Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #17
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式) アイリスの匣 #17



 香奈枝は、高手小手に縛られたまま部屋の中央に立っていた。薄暗い電灯の明かりが、その全身をほの暗く浮かび上がらせている。
 全裸である。
 いや、身に纏うものがある。
 両腕を背に高く引き上げて固定し、両の乳房を上下から挟み込んで香奈枝の胸を締め付けるもの。

 縄である。
 麻という植物が産み出し、いずこかの、おそらく女性が紡ぎ出し、一筋の縄として編み上げた、その縄。
 紡いだ人、編んだ人は、その縄の行く末を知るはずもないが、この縄は今、香奈枝の上体に絡みつき、引き絞り、あたかも蛇が獲物を絡め取るように、香奈枝を締め付けていた。

 縄……。蛇……。なわ、へび、縄、蛇……。

 その二つの言葉は、いつまでも漂う余韻を残して、香奈枝の脳裏を掠め、通り過ぎて行った

「香奈、ええか」
「はい、あやめさん。どうぞ……お願いします」

 あやめは新しく縄を取り上げた。解き、軽く扱き、ごく自然に二重の状態にする。そして、先ほどと同様に、縄の途中に瘤を作る。瘤と瘤との間隔は、先ほどよりずっと短い。指の幅、二本分か三本分か……。
 出来上がった瘤の数は、三つ。
 あやめは香奈枝に歩み寄り、その胴の中央、腰骨の少し上の、上体が最も括れる部分、いわゆるウェストの位置に縄を巻きつけた。
 一巻き、二巻き……。
 香奈枝の体の正面、臍のあたりで、横に巻いた縄に絡ませ、結び目を作る。
 あやめは一旦、縄から手を放した。香奈枝の臍のあたりから縄が垂れ下がる。三つの瘤は、香奈枝の股間のあたりで揺れていた。
 
 これは……。
 さっきの、瘤持つ蛇ではないか。

 香奈枝は思う。しかし、蛇の体長は先ほどよりもずっと短い。

 この蛇は……、
 わたしをどうしようというのだろう。
 また、噛みつくのだろうか。
 また、股間に噛みつこうというのだろうか。
 もう、さっきのあれは……。
 あんなことを再びされたら、耐えられるだろうか。
 今度こそ……。

 思い惑う香奈枝に、あやめの声が掛かった。

「香奈、脚、開き」
「はい」

 心中の思いに関わらず、香奈枝の体は即座に反応した。肩幅に両脚を開く。
 その開いた両脚の間に縄を通したあやめは、香奈枝の背後、尻のあたりで一気に縄を引いた。

「かっ」

 短い悲鳴を上げ、香奈枝は硬直した。
 瘤持つ蛇は、香奈枝の股間に深々と食い込んでいた。その瘤は……。
 初めの瘤は、香奈枝の陰核に噛みついた。噛みつき、押し潰し、食い切ろうとする。

「んあっ」

 次の瘤は膣口に喰い込んだ。喰い込み、押し広げ、潜り込もうとする。

「ぐぅっ」

 最後の瘤は肛門だ。
 抉り、押し広げ、潜る。
 潜る潜る潜る。香奈枝の内臓全てを喰い尽くそうとでも云う様に、深く、どこまでも深く潜り込んでゆく。

「かああああ」

 香奈枝は惑乱した。
 先ほどの蛇は、香奈枝の歩みと共に通り過ぎて行った。あやめに辿り着けば蛇はいなくなる。そういう希望があった。だが、この蛇は……。
 だが、この蛇は、動かない。
 香奈枝の股間に食い込んだまま、動かない。
 鎌首を香奈枝の腹の上に擡げ、尻尾を背骨と腰骨の交点に絡ませ……。

 あやめの手が背後で動いている。
 香奈枝の腰に巻いた縄。その縄の、香奈枝の尻の上あたりに、蛇の尻尾を絡ませているのだ。蛇が動かないよう、香奈枝の股間に噛みついたまま動かないように、固定しようというのだ。

「いやああああ」

 香奈枝は、あやめの意図を察し悲鳴を上げた。
 この蛇は、永遠に私を噛み続けようと云うのだろうか。
 そんなことをされては。
 
 そんなことをされては、正気を保てるとは思えない。
 そんなことがこの世にあるとは。
 そんなことをされるとは。
 そんなことを人にするとは。
 香奈枝は、底知れない緊縛の世界に戦慄した。
 恐怖さえ覚えた。
 だが……。

 この世界に私を引きこんだのはあやめなのだ。
 あやめなのだ。
 愛しいあやめなのだ。

 香奈枝の脳裏を、古代ローマの詩人ウェルギリウスのイメージがよぎった。ダンテを、彼岸の国に案内するウェルギリウス。ダンテはその旅の果てに、永遠の淑女ベアトリーチェに出会うが……。
 あやめはウェルギリウスなのだろうか。わたしはダンテなのだろうか。そして、ベアトリ―チェはいるのだろうか。
 ダンテが訪れた地獄。その入り口の門の碑銘にはこう記されていたという。

 我を過ぐれば憂ひの都あり、
 我を過ぐれば永遠の苦患あり、
 我を過ぐれば滅亡の民あり
 ……………………………………
 永遠の物のほか物として我よりさきに造られしはなし、
 しかしてわれ永遠に立つ、
 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ

 一切の……望みを棄てよ。

 いいだろう。
 棄てよう、何もかも。
 ただ、あやめさえ。
 あやめさえいれば、他には何もいらない。

「あやめえっ」

 香奈枝は血を吐くように叫んだ。
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コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2013/06/25 09:52
    • 梅ヶ丘女子高伊豆研修所の管理人、東中あやめ。このあやめさんの若き日のエピソードをご紹介しようという『アイリスの匣』。早くも第17回を数えることになりました。
      ふとしたきっかけで、あやめさんは縛りが特技、恋人を虐めるのが趣味ということになってしましました。
      で、そのあやめさんが、巡り合ったばかりの恋人、若き日の香奈枝せんせを縛り始めたのが『アイリス』第8回。その後10回を重ねてようやく、あやめの香奈枝縛りは道半ばを踏破することが出来ました。
      今回はその第3弾、ご存知「股縄」です。
      これをかまされた香奈枝せんせ、惑乱しております、懊悩しております。わたしなどには想像するしかないのですが、そんなに気持ちいいのかなあ、という気もします、「股縄」。
      ま、お話の世界ですからね。香奈枝せんせには思い切り悶え狂っていただきましょう。
      で、今後予定しております縛りはあと二種類。縛り終えるまで、あと何回かかるかなあ。香奈枝せんせ、もつかなあ。
      そのうち音をあげて「あやめ」を5回、叫んだりして。
      今回の本文中……。
      「麻という植物が産み出し、いずこかの、おそらく女性が紡ぎ出し、一筋の縄として編み上げた、その縄」
      という一文(いちぶん)があります。
      まさか今どき、麻縄を手で編むわけはないでしょうから、これは私の頭の中の勝手なイメージです。
      もっとも農村などでは、藁縄を手で編むことはあるようです。
      え、一つお詫びといいますか、言い訳といいますか。
      またまたやっちゃいました。過去の偉大な作品を勝手に引用し、我が愚作に箔を付けようというさもしい魂胆。
      今回は、イタリアはフィレンツェ出身の詩人にしてルネサンスの巨匠、ダンテ。ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』。
      とんでもないものをパクッてしまいました。お詫び申し上げます。
      しかし、『神曲』中の重要登場人物、「永遠の淑女」ベアトリーチェ。この人物に憧れるお方は日本にも多く、様々な作品に引用されています。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2013/06/25 19:50
    •  旧制第三高等学校(現京都大学)寮歌『人を恋うる歌』。
       出だしを聞けば、どなたも耳にしたことがあると思います。
      妻をめとらば才たけて みめ美わしく情ある
      友を選ばば書を読みて 六分の侠気四分の熱
       この歌の4番は、下記のとおり。
      ああ、われダンテの奇才なく バイロンハイネの熱なきも
      石を抱きて野にうたう 芭蕉のさびをよろこばず
       実は、この“ダンテ”ですが……。
       原詩は、“コレッジ”だったようです。
       でも、誰もが知ってる“バイロン”“ハイネ”に対し……。
       “コレッジ(イギリス詩人・コールリッジ)”は、知名度で劣ります。
       というわけで、歌われるうちに、“ダンテ”に変化していったみたいなんですね。
       麻縄は、ひょっとして、縄自体に陶酔作用があるのかと思いましたが……。
       大麻とは、まったく別の植物のようです。
       息苦しい場面が続きます。
       こういうのを書いてると……。
       つい、ギャグを入れたくなりませぬか?
       股縄と云えば……。
       どうしても、縄でうんこを拭いたという、いにしえの風習を連想します。
       あれは、縄の束を、少しずつ繰りながら使ったんでしょうね。
       まさか、同じところでは拭かんよな。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2013/06/25 20:42
    • 確かに元は“ダンテ”ではなく“コレッジ”でしたね。ただし、わたしはこのコレッジを、ダンテの別の読み方だと思ってました(全然ちゃうやんけ!)。
      わああ、恥ずかしい。
      ●ギョエテとは俺のことかとゲーテ云ひ
      という川柳があったなあ。明治期、外国人の名前は様々な読まれ方をされたようです。
      上記の川柳は、明治期の小説家、斎藤緑雨の作とされています。
      で、今回少し調べてみましたら、言語学者の矢崎源九郎は、その著書『日本の外来語』(1964)で、次のように書いているそうです。
      「表記の上ではゴエテ、ギューテ、ギェーテ、ギューテ、ギョート、ギョーツ、ゲーテ、ギュエテ、ゲォエテ、ゴアタ、グウィーテ、ゲヱテー、ゲーテー、ゲェテー、ギョウテ、ギヨーテ、ギョーテ、ギョーテー、ギヨテー、ゴエテ、ギョテ、ギヨヲテ、ギヨオテ、ゲョーテ、ゲヨーテ、ゴエテー、ゲエテ、ギヨエテ、ゲイテ、ギョエテ、と、じつに二十九通りの書き方があるという。『ギョーテとは俺のことかとゲーテ言い』という、斎藤緑雨の川柳すらも生まれているほどである。」
      麻と大麻が同じだったら、緊縛師は全員逮捕されるぞ。
      そうですか、息苦しいですか。
      わたしは書いていると、頭が痺れるような感じになってきます。
      陶酔作用があるのかなあ。
      ギャグを入れる心の余裕など、有りませぬ。
      うんこ縄は、包丁で少しずつ切って使ったらしいよ。知らんけど。聞いた話や。
      せやけど、こんなんでは綺麗に拭き取れんやろから、昔はこーもんを舐める云うのは大変やったやろなあ。ま、風呂で洗えばすむことなんやろけど。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2013/06/26 07:42
    •  のめり込めるってのは、うらやましい限りです。
       わたしは、やたらと気が散りますね。
       携帯にメールが来たりすると、つい見てしまうし。
       20世紀最大の発明は、ウォシュレットじゃないでしょうか。
       時間旅行が出来たとしても、過去に遡るのをためらってしまうのは……。
       トイレの問題。
       排泄環境は、劇的に変わりましたよね。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2013/06/26 08:35
    • 携帯の電源は落としとくね、わたしは。
      それと、やはり夜中が一番集中できますね。昼間書くときは天井の照明は消し、窓のカーテンも閉じて部屋を薄暗くします。
      家人なんかは、胡散臭そうに遠巻きにし、近寄ろうとしません。「おっさん、またなんか怪しげなことやっとんな」くらいは思ってるでしょう。
      そういえば、携帯ウォシュレットなんてのがありましたね。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2013/06/26 21:29
    •  わたしは、3時46分ころ起き出しますが……。
       この時期は、もう薄明るくなってます。
       わたしも明るいと書けないタチなので……。
       執筆中は遮光カーテンを閉め切ってます。
       明かりは、電球色のLEDを付けたアームライトのみ。
       笠の部分には赤いネックウォーマーを巻き、さらに光量を落としてます。
       執筆時間は、55分くらい。
       それ以上は、集中力が持ちまへん。
       そうか。
       時間旅行にも、携帯ウォシュレットを持って行けばいいのか。
       でも、もし見つかった場合、説明に困るよな。
      「舶来の水筒でござる」
      「どうやって飲むのじゃ?
       飲んでみせい」
      「……」

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2013/06/26 22:16
    • 「飲んでみせい」って言われたって、困ることなかろ。
      中身はおしっこじゃなくて水じゃんか。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2013/06/27 07:38
    •  うんこが着いてると思います。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2013/06/27 08:48
    • それは使い方が下手なんじゃないの。知らんけど。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2013/06/27 20:11
    •  肛門から跳ねた水は、必ずかかってると思います。
       顕微鏡レベルで見れば、ぜったい着いとる。
       だからこそ、ノズルクリーナーという商品が存在してるんです。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2013/06/27 20:57
    • へえ、そんなのあるんですか。
      なんせ使うどころか、実物を見たことすらないもんなあ。
      画像は見たよ、ここで。

    • ––––––
      12. Mikiko
    • 2013/06/28 07:48
    •  ノズルクリーナーの画像なんて、アップしてませんけど。
       ↓これのことですよ。
      http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201306280628419f6.jpg

    • ––––––
      13. ハーレクイン
    • 2013/06/28 08:57
    • 「見たよ」は、携帯ウォシュレット本体のことです。

    • ––––––
      14. Mikiko
    • 2013/06/28 20:09
    •  ↓588回(https://mikikosroom.com/archives/2671959.html)でしたね。
      http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20101117203647a2a.jpg
       新日本海フェリーで、秋田に着いた朝のシーン。
       なつかしいのも当然で、掲載は2010年11月21日。
       2年7ヶ月前です。
       よく覚えてましたね。

    • ––––––
      15. ハーレクイン
    • 2013/06/28 22:15
    • ふっふっふ。
      Mikiko’s Roomは、本編はもちろん、全ての記事を記憶しておるよ(大ウソ)。
      それにしても、2年と7か月か。
      旅行記内では丸1日とちょっとしか経っていないんだよね。
      このような真似、到底余人の成せる技ではない。
      褒めてるんですよー。

    • ––––––
      16. Mikiko
    • 2013/06/29 07:55
    •  今年度から、リフレッシュ休暇を2日取ることが義務付けられました。
       土日と続けて取得することが奨励されてます。
       4連休となるわけね。
       この休みを使って……。
       『東北に行こう!』を、最初から読みなおしてみようかな。

    • ––––––
      17. ハーレクイン
    • 2013/06/29 09:07
    • 今日から4連休ですかあ?

    • ––––––
      18. Mikiko
    • 2013/06/29 13:00
    •  よく聞け!
       誰も、今日から休みを取るなんて言ってないだろ。
       今日なんか、半日仕事をしてきたぞ。

    • ––––––
      19. ハーレクイン
    • 2013/06/29 23:00
    • これだけ。
      本文に書くこと、なくなっちまったい。
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