Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #66
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式) アイリスの匣 #66



「さあ、あやめさん。次は何をいただきます?」
「さあそれは……明子はんのお好きなもんをいただきはったらよろしおすんやけど……」

 あやめと明子は、互いの杯に酒を注ぎ合った。

「あきまへんえ(駄目ですよ)あやめさん。うち、ここはしっかりあなたについて行きます。ほんでお料理のいろんなこと、教えていただきますえ」
「お教えするやなんて、そないなこと……」
「忘れはったんどすか、あやめさん。さっき、うち『ニルス』のお話、ようけ(沢山)させてもらいましたなあ。今度は、あやめさんの番どすえ」
「へえ……」

 戸惑うあやめに、侍る年配の仲居が声を掛けた。

「何や虐められてはりますなあ、あやめはん。
 かましまへんやん。あんたはんもご存じのはずでっけど、日本料理をいただく基本は『自由に』『好きなように』食べるいうことですがね。
 まあそら、いろんな決まり事やマナーはおますんやけんど、まずは料理をしっかり味わう、楽しむ、いうことが基本ですわね」

 明子は、仲居に抗議した。

「ほんな、虐めてるやなんて。何でうちがあやめさんを虐めますのん」
「ほほ、怖うおすなあ」
「もう」

 あやめは明子と仲居に交互に視線を送り、少し唇を引き締めた後、八寸に向き直った。
 腹を決めた。
 先ほど、あれだけ講釈をたれたのだ。何を今さら、遠慮することがあろう。
 杯の酒を少し口に含んだ後、明子に声を掛けた。

「ほな明子はん『イイダコのマリネ』をいただきましょか」

 箸置きの箸を取り上げる。
 明子もそれに倣った後、返事した。

「あ、へえ、タコ……」

 タコは……さほど高級な食材というわけではない。いや、どちらかというと下級の魚介類とされる。
 それを、敢えて出してくる。しかも見たところ、さほど細工をしてあるとも見えない。ということは……よほど味付けに自信があるのだろう。
 あやめは、身の引き締まる思いがした。

 箸を伸ばし、小鉢の中のタコの一切れを摘み上げる。口に持って行く。口に含む。噛み締める……。
 甘酸っぱい味が口中に広がった。酢の味は柔らかい。タコの身を包み込むように柔らかい。きついところは少しもない。しかも、先ほどの手鞠寿司の酢の種類・配合とは明らかに異なっている。
 あやめは、思わず嘆息を漏らした。

(この、お酢の味)
(なんて見事な……)

 あやめは口中に広がる酢の味わいに陶然となった。
 ベースになる酢は、一体どのようなものなのだろう。砂糖と塩の配合も見事であった。さらに……一体何が混ぜてあるのだろう。あやめには見当もつかなかった。
 あやめは考えた。

(東山の料亭「ひいらぎ」はん)
(只者ではない)
(いったいどんなお方が厨房に……)

 あやめは「ひいらぎ」の厨房に思いを馳せたが、まさかこの座敷に呼ぶわけにもいかない。

(いつかどこかで……)
(お会いすることもあるやろか)

 あやめは「一期一会」という、茶道の心得の言葉を思い浮かべた。このお方とはもう二度と会えないかもしれない。そういう覚悟で客に対し、自分の全力を傾けてもてなす……。

(そんな覚悟が、自分にあっただろうか)

 あやめは自らを省み、改めて料理人としての気持ちを新たにした。
 八幡巻き、幽庵焼き、カモロース……。あやめと明子は健康な食欲を見せ、八寸の料理を平らげていった。
 新たに追加した二本の銚子もたちまち空になる。

「すんまへん、お酒お願いします」
「酒、へえ、かしこまりました」

 若い仲居が立ち上がり、座敷を出ていった。
 いくらも経たずに戻って来る。盆の上には二本の銚子。それに二つの小鉢。

「炊きあわせどす」
「おおきに」
「おおきに、ありがとさんどす」

 炊きあわせの鉢、それに銚子をそれぞれ、あやめと明子の前に置く。

「どうぞ」

 若い仲居が明子に、年配の仲居があやめに酌をする。
 炊きあわせは、それぞれ個別に煮た野菜や魚を、一つの鉢に盛り合わせたものである。材料により煮上がる時間が異なるので、こういう方法を取る。
 炊きあわせも京料理の見せ所の一つである。材料の選択と組み合わせ、煮方、味付け、器の選択、盛り方……。どこで失敗しても料理は台無しになる。
 あやめは器の中を覗いた。
 筍、人参、里芋、サヤインゲン、椎茸、高野豆腐……。落ち着いた色合いの中にも、華やかな組み合わせの料理群だった。

(美味しそう……)

 あやめは、浮き立つような思いで箸を鉢に伸ばした。
 筍を一切れ箸に取る。
 筍の旬は春である。この季節にはもう遅いのだが、敢えて出してくるということはよほど自信があるのだろう。
 あやめは筍を口にした。

(美味しい……)
(この季節に、信じられへん)

 あやめは、思わず仲居を見やった。

「この筍、どこのんですやろ」
「へえ、乙訓もんやと聞いとります」

 乙訓(おとくに)は京都府乙訓郡、京都府と大阪府の府境に位置する。
 このあたりは竹の名産地であり、筍も多く取れる。

(乙訓か……)
(さすが、美味しいなあ)

 明子があやめに声を掛けた。

「あやめさん」
「へえ」
「おとくにって、どのあたりなん?」
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コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/06/03 10:12
    • 筍が被ってしまいました。
      失礼しました、明子はん、あやめさん。
      被るといいますとタコ。
      あやめの、「花よ志」での料理人デビューのきっかけとなった料理もタコでした(『アイリス』#49~#50)。
      筍はさらっと流しました(そうでもないか)。
      が、タコは、「花よ志」でも「ひいらぎ」でも、あんだけ書き込んだわけですから少しこだわり過ぎましたね。
      わたしは、特にタコが好きというわけではないのですが……
      あやめと明子の酒宴が始まったのは#60。
      で、そこから回を重ねて今回は#66。
      7回を費やして、料理は炊き合わせ。
      ようやく先が見えてきました……かな。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/06/03 19:49
    •  被ってもけっこうです。
       今朝も、タケノコとワカメの味噌汁でした。
       タケノコとワカメ、それぞれに歯触りがあり、美味しゅうございました。
       タコが“イイダコ”であることは、切り身を見ただけでわかるものなんですか?
       酸っぱい系の料理は、イマイチ苦手です。
       鼻の頭に、ふつふつと汗が浮いてしまうのです。
       炊き合わせという料理があることを、初めて知りました。
       別々に煮たものを、ひとつの器に盛る。
       めんどくせー。
       これじゃ、金取られるわな。
       しかし……。
       いったい、お銚子何本飲んだんだ。
       わたしなら、とっくに腰が抜けてますね。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/06/03 20:43
    • マダコ、イイダコ、ミズダコ……。
      調理する前ならもちろん見分けはつきますが、切り身になるとさて、どうでしょう。
      プロの調理人なら見分けがつくかと思いますが、プロは調理する前の姿を知っているわけだからなあ。
      食べる側としてはさて……。
      「マリネ」という料理は全世界にあるようです。
      共通点は「酢」
      人類にとって、酢という調味料は重要なもののようです。
      化学的にいいますと、酢(酢酸)はアルコールを酢酸発酵させてつくられます。で、その原料によって、穀物酢と果実酢に大別されます。アルコール飲料と同じですね。
      で、これはわたしの推測なのですが、「酢」は「酒」から生じた。おそらく偶然に生じた物じゃないかなあ。貯蔵しておいた酒がたまたま酢酸発酵し“お、これはいけるやないか”ということで「酢」という調味料が生じた。
      どうでしょう。
      二人が何本飲んだか。
      酒宴が終わり、勘定する前に数えてみにゃなりません。
      ただ……まだ飲むんですよ、あやめと明子。
      次回を、乞うご期待。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/06/04 07:44
    •  ↓味の良いのは、イイダコとマダコみたいです。
      http://www.cty-net.ne.jp/~noro-m/page048.html
       明石のタコは、マダコのようですね。
       発酵食品の中には……。
       本来作ろうとしてた料理が失敗したりして、偶然できたものが多いのではないでしょうか。
       納豆がそうでしたよね。
       飯寿しなんてのも、偶然の産物なんじゃないでしょうか。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/06/04 09:48
    • Wikiによりますと……。
      乳酸発酵させて作るなれずしの一種。
      北海道から北陸にかけて多く、野菜を入れる事が特徴。北陸以北の日本海側と北海道の寒い地域に分布する。
      使用される魚は、ハタハタ、サケ、ニシン、サンマ、ホッケ、キンキ、カレイなど。
      野菜は、キャベツ、大根、ニンジン、ショウガ、キュウリ、タマネギ、サンショウなど。
      美味しそうですね。
      さらに、なれずし。
      魚を塩と米飯で乳酸発酵させた食品。
      現在の寿司は酢飯を用いるが、なれずしは乳酸発酵により酸味を生じさせるもので、これが本来の鮨である。
      だそうです。
      関西でなれ寿司といいますと、何といいましても近江の「鮒寿司」ですね。くさい臭いと言われますが、臭さは、納豆とさほど違わないそうです。
      鮒寿司。
      食べたことありません。高いもんなあ。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/06/04 19:34
    •  北陸以北の日本海側ってことは、新潟県も入るんでしょうね。
       でも、新潟の飯寿司はちょっと思いつきません。
       鮭とかの押し寿司ならありますけど。
       納豆は、臭いと思ったことがないです。
       ニオイというのは、嗅いで育ってきたかによって、感じ方が左右されるんでしょうね。
       ↓世界の「臭い食べ物のランキング」というのがありました。
      http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0340.html
       『シュール・ストレンミング』と云う、スウェーデンのニシンの缶詰が強烈なようです。
       発酵により、缶が爆発寸前になってるとか。
       危険なため、日本には輸入禁止らしいです。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/06/04 21:18
    • わたしは大学時代に初めて食べました。
      くさい臭いと聞かされていましたので、おそる恐る食べましたが、さほどではなかった。
      「どっからでもかかってきなさい」てな感じでしたね。
      今は毎日食べています。
      臭い食べ物ランキング、ぶっちぎり1位の「シュール・ストレンミング」。
      “シュール”もそうだが、輸入禁止は凄まじいな、誰がどうやって食べるんだろ。
      もちろん、祇園の「花よ志」には持ち込み禁止です。
      臭い食べ物といいますと「くさや」ですが、「シュール……」さんに比べますと可愛いものですな。
      さらに、臭いもので有名な鮒ずし。納豆とさほど変わらんではないか。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2014/06/05 07:24
    •  納豆を食べたことが無かったとは!
       食文化の違いってのは、明白にあるものなんですね。
       ↓『納豆購入頻度』に、東西の違いがはっきり現れてました。
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201406050511309ea.jpg
       西日本では、熊本だけ購入頻度が高いです。
       なぜじゃ?

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2014/06/05 20:43
    • やはり関西の忌避度が高いですね、納豆。
      「思い込み」云うのがあるんやないかなあ。
      いっぺん試してみなはれ、納豆。美味しおますで(あやめ)。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2014/06/05 21:44
    •  美味しゅうてたまらん、というものではありません。
       無ければ無いで、一生を過ごせるでしょう。
       なんで、食べるんでしょうね。
       家にいるときは、食べたいと思うことは無いんです。
       食卓に出てれば食べますが。
       でも、旅先の朝食では、なぜか真っ先に探します。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2014/06/06 02:49
    • なんか……
      ワードといいますか、PC自体がおかしいです。
      恐るおそる触っております。
      納豆どころではありまへん。
      どうなるんやろ。
      あ、家の前にパトカーが。
      何事や!

    • ––––––
      12. Mikiko
    • 2014/06/06 07:45
    •  法律で禁止されました。
       臭い飯を食って、出直すように。
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