Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #57
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式) アイリスの匣 #57



「あ、あの……」

 あやめは、突然の事態に困惑しながら、宝田と若い女性に交互に目を遣った。女性があやめに声を掛ける。

「いやあ、ここの仲居さんやったん。あ、ちゃうねえ、板場のお人やねえ」
「へえ」
「あなたのお噂は、しょっちゅう聞いておりますえ。『花よ志』に、若い女性の身で凄い料理人がいはるって。一度お料理をいただきたいと、ずっと思(おも)ておりました。せやけど、ほんまに奇遇どすねえ」

 あやめは、改めて深々と頭を下げた。あの、喫茶店での久美との戯れは、この女性に全て見られている。あやめは消え入りたい思いだった。
 考えた。

(このお方は……)
(よくはわからないが、いずれ宝田の身内なのだろう)
(ほれとも……)

 宝田の声が掛かる。

「おい、あやめ」
「へえ」
「どこで知りおうたんか知らんけんど、おまん、こいつを儂の妾かなんかやと思とるやろ」
「そ、そんな、とんでもおへん」

 宝田は爆笑した。

「ぶはははは。まあ、そない思われてもしゃあないわなあ」
「いえ、あの、そんな……」
「まあええ。あやめ、こいつはなあ、儂の姪や」
「へ!? 姪御はん?」
「せや。こいつ、歳に似合わずなんちゅうか、グルメ、いうのかのう。おまんの話をしたら『花よ志』に連れてけ、言うてうるそうてなあ。今日は一緒したわけや」

 宝田の隣に座る和装の若い女性は、にこやかに微笑んであやめに声を掛けた。

「宝田明子いいます。伯父がいつもお世話になっております。どうぞよろしゅうに」
「あ、東中あやめでございます。伯父さまにはいっつもご贔屓たまわりまして、誠に有難とさんでございます」
「我が儘もんやさかい(だから)、大変でしょ」
「あほ、何を言うか」

 宝田は、笑みを含んだままあやめに声を掛けた。

「おい、あやめ。今更そないに畏まらいでもええがな。ほんで、どこで知りおうたんや、おまんら」
「へえ、こないだのお休みの日に、明子はんがお勤めの喫茶店にたまたま入りまして……」
「なんや、そういうことか」

 明子は、正面からあやめを見詰めた。

「あやめさん。あなたのハモ料理、頂かせていただきました。ユニークなお料理ですねえ。まさか、湯引きしたハモにハーブとオリーブオイルやなんて。意表を突かれました。信じられません、こんなお料理があるやなんて。ほんまに凄い。ほれでいて、基本の骨切りは完璧やし」
「せやなあ、ほの通りや。あやめ、おまはんの料理にはいっつも驚かされるわ」

 あやめは、改めて深々と頭を下げた後、返答した。

「とんでもございません。少々、奇を衒い過ぎかなとも思いますが、ご満足いただけましたら望外の喜びで御座います。今後とも『花よ志』をご贔屓賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」

 明子は、にっこりと頬笑んで、あやめに声を返した。

「あやめさん。また、お願いしますね」
「へえ、明子はん。よろしゅうお願い申します」

 あやめは再び頭を下げ、そのまま躙りながら下がっていく。
 明子が声を掛けた。

「ちょっと、あやめさん。もう、行てまうのん」
「へえ?」
「もうちょっと居りよし。かめへんやろ」
「へえ……」

 明子は、あやめを見やった後、声を掛けた。

「こっちおいなはれ。一杯いきまひょ」
「へえ」

 あやめは、再び深々と頭を下げた後、明子の膳の前に躙り寄った。

「頂戴いたします」
「さあ、失礼やけんど一献、受けとくれやす」

 明子は、自分の杯をあやめに差し出した。

「とんでもございまへん。頂戴いたします」

 あやめは、注がれた酒を一気に飲み干した。

「儂ちょっと、手水に行(い)てくるわ」

 宝田は部屋を出て行った。
 明子はあやめに顔を寄せ、囁くように声を掛ける。

「なあ、あやめさん」
「へえ」
「いっぺん、うちに付き合(お)うてくれまへん? あなた……お休みはいつなん?」
「休み、どすか。おまへん(ありません)けんど」
「へ!? お休みが無い!? ほんでもこないだは……」
「あ、あの日は店自体が休みでしたので……。ああいう日はめったにおまへん」

 明子は、まじまじとあやめを見詰めた。

「はあー、お休みが、無い……」

 志摩子が口を挟んだ。

「別に休ませへん云うわけやおへんのどすえ、宝田はん。この子が休みを取ろうとしまへんのや」

 あやめが話を引き取った。

「女将はんの言わはる通りどす。他の方は変わりばんこに(交替で)休みはりますけんど、うちは休むより、料理してる方がよろしいので……」
「へええー、つくづく凄いお人やなあ、あやめさん。ほんでも、一日くらい休んで、うちに付き合(お)うてくださいな。おかみさん、かましまへん(支障ない)やろ」

 志摩子は、明子に向き直り答えた。

「ほれはもう、宝田はんのお好きなように」
「わあ、嬉しい。ほな、いつにする、あやめさん」
「さあそれは……板場の都合を考えまへんと……」

 志摩子は、今度はあやめに向き直り、半ば命令するような口調で声を掛けた。

「かまへんがな、あやめ。明日にでも行(い)といで。大文字も終わったことやし、明日はそないに忙(せわ)しないやろ。立板はんにはうちから言うとくさかい(言っておくから)」
「へえ……」

 明子は手を打ち、顔をほころばせた。

「はい、決まり。ほな、とりあえずお昼、一緒しよ。せやねえ、四条大橋の袂で、明日の朝11時に待ち合わせ。どない?」
「へえ……」

 あやめは、困惑しながら志摩子を見た。

「あやめ、宝田はんを粗略に考えたらあきまへんえ。かめへん(支障ない)から、明日はお付き合いしなはれ」
「へえ……」
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #56】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #58】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/04/01 09:38
    • いわゆる「はんなり」とした京女性です。
      「はんなり」は、Wikiによりますと……「京言葉を中心に近畿地方で用いられる日本語の副詞。[色:FF0000]落ち着いた華やかさ[/色]があり、[色:FF0000]上品に明るく陽気なさま[/色]を表す。語源は『花なり』または『花あり』とされる」
      ということです。明子くらいの若さでこの味を出すのはなかなか難しいそうです。
      あ、明子はあやめと同い年だとお考え下さい。あやめは現在、大学を出た翌年ですから、この年に23歳になります。
      ついでに、久美も同い年です。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/04/01 19:42
    •  宝田明という俳優がいますね。
       宝田のおっさんのモデルでしょうか?
       呉服商の姪がウェイトレスをしてるのは……。
       お金のためじゃないんでしょうね。
       わたしも今、喫茶店の場面を書いてるので、興味津々です。
       休みを取らない“あやめ”。
       あまりにも、わたしと感覚が違いすぎて……。
       感情移入しにくおす。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/04/01 21:13
    • 「晋(すすむ)」どす。どうぞよろしゅうに。
      「明子」は、なんとなくあっさり決めました。
      二人合わせて宝田明。なんの関係もおへん。どうぞよろしゅうに。
      >お金のためじゃないんでしょうね
      お、するどい。
      そのとおりです。
      ヒマつぶし、というと言い過ぎでしょうが、日がな一日、家でぶらぶらしていても、しょうがないですからねえ。
      それに、外に出ると、こういう出会いもあるわけです。
      「休みを取らないあやめ」
      長い間料理をさせてもらえなかった、その反動としての料理への没入、というつもりだったのですが。やはり、少しやり過ぎでしたかね。
      女料理人あやめ。今後とも、どうぞよろしゅうに。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/04/02 07:38
    •  宝田のおっさんがオーナーなのでは?
       潰れた店を買い取り、大幅に改造した。
       もちろん、怪しい仕掛けがたくさんあるわけです。
       料理の腕を磨くためには、舌を磨くことも必要。
       お休みの日は、食べ歩きしましょう。
       住み込みなんだから、お給料の大半は注ぎこめるはず。
       ↓「食べ歩きをして色んな味を舌に記憶することが大切だ」と、料理人さんも書いておられます。
      http://www.gvaryu.biz/joutatu.html

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/04/02 11:25
    • 宝田のおっさんがオーナー。
      あ、なるほどー。
      「怪しい仕掛け」はともかく、我が儘のし放題でしょうね、明子はん。
      いきなり、「今日は休みます」とか言っても、誰も文句は言えない。
      あやめのお休み。
      いやあ、これはいよいよ考えんとなあ。
      一体、いつ開くんだろう「匣」。
      それにしても、あやめの給料って、幾らくらいなんだろうね

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/04/02 19:39
    •  新入り扱いですから……。
       最低賃金程度じゃないすか。
       ま、住み込みで、3食賄い付きなら、給料はそのまま残りますけどね。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/04/02 21:54
    • 新入り扱い。
      うーむ。すごい料理人なのになあ。
      最低賃金。
      平成24年度の京都では、時給759円です。
      でも、物語時間ではおよそ40年前ですから、もっと安いよね。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2014/04/03 07:24
    •  住居、食事付きですから、本人的にはさほど辛くはないんじゃないでしょうか。
       実家に仕送りするわけじゃないんでしょ。
       逆に、給与の額面を高くして、住居費や食費を控除すると……。
       税金や保険料が高くなってしまい、会社にも本人にも不利です。
       でも、額面が高いと、年金に跳ね返ってくれるんですけどね。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2014/04/03 09:33
    • は、しないと思います。ていうか、そんなこと考えもしなかったなあ。
      給与の額面を高くして……。
      ますます考えもしなかったなあ。
      あやめは料理に没入しております。
      給与とか、税金とか、保険料とか、年金とかは……これっぽっちも頭に無いでしょうね。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2014/04/03 20:05
    •  もうちょっと、周りも見なきゃいけません。
       休みを取らない人がいたりすると、それと対比される従業員が迷惑します。
       そういう人は、“いじめ”にあったりするものです。
       わたしなら……。
       包丁を隠しちゃうかな。
       あるいは、板場で履く下駄の鼻緒に、切れ目を入れるとか。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2014/04/03 21:00
    • ま、それは、そのとおりですね。
      でも、陰湿ないじめはやめてほしい。
      言いたいことがあれば面と向かって言ってほしいと思いますが、どうでしょう。
      京都取材第2弾。
      行ってきました平安神宮。
      全くイメージと違っていました。「見なかったこと」にします。

    • ––––––
      12. Mikiko
    • 2014/04/04 07:38
    •  陰湿なものだけではありません。
       多人数で、対象をロッカーなどに引きずりこみ……。
       傷が外からわからないように、腹部を中心に殴る蹴るの暴行を加えることもあるようです。
       もちろん、外には見張りが立つわけね。
       ここまで来ると完全に犯罪ですが……。
       多人数が口裏を合わせるので、立件は難しいでしょう。
       いじめられる人は、孤立してますからね。
       真面目な人、一生懸命な人が、対象になる場合が多いです。
       あやめさんも気をつけましょう。
       包丁を握る指を潰されたりしたら、料理人として命取りです。
       平安神宮。
       鹿がいたとか?

    • ––––––
      13. ハーレクイン
    • 2014/04/04 09:35
    • 繰り返します。
      鹿は京都にはおりません。
      鹿は奈良です、平城京。
      京都は平安京。
      ほんとに、「日本史の女王」なのか?
      で、いぢめられてるのか?

    • ––––––
      14. Mikiko
    • 2014/04/04 19:55
    •  鹿でもおるようになったのかと思ったのじゃ。
       東日本の人には……。
       平安神宮が、京都にあるのか奈良にあるのか、ようわからんと思います。
       ↓この方も、たぶん間違ってますね。
      http://blogs.yahoo.co.jp/metabolisan/25657420.html

    • ––––––
      15. ハーレクイン
    • 2014/04/04 21:09
    • 「平安」は京都だよ。奈良は「平城」。
      たのんまっせ、ほんまに。
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