Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #63
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式) アイリスの匣 #63



「明子はん」
「なあに、あやめさん」
「今日はおおきに、ありがとさんでございます。こんな素敵なお料理、頂かせていただいて」
「なに言うてはりますのん。これはあやめさんのお料理へのお返しどすがな」
「そんな、とんでもおへん。うちの料理なんて……」
「なにをそないに謙遜しはるのん。あなたのお料理はほんまに凄おすのに。

「明子はん」
「なあに、あやめさん」
「さっきの『ニルス』のお話。もう少し聞かせていただけますやろか」
「『ニルス』どすか。長(なご)なりますえ」
「へえ」

 あやめは銚子を取り上げ、明子の杯に酒を注いだ。明子は、酒を含んだ後、ひと呼吸おいて語り始めた。

「ニルスは腕白な少年でしてなあ。
 なまけもので、勉強は大嫌い。いたずら好きで、家畜たちをしょっちゅう虐めとりました」
「へえ」
「友達にも嫌われとりました」
「へえ」
「両親も持て余す腕白少年どした」
「へえ」
「ある日、家に住みついていた妖精を怒らせてしまい、魔法を掛けられて小さな体にされてしまいます」
「へええ」

 あやめは銚子を取り上げ、明子の杯を満たした。

「おおきに」

 飲みほした明子は話を続ける。

「で、小さくなったニルスは、動物とお話が出来るようになるんですね」
「へえ、それはすごいですね」
「で、ニルスの家では、ガチョウを一羽、飼っていたんですね。名前はモルテン」
「へえ」
「このモルテンが、渡り鳥のガンの群れにからかわれるわけです。地上をのたのた歩くしかない情けないやつ、とね」
「へえ」
「で、負けん気を出したガチョウのモルテン、精一杯羽を広げ、空に飛び立ちます」
「はああ」
「飛び立とうとするモルテンを、ニルスは止めようとします。で、はずみでそのモルテンの背に、小さくなったニルスが乗り、ガンの群れに加わってスウェーデン旅行が始まるわけどす」
「へええ」

 今度は、明子が銚子を取り上げ、あやめの杯に酒を注ぐ。あやめは一気に飲み干した。

「ガンたちの目的地はスウェーデン最北部のラップランド。サンタクロースの住む地、とされるところですね。で、ガンたちの故郷でもあります」
「はあ」
「旅が始まった最初の夜、ガンたちと、モルテン、ニルスは、とある湖で眠ります。そこへキツネが襲い掛かります。ニルスは、小さい体で精いっぱい戦い、キツネを追い払います。
 この様子を見たガンの群れの隊長、雌ガンのアッカはニルスの勇気を褒め、モルテンとニルスが同行するのを許します」
「ははあ」
「で、翌日から、ラップランドへ向けた本格的な空の旅が始まります。その後、様々な冒険、エピソードが展開されるわけですが、ここから先はそれこそ切りがおへんので端折りましょう」
「へえ」

 明子とあやめは、互いの杯に酒を注ぎ合った。

「この旅行の途上、アッカ隊長の励ましや叱咤を受け、様々な経験を重ねることで、ニルスは成長していくわけですね。
 他者を思いやる心、勤勉に働くこと、困難に立ち向かう勇気……などを身に付けていきます」
「ちょっとお説教っぽいですね」
「まあ、『ニルス』はスウェーデン政府が、子供たちにスウェーデンの地歴を教えるため、という目的でラーゲルレーヴに執筆を依頼したものですからねえ。ある程度のお説教臭さはしょうおへんわねえ」
「ははあ」

「物語の最後に行きましょう。ラップランドから南へ向かうガンの群れと共に、ニルスとモルテンは故郷に戻ります」
「へえ」
「で、無事に故郷にたどり着いたニルスは妖精の魔法が解け、元の体に戻ります」
「へええ」
「両親は、逞しく、正しく成長したニルスを温かく迎える。で、さらに南の地を目指し飛び立っていくガンの群れ。見送るニルス、とこういうお話どすね」
「ふうん」


「それよりあやめさん、次のお料理、来ましたえ」

 入って来た若い仲居が、小鉢を置きながら声を掛けた。

「箸休めどす」

 箸休めは、料理と料理の間に出され、客の気分転換を促す小料理である。
 短冊に切ったダイコンと、柚子の皮の千切りを和えてある。上に散らしてあるのはパセリのみじん切り。十分に冷やしてある。
 あやめは一口、口に運んだ。
 甘酸っぱい味が広がる。

(米酢、薄口醤油に砂糖、か……それに塩)

 それにもちろん、ゆずのしぼり汁。
 あやめの口から咽喉にかけ、さわやか、としか言いようのない味が滑り降りていった。
 かんたんな料理であるが夏の味である。
 あやめの緊張感は更にほぐれ、浮き立つような思いになっていった。
 若い仲居は、次の料理を運んできた。

「鮎(アユ)でございます」


 大きな籐籠に笹の葉を敷き、塩焼きにしたアユを数匹乗せてある。
 川魚であるアユは、川底の石などに付着するいわゆる水苔を食物とするため、独特の香りがする。そのため、別名「香魚」とも呼ばれる。
 日本料理では、魚介類は刺身で食するのが一般的であるが、アユについては例外で、塩焼きにするのが最も味と香りを引き出せるとされている。
 アユ漁の解禁は、京都では6月上旬が多い。初夏から夏にかけては、アユの香りが最も引き立つ季節である。今、京のアユは、まさに匂い立つような旬であった。

 あやめは、アユを一尾取り上げた。別に添えてある柳葉皿に載せる。柳葉皿は、特に魚の焼き物によく用いられる細長い皿である。名前の通り、両端が細くなった形のものもあるが、長方形のものもある。
 いい形の鮎であった。小型のものなら骨ごと食べられるのだが、このくらいの形のものになると中骨を抜いたほうが食べやすい。これを「アユの骨抜き」という。
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #62】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #64】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/05/13 08:38
    • ニルス、モルテンはともかく、鮎(アユ)。
      アユ漁の解禁はだいたい6月。これ以前に獲ってはいけません。
      6月以前にアユが出てきたら、養殖物ということですね。
      養殖物と自然物。
      全く異なります。
      アユの持ち味は何といってもその香り。
      なんせ「香魚」ですからねえ。
      養殖物にはほとんど香りが無いとか。
      知らんで、聞いた話や(わはは)。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/05/13 19:42
    •  いくらなんでも、鮎に振り仮名はいらんのでないの?
       子供のころ、県内の簗場に連れてってもらったことがあります。
       ↓のどっちかだと思うのですが……。
      http://kawaguchiyanaba.s1.bindsite.jp/
      http://www.hoyumedia.com/co/bk/yanaba/
       距離から云って、越後川口でしょうかね。
       味の記憶はほとんどありません。
       その後、大人になってから、鮎を食べただろうか?
       とんと、覚えがありません。
       スイカやキュウリの香りがするそうですね。
       香りの違いは、食べてる苔の違いから来るのだとか。
       水質が良いほど、スイカの香りがするそうです。
       スイカを食わせたら、どうなるんだろ?

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/05/13 21:49
    • 越後川口簗場さん
      ふうむ。
      お昼定食1600円、けっこうなお値段どすなあ。
      ・鮎塩焼き(一尾)
      ・鯉洗い
      ・サケフライ(なんじゃこりゃ)
      ・ご飯(魚沼産コシヒカリ、ま、越後や、そらそやろ)
      ・みそ汁
      ・小鉢
      アユも鯉もサケもよろし。
      わたしが知りたいのは「小鉢」ですね。
      なんですやろ。
      「小鉢」の中身。
      教えとくんなはれ、越後川口簗場はん。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/05/14 07:44
    •  確かに、ちょっと引きますね。
       サケフライに、キャベツの千切りくらいは付くのでしょうが……。
       野菜不足は否めません。
       小鉢は、キュウリの酢の物か何かでは?
       本物のキュウリで、鮎の香りを補ってたりして。
       ↓単品メニューには、ラーメンもありましたが……。
      http://kawaguchiyanaba.s1.bindsite.jp/menu.html
       これからの季節、冷し中華とかザル蕎麦がいいんじゃないでしょうか?
       わたしが選ぶとしたら……。
       「鮎のフライ(840円)」、「白飯・お香みそ汁付(260円)」、「漬物(420円)」でしょうか。
       これだけで、1,520円!
       やっぱり、定食のほうがお得のようです。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/05/14 08:40
    • は、まだしも、
      漬物420円、はなんぼなんでも……
      何のどんな漬物でっか、越後川口簗場はん。
      うちの近くの山中に、鮎釣りの川場があります。
      深い谷底でね、道からは深く見下ろすほど。
      ようやるわ、と見下ろして通り過ぎますが、今年もそろそろ季節ですな。
      釣り師たちはうずうずしてるんでしょうね。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/05/14 19:39
    •  侮れません。
       丼ひとつ分、出てくる場合もありますので。
       大量に食べられることでは、枝豆が有名ですね。
       ↓新潟の居酒屋で枝豆を注文すると、このくらい出てきます。
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140514124847b6e.jpg
       鮎釣り。
       トイレ問題があるので、女性釣り師は少ないのでしょう。
       胸まであるゴム長を脱ぐだけでも大変だよ。
       あ、これは男性も一緒か。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/05/15 01:06
    • こちらではこういうのを……、
      「アホほど出てくる」いいます。
      どうぞよろしゅうに。
      鮎釣り。
      ほんまに、解禁が楽しみですなあ。
      アユくんにとっては大変ですが。
      しつこいようですが、鮎は「香魚」。
      楽しみですなあ。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2014/05/15 07:19
    •  知りませんでした。
       ハーさんに釣られる鮎なんて、おるのか?

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2014/05/15 08:34
    • 全くやったことおへん。
      食べるのが趣味どす、鮎。
      で、授業で喋るわけですね「アユの友釣り」。
      受験で必須です「アユの友釣り」。
      アユの鼻といいますか口といいますか、に釣り針を付けます。
      で、その釣糸に釣り針を数個、つける。
      そしてそのアユを泳がせるわけですね。
      泳がせたアユが縄張りに入る。
      縄張りの主は「この野郎、出てけ」で、体当たりをかませます。で、針に引っかかって釣り上げられると、こういうことです。
      実にヒキョーな釣り方ですね、鮎の友釣り。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2014/05/15 19:36
    •  友釣りについて、いったいどういう問題が出るんだ?
       胴長に関係するか?

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2014/05/15 21:14
    • その通りですがね。
      友釣りの原理を問われるわけですがね。
      要するに「アユは縄張りをもつ」「非常に攻撃的な動物である」という知識を問われるわけです。
      ま、「縄張り」という知識を問われるわけですね。
      勇ましいなあ、鮎。
      受験に胴長は出ません。

    • ––––––
      12. Mikiko
    • 2014/05/16 07:46
    •  中学生でも知ってるんでないの?
       それより、胴長にドジョウが潜り込んだ時の対処法とかを問うた方が、有用ではないのか?

    • ––––––
      13. ハーレクイン
    • 2014/05/16 11:16
    • 中学生でも知ってる。
      そうかなあ。
      わたしは高校で習ったように記憶しているが……。
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