、ジーンズが似合ってます。
 バッグは、わたしのような野暮ったいボストンではありません。
 大振りですが、トートバッグのようなショルダーを肩から提げてます。

「お待たせ」

 それではここで、今回の旅の相棒をご紹介します。
 じゃ~ん!
 われらが律子先生です。

み「さっそくですが、律子先生。
 読者にひとこと、お願いします」
律「え-。
 困ったな。
 どうしよう。
 律子です。
 苗字は……。
 まだありません。
 Mikiちゃんが、付けてくれないの」
み「すみません。
 今回の旅の抱負をお聞かせください」
律「どこ行くの?」
み「きのう、メールで送ったでしょ!
 旅のしおり」
旅のしおり

律「ごめん。
 見てない」
み「力作だったのに……」

律「だって、行き先がわからない方が、面白いじゃない。
 ぜーんぶ、Mikiちゃんにお任せします」
み「また、そのパターンか……。
 ちょっとは時刻表調べたり、ナビもお願いしたいんだけど」
律「時刻表、読めないもの」
み「医者でしょ!」
律「医業に時刻表なんて、関係なーいもーん」
み「ちょっと前の総理大臣が……。
 医者は非常識だって言って、医師会から怒られてたけど……」
律「あれは、麻生さんの方が正解ね。
 しかも、非常識であることを認識してません」
み「自分で言うか……」
律「それじゃ、まずは……。
 この旅のコンセプトを聞かせてちょうだい」
み「それも、旅のしおりに書いたのに!」
律「読んでないもの」
み「読めよ!
 プリントして持って来てって、書いてたでしょ?」
律「プリンタ、壊れてて」
み「……。
 先が思いやられる。
 それじゃ、耳垢かっぽじって、よーく聞いてください」
律「耳垢なんか、ありませーん」
み「いちいち、茶々入れない!
 いい?
 まず、この旅の目的はですね」
律「ちょっとタンマ。
 改札の前で演説始めるつもり?」
新潟駅・新幹線の改札口前

み「自分が、聞かせてくれって言ったんじゃない!」
律「長くなりそうなんだもん。
 お腹空いちゃった。
 出発まで、まだ時間ある?」
み「たっぷり、あります」
律「なんだ~。
 そんなら、お夕飯食べながら聞くわ」
み「そのつもりで、時間を取ってあるんです」
律「おー。
 気が利くじゃないの」

 律子先生を伴い、万代口に向かいます。
 颯爽と歩く律子先生は……。
 行き交う人が立ち止まりそうになるほど、カッコいいです。
 キャバクラのスカウターみたいな兄ちゃんまで、目を留めてました。

律「何を食べさせてくれるの?」
み「何が食べたい?」
律「せっかく新潟に来たんだから……。
 新潟でしか食べられないような、美味しいものがいいな」
み「そう思って、考えておきました。
 でも、新潟の名産となると……。
 まずは、魚介類なんだよね。
 確かに、お刺身やお寿司を食べさせて、文句が出ることはまず無いと思うけど」
律「じゃ、今日はお刺身?」
み「わたし、生魚だめなんです」
律「わたしは大丈夫よ。
 Mikiちゃん、別のもの食べればいいじゃない」
み「わたしは、目の前でお刺身食べられるのもダメなの」
律「それじゃ、焼き魚は?
 ほら、こないだ言ってたじゃない。
 なんだっけ。
 あ、ノドアカ?」
み「ノドグロです」
ノドグロ

律「黒いのか。
 美味しいんでしょ?」
み「そういう話だったけど……。
 実は、今年の新年会で食べたんだ。
 でも、そんなに美味しくは感じなかった」
律「焼いたヤツ?」
み「なんか、蒸したような切り身が、小鉢に入ってた」
律「蒸しちゃだめでしょ。
 ノドグロは、やっぱ焼かなきゃなー」
み「食べたことあるの?!」
律「無いです」
み「なんだ……」
律「でもきっと、焼いたら美味しいんだろうなーって」
み「ノドグロの旬は、冬なんじゃなかったかな?」
律「そしたら、ノドグロじゃなくてもいいんじゃない?
 ノドアカとか、いないの?」
み「いません」
律「あ、そうだ。
 こないだ、うちの病院の先生が、新潟行って来てね。
 寺泊とかいうところだったけど……。
 店先で、魚を串に刺して焼いてるんだって。
 すっごい美味しかったってさ。
 なんて言ったっけかな?
 窯焼き?」
み「浜焼きです」
浜焼き

律「それそれ」
み「新潟でも……。
 本町市場なんかに行けば、焼きながら売ってるよ」
新潟市・本町市場

律「そこ行こうよ」
み「市場が、こんな遅くまでやってるわけないでしょ」
律「なんだー。
 釜焼き、食べれないのか」
み「浜焼きです」

 実は……。
 律子さんには黙ってましたが……。
 生魚系がお好きな方には、お勧めの品があるんです。
 お寿司です。
 その名も、「極み」。
 2007年、新潟市が政令指定都市になったのを記念し、創作されたお寿司のメニュー。
新潟・寿司・極み

 その日採れた一番美味しい地魚に、トロ、ウニ、イクラを加えた、握りが10貫。
 1.5人前です。
 これに、お椀が付いてます。
 運が良ければ、“白身のトロ”と呼ばれるノドグロの握りを味わえるかも。
 当然、お値段もいいです。
 3,000円!
 新潟市内、25店舗のお寿司屋さんで食べられます。
 「極み」に、上越新幹線の往復と宿泊がセットになったプランもあるようです。

 律子先生に、こんなこと話したら……。
 きっと食べたいって言い出すでしょうからね。
 そうなったら、困ります。
 わたしは、生魚に加え、甘いのもダメなので……。
 卵焼き、アナゴ、お稲荷さん、巻き寿司などなどが、ことごとく苦手なんです。
 結局わたしは、見てるだけになっちゃいます。
 てなわけで、「極み」の情報は、みなさんだけにお教えしました。
 なお、この「極み」が食べられるのは、2011年の3月いっぱいだそうですので、ご注意ください。

み「新潟で美味しいのは、魚だけじゃないんだよ」
律「お米とお酒が美味しいのはわかるけど……。
 あと、何かな?
 あ、枝豆!」
新潟・枝豆

み「枝豆は確かに美味しいけど、時期はもう終わっちゃったよ」
律「じゃあ、今日は何を食べさせてくれるの?」
み「それは、着いてからのお楽しみ」

 新潟駅の万代口を出ます。
夜の新潟駅万代口

 『紙上旅行倶楽部』は、新潟駅を始点としますので……。
 「東北に行こう!」、ここから始まりです。
 見慣れた景色なんですけど……。
 旅の出発点としてみると、ちょっと違って見えますね。

み「タクシーで行こう」
律「なんだ。
 『紙上旅行倶楽部』って、公共交通機関を使うんじゃないの?」
み「できるだけ、そうしたいんだけどね。
 これから行くお店は……。
 バスで行くにはちょっと不便なんだ。
 行けないことはないけど、遠回りになる」

 やっぱり不況なんでしょうかね。
 タクシーの列に並ぶ人はいません。
夜の新潟駅万代口・タクシー乗り場

 客待ちの小型タクシーに乗りこみます。

み「窪田町まで」

 目的のお店までは、歩いても40分くらいの距離です。
 タクシーなら、10分くらいで着くでしょう。

 駅前の東大通りを抜けたタクシーが、萬代橋に差し掛かります。
新潟市・夜の萬代橋

み「信濃川よ」
新潟市内を流れる夜の信濃川

律「へー。
 真っ暗で何も見えないけど……。
 何か、大きな生き物が横たわってる感じがするね」
み「夜の川を見ると……。
 龍が水の神様だってのがよくわかるよね」
律「ほんとに、龍が身をくねらせてる感じ。
 あー、私は今、夜の信濃川を渡ってるんだなぁ……。
 なんか、フツフツと旅情が湧いてきた」
み「そうかー。
 律子さんにとっては、もう旅が始まってるんだもんね」
律「お先に楽しんじゃってすみません、って感じ。
 あれ?
 でも、もう渡り切っちゃうよ。
 向こう岸まで、案外近いんだね」

み「川幅は、300メートルくらいかな。
 これでも、隅田川の2倍くらいはあるけど……。
 確かに、日本一の大河の下流にしては、狭いよね」
新潟市内を流れる信濃川
↑一番手前が柳都大橋、その向こうが萬代橋

律「どうして?」
み「ここに来るまでに、2カ所で、海に分水されてるんだ。
 中流の大河津(おおこうづ)分水路と、下流の関屋分水路」
信濃川水系

 ここまで流れて来る水は、全流量の数分の1じゃないの?」
大河津分水路

律「洪水対策?」
み「うん。
 信濃川は、暴れ川だったからね。
 大河津分水路が出来たのは、大正11年(1922年)。
 信濃川が日本海に近づくあの地点で、川の水を海に落とそうという計画は……。
 江戸時代の中頃からあったんだ。
 信濃川下流の住民にとっては、信濃川の治水は悲願だったからね。
 でも、地形を変えるほどの大規模な土木工事は、幕府が許可しなかった。
 そもそも、土木技術的に無理だったろうしね。
 実際に着手されたのは、その200年後。
 その当時でも、『東洋のパナマ運河』と呼ばれるほどの大工事だったそうだよ」
律「やけに詳しいね」
み「えっへん。
 分水路近くに、『信濃川大河津資料館』って施設があってね。
 行ったことがあるんだ」
信濃川大河津資料館

律「へー。
 面白そうだね。
 行ってみたいな」
み「春に行くといいよ。
 桜のころ」
律「有名なの?」
み「分水路の堤防が、『日本さくら名所百選』になってる。
 でも、それ以上に見物なのが……。
 『分水おいらん道中』」
分水おいらん道中

み「6㎞、3,000本の桜並木の下を、おいらん道中が練り歩くわけ」
分水おいらん道中・3,000本の桜並木の下


律「う~ん。
 見てみたい。
 なんで今が春じゃないんだ!」
み「来年、また来ればいいじゃん」
律「そうか……。
 よし!
 来年の春、また新潟に来る!」
み「何の話してたんだっけ?」
律「……。
 忘れた」
み「そうだ。
 信濃川の川幅が、案外狭いって話だよ」
律「ああ。
 それじゃ、大河津分水の出来る前は、もっと広かったってわけね?」
み「さっき渡った萬代橋は、昭和4年に出来た三代目なんだ。
 初代と二代目の橋は、木橋でね。
 明治19年に出来た初代萬代橋は、長さが800メートル近かった。
 今の橋の、2.5倍だね。
 川幅もそのくらい広かったから。
 高浜虚子に、「千二百七十歩なり露の橋」という句があるよ」
高浜虚子「千二百七十歩なり露の橋」句碑

 渡るのに、10分以上かかったろうね」
律「へー」

 そうこうするうち……。
 タクシーは、街灯の連なる道路を外れ、薄暗い道に入りこみました。

 突然、律子先生が、わたしの耳元に口を近づけ……。
 息を吹きかけました。

み「ちょっと!
 いくら道路が暗いからって……。
 こんなとこで、ヘンなこと始めないでよね」
律「ばかもん!
 ちょっと耳貸しなさいよ」
み「ふぅぅん」
律「何おかしな声出してんのよ。
 ヘンなのは、あなたでしょ」
み「だって、くすぐったいんだもん。
 息しないで、しゃべって」
律「でけるか!
 あのさ……。
 ずいぶんと寂しいとこ走ってるじゃない?
 ネオンの明かりなんか、ぜんぜん見えないし。
 大丈夫なの、この運ちゃん?
 妙なとこ連れてかれるんじゃないでしょうね?」
み「寂しいとこったって……。
 この辺は、住宅街だからね。
 明かりが無くてもあたり前だよ」
律「住宅街の中に、飲み屋街があるの?」
み「そんなのないよ。
 お店が一軒、ぽっつーんとあるだけ」
律「お酒飲めるんでしょうね?」
み「大丈夫だって」

「お客さん、着きましたよ」

 新潟駅からは、10分くらい。
 あたりは、真っ暗です。
「せきとり」のあるあたり・真っ暗な窪田町

律「ほんとに、なんにもないね」
み「だから、普通の住宅街なんだから。
 昼間見れば、普通の町だよ」

 下は、2人が降りたあたりを、昼間撮影したもの。
「せきとり」のあるあたり・昼間の窪田町

 プラタナスの街路樹が連なる、古い住宅街です。

律「お店なんて、どこにあるのよ?」
み「目の前にあるでしょ」
律「あ」
新潟「せきとり」

律「へー。
 ちゃんこ料理のお店?」
み「ま、普通はそう思うだろうけどね……。
 ほら、あれ」
鳥料理「せきとり」

律「鶏ガラのちゃんこ?」
み「だから、ちゃんこ料理じゃないって!
 鍋が食べたかったの?」
律「そういうわけじゃないけど」
み「とにかく入ろう」

 引き戸を開けると……。
 鳥肉を揚げる香ばしい匂いが、鼻を打ちます。
 昼食を食べてないお腹には、ボディブローのように応えますね。
 足は、吸い込まれるように店内へ……。
 入ってすぐに、カウンターが並んでます。
「せきとり」店内・カウンター

 奥には、小上がりもあるようです。
「せきとり」店内・小上がり

 えー、ここで皆さんにお断りしておきます。
 新潟のお店のことを書いてるので……。
 わたしの行きつけのお店を書いてる、と思われるかも知れませんが……。
 一度も行ったことありません。
 なので、これから書く内容も、すべてネット上から拾った情報を元に……。
 わたしの想像を交えたものになります。
 そのへん、どうかご留意くださいね。

 さて、カウンターに腰掛けましょう。

律「何にしようかな?」

 律子先生は、しばし壁のメニューに目を止めてましたが……。
「せきとり」壁のメニュー

 やがてその目が、あちこち泳ぎ始めました。

み「なにキョロキョロしてんの?」
律「『カラ揚げ』『ムシ焼』『焼き鳥肉』『焼き鳥皮』。
 それは、わかったけど……。
 ほかには、あれだけ?」
「せきとり」メニュー一覧

み「と、思うよ」
律「なるほど……。
 ま、いいか。
 最近の居酒屋は、妙に捻った料理が並んでたりするからね。
 ここまでシンプルだと、いっそ気持ちがいい。
 ビールに合いそうなのばっかりだし。
 でも、Mikiちゃん。
 あの『時価』ってやつが不気味なんだけど……」
み「あぁ。
 ここは、その日仕入れた新潟県産の鳥だけを使うんだって」
律「ほー。
 こだわってるじゃない。
 もっとも、たったこれだけのメニューで、こだわりがなかったら……。
 誰も来んわな」
み「聞きなさいって!
 だから、その日調達できた鳥の値段によって、価格が変動するそうだよ。
 無理もしないし、ボロ儲けもしないってことだね。
 時価ったって、100円程度の変動みたい」
律「そうなの。
 安心したぁ。
 時価なんて書いてあるから、緊張しちゃったじゃない」
み「案外、みみっちいお医者さまだね」
律「庶民派と言ってよ。
 あ~、さっきからいい匂い。
 お腹鳴りそう。
 メニュー、これだけしか無いんだから……。
 ひととおり、ぜんぶ頼んじゃおうか」
み「お待ちなせい」
律「何よ」
み「ここは、わたしに仕切らせてちょうだい」
律「ずいぶんと力んでるじゃない。
 ま、郷にいれば何とやらだから……。
 お任せしましょう」
み「まず、『カラ揚げ』『ムシ焼』を、ひとつずつ頼もう」
律「両方食べたいなぁ。
 2つずつにしようよ」
み「任すって、今言ったでしょ」
律「わかった、わかった」
み「『カラ揚げ』と『ムシ焼』は、半分ずつ食べればいいの」
律「Mikiちゃんの方が、みみっちいじゃない」
み「お待ちなせい!」
律「わかったってば。
 鍋奉行は、聞いたことあるけど……。
 鳥奉行ってのは、初めて見るよ」
み「続けます。
 で、『カラ揚げ』と『ムシ焼』は、出てくるまで20分くらいかかると思われますので……」
律「なんで?」
み「注文を受けてから揚げたり蒸したりするからです」
律「ほー。
 さすが、こだわってるじゃない。
 でも、20分間ビールだけじゃ、お腹が持たないよ」
み「だから、聞きなさいってば!
 それまでのつなぎに、『焼き鳥』も注文しよう。
 『皮』と『肉』しかないから……。
 2本ずつ、4本頼もう。
 ひとりあたり、『皮』と『肉』を1本ずつね」
律「なんだ、結局ひととおり頼むんじゃないの。
 でも、それっぽっちじゃ、あっと言う間に食べちゃうよ。
 お腹空いてるんだから」
み「忠告しておきます」
律「また?」
み「『カラ揚げ』と『ムシ焼』が出て来るまでに、ぜったいにお腹いっぱいにならないでちょうだい」
律「なんで?」
み「出てきたらわかります。
 『焼き鳥』は、ばくばく食べないでね。
 あくまで、20分のつなぎなんだから。
 わかった?」
律「ヘンなの……」
み「わかった?」
律「へいへい」

 注文を通すと、さっそくビールのジョッキが運ばれてきました。
「せきとり」ジョッキ

律「でっけージョッキ!」
み「最近は、グラスに取っ手を付けたみたいなジョッキばっかりだからね」
律「学生時代のコンパを思い出すよ」
み「それじゃ、旅の門出を祝って、乾杯しよう」
律「しようしよう。
 Mikiちゃん音頭取ってよ」
み「それでは、僭越ながら……。
 えー。
 俳聖・松尾芭蕉が、弟子の曾良を伴い、江戸深川を発ったのが、元禄2年、すなわち1689年でございまして……」
ほくのほそ道

み「本年は、芭蕉が奥の細道へ旅立った1689年より数えて、実に321年目という、まことに記念すべき年でございます」
律「ちょっと!
 落語でも始めるつもり?
 だいたい、321年目の、どこが記念すべき年なのよ?」
み「3、2、1、ダーッ!」
律「猪木じゃないんだから」
3、2、1、ダーッ!

律「だいたいあれは、『1、2、3、ダーッ!』でしょ。
 長くなりそうだから、やっぱりわたしが音頭を取ります」
み「え~。
 せっかく一席ぶとうと思ったのに」
律「ビールが温くなっちゃう!
 それじゃ、旅の前途を祝して……。
 カンパ~イ」
み「カンパ~イ」
ジョッキで乾杯

律「うめ~」
み「うめ~」
律「真似っこ」
み「だって!
 紙上旅行倶楽部で、『うめ~』は、わたしの専売特許なの!」
律「特許切れです。
 ところでさ。
 アソコにいるおじいさんが、店主?」
み「うん。
 『まっぷる』に載ってた人だ」
『せきとり』のみなさん
↑テレビで取り上げられた『せきとり』(前列中央がご主人。両脇はアナウンサー)。

律「あんな小さい人が関取だったわけ?
 行司の間違いじゃないの?」
み「はぁ?」
律「はぁ、じゃないでしょ。
 お相撲辞めて、お店始めたから『せきとり』なんじゃないの?」
み「ぜんぜん……。
 違います」
律「じゃ、何で『せきとり』なのよ?」
み「ご主人の苗字が、関さんって云うの」
律「へ?」
み「つまり……。
 関の鳥屋で、『関鳥』」
律「な、なんと、ベタな……」
み「お店を始めたのは、昭和34年のこと。
 元々養鶏業をやってたんだけど……。
 戦後、経営が思わしくなくなったんだって。
 そこへ婿入りした関さんが……。
 飼ってるニワトリを、カラ揚げにして売る屋台を始めたんだよ。
 当時百万円あった借金を、2年で完済しちゃったとか。
 以来、50年。
 80歳を越えた今でも、こうして厨房に立ってらっしゃるの」
「せきとり」厨房に立つ関さん

律「へ~。
 スゴい人なんだ」
み「新潟の戦後史ここにあり、ってとこだね」

 お通しのお新香でビールを飲む2人の前に……。
 待望の『焼き鳥』が運ばれて来ました。

律「Mikiちゃん、来た~」

「せきとり」焼き鳥
↑上が『焼き鳥肉』、下が『焼き鳥皮』

み「ウマそ~。
 やっぱり、焼き鳥は塩だよなぁ。
 『肉』と『皮』って云っても、いろんなのが付いてるね」
律「『皮』のてっぺんに砂肝、『肉』にはレバーが挟まってる。
 ニワトリの全身が味わえるってわけだ。
 食感もいろいろ楽しめそう」
み「『肉』の両端についてるのは、タマネギだね。
 わたし、焼きネギがダメだからうれしい~。
 先生、どっちから食べる?」
律「じゃ、『肉』にしようかな」
み「それじゃ、わたしは『皮』から」
律「いっただきま~す」
み「いっただきま~す」
律「熱っ。
 ふごふご。
 ウマい!
 このレバー、絶品だよ。
 レバーのウマい店は本物だね」
み「ちょっと、先生。
 さっきも言ったでしょ。
 ばくばく食べないでって!」
律「なんで!
 こんなに美味しいのに。
 もう4本追加しよう」
み「ダメ!
 お新香、食べなさい」
「せきとり」お新香

律「なんでよ~」
み「これは、親切心で言ってるの。
 いい?
 『カラ揚げ』と『ムシ焼』の前に、お腹いっぱいにしちゃダメだからね」
律「ひどい~。
 こんな美味しい焼き鳥を前に、生殺しだよ。
 もう1本だけ、いいでしょ」
み「ダメ!
 お預け!」
律「う~。
 わんわん」

 バカなことを言ってるうちに……。

み「へい、お待ち」

 来ました。
 2人の目の前に、大きな皿が2枚。

律「わ~い」

 歓声をあげて迎えた律子先生でしたが……。
 皿が置かれた途端、凝固してしまいました。
 目線は、皿の上に縫いつけられてます。
大分に行こう!(10)目次東北に行こう!(2)



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