Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
大分に行こう!(8)
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「え?
 ビュッフェって、こんな感じなんですか?」
「ゆふいんの森」ビュッフェ

「ま、寝台特急の食堂車をイメージしてると、肩すかしを食うだろうね」

 「ゆふいんの森」のビュッフェは、基本的に売店です。
 座席はありません。
 でも、売店で買ったものを、ビュッフェで食べようと思えば、食べれます。
 ただし、立ち食い。
 これです。
「ゆふいんの森」ビュッフェで立ち食い

 「ゆふいんの森」は、全席指定だから、席がない人はいません。
 わざわざ、ここで立って食べる人なんて、いるんでしょうかね?

 ビュッフェでは、駅弁のほか、軽食類も売ってます。
 でも、温かい料理は、“あんかけ焼きそば”くらいみたいですね。

「よかった。
 まだ売り切れてなかった」

 わたしのお目当ては、これでした。
「ゆふいんの森弁当」

 その名も、「ゆふいんの森弁当」。
 そのまんまの名前ですが……。
 評判が高いです。
 ま、値段も高いけどね。
 1,200円。
 これを2つ買うことも出来たけど……。
 後から来る人に残してあげましょう。
 楽しみは、みんなで分かちあわなきゃね。
 もうひとつは、「香草物語」というお弁当を買いました。
「香草物語」

 パッケージが綺麗だったので、即決。
 たぶん、女性をターゲットにした商品でしょうね。
 値段は少し安くて、850円。
 例によって、誰がどっちを食べるってわけじゃなく……。
 2人で、半分ずつ分けあうつもり。

「おぉ。
 もう走り出したね」
「とうとう、由布院とお別れなんですね」
車窓から見る由布院

「寂しいこと言わないの。
 博多までは、『ゆふいんの森』に乗ってるんだからさ。
 まだお別れじゃ無いよ」
「そうですね」
「それじゃ、座席に戻ってお弁当食べよう」
「はい」

 ビュッフェの扉を抜けます。
 連休後の、週の真ん中の平日とあって……。
 座席には、少し空席もあるようです。

「げ。
 セミコンパートメントが、ひとつ空いてるじゃん」
「?」
「ここのことだよ。
 ほら、テーブルを挟んで、座席が向かい合わせになってるでしょ」
「ゆふいんの森」セミコンパートメント

「コンパートメント(個室)まではいかないけど……。
 区画が、ガラスで仕切られてて……。
 これを、セミコンパートメントっていうわけ。
 3号車のビュッフェ寄りに、4区画しか無いんだよ」
「テーブルがあるってのは、お弁当食べるのにいいですね」
「だろ。
 ただし、この席、3名以上じゃないと予約できないんだ」
「なんだー。
 2人じゃ、座れないんですか」
「空いてれば別だよ。
 席を変えてくれるはず。
 さっき見た、スッチーみたいな車掌さん捜して来よう。
 あ、美弥は、ここ座って席取っといて」
「なんでです?」
「わたしと同じこと考えるヤツが、きっといるからだよ。
 スッチー捜してる間に居座られたら、面倒だろ」
「切符も持ってないのに……。
 なんか、心細いです」
「でっかい図体して、情けないこと言うなよ。
 美弥が堂々と座ってたら、誰も切符持ってないなんて思わないって」
「そうでしょうか……」
「でも、ずうずうしいヤツもいるからな。
 もし、そんなヤローが座り込もうとしたら……。
 必殺の呪文がある」
「どんな呪文ですか?」
「トットットー」
「何です、それ?
 ニワトリの真似?」
「ちがーう。
 いきなりニワトリの真似してどうする。
 これはだな……。
 “この座席は、わたくしが確保しております”という意味の、九州弁だ。
 昔、テレビで武田鉄矢が言ってた。
 九州で、座席の確保宣言をするときは、必ず使わなきゃならんらしい。
 たぶん、九州の法律で決まってると思う」
「そんな、バカな……」
「練習してみるか?
 言ってごらん。
 テーブルを抱え込んで、上目遣いで……。
 トットットー」
「わたし……、言えません」
「簡単じゃないの。
 トットットー」
「わたしが、車掌さん捜してきますから。
 Mikikoさんが残ってください」

 美弥ちゃんは、風のように去っていきました。
 くっそー。
 逃げられたぜ……。
 押し出しに迫力ある方が、ずっと座席確保の役目に向いてるんだけどな。
 早く帰ってきてよね。
 たぶんわたしも……。
 いざとなったら、“トットットー”は、言えないと思うから。

 ほどなく、スッチーを伴った美弥ちゃんが戻ってきました。
 両肩に、わたしたちの荷物をかけてます。
 てことは……。
 美弥ちゃんは、にっこり笑ってオッケーマークを出しました。
 やた!

 大ラッキーですね。
 2人で、セミコンパートメント独占だよ。
 もちろん、割増料金もありません。

 さっそく、畳まれていたテーブルを開きましょう。
「ゆふいんの森」セミコンパートメントのテーブルを開く

「さっそく、食べよう。
 朝遅かったけど、お腹空いたよね」
「馬車に揺られたせいでしょうね」
「それじゃまず、“ゆふいんの森弁当”から……」
「ゆふいんの森弁当」

「おぉ~」
「豪華~」

 お品書きまで付いてました。
「ゆふいんの森弁当」お品書き

 書き出してみます。

『ゆふいん産農家米白ご飯
 鶏味噌添え

 ほうれん草胡麻おひたし
 梅干土佐煮・大根カボス漬
 大根もち照り焼き
 しいたけカレーフライ
 ししとう塩煮
 竹の子土佐煮
 鰻巻き
 こんにゃくステーキ
 胡麻豆腐
 人参うま煮
 ぜんまいうま煮
 金時豆
 茄子の南蛮漬け
 葱焼き ナンプラー風味
 鮭の西京焼き
 きんぴら牛蒡
 南瓜うま煮
 大学いも

 おはぎ
 牛乳豆腐(ブルーベリーソース)』

「スゴ……。
 これで1,200円なら、ぜったい安いって。
 料理屋でこんなメニュー食ったら、いったい幾ら取られるんだ?」
「買えて良かったですね」
「だろ~。
 のんびり車内販売なんか待ってたら、ぜったい売り切れだよ」
「もうひとつのも開けてみましょう」
「“香草物語”か。
 可愛らしいパッケージだね」
「箱に、千代紙が貼られてるんですね」
「香草物語」パッケージ

「箱だけでも売れるぜ。
 さっそく開けてみよう」
「うわ~。
 可愛いぃ」
「香草物語」中身

 美弥ちゃん、すっかり瞳がハートになってます。

「パッケージも綺麗だけど……。
 中身もまた、色合いが鮮やかだね」
「食材だけで、こんなに彩りが表せるなんて……」

 ご飯は、おかずと同じ大きさの区画に、3箇所入ってますが……。
 男性なら、一口で食べられちゃうほど。
 これは、完全に女性向きですね。
 目で味わうお弁当。
 このパッケージに、この中身で……。
 850円。
 安い!

 “ゆふいんの森弁当”は、ひとつずつ、お品書きと確かめながら口に運びます。
 ひとつのおかずを、2つに分けて。
 “香草物語”も、一区画を分け合って食べましょう。
 由布院、最後の思い出を噛み締めます。

 そうこうするうち、「ゆふいんの森」は、最初の停車駅に着きました。
 豊後森(ぶんごもり)、12時33分。
 玖珠郡玖珠町(くすぐんくすまち)にある駅です。

 この駅には、鉄ちゃんが喜びそうな施設があります。
 「豊後森機関庫」と云います。
「豊後森機関庫」

 扇形機関庫と転車台を備えてます。
 完成は、1934年(昭和9年)。
 最盛時には、蒸気機関車21台が所属する、大規模な機関庫でした。
 “でした”と言うとおり、今は使われてません。

 ところで、こんな大がかりな施設が、なぜ必要だったんでしょう?
 蒸気機関車から、ディーゼル機関車に移行したとき、一番大きな違いは、何だったと思います?
 それは、車両に前後の区別が無くなったことです。
 ディーゼル機関車は、頭と尻尾に運転台があります。
 方向を変えるときは、運転士が乗り換えればいいだけです。
 その点、蒸気機関車の頭はひとつです。
 方向転換する場合は、転車台を使って、車両の方向を変える必要があったんですね。

 蒸気機関車が無くなると、こういう施設は不要になり……。
 豊後森機関庫も、1970年(昭和45年)に廃止されました。
 その後は、ほぼ廃墟状態のまま放置されてたようですが……。
廃墟状態の「豊後森機関庫」

 2001年(平成13年)、地元有志による保存委員会が結成され、保存活動が始まりました。
 2006年(平成18年)には、玖珠町が、機関庫と敷地10,200㎡をJR九州から購入。
 3,466万円だったそうです。
 機関庫や転車台はタダとして、土地は、1㎡あたり3,400円の計算。
 JR九州も、サービスしたんでしょうね。
 将来は、鉄道記念公園として整備される予定だそうです。
 それに先立って、2009年2月……。
 扇形機関庫と転車台が、経済産業省により“近代化産業遺産”に認定されました。
神殿のような「豊後森機関庫」

 なんか……。
 神殿みたいですよね。

 今思いついたけど、「“近代化産業遺産”を巡る旅」ってのも面白そうだね。
 富岡製糸場とか、琵琶湖疏水とかさ。

 なお、この豊後森機関庫の壁面には、弾痕が残ってます。
 太平洋戦争中の、米軍機の機銃掃射による傷跡。
 この銃撃により、3名の職員が命を落としたそうです。

 鉄道に興味がある人なら、きっと降りて見てみたいでしょうね。
 でも、「ゆふいんの森」を途中下車するわけにはいきません。
 鉄道記念公園が出来た暁には……。
 鈍行列車に乗って見に来たいです。

 さて、再び「ゆふいんの森」は走り出しました。
 書き忘れてましたけど、今走ってる路線は、久大(きゅうだい)本線と云います。
 福岡県の久留米と大分県の大分を結ぶ路線なので、“久大”本線。
 あんまりおしゃれな名称じゃありませんね。
 でも、この路線には、愛称があるんです。
 「ゆふ高原線」。
 これなら、十分おしゃれです。
 愛称どおり、高原を走る気持ちのいい路線です。

「あ~、美味しかった」
「Mikikoさん、お願いがあります」
「なに?」
「“香草物語”の箱、わたしがもらっていいですか?」
「綺麗だもんね。
 いいよ。
 何に使うの?
 あ、そうか。
 あのディルドゥ入れるのか?」
「入れません!」
「厚みがちょっとな~」
「ですよね~。
 ぜったいフタが閉まりませんよ。
 って、入れませんって!」
「おぉ。
 ノリツッコミ、覚えたじゃない」

 さて、アホな話をしてるうちに……。
 電車は、次の駅、天ヶ瀬に着きました。
 12時46分。

 ここには、天ヶ瀬温泉があります。
「天ヶ瀬温泉」

 別府や由布院のように、名前は知られてませんが……。
 別府、由布院、天ヶ瀬が、豊後三大温泉なんですよ。

 ところで、天ヶ瀬というのは、どこかで聞いたことがあるぞ、と思ったオトーサン。
 たぶん、勘違いです。
 オトーサンの脳裏に浮かんだのは……。
 美川憲一の演歌じゃないですか?
 でもあれは、「柳ヶ瀬ブルース」です。
「柳ヶ瀬ブルース」

 天ヶ瀬とは、ぜんぜん関係ありませんね。
 柳ヶ瀬は、岐阜市にある歓楽街です。

 さて、冗談はさておき……。
 ここ天ヶ瀬は、古い温泉地なんです。
 奈良時代初期に編纂された「豊後国風土記」に、その名が出てきます。
 別府の“血の池地獄”と一緒ですね。

 「豊後国風土記」では……。
 天武天皇時代の大地震で、熱湯が湧いたと記載されてるそうです。
 天武天皇は、天智天皇の弟。
 天智天皇は、知ってますよね。
 “大化の改新”を起こした人です。
 日本史の授業では、1学期早々に出て来ます。
 ちょっとおさらいしておきましょう。
 ときは、645年。
 中大兄皇子(なかのおおえのおうじ・後の天智天皇)は、中臣鎌足(なかとみのかまたり・後の藤原鎌足)と謀り……。
 クーデターを決行。
 政権を掌握していた蘇我入鹿(そがのいるか)・蝦夷(えみし)親子を暗殺し、政権を奪取したんです。

 で、天武天皇は、その天智天皇の弟。
 天武天皇の在位は、673年~686年です。
 7世紀、飛鳥時代のころですね。
 今から、1,300年以上も前のこと。
 こんな昔に湧いた温泉が、今でも豊富な湯量を誇っているんですから……。
 火山の力って、ほんとにスゴいですよね。

 天ヶ瀬温泉、古さでは、別府や由布院に負けませんが……。
 温泉街の規模としては、やはり少し劣ります。
 玖珠川沿いに、20件ほどの旅館やホテルがひしめくように建ってますが……。
明かりの灯る「天ヶ瀬温泉」

 豊後三大温泉のひとつとしては、ちょっと寂しい感じ。
 黒川温泉なんかの方が、有名になっちゃいましたからね。
 でも、昔は栄えてたそうです。
 筑豊炭坑の全盛期は、歓楽温泉地として賑わったとか。

 今の名物は、玖珠川沿いに点在する共同露天風呂。
「天ヶ瀬温泉」共同露天風呂

 河川敷にあって、お湯と川の水面が同じ高さなので……。
 まるで川に浸かっているようです。
 昔は、河原のどこを掘ってもお湯が湧いたそうです。

 さて、その共同露天風呂ですが……。
 まったく囲いのない所もあります。
 周りの旅館から、丸見えです。
丸見えの「天ヶ瀬温泉」共同露天風呂

 もちろん、混浴。
 てことは……。
 合法的露出が出来るってことです。
 混浴のお風呂なんですから……。
 見知らぬ異性の前で真っ裸になっても、誰に咎められることもありません。
 周りから丸見えだって、そういう構造のお風呂なんですからね。
 見る方が悪いってなもんですよ。
 文句言われる筋合いありません。
 入湯料は、たったの100円!
 100円で、思うさま露出が出来る!
 全国の変態さん、今すぐ天ヶ瀬に集いましょう!

 こんな宣伝したら、天ヶ瀬温泉、大迷惑だろうなぁ。
 ちょっと反省し、真面目に褒めることにします。

 良いとこは、温泉以外、ほぼ何もないこと(褒めてるのか?)。
 だから、気を散らさずに、温泉三昧にひたれます。
 こういう温泉地に連泊したら……。
 わたしにも、「城の崎にて」みたいな小説が書けるかも?
「城の崎にて」

 なんとな~く、物語が生まれそうな温泉です。
 「男はつらいよ」のロケ地にもなったそうです(第43作「寅次郎の休日」)。
 観光客の溢れる、別府や由布院はちょっと……。
 という人は、ぜひチェックしてみてください。

 さて、次なる停車駅は……。
 日田です。
 なお、さっき停車した天ヶ瀬も、日田市にあります。
 ここも、平成の大合併で大きくなった市です。
 カメルーンのキャンプ地で有名になった中津江村も、日田市に編入されました。
 隣はもう、福岡県。
日田市の位置

 大分県では結局……。
 別府と由布院に泊まっただけでしたが……。
 気になる場所は、ほかにもありました。
 滝廉太郎が少年期を過ごした、竹田とか……。
 「昭和の町」が残る、豊後高田とか。

 中でも、もっとも心残りだったのが、日田でした。
 日程が許せば、ここでもう1泊したかったくらい。
 今回は、車窓から眺めるしかできませんが……。
 いつかまた、大分に来るときがあれば、必ず下りて楽しみたい町です。

 せっかくなので、日田の魅力を書きだしてみますね。
 周囲を山に囲まれた日田盆地に、町があります。
 三隅川(みくまがわ)や花月川など、清流が流れる水郷の町。
 小京都と呼ばれる町のひとつ。
小京都・日田

 日田駅の北にある豆田町は……。
 江戸時代の町割りがそのまま残っており、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されてます。
日田市豆田町

 駅の南側は、温泉街。
 三隅川のほとりに、旅館やホテルが並んでます。
日田市・三隅川

 川のほとりから、温泉が湧くんですね。

 この三隅川では、夏場、鵜飼も行われます。
 旅館に泊まって鵜飼を見る、という夜の楽しみ方もありますね。
 わたしはちょっと、あの鵜飼ってヤツは……。
 可哀想な気がしてアレなんですが……。
 でも、映像はきっと胸に残るでしょうね。
日田市・三隅川の鵜飼

 あ、そうだ。
 3月の今なら、おもしろいイベントをやってます。
 「天領日田おひなまつり」。
天領日田おひなまつり

 江戸時代、日田は天領(幕府直轄地)でした。
 「天領日田おひなまつり」では……。
 その天領時代から受け継がれてきた雛人形が、旧家など、市内の各所で公開されてるんです。

 江戸時代の日田では、代官により“掛屋(かけや)”に指定された商人が、莫大な利益を得てました。
 この“掛屋”とは何ぞや、ということですが……。
 マイペディア(百科事典)によると……。

『江戸時代、大坂で諸藩の蔵屋敷に属して領主の蔵物の売却、代金の収納・保管・送金等に当たった町人。領主は蔵物の処理一切を掛屋にまかせ資金面の援助をうけたから、掛屋は藩の財政・金融面に勢力を振るい、士分待遇をうけた』

 よーわかりませんね。
 でも、ボロ儲けできそうということだけは、なんとなーくわかります。
 日田の掛屋は、こうして儲けたお金を、九州の諸大名などに、さらに高利で貸し付けました。
 これを、日田金(ひたがね)と云ったそうです。
 まさに江戸時代の日田は、金が金を生む、一大金融都市だったわけです。

 で、儲かって仕方がない日田の掛屋たちは……。
 京や大阪で、絢爛豪華な雛人形や雛道具を買い集めてたんですね。
 金に糸目はつけないってやつでしょうね。
 その雛人形が、今も商家に残ってるってわけ。
日田市・雛人形

 これは、一見の価値がありそうでしょ。

 なお、天領時代の日田をもっと知りたければ……。
 豆田町のメインストリート「御幸通り」に、「天領日田資料館」があります。
「天領日田資料館」

 資料館に寄られる場合は……。
 「御幸通り」を挟んだはす向かいにある、「日田土鈴 東光堂」というお店が面白そうです。
「日田土鈴 東光堂」

 魔除けのお守りとされている土鈴の専門店。
 全部手作業で作られてるそうです。
 まん丸なお雛さまの土鈴(墨絵ひな土鈴・2,000円)が可愛い。
墨絵ひな土鈴

 土鈴に和紙を貼り、墨で絵付けしたものだとか。
 もっと安い、干支土鈴(250円)なんかもあるようです。
 魔除けのお守りをお土産にしたら、きっと喜ばれると思いますよ。

 さて、もう一つ、天領とは違う一面を見てみましょう。
 日田には、変わった名物があるんです。
 食べ物。
 もちろん、懐石料理とか、天領らしい食べ物屋さんも多いです。
 でも、あえてお昼は、ラーメン屋さんにしましょう。
 と言っても、ラーメンは注文しません。
 お目当ては、「日田焼きそば」。
日田焼きそば

 いわゆるB級グルメとして、人気の一品です。
 これを食べるためだけに、県外から来るファンもいるそうです。

 「日田焼きそば」の起源は古く、昭和30年代に遡ります。
 茹でたラーメンの麺を鉄板で焼く、という焼きそばがメニューに登場し……。
 やがて、町中に広がっていきました。
 具は、オーソドックスな豚コマとモヤシ。
 お店によっては、長ネギやキャベツも入るようです。
 味付けは、ウスターソースが基本ですが、店ごとに秘伝があるようです。

 焦げ目が付くほど焼いたバリバリの麺と、しゃきしゃきしたモヤシの食感。
 歯触りで食べる焼きそばですね。
 うーむ。
 マジで食いたい!

 ここでまた脱線しますが……。
 ロングセラーのカップ焼きそばに、「ペヤング ソースやきそば」ってありますよね。
ペヤング ソースやきそば

 上京したころ……。
 よく、夜食にあれ食べてました。
 夜中まで起きて本読んでると、小腹が空きます。
 と言って、夜中に料理なんか作る気にはならんので……(昼間もならんが)。
 買いおきのカップ麺のたぐいで、小腹を満たすわけね。
 でも、カップラーメンをスープまで飲んじゃうと、夜食としては腹応えが良すぎます。
 その点、スープの無い“やきそば”は、ちょうど良い。
ペヤング ソースやきそば

 お湯で茹でるのに、なぜに“やきそば”かというギモンが残りますが……。
 ウマいことだけは、確かでした。
 ま、若い胃は、何食っても美味しく感じたんでしょうけどね。

 ソースをフタの上に載せて、3分間待つワクワク感。
 思い出すなぁ。
 でもあれ、お湯を切るとき、たま~に失敗するんですよね。
 フタを良く押さえてないと……。
 容器とフタの間から、麺がドバドバこぼれちゃうんです。
ペヤング ソースやきそば・大惨事

 大惨事……。
 もちろん、拾ってぜんぶ食いましたが。
 茹でキャベツの食感は、今も覚えてます。

 う~ん。
 食いたくなってきた。
 今度の休日のお昼は、ペヤングにしようかな。

 さて、「ゆふいんの森」2号は……。
 12:58、1分停車で日田を出ました。

 間もなく、福岡県との県境です。
 大分県に残る駅は、あと2つですが……。
 「ゆふいんの森」は、停車せずに通過して行きます。
 その2つ目、大分県最後となる駅名が、非常に印象的です。
 “夜明”と云います。
夜明駅

 文字通り、読みは“よあけ”。
 縁起のいい駅名のひとつに数えられてます。
 名前は縁起がいいんですが……。
 少し前までは、どう見ても縁起がいいとは思えない、年季の入った木造駅舎でした。
 昭和7年の開業当時からの建物。
夜明駅・旧駅舎

 けっこう、強烈でしょ?
 こんな駅で一晩過ごすことになったら、怖いだろうな。
 夜明けが来たら、ホッとする駅って感じですね。
 でも、この3月、ようやく新駅舎が竣工したんです。
夜明駅・新駅舎

 なんか……。
 公衆トイレみたいになっちゃいましたね。
 もちろん、完全な無人駅です。

 駅名の“夜明”は、別に狙って付けられた名称ではありません。
 開設当時、日田郡夜明村にある駅だったからです(現在は、日田市夜明中町)。
 焼畑開墾地だった村は、最初は夜焼(よやけ)と呼ばれてたそうです。
 でも、“焼”が縁起が悪いということから、「夜開→夜明」と改名されたとか。

 “夜明”からは、日田彦山線が分岐してます。
日田彦山線

 ここからまっすぐ北上し、北九州へ向かう路線です。
 昔は、久大本線と日田彦山線は、この“夜明”で乗り換えたんですが……。
 日田彦山線の電車が、すべて日田まで乗り入れることになり……。
 “夜明”で乗り換える人はほとんどいなくなりました。
 そんなことから、無人駅になったんですね。

 余談ですが……。
 この“夜明”を、夜明けに通る列車は無いものか……。
 探してみました。
 夏期の夜明けは早すぎてムリですが……。
 今の時期なら、夜明けに間に合う列車がありました。
 本日、3月24日の大分県の日の出は、6:12。
 久留米方面行きの列車が、6:04、“夜明”に停車します。
 その時にぴったりのバックミュージックがありました。


 さて、“夜明”を出た「ゆふいんの森」2号は……。
 そのまま久大本線を西進し、久留米へと向かいますが……。
 日田を過ぎたあたりからは、九州一の大河、筑後川に沿って走ります。
 日田はむしろ、筑後川水系という点で、古くから福岡県の筑後地方と結びつきが深かった町です。
 そのため日田弁も、肥筑方言の特徴を持っているとか。

 “夜明”を過ぎると、筑後川の川幅がどんどん広がります。
筑後川

 ここには、“夜明ダム”という発電専用ダムがあるからです。
夜明ダム

 ダムを過ぎ、トンネルを抜けると、もう福岡県です。

「とうとう、大分県ともお別れか……」
「Mikikoさん、さっき、『ゆふいんの森』に乗ってるんだから……。
 博多までは、まだ由布院とお別れじゃないって言ってたじゃないですか」
「ははは、そうだった。
 福岡県に入ったけど……。
 なぜか、『大分に行こう!』は続くのであった」

 夜明ダムを境に、筑後川は中流域となります。
 流れも緩やかになり、川幅も広がってきました。
 福岡県に入ると、もうトンネルはありません。

 停車駅ではありませんが、久留米までの途中に、思い出深い駅名があります。
 “田主丸(たぬしまる)”。
田主丸

 中学に入学して間もないころ……。
 友達もなかなか出来ず……。
 新しい地図帳を、休み時間にひっくり返して見てました。
 そのとき見つけた地名。
 すぐ近くの席に、タヌキと呼ばれてる男子生徒がいました。
 陸上部で、4月なのにもう真っ黒。
 タヌキと言うより、アナグマみたいな感じでしたが。
 この駅名のこと、誰かに教えたかったんですが……。
 そんなことで笑いあえる友達は、まだいませんでした。

 さて、この先、「ゆふいんの森」の停車駅は、3つ。

 久留米、13:38。
 久大本線は、久留米が終点。
 ここから博多までは、鹿児島本線になります。

 久留米は、焼き鳥の町です。
 人口に対する焼き鳥店の数が、日本一とのこと。
 内臓系の、ディープな串が豊富です。
 鳥のほかにも、「豚のダルム(腸)」とか、「馬のヘルツ(心臓)」とか……。
久留米・焼き鳥

 続いて、鳥栖。
 13:45。
 鳥栖は、佐賀県になります。
 「焼麦(シャオマイ)弁当」(中央軒)という名物駅弁があります。
焼麦(シャオマイ)弁当

 “焼麦(シャオマイ)”とは、シューマイのこと。
 「東の崎陽軒、西の中央軒」と呼ばれるほど、有名なお店だそうです。

 再び福岡県に戻り……。
 二日市、13:57。
 太宰府天満宮への最寄り駅です。
 時間が許せば……。
 「東風吹かば……」の“飛梅”を見に行きたいところですが……。
太宰府天満宮・飛梅

 今回は、諦めましょう。

 そして、終点。
 「ゆふいんの森」2号は……。
 14:09、滑るように博多駅ホームに入りました。
博多駅に入る「ゆふいんの森」

「あ~ぁ。
 とうとう着いちゃったね」
「ですね。
 Mikikoさん、飛行機で帰るんでしょ」
「うん。
 高いけどね。
 さすがに、ここから電車で帰る気にはならんわな」
「福岡空港って、駅から近いんですか?」
「それが、たまげるほど近いんだよ。
 とかく地方空港ってのは、JRの駅からアクセスが悪いじゃない。
 新潟もそうだったろ。
 エアポートリムジンなんて、大層な名前の直行バスが走ってたけど……。
 あれは、アクセスの悪さの裏返しだもんな。
 ところが福岡は……。
 驚くべきことに……。
 地下鉄で2駅。
 所要時間5分だよ。
 地下鉄が乗り入れてる空港は、全国でここだけなんだ」
地下鉄が乗り入れる福岡空港

「便利ですね」
「空港がこんだけ近けりゃ、飛行機にも乗る気になるよ。
 新潟との直行便もあるし、大助かり。
 でも、新潟との路線は、廃止になるかも知れないんだ」
「え~。
 何でですか?」
「客が少ないからに決まってるだろ。
 だいたい、福岡から新潟に行く用事のある人なんて……。
 1日何人いるんだよ?」
「言われてみれば……」
「だろ。
 新潟県なんかが、路線存続を働きかけてるみたいだけどさ。
 路線を維持するだけの需要は……。
 新潟人のわたしから見ても、あるとは思えない」
「1日に何便出てるんですか?」
「たった1便の1往復。
 1日1便じゃ、時間を限られちゃうから……。
 とても使いづらい。
 新潟行きの福岡空港発は、16:15だよ。
 新潟着が、17:45分。
 こんな時間に着いたって、何も出来ないじゃん」
「じゃ、新潟行きの便まで、まだ2時間あるんですね」
「そうなんだ。
 せっかく、空港が近いのになー」
「羽田行きは、何時かな?」
「羽田経由で新潟行くっての?
 そんなことするんなら、ここで2時間待つ方が早いよ」
「え?
 なんで羽田から新潟行くんです?
 わたしは、羽田からマンションに帰りますよ」
「ちょっと待て!
 まさかだけど……。
 自分だけ、羽田行きに乗ろうって魂胆じゃないでしょうね?」
「魂胆って……。
 わたしは東京に住んでるんですから、羽田行きに乗るのが普通じゃないですか?」
「ヒ、ヒドい!
 わたしを福岡に置いてこうっての!」
「だって、仕方ないでしょ。
 方向が違うんですから」
「やだ!
 ぜったい、やだ~。
 まだ旅は終わってないんだぞ。
 新潟から出発したんだから……。
 新潟に帰るまでが旅じゃないのよ!
 こんな、西の果てで別れるなんて、絶対にイヤ!」
「だって……。
 明日の授業の予習もしなきゃならないし」
「授業休めば、予習要らないでしょ」
「そんな!
 2日も休んでるんですよ」
「わたしだって、会社2日休んでるよ。
 2日も3日も一緒じゃないか」
「かなり違うと思います」
「やだ~。
 やだ~。
 ここでお別れなんて、絶対にやだ~」
「ちょっと……。
 こんなとこで、しがみつかないでくださいって」
「やだよ~。
 行っちゃやだ~。
 うぇぇぇぇ~ん。
 うぇぇぇぇ~ん。
 だっこ~。
 おんぶ~」
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