Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #92
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#92



「よろしおまっか、山科はん」

 気に食わない十条署長の扱き下ろしをたっぷり行い、気持ちよさそうな山科巡査部長に、辛抱強く待っていた六地蔵警部補がようやく声を掛けた。

「お、なんでしたかいな」
「『花よ志』のもん(者)の事情聴取です」
「お、そうでしたな。えーと」
「仲居の、お花でんがな」

 山科の相方、双子兄、北大路波之進巡査が声を掛けた。
 それを受け、言葉を継ぐ山科。

「ああ。ま、あのおなごは事件とは……」
「関係おまへんか」

 六地蔵が念を押した。
 山科は返事をするが、なんとなく含みがある。

「そう見ましたがな。ただ……」
「なんでっか」
「あのおなごでしょうな。さっきヤナはんが言うとった、ほれ、女将の相手」
「ああ、毎晩やっとるっちゅう」
「毎晩かどうかまではわかりまへんが」
「ほな、ゆんべもやっとったと……」

 しつこく問いかける六地蔵に、山科は返答する。

「本人はもちろんそないなことは言わんし、そこまではわかりまへんがな」
「そらまあ、そうですやろなあ」

 応じる六地蔵に、思いだしたように山科が答える。

「肝心の事、言い忘れてましたけんど。今までの話の三人、女将と、女番頭と、女将の相手。ゆんべ(夕べ、昨夜)は早(は)よ寝た、ゆうことでみんなアリバイおましたわ。まあ、ゆう(言う)ても、あくまで本人の申し立てでっさかい、今後確認していかなあきまへんけどな」
「ほの三人、自宅はどこでっか」
「三人とも店に住み込みで……自分の部屋がおますわ。まあ、女将は、住み込みゆうのはおかしいでっけどな」

 答えた山科に、改めて六地蔵が問いかける。

「自分のうち(家)、無いんでっか、あの女将」
「いや、これは本人やのうて(無くて)女番頭から聞いたんでっけど、嵯峨野の方に一軒、も(持)っとるそうですわ。ほんでも、あんまし帰ることもない、ゆう話でした」
「ほら、もったいないでんなあ」
「まあ、店からはちょっと離れてますし、めんど(面倒)くさいんちゃいまっか、いちいち帰るんは」
「ちゃいまんなあ、金持ちは。家一軒、ほったらかしでっかいな」

 山科の女将情報に、双子弟、伸之丞巡査が食いついた。
 が、誰も相手をしない。
 山科は話を続ける。

「ほれから……ほれ、住込みの。住み込みゆ(云)うたら今の、女将の相手も、さっきの女番頭もせやけど、まだおったやろ。おい、波」
「久美でんがな、田所久美」

「せやせや、田所。仲居の一人ですわ。これはゆんべは、同室の人間と一緒に寝とったそうですわ。眠っとったんか寝とったんかまではわかりまへんけどな」
「同室て、相手は誰でんねん」

 六地蔵が質問した。
 答える山科。

「あとで話、出ますやろけんど、板場のもんですわ」
「えーっ、住み込みで同棲ですかいな」

 伸之丞が叫んだ。
 山科がおっかぶせる。

「アホ、そないなわけあるかい、おなごや」
「おなごて……板場なんでっしゃろ」
「しやから、板場のおなごゆうことやがな」
「へえー、ほな、おなごの料理人ゆうことでっか」
「そういうこっちゃな」
「へえええー。ドラマとかで見たことはおますけんど、ほんまにおるんですなあ」

 掛け合いのような山科と伸之丞のやり取りを、柳辻巡査長が遮った。

「おう、ちょう(少し)待て。わからんようなった。住み込みの人間て、結局何人おるんや」

 波之進が、指を折って数えながら答える。天井を見上げている。

「男連中は全員、通いですわ。住み込みのおなごは女将以外に……女番頭、女将の相手の仲居、あともう一人の仲居、ほれと板場のおなご。女将いれて、全部で五人ですな」

 波之進は視線を刑事連中に戻し、言葉を続ける。

「あとの仲居連中は、みいんな(皆)通いですわ。で、ゆんべはいつも通り上がって店出たそうで、ほんでなんも知らん、ゆうことでしたわ。ま、これも今後、いちいち確認していかなあきまへんけど」
「ほの(その)連中の自宅は、聞いてもらいましたな」

 念の為、という感じで六地蔵が問いかけた。
 山科は、盛大に鼻を鳴らしながら返答する。

「いうにや及ぶ、ですわ」

 古風な山科の言い回しに、他の五人は軽く口元をゆるめたが、声を掛ける者はいなかった。
 六地蔵が、再び室内の空気を引き締めるように発言する。

「ほなら、あとは厨房のもん(者)の聴取やけんど、これは儂と保がやりました。おい、保」
「へい」

 厨房と聞いて、これまでの話の流れから、室内に軽く緊張感が走った。
 六地蔵の相方、醍醐保巡査が立ち上がり、手にした手帳を開きながら発言する。

「厨房には、おもに六人の人間がおります」

 すかさず、柳辻が醍醐を止めた。

「おい保。『おもに』て、なん(何)やねん」
「ああ、常雇い、ゆう意味ですわ。忙しい時なんかに、臨時の人間入れることもあるそうで」
「ふん。忙しいゆうたら、昨日は大文字やったやないか。ほの臨時雇い、入れとらんかったんかい」
「そうみたいです。適当なんが見つからんかった、ゆう話でしたわ」
「ほれ、誰がゆう(言う)とったんや」

 山科が横やりを入れた。
 答える醍醐。

「立板の、関目源蔵ですわ」
「ああ、さっきの、狂犬やな」
「そうですわ、今んとこ、こいつが板場のトップやそうで」

 柳辻は、改めて醍醐に向き直り、口調を改めて問いかける。

「ほのあたりから話、聞こか。本来のトップは、えーと花板ゆうたな。こいつは何しとんねん」
「からだ(体)いわしてもうて(壊してしまって)、もう長いこと休んどるそうですわ。歳も歳やそうで、もう辞めるんちゃうかて、聞きましたなあ」

 答える醍醐に、柳辻は更に問いかける。

「ふうん。ま、念のため名前、聞いとこか。なん(何)ちゅうねん」
「野田。野田太郎ですわ。住まいは蛸薬師通(たこやくしどおり)の……新京極の裏手あたりらしいですわ」
「なんや、店からすぐやないけ」

 波之進が口を挟んだ。
 醍醐は、律義に双子兄に向き直り相手をする。

「せや。歩いても5分ゆうとこやな」
「で、どないやねん、身体の具合は」

 柳辻が、おおい被せるように醍醐に問いかけた。
 尻馬に乗る双子弟、伸之丞。

「寝たきり、とか」
「いや、そこまで悪うはないらしい。けんど、寝たり起きたり、ゆう感じみたいですわ。ま、いずれ様子見、兼ねて話、聞きに行かなあかんでしょうけんど」

 山科が話を戻す。

「とりあえず今は現役の連中や。今、あこの板場仕切っとんのは、その狂犬源蔵。関目源蔵ゆうことやな」
「ほうですわ」

 と醍醐。

「そいつの、ゆんべ(昨夜)の動きは」
「へい。これと言って目立った動きはおまへんなあ。店あ(開)けとった間はずっと厨房で……10時過ぎに上がって、さっさと自宅に引き上げたそうですわ」
「ふん。他のもんは……」
「源蔵のすぐ下が田辺銀二。こいつは碗方やそうですわ。ほれから焼方の平野良雄」

 伸之丞が口を挟む。

「何でんねん。ほの、碗欠けたとか、焼入れとか……」
「アホ、碗方に焼方や、板場ではの、主な持ち場が役職名になっとるんや。碗方は椀物、焼方は無論焼き物やな」

 柳辻が諭すように答えた。
 伸之丞は続けて問いかける。

「ほな、狂犬の……立板っちゅうのは、何でんねん」
「立板、ほれから花板の板は、板場の板、俎板の板や。俎板の前、正確には店の客の前の俎板で仕事する料理人、ゆう意味や。ほれ、カウンターがある店では、その内側で料理する奴おるやろ。あれが花板、立板や。厨房、板場の長、ゆうことや。
 偉そやぞー。客の前ではそないなことないけんど、裏の厨房では下のもんは絶対逆らえん。逆ろうたらもうその店にはおれん。まあ、昔でいうと殿サン、専制君主ゆうとこやな」
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #91】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #93】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2015/03/17 09:35
    •  山科情報です。
       
       嵯峨野いいますと、ご存知嵐山近くの山あい、京都市北西部の閑静な地です。大覚寺、遍照寺などの古刹(京都の寺はたいがい古刹)が目白押し、縁結びで有名な車折(くるまざき)神社もほど近く。ええとこでっせ、嵯峨野。
       一般住宅もおますが、超高級住宅。とてもわれわれ風情が近づけるような……。
       その嵯峨野に一軒構える志摩子女将。
       もってはるんですなあ、儲けてはるんですなあ。ま、料亭で儲けたのか、人様には言えない道で稼いだのかはわかりませんが。
       「花よ志」住み込みのおなごは五人。波之進巡査が確認しました。
       もうちょっと増やそか思たんですが、ややこしいし、これ以上話を広げとないんで、絞りました。
       で、中京(なかぎょう)署の捜査会議は、いよいよ(ようやく)佳境に入ります。醍醐巡査と六地蔵警部補が行った板場の連中の事情聴取です。
       久方ぶりに、「花よ志」の花板、野田の親爺っさんの話が出ましたが、さて……。
       次回を、乞うご期待!

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2015/03/17 20:06
    •  名前は聞いたことがありますが、どういうところなのか、ピンときません。
       大覚寺は、聞き覚えがあります。
       『女ひとり』の歌詞に出てきますね。
       “恋に疲れた女が一人”というところが……。
       東海林さだおの漫画では、“生活に疲れた男が一人”と返されてました。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2015/03/17 23:31
    •  嵯峨野。
       芭蕉の弟子、去来の別荘、落柿舎はご存知でしょ。嵯峨野に今もあります。
       小倉百人一首の小倉山山荘の所在地は嵯峨野です。
       京の悲恋・無常ものときますと、よく使われる舞台は嵯峨野の化野。化野念仏寺は8,000の無縁仏を祀るとか。
       京の西郊、乙訓(おとくに)と同じく、嵯峨野の竹林も有名です。
      『嵯峨野さやさや』
       作詞:伊藤アキラ
       作曲:小林亜星
       歌唱:たんぽぽ
       ♪京都嵯峨野の直指庵*
        ………………
        嵯峨野笹の葉さやさやと
       ♪雨の落柿舎たんぼ道
        ………………
        京都嵯峨野の笹がなる
       ♪朝の祇王寺**こけの道
        ………………
        嵯峨野笹の葉さやさやと
        *直指庵(じきしあん):嵯峨野にある浄土宗の寺院。
                     山号は祥鳳山(無寺号)。
        **祇王寺:真言宗の寺院。尼寺。
               所在地は嵯峨鳥居本小坂町。
               平清盛の愛妾、白拍子の祇王が剃髪・入山した。
               苔の庭が有名。
        ●まつられて百敷き春や祇王祇女
        ●短夜の夢うばふものほととぎす
        ●いざよいの月かくれにし露の冷え
        ●祇王寺と書けばなまめく牡丹雪
        以上四句、いずれも高岡智照尼。
        高岡智照(1896-1998)は、元芸妓。妓名は千代葉、照葉。
        本名高岡たつ子。
        情夫への義理立てから小指を詰め、
        その美貌も相まって人気は高く、
        海外でもNine Finger Geishaとして知られる。
        出家して祇王寺の庵主となる。瀬戸内寂聴『女徳』のモデル。
        ついでに、と言うと失礼ですが、
        ●祇王祇女ひそかに嵯峨の星祭(岡本綺堂)

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2015/03/18 07:44
    •  なんとなく、わかってきました。
       落柿舎。
       化野。
       侘び寂びと、不気味。
       陰気くさー。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2015/03/18 09:26
    •  閑静、静寂、閑雅、静謐など、雅な語を知っておるかね。
       「雅」を読めるかね、“が”ではないぞ。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2015/03/18 19:46
    •  知っております。
      ------------------------------------------
      ●『閑雅な食欲』萩原朔太郎
      松林の中を歩いて
      あかるい気分の珈琲店(かふぇ)をみた。
      遠く市街を離れたところで
      だれも訪づれてくるひとさへなく
      林間の かくされた 追憶の 夢の中の珈琲店(かふぇ)である
      をとめは恋々の羞をふくんで
      あけぼののやうに爽快な 別製の皿を運んでくる仕組
      私はゆったりとふほふくを取って
      おむれつ ふらいの類を喰べた。
      空には白い雲が浮かんで
      たいそう閑雅な食欲である
      ------------------------------------------
       実に明るい詩です。
       陰気さのカケラもありません。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2015/03/18 21:00
    •  そうはいってもなあ、朔太郎だからなあ。
       ↓これはどうだろう。

      まつくろけの猫が二疋、
      なやましいよるの家根のうへで、
      ぴんとたてた尻尾のさきから、
      糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
      『おわあ、こんばんは』
      『おわあ、こんばんは』
      『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
      『おわああ、ここの家の主人は病気です』

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2015/03/19 07:34
    •  暗鬱な朔太郎の詩群の中に、ぽっかり覗いた青空のようです。
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