Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #74
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#74



 明子は再び、自分のグラスを一気に空けた。
 あやめはさすがに明子を見詰め、声を掛ける。

「明子はん。そないな勢いで飲まはって、大丈夫どすか」
「もう、なんやのん。あやめさんまでお説教?」

 あやめは、左右に手を振りながら返事した。

「いえそんな、お説教やなんて。うちは、お体大丈夫かなあ、て思て」

 明子は正面からあやめを見詰め、決めつけた。

「うちの回りの人間はねえ、家族から親戚から友達から、みいんなそない言うんよ。呑むな、控えろ、身体に悪い、たいがいにせえってね」
「へえ……」

 あやめは俯き、少し上目づかいに明子を見る。
 明子はそっぽを向いてグラスを手にしていた。

「すんまへん、明子はん」

 あやめは俯いたまま、明子から目を逸らした。
 明子は、そっぽを向いたまま横目であやめを見た。軽く俯き、しょんぼりした風情である。
 明子はあやめににじり寄り、身体をぴったり押し付けて、下からすくい上げるようにあやめを見詰めた。

「あやめさん、怒った?」
「そんな、明子はん。怒るやなんて……」
「ええんよ。うちは我がまま者(もん)やからねえ。たいがい周りの人間に嫌な思いをさせてると思う。あやめさん。ちょっとでも気に障ることあったら、遠慮のう言うてね」
「明子はん……」

 そうはいっても、あやめの立場で明子に言いたいことを言えるわけがない。あやめはテーブルに置いた自分のグラスを手に取り、中身を少し口に含んだ。冷たく、それでいてまろやかなウィスキーの味が口に広がった。

「おいしい……」

 あやめは、無意識のうちに呟いていた。
 明子は、囁くようにあやめに声を掛ける。

「せやねえ、おいしいねえ、あやめさん」
「なんて銘柄ですやろ」

 明子は、卓上の瓶を取り上げ、あやめの方にラベルを向けた。瓶自体は、ほっそりとした円筒形の、縦長の瓶である。
 ラべルも縦長で、瓶の全長の半分以上を覆っている。ラベルの中央には帆船の絵。ラベル最上部には「CUTTY SARK」。カティサークである。

「ははあ、カティサーク」
「御存知ですか」
「へえ、ウィスキーはほとんど知りまへんけど、これは知ってます」
「イギリス原産の酒ですけど、そんなに珍しいものではおへんわなあ。さほど高価なもんでもないし」
「そうですなあ。うちはウィスキーはほとんど飲みませんけど、これは知ってます」
「あやめさんって、普段は何飲んではるのん」
「普段と言いましてもお店に住み込みの身どすさかい、そないにしょっちゅう飲むわけにはいきまへんけど、ほとんど日本酒です」
「はあ、やっぱりねえ」

 明子は、アイストングを手にし、ペール内の氷をあやめのグラスに、次いで自分のグラスに投入した。カティサークの瓶を取り上げ、同様に二人のグラスに注ぐ。

「さあ、飲も飲も、あやめさん」
「へえ、明子はん」

 二人は、時折キャベツの炒め物や千切りを口にしながら、飲み続けた。


「はあー、もう無(の)うなったわ」

 明子は、未練がましくカティサークの瓶をグラスの上で逆さまにしたが、それ以上一滴もグラスに入るわけがない。

「買(こ)うてきまひょか」

 あやめは、明子の手から取り上げた空き瓶を、とりあえずテーブルに置きながら問いかけた。

「うーん、お客さんにそんなんさせたら悪いし……」
「なんも悪いことおへんよ」
「そう、そんなら、このマンションの玄関を出て左へ少し歩くとコンビニがおますさかい」
「ほな、行(い)てきますわ」
「ほな……なんでもええからウィスキーを2本。それと缶ビールを6本、パックになったやつやね。

 明子はバッグを探って財布を取出し、1万円札を1枚、あやめに手渡した。受け取ったあやめは立ち上がった。

「行(い)てきます」
「ごめんねえ」

 部屋を出たあやめは、エレベーターで1階に下りる。玄関を出、マンション前の道を左へ歩く。夏の午後の日差しが強烈に照り付けてきた。しかも風は全くない。
 先ほどまで涼しい室内にいただけに、体感温度の落差は圧倒的だった。目の前に陽炎が立つようだった。いくらも歩かないうちにあやめは汗まみれになった。
 こういう時は急いではいけない。早く目的地に付きたい、という気持ちを押え、普段よりゆっくり歩を進めるのだ。

(帽子か日傘があればな……)

 あやめは考えても仕方のないことを思った。

(日傘はともかく、帽子くらいは買うかな)

 そんなことを考えるあやめの左手に、コンビニが現れた。よくある、青と白を基調にした巨大な看板がかかっている。あやめは転がり込むように店内に入った。強烈に冷房がかかっている。あやめの汗は一気に冷え込んでいくが、汗が引くというところまではいかない。あやめは、今度は寒気を感じた。

(なんや、身体に悪いなあ)

 あやめは、そそくさと酒売り場に回った。
 外国産のウィスキーは無かった。
 あやめはよく見かける国産ウィスキーを2本、手にしたレジかごに入れた。店の奥に向かう。巨大な冷蔵庫の中に各種ソフトドリンク、缶ビール、酒、ウィスキーなどが所狭しと並んでいる。
 あやめは缶ビールの群れの扉を開け、しゃがみこんだ。下の方の段に、パック入りの缶ビールが置いてある。ろくに銘柄も見ず、適当に一つを掴み上げかごに入れた。レジへ向かう。レジはすいていた。
 あやめはポケットから取り出した1万円札を差し出し、釣りを受け取る。ろくに確認もせず釣りをポケットに押し込み、レジ袋を手に出入り口に向かった。
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #73】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #75】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/07/29 14:19
    • なんでしょう。
      コンビニやからなあ。角瓶かホワイトか、そんなとこかな。
      近くのコンビニを覗きに行こうかとも思ったのですが、とうてい外出する気にはなれません。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/07/29 19:52
    •  ↓これを、買うとくなはれ。
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201407171656414fb.jpg
       でも、1万円もあれば、オールドが買えるでないの。
       それにしても……。
       なんで、アテも買わないわけ?
       『ぼんち揚』なんか、美味しいですよ。
       あ、やっぱりピーナッツだな。
       明子が、鼻の穴に入れて飛ばす芸を見せるわけです。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/07/29 22:01
    • 「何者にも頼らぬ独立心と正義感を持ち、安易な生き方に流されず信念を貫く」という精神を込めたそうです。
      原酒はもちろん「山崎」、ご賞味くださいって、なんでわたしが宣伝せにゃならんのだ。
      1本寄こせ、サントリーはん。
      コンビニに……
      オールドは無いと思うが。
      あ、ミニ瓶があるか。
      あやめとしては、アテを買うわけにはいきまへんな。
      料理人としての矜持がおますからなあ。
      あ、せやないか。
      明子の冷蔵庫にはもう何もなかったなあ。
      どうしよう。
      ♪ウィスキーが、お好きでしょ

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/07/30 07:48
    •  コンビーフの缶詰を混ぜれば美味しいと思うけど。
       缶詰なら……。
       冷蔵庫に無くても、棚や引き出しにあってもおかしくないのでは?

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/07/30 12:46
    • まあ、そうなんだけどね。
      もう食べたからなあ、オイルサーディンの缶詰。
      あまり缶詰ばかりというのもなあ、あやめのプライドが許すまい。
      わたしがコンビーフを初めて食べたのは、小学生の3年か4年の頃です。友人の家に遊びに行ったとき、食べさせてもらったんですね。
      こんな食べ物があるのか、と驚いたのを覚えています。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/07/30 19:48
    •  コンビーフは、ときどきツマミに買いました。
       缶は、ネジみたいなので開けるんですよね。
       ツーっぽくて好きでした。
       缶に載せたまま囓ると、贅沢感がありましたね。
       脂肪が白く固まったところが美味しかったです。
       あと、ランチョンミートってのもありました。
       久しぶりに買ってみるかな。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/07/30 23:46
    • そうそう、開缶の仕方が独特だよね。
      そもそも、四角い缶詰というのが珍しいし。
      ランチョンミート、知らなかった。
      ランチョンマットなら知っています、食べられないけど。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2014/07/31 07:31
    •  蓋を開ける缶だと……。
       中身が出しにくいからでしょうね。
       “ランチョン”とは、昼食のことだそうです。
       “ランチ”の正式な言い方が、“ランチョン”。
       これなら、“ミート”とも“マット”ともつながりますね。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2014/07/31 09:01
    • >“ランチ”の正式な言い方が、“ランチョン”。
      へえええー。
      “ランチ”の変化形が“ランチョン”だと思っていました。
      長生きはするもんだなあ、また一つ賢くなったよ。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2014/07/31 19:56
    •  ↓食べ比べレポートがありました。
      http://bug.tank.jp/blog/?p=747
       ↓味が付いてるので、焼くだけで美味しく食べられます。
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201407311753309e9.jpg
       もちろん、焼かないでもOK。
       わたしは、焼いた覚えが無いです。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2014/07/31 21:56
    • これがランチョンミートなのか。
      また、よくわからなくなったよ。
      要するに、豚肉ということ?
      で、基本的には焼いて食べる、と。
      どうもようわからん。
      そもそも「ランチョン」ってなんなのだ?

    • ––––––
      12. Mikiko
    • 2014/08/01 07:54
    •  ↓Wikiより。
      『豚肉と牛肉(まれに鶏肉)とラード(豚脂)、肉に対しておよそ2.5%の食塩、香辛料や調味料を細断機(カッター)にかけ、加熱せずに長方体型のスコア缶(ランチョンミート缶)に脱気充てんする。中国製品などには、丸缶のものもある。密封された缶詰は、340g入り缶の場合、116℃、65分間の加熱殺菌を施される。調理済み食品であるのでそのまま食べることも可能だが、沖縄県を含む日本においては、ほとんどの場合焼くや炒めるなど再加熱して用いられる。5ミリぐらいの厚さに切ってフライパンで焼いたり、野菜と共に炒めものの具材とするのが代表的な利用法である』
       ↓ランチョンの意味(同じくWiki)。
      『ランチョンとは昼食の意味で、この種の保存食品がしばしば昼食のメニューに用いられたことからランチョンミートの名が定着した』

    • ––––––
      13. ハーレクイン
    • 2014/08/01 14:58
    • 「“沖縄県を含む”日本」なんて表現、するかあ。
      ま、そら、食文化は各地それぞれだが、なぜ沖縄だけ別扱いにするのだ。
      例えば“北海道を含む”日本、なんて言わんだろうがよ。
      ああ、Wikiさんよ。
      沖縄返還は、1972年(昭和47年)5月15日。
      この日をもって沖縄(琉球諸島及び大東諸島)の施政権がアメリカ合衆国から日本に返還されました。
      しかしご存知のように、今現在も沖縄は様々な問題を抱えています。

    • ––––––
      14. Mikiko
    • 2014/08/01 20:06
    •  戦後、豚肉の代用品として米軍経由で広まったという、本土とは異なる要因があったようです。

    • ––––––
      15. ハーレクイン
    • 2014/08/01 21:34
    • すごく怪しい感じなんですけど……。
      そういえば、わたし達が小学生の頃の給食に「脱脂粉乳」という飲み物がありました。「米軍放出の怪しい飲み物や」というのが仲間内での評判でした。ま、飲んでましたけどね。
      で、この機会にWikiを覗きましたところ……、
      「脱脂粉乳(だっしふんにゅう)は、生乳や牛乳または特別牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの。
      保存性がよく、蛋白質、カルシウム、乳糖などを多く含んでおり、栄養価が高いことから、戦後しばらく学校給食に用いられた。
      学校給食に用いられたのは主にユニセフからの援助品である。戦後間もない頃の日本の食糧事情を知ったアメリカ合衆国の市民団体が、日本の子供たちの為に実行した支援だった」
      ということでした。そうか、米軍やなくユニセフだったか。
      うーむ。そのおかげで成長できたわけか、われわれは。
      ユニセフは「国際連合児童基金United Nations Children's Fund」、国連の補助機関です。

    • ––––––
      16. Mikiko
    • 2014/08/02 08:47
    •  肝油ドロップなるものが、児童に配布されてたようです。

    • ––––––
      17. ハーレクイン
    • 2014/08/02 10:28
    • 懐かしいですねえ。
      要するに甘みを加えたビタミン剤。
      戦後の小学校の給食に出されたそうです。
      ただ、自分で飲んだかどうかは記憶にないんですよね。
      実物を見た記憶はあるんだから、飲んだのは間違いないんだろうけど。不味い、という評判が先行していたから、飲まずに捨てていたのかなあ。
      すまぬ、ユニセフ。
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