2013.6.11(火)
「ぎっ」
香奈枝の股間に深々と縄が食いこんだ。
縄は、香奈枝の股間を一つの頂点とする逆三角形の二辺を成している。
押し入れの奥から股間に伸びる短い辺は急角度に落ち込み、股間からあやめの手元に伸びる長い辺は緩やかに上昇している。そして、逆三角形の頂点をなす位置の縄は、見えない。香奈枝の股間に食い込んで見えない。
縄は少しの弛みもなく張りつめていた。
あ、あ、あ、あ……
一声悲鳴を上げたきり、香奈枝はそれ以上声が出ない。上半身は高手小手、下半身は股間の一点で縄に捕らえられ、身動きできない。いや、呼吸すら止められそうだった。
か、はあああ……
「香奈、こっちおいで」
え、なんて?
いま、なんていったの、あやめぇ
「聞こえんのか、香奈。こっちおいでゆうてるんや」
こっち……おいでって、あやめ……そんな……。
そっちに行こうと思ったら、歩かなければ……。
そんなこと……むり……。
「聞こえんのか、香奈。こっちこい、言うてるんや。
ほれとも、いうこと聞けんのか。また逆らうんか?」
ちがうぅ……あやめの言いつけは何でも……。
でも……無理……。
「ほうか、言うこと聞けんねやったら、もう、帰るか。解いたるし」
「いやあ、いや。聞く、いうこと聞く。そっち、行く」
だが、足が言うことをきいてくれない。一歩も動かない。
「こっち、来い!」
打擲するようなあやめの叱咤。
香奈枝の左脚が半歩前に出た。
「ひっ」
蛇が股間を舐め上げる。
膝が砕けそうになり、香奈枝は蛇に凭れかかる。
噛みつくように股間に喰いこむ蛇。
「ひいいい」
右脚を出す。
股間を蛇が擦過する。
左脚を出す。
股間を蛇が舐めあげる。
「いひいいい」
しゃがみたい、へたり込みたい。
股間の蛇はそれを許さない。
泣きそうな思いで歩みを進める香奈枝。
「ぐ」
股間に異様な塊が喰いこんだ。
瘤だ。
蛇の瘤だ。
瘤は香奈枝の陰核をまず擦り潰した。
「ぐうううう」
膣前庭から膣口に喰いこむ蛇の瘤。
「いやああああ」
動かない。もう脚が動かない。
「歩かんかい、香奈!」
あやめの叱咤が、萎えそうになる脚を前に進ませる。
瘤が、蛇の瘤が肛門に噛みついた。
「う、ふうううう」
瘤は尻の後ろに抜けて行った。
だが、蛇は変わらず股間を蹂躙する。
両脚を引きずるように、香奈枝は歩を進める。
へたり込んでもおかしくない香奈枝の両脚を前に推し進めるもの。それは、遥か彼方に待つあやめの姿だ。愛しいあやめが待っている。蛇の、瘤もつ蛇の端を手にするあやめ。
まってて、あやめ。
いくから、今、行くから。
次の瘤が股間を抉った。
「ぐあっ」
陰核を、膣口を、肛門を丹念に抉って瘤は通り過ぎた。
歩いているのか、蛇に縋っているのか、股間で蛇を愛撫しているのか、香奈枝にはわからない。
思いは一つ。あやめに近づきたい、あやめ、待っててあやめ。
あやめあやめあやめ……。
「ふう、ふううう、ぐふう」
幾つの瘤が股間を通り過ぎたのだろう。
香奈枝の腿の内側は濡れ濡れと光っている。股間から溢れ、蛇を丹念に濡らし、流れ下ってきた香奈枝の体液だ。後ろにしてきた蛇の体は、香奈枝の内腿と同様、てらてらと光っている。
光る蛇。
目が霞む。脚がよろける。
だが蛇は、瘤もつ蛇は、香奈枝の前に延々と続いている
すがるような思いで、遥か向こうに待つあやめを見る。あやめの表情は見て取れない。笑っているようにも、怒っているようにも、泣いているようにも見える。
愛しいあやめだ。
そのもとに辿り着くためにはどんなことでもする。
香奈枝は、股間で蛇を飲み込むような思いで歩みを進める。
どれだけ歩いたのだろう、どれだけの瘤を乗り越えたのだろう。
ようやくめぐってきた春。
まだうそ寒い北国の春の中、香奈枝は額にうっすらと汗を浮かべている。口元は半ば開き、喘ぐような呼吸と共に一筋の涎を垂らし、果てしない蛇の道のりをひたすら進んだ。
目の前に人影が見えた。
香奈枝の心臓が跳ね上がった。この室内の人は、あやめしか有り得ない。霞む目を凝らすと、愛しいあやめの顔が眼前にあった。
たどり着いたのだ。
果てしない蛇の道を踏破したのだ。
「あやめぇ」
香奈枝は、あやめの腕の中に倒れ込んだ。
蛇を手から離したあやめは、しっかりと香奈枝を抱きとめてくれた。
声がかかる。
「よく来たねえ、香奈」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2013/06/11 09:25
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今回の場面を書くかどうか、少し迷いました。
一つには、これを書いてしまうと、次の場面の説得力が弱くなってしまうんですね。現に今、少し苦慮しております。ただ場面を書くだけなら簡単なのですが、その場面に重みをもたせるのが難しいんですね(何のことかわからんぞ;ああ、これは次回を読んでいただくしかありません)。
いま一つは、今回の場面、これは「縛り、緊縛」といえるのか。これです。香奈枝せんせの股間を通り過ぎて行った縄は、せんせを縛ったわけではありませんからねえ。
ただ、SMもののAVを見ますと、それほど頻繁ではありませんがこの趣向は登場しますし、何より好みなんですね、わたくしの(結局それかい!)。
で、今回のこの趣向。腰の高さに水平に張った縄を女性に跨がせて歩かせる。これを何と称するかといいますと、どうも名称が無い様なんですね。なんでやろ。
で、わたしは勝手に「縄渡り」と名付けております。もし正式名称をご存知の方がおいででしたら、ご教示いただけると嬉しいです。
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2. Mikiko- 2013/06/11 19:55
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今回は、香奈枝さんの動作と感情のベクトルが1本になって見えて……。
絵もわかりやすく、良いシーンだったと思います。
『縄渡り』は、わかりにくいんじゃないすか?
どうしても、『綱渡り』を連想してしまいます。
『股縄渡り』はいかが?
“股縄”を打たれると、女性はとたんに大人しくなることから……。
“姫縄”とも呼ばれるそうです。
『姫縄渡り』なんか、綺麗ですね。
ちょっと言いづらいかな。
いっそ、『姫渡り』という手もありますね。
いずれにしろ……。
でっち上げた名称を、「SM界ではこう呼ばれている」とすっとぼけて書いたら面白ろかったのに。
誰かが食いついてきたら、「うそぴょーん」とうっちゃるわけです。
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3. ハーレクイン- 2013/06/11 20:33
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誠に有難うございます。励みになります。
めったに褒めてもらえんもんなー。
書いた甲斐があるというものです。
「縄渡り」あきまへんか。
「股縄渡り」はねー、「股縄」という縛りがちゃんとあるからねー。意味が分かりにくくなるよな。
で、「股縄」は「姫縄」。
おー、これは知りませんでした。確かに綺麗ですが……。
「姫渡り」だと、姫様がお渡りになる、みたいですな。
あ、いいのか、意味は通じるな。押入れ前からあやめ前まで、香奈さまがお渡りになるわけですね。
「うそぴょーん」って、双子やないんやから。
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4. Mikiko- 2013/06/12 07:52
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“わ”重なりで……。
語感が良くないですなわ、否、わな。
『姫縄』は、時代小説で使われる用語みたいです。
いっそ、『谷渡り』が綺麗なんではないか?
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5. ハーレクイン- 2013/06/12 10:33
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“わ”重なり。
言われてみれば……ですね。
発音はしたことなかったです。頭の中で考えるか、文字にするか、ですからね。
>良くないですなわ、否、わな
うーむ。座布団……どうしようかな。
>「姫縄」は、時代小説で使われる用語
ほおーお、それはそれは。当然エロ時代小説だよね。『元禄』みたいな。
ただし、「姫縄」は“縄渡り”ではなく、股縄のことでしたよね。
「股縄」。
この、日本古来の下着、褌を思わせる縛りに敬意を表して、欧米では「Sakura」と称するそうです。これも綺麗ですね。欧米のSMものはガサツなだけのが多いからなあ。
「縛り、緊縛」は日本の伝統文化です。
「谷渡り」は、「女性を複数人、並べて寝かせておいて、男性一人が次々とにまぐわうこと」を云うエロ用語ですね。正式には「ウグイスの谷渡り」です。
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6. ハーレクイン- 2013/06/12 11:18
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もう少しWikiを読んでみましたら、「女の綱渡り」という名称があるそうです。別名「こぶ縄渡り」「ウグイスの谷渡り」とも。
「女の綱渡り」はなあ、なんか刑務所の塀の上を歩く女、みたいな……。
「ウグイス……」は前コメに書きましたように、古来、別の意味に使われます。
「こぶ縄渡り」これだな。“こぶ”ではなんか“塩昆布”みたいだから「瘤縄渡り」。これ、これに決まり!
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7. Mikiko- 2013/06/12 20:19
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美的じゃありませんねー。
駱駝を連想しますねー。
なんとかなりませんかねー。
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8. ハーレクイン- 2013/06/12 21:03
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瘤を取って「縄渡り」。これでどうじゃ。
ん? もとのままか。
そのまんま表現すれば「縄跨ぎ歩き」。これならどうじゃ。
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9. Mikiko- 2013/06/13 07:46
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『股跨ぎ歩き』はいかが?
↓アマゾンに棲む淡水亀、マタマタ。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130613074313b56.jpg
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10. ハーレクイン- 2013/06/13 10:48
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いや、亀の頭。
何かに似てるなあ。ちんちんではないぞ。
恐竜かなあ。
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11. Mikiko- 2013/06/13 19:50
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プラナリアに似てると思いましたね。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2013061319313415b.jpg
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12. ハーレクイン- 2013/06/13 20:47
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質感がね、ぜんぜん違うからなあ。
HQ「プラナリアに触ったことある人」
茜「はいはいはいはい」
緑「はい、センセ」
茜・緑「ありませーん」
HQ「ないなら、いちいち手を上げいでよろしい」
茜・緑「えー、ぶうーぅ」
(『センセイのリュック』第四場第六景 夜の屋上 より)