Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #124
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#124



 我に返った道代は、廊下と室内とを隔てる襖に顔を近付けた。
 正確には、襖と柱との境に顔を近付けた。柱は、花世の左手首から延びる縄を巻き付け固定してある柱である。したがって、その柱と襖の端との間には、巻き付けた縄の太さの分だけ、僅かな隙間が出来ていた。
 道代は、その隙間に顔を近づけた。正確には目を近づけた。立ち聞きだけではもはや満足できない。室内を覗こうというのだ。だがもちろん、両の目で覗くことは叶わない。柱を挟んだ反対側にも襖があり、そちらにも同様に隙間があるのだが、左右の隙間をそれぞれ左右の目で見ることはもちろん不可能である。柱の太さは、道代の左右の目の間隔よりはるかに太かった。
 柱と襖の間のわずかな隙間に道代は左の目を近づけた。隙間に目を凝らす。道代には、片目を瞑るという器用な真似はできない。襖の表面に近づいた右目は焦点を合わせることも叶わず、何物とも判然としない模様で道代の視界を薄く覆った。

 道代の目に、志摩子の裸の背中と尻が見えた。花世の体は志摩子の背に隠され、ほとんど見えない。志摩子は、花世に覆い被さって、なにやら行っているようである……。

 さらに目を凝らそうとした道代の視界が、いきなり覆い隠された。視界だけではない、鼻も口も、得体の知れない何物かに覆われた。いや、その何物かは、道代の顔全体を押し潰そうとするように圧迫してきた。
 さらに、道代の胸のあたりに、太い蛇のようなものが巻き付き締め付けてきた。

(ひえっ)

 道代の上げた短い悲鳴は、もちろん声にならなかった。呻き声一つ、道代は出せなかった。いや、ほとんど息を継ぐことすら困難であった。
 道代は、その圧迫から逃れようと踠(もが)いた。叶わなかった。道代の四肢は、僅かの動きすら許されなかった。
 道代は、頭を振ろうとした。せめても、拒否の意思を示そうとした。叶わなかった。道代の顔は、いや、頭部全体は巨大な万力(まんりき)に締め付けられたように微動だにしなかった。

 道代は、改めて悲鳴を上げた。恐怖に捕らわれた幼子が、鳴き声混じりに上げる形振り(なりふり)構わぬ悲鳴を上げた。叶わなかった。道代の悲鳴は、口からも鼻からも出ることを許されなかった。その悲鳴は、道代の体内を駆け巡り、道代を恐怖させた。

(ひっ、ひっ、ひっ、ひいいっ、ひいいいいいいいいいい)

 声にならない悲鳴を上げ、動かぬ体で遮二無二踠(もが)こうとする道代の耳に、野太い声が掛けられた。地の底から這い上がってくる得体の知れない獣、いや正体すら判然とせぬ異形のものの漏らす声であった。
 声は小さかった。道代のみに掛ける囁くような声であったが、道代の耳には、己を一呑みにしようという巨大な獣の唸りに聞こえた。

 遥か太古。
 人類がまだ荒々しい自然の中に在って互いに寄り添い、仄暗い洞窟に隠れ住んで長い夜を遣り過していたころ……その洞窟の入り口に立って内部を窺い、獲物の匂いを嗅ぎつけて、腹を満たす歓びに涎を垂れ流す巨大な獣の上げる咆哮。
 道代の耳には、その声はそのように聞こえた。

「いるな」
「いるな」
「そこにいるな」
「わかっているぞ」
「出てこい」
「出てこおい」
「喰うぞ」
「喰ってやるぞ」
「お前を喰ってやるぞ」
「隠れても無駄だ」
「出てこい」
「出てこおい……」

 道代の中に、現代人の誰もが覚えていないはずの、太古の記憶が鮮やかによみがえった。
 人の遺伝子の中に、その奥深くに刻み付けられ、しかしひっそりと、忘れ去られていた原初の記憶がよみがえった。恐怖という記憶。

 道代は絶叫した。
 全身で絶叫した。
 喰われる恐怖に絶叫した。
 声にならない絶叫を上げ続けた。

(ひ)
(ひ)
(ひいっ)
(ひいっ)
(ひいいいいっ)
(ひいいいいいいいいいいいいいっ、いっ)
(いやっ)
(いやあああああああああああああああああああっ)

「静かにせんかい」

 道代は、ようやく、掛けられた言葉の意味を理解した。
 獣ではない。
 人だ。
 人の言葉だ。
 この声は……。

 道代は、体の緊張を解いた。
 無意識に、踠(もが)こうとしていた自分に気付いた。
 道代の体が弛緩した。
 それに気付いた獣は、いや、道代を拘束していた相手は、力を緩めた。
 拘束者は、道代の背後にいた。
 道代の背後から、その顔と胸を制していた。
 拘束者は、道代の顔を覆っていた手、道代の胸を巻いていた腕を緩めた。
 改めて声を掛けてきた。

「何してまんねん、お道はん」

 「花よ志」の立て板、関目源蔵であった。
 道代は、軽く頷(うなず)くような素振りを見せた。源蔵は、道代の顔を覆っていた手の力をさらに緩めた。緩めながら囁いた。

「大きな声、出したらあかんで」

 道代は、今度は少し自由になった首を縦に軽く振った。

「で、何してまんねん」
「な、なに、て……」
「この夜中、志摩子女将の部屋の前、聞き耳立てながら何してまんねん、て聞いてまんねやがな」
「そ……いや、聞き耳、て……」
「聞いとったやないけ、襖に耳、くっつけてのう」
「いえ、あの、そないな、こと……」

 道代を背後から羽交い絞めにした源蔵は、道代に顔を近づけた。その口元は、道代の耳に触れんばかりである。

「言えんねやったら儂が言うたるわ。オナっとったやろが、おまん(お前)」
「そ……ちゃう(違う)そないなこと……」
「ふん。往生際の悪いおなご(女)やのう。ほな証拠、見してもらおか」

 言うなり源蔵は、再び道代の顔を掴んだ手に力を込め、改めて口を封じた。いきなり道代の裾を捲りあげた。

(ひえっ)

「いごきな(動くな)!」

 手と口で道代を制する源蔵だが、道代は全身で踠(もが)いた。源蔵の手から逃れようとした。しかし、道代の体はほとんど動かなかった。もちろん声も出ない。それでも道代は、肉食獣の咢から逃れようとする獲物のように、抵抗を続けた。
 その尻に、かすかに空気の動きが感じられた

(い、やあ……)

 道代の下半身は剥き出しになっていた。その着物の裾は腰の上まで捲り上げられ、両脚と尻が暗い廊下の照明に浮かび上がっていた。
 道代の尻は貧相であった。ほとんど盛り上がることもなく、少年のそれのように小振りであった。太腿も脹脛も、女らしい柔らかい曲線は、道代の下半身のどこにも無かった。長年の、仲居としての働きは、下半身の線を強いものにしていた。見ようによっては、鍛え上げられたアスリートのそれを思わせた。
 しかし、女らしい曲線はどこにも無かった。

 しかし、白かった。
 道代の尻は白かった。
 道代の太腿は白かった。
 道代の脹脛も白かった。
 仄暗い廊下の照明を欺くように、道代の尻と太腿と、脹脛の白さは圧倒的であった。
 その白は、自己主張をしていた。
 何者かを糾弾するように、声高に叫んでいた。

「女や」
「女や」
「うち(私)は女や」
「うちは女や」
「うちは女や」
「うちは、おんな、や」

 道代は、再び声にならない絶叫を上げた。

(いやあああああああああああっ)
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #123】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #125】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2015/10/27 11:15
    •  「花よ志」の仲居頭、お道姐さん。近藤道代の悪癖は立ち聞きとオナニーです。まあ、立ち聞きはともかくオナニーを悪癖、は言いすぎですが。
       で、志摩子女将。腹が太いのか、なにやら思惑でもあるのか、聞かれているのを承知のそ知らぬふりです。
       で、そこに源ちゃん、関目源蔵登場。
       まあ、お道を見張っていたというわけではなく、一発やるか、で志摩子女将の部屋を訪れたところ、たまたま出くわしたということなのでしょうが。
       ということで、室内と廊下。同時進行で始まりそうです。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2015/10/27 19:48
    •  まだ、捜査中ですよね。
       外には、張り込みがいるんでないの?
       あまり大きな声を上げれば、踏み込まれることになると思います。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2015/10/27 20:30
    •  そうでしたなあ。
       忘れてましたわ(ウソうそ)。
       もう書いちゃいますか。
       事件もそうですが『アイリスの匣』、物語自体がいよいよ大詰めです。
       で、現在の「志摩子女将居室の場」。
       エッチシーンをたっぷりじっくり、徹底的に書かせていただくのはこれが最後かもしれません。警察など知ったことではない。思いっきりやらせていただきますので、よろしくお付き合いください。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2015/10/28 07:36
    •  その場に、警察も加わるってのはどうですか?
       多人数の場面は……。
       ドタバタ劇にしてしまうと、比較的楽に乗り切れるかもです。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2015/10/28 11:34
    •  にするつもりはありませんし、楽に書こうというつもりもありません。
       警察は、源ちゃんの動向をじっくり探っとります。乱交どころやおまへん(中京〔なかぎょう〕署;六地蔵甚五郎)

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2015/10/28 19:46
    •  楽だぞぅ。
       少々、後ろめたさはありますが。
       会話を書き飛ばすと、45分で8枚くらい書けてしまいます。
       今はちょっと反省し、地の文を多く書くようにしてます。
       はかどらずにイライラしますね。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2015/10/29 00:32
    •  実はわたしも近頃やらかしています、行数稼ぎ。
       先刻ご承知でしょうが、例えば今回。
      「いるな」
      「いるな」
      「そこにいるな」
      「わかっているぞ」
      「出てこい」
      「出てこおい」
      「喰うぞ」
      「喰ってやるぞ」…………
      (ひ)
      (ひ)
      (ひいっ)
      (ひいっ)
      (ひいいいいっ)
      (ひいいいいいいいいいいいいいっ、いっ)…………
       てな調子です。
       兵隊を出すより簡単に稼げます、行数。
        (「楽に書こうというつもりはない」、なんちゅうことを言うたのはどの口や)

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2015/10/29 07:16
    •  一番いいのは、句点ごとに改行してしまうことです。
       これなら、地の文でもハカが行きます。
       わたしはこれを、眉村卓のジュブナイルから学びました。
       画面での見やすさを大事にしてる、という言い訳も効きますしね。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2015/10/29 09:04
    •  確かに。
       小説なんか。
       読んでいますと。
       改行が少ない。
       だらだらと。
       どこまでも。
       続く作品も。
       まま見かけます。
       意図。
       しているのか。
       何も。
       考えていないのか。
       その。
       あたりは。
       わかりませんが。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2015/10/29 19:48
    •  1枚目の1マス目から、1文字の空けもなく文字が連なり……。
       お願いした枚数の最後のマス目で、ぴったりと終わってたそうです。
       原稿料をもらうからには、すべてのマス目を埋めなければならないと思われたんでしょうね。
       昔は、そういう浮世離れした律儀な学者さんがいたということです。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2015/10/29 20:23
    •  小学校の「綴り方」の時間に寝ていたのではないかね。
       『綴方教室』は、監督;山本嘉次郎、主演;高峰秀子。
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