2012.9.18(火)
↑舞台用語です(クリックで大きい画像が表示されます)。用語の解説は、第二場第二景のはじめにあります。
↑今回の舞台設定と、女優さんの動きです(クリックで大きい画像が表示されます)。
登場人物
南香奈枝(みなみ かなえ):私立梅ヶ丘女子高 生物科教師
東希美(あずま のぞみ):梅ヶ丘女子高2年生、生物部部長
北珠恵(きた たまえ):梅ヶ丘女子高2年生、生物部副部長
香奈枝のマンションのリビング。
ベッドに倒れ込み、激しく抱き合う香奈枝と希美。
希美「センセ、センセ。
好き、好き、だいすき」
香奈枝「のぞみ、のぞみぃ。
抱いて、しっかり抱いて。
やだよ。
離しちゃ、やだよ」
希美「センセ、離さないよ、いつまでも離さないよ。
ずっと、ずっと、そばにいるよ」
香奈枝「うん、いて、そばにいて。
どっかいっちゃやだよ。
ずっとずっと、そばにいて」
希美「うれしい、センセ。
いかないよ。
どこにもいかないよ。
センセが『どっかいけ』って言ってもいかないよ。
ずっとずっと、いつまでも、いつまでも、
センセにしがみついて離れないよ」
香奈枝「ふえええーん。
のぞみぃ。
えーん、えーん、ええーん」
希美「センセ、センセ。
なんで泣くの。
泣いちゃやだ、なかないで」
香奈枝「だって、だって、のぞみぃ。
うえええーん。
わーん、わーん、わあーん」
希美「どうしたのよお、センセ。
泣いちゃやだって。
なにがそんなに悲しいの」
香奈枝「あーん、あーん、のぞみぃ。
わかんないよう」
希美「わかんないって、センセ。
なかないで。
センセがそんなに泣いたら、
あたしも悲しくなっちゃうよ」
香奈枝「えーん、ええーん、ふえええーん」
希美「わあーん、あーん、あーん。
泣いちゃやだよお、センセ。
うわああああーん」
香奈枝「えーん、えーん、えーん」
希美「ひーん、ひいーん。
センセ、センセ、センセ」
しっかり抱き合いながら、幼女のように泣きじゃくる香奈枝と希美。
希美の泣き声が高まるとともに、香奈枝の泣き声は次第にしゃくり上げる様におさまっていき、やがて寝息に変わっていく。
香奈枝「ひっ、ひっ、ひっく、うっく、くううう」
希美「センセ、あれ? センセ」
香奈枝「くーっ、くーっ、くううん、うん、うん、
うすう、すーっ、すーぅ、すう……すう」
希美「センセ、センセ、寝ちゃったのお」
香奈枝の寝息を確かめ、希美を抱きしめたままの香奈枝の腕を解き、そのままうつ伏せにベッドに寝かせる希美。
そっとベッドを降り、香奈枝に掛け布団を掛けてやる。
ベッドの脇に跪き、涙に濡れたままの香奈枝の顔を、愛しそうに撫でる希美。
希美「好き、だあい好き、香奈枝センセ」
その時、玄関のチャイムが鳴る。
玄関に向かい、珠恵とともにリビングに戻る希美。
珠恵「で、寝ちゃったの、先生」
希美「うん、ついさっき。
散々泣きわめいたあげくにね」
珠恵「ふうーん、どうしたんだろうね。
先生が泣くなんて、はじめてだよ」
希美「あたしも。
さっき、あなたが毒づいたからじゃないのお」
珠恵「まさか、あの位はしょっちゅうだよ。
それに、楽しんでやってるしね」
希美「ふーん、じゃ、なんだろ」
珠恵「それより希美、飲んでたんでしょ。
わたしも飲みたいな」
希美「あ、飲む?
ビール、まだあるかなあ」
珠恵「ウィスキーがあるじゃない」
希美「あ、あなた強かったわね。
でも、氷とか、ないよ」
珠恵「ああ、先生、めんどくさがりだからなあ」
希美「水割りで飲んでたよ、先生」
珠恵「水割りかあ、うーん。
そうだ、いっそお湯割りにするか」
希美「お湯割りって、冬にするんじゃないの」
珠恵「いやあ、今頃でも真夏でも、
汗かきながら飲むって、かえっていいもんだよ。
そうだそうだ、そうしよう」
立ち上がり、テーブルの薬缶を取り上げてキッチンに向かい、湯を沸かす珠恵。
希美はグラスを流しに運び、すべて洗って洗いかごに伏せる。
湯が沸く。
珠恵は薬缶を、希美は新しいグラスを二つ、テーブルに運ぶ。
珠恵「なあに、あんたも飲むの、希美」
希美「さっきからセンセと飲んでたら、
なんか美味しくなっちゃった」
珠恵「あーああ、また一人、呑み助誕生か」
希美「こんな美味しいもの、
大人は自分たちだけで飲んで、
あたしたちには禁止してるわけだ、
許せん、桃太郎」
珠恵「ちょっと希美、暴れたりしないでよ」
希美「センセのうちで、暴れるわけないでしょ」
珠恵「はは、それはそうだね。
じゃ、注ぐよウィスキー、希美は薄ーくね」
希美「なによう、自分だけたくさん注いで。
性格、悪う」
珠恵「なに言ってんのよ。はい、お湯注ぐよ」
希美「よーし、乾杯だ、珠恵」
珠恵「乾杯はいいけど、
慣れないとホットは、噎(む)せるよ。
気つけてね」
希美「わあっとる。んじゃ、乾杯だ」
珠恵「何に乾杯よ」
希美「きまっとる。『二人の夜に』だ」
珠恵「なんか、さっき電話でもそんなこと言ってたねえ」
希美「いいから、『二人の夜に』」
珠恵「『二人の夜に』」
希美・珠恵「かんぱあい」
グラスを合わせた後、それぞれグラスに口をつける二人。
途端に、激しく咳き込む希美。
珠恵「あー、ウイスキーは久しぶりだから美味しーい」
希美「う、ぶ、げーっほ、げほ、げほ、げほ、げほ」
珠恵「あーああ。だから言ったのに。
ホットは香りが立つからね、啜りこんだらむせちゃうよ。
そっと口に含んでから、咽喉にすこしずつ流し込む」
希美「もう、そういうことは先に教えてよ」
珠恵「子供は、
痛い目にあって、危ないことを覚えていくのよ」
希美「あたしゃ、子供かい」
珠恵「子供だよ」
希美「断定するなよ。
でも、さっきセンセにもそう言われたなあ」
珠恵「はは、そらそうだろ」
希美「でもセンセ、さっき、
『いいじゃんか、子供で。
あんまり早く大人になると、老けるのも早いぞ』って、
言ってくれたよ」
珠恵「はは、さすが香奈枝先生。
子供をあやすのが上手いわ」
希美「なんだよう、珠恵。
あんたは『老けるのが早い』ってことだよ」
珠恵「わはははは。なるほどー。
飲もう、希美。
どんどん飲みな。
あんた、結構強そうだよ」
希美「おう、飲むぞお」
珠恵「んー、なんかツマミはないのかなあ」
香奈枝「食器棚の下の段に、ポテチと柿の種があるぞ」
希美・珠恵「ひええええっ」
ベッドから起き上がり、さっきと同じ姿勢でベッドに凭れる香奈枝。
希美は香奈枝の左側、珠恵は向かい側に、それぞれ横座りに座っている。
希美「センセ」
珠恵「もう目、醒めたんですかあ」
希美・珠恵「だいじょうぶですかあ」
香奈枝「うーむ。ジェミニ右嶋と話してるようだのう」
希美「誰ですかあ、それ」
珠恵「ははあ、わかった『屋上の女』でしょう」
香奈枝「さああ、どうかのう。
それより、ツマミ持ってきな。
あ、私の分のグラスもな」
希美「はーい」
珠恵「ちょっと先生。まだ飲むんですか。
あれだけ騒いで酔い潰れたくせに」
香奈枝「なんのこれしき。
それより、枕元で宴会をされて、
じっとしとれる香奈枝さんではないわ」
珠恵「はは、それはそうでしょうけど」
希美「はーい、持ってきましたあ」
香奈枝「お、ご苦労、希美」
珠恵「どうする、先生。ホットでいい?」
香奈枝「おう、いいぞ。
ホットウィスキーも久しぶりじゃのう」
希美「じゃ、あらためて乾杯しますか」
珠恵「今度は、何に乾杯よ」
香奈枝「それはもちろん『三人の夜に』だな」
希美「じゃ『三人の夜に』」
香奈枝・珠恵「『三人の夜に』」
香奈枝・希美・珠恵「かんぱあい」
(暗転)
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2012/09/18 09:38
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大作!?「屋上の場」から次へ移るための、ほんの短いちょっとした息抜きの場のつもりだったのですが、思いがけず全五景と長くなってしまいました。
驚いたのは、常にマイペース、飄々エロ教師香奈枝さんが、我が生徒の前で手放しで泣きじゃくるという醜態を見せたこと。これは一体何なんでしょう、一体どんな意味が……。
なあに、深い意味などありはしませぬ。
風の吹くまま気の向くまま。誰の思惑も斟酌せず、なーんにも考えず悠然と振る舞う。これが香奈枝さんの持ち味であり、魅力なのです。
香奈枝センセの行動に意味を求めてはなりませぬ。
次回、新たな人物が登場いたします。
西木織佳ちゃん、中垣内芳江ちゃん以来の体育会系。梅ヶ丘女子高きってのスーパーヒロインの登場です。
乞う!ご期待。
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2. ハーレクイン- 2012/09/18 09:54
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といってもなあ。
内容を明かすわけにはいかぬのだよ。
明かしてしまえば“衝撃”画像にならぬではないか。
きゅう太郎くんの第3子がらみ、とだけお伝えしてあとは……
必見!!
とだけ書いて、レポートを終わります。
(手抜きや!)
必見、必見。
詳しくは後日。
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3. Mikiko- 2012/09/18 19:46
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思い出しました。
学生のころの、ホット泡盛事件。
沖縄旅行から帰った友達から、泡盛をもらいました。
シーサーの形をした瓶に入ってました。
泡盛なんて見るのも初めてなので、どうやって飲むのか聞きました。
友人も、瓶の物珍しさから買ってきたようで、よくわからない様子でしたが……。
「燗して飲むらしい」とのこと。
燗を付けようにも、わたしの部屋には、徳利もお銚子もありません。
でも、せっかくのお土産を飾っておくだけというのも悪い気がして……。
ヤカンに直接入れて、火にかけてみました。
すると……。
ものすごい臭いが部屋中に充満したんです。
あれには、たまげましたね。
飲もうにも、鼻さえ近づけられない。
それでも、友人に悪いので、鼻を摘んで飲んでみました。
口から火を吹きそうな強さでしたが、味の方にはさほどのクセもなく、ノドを通りました。
ま、普通なら、一口飲んで義理を果たしたわけで……。
残りは、誰かにやるか捨てるかだと思います。
でも、いじましいわたしは、お酒を捨てるなんてできません。
その後も、お燗をつけて飲み続けました。
そのうち……。
臭いがイヤじゃなくなってきたんです。
結局、瓶は空になり、シーサーは本棚の飾りになりました。
泡盛は、燗をつけて飲むお酒じゃないとわかったのは、かなり後になってからのことです。
考えてみれば……。
暑い沖縄で、焼酎に燗を付けて飲むなんてあり得ませんよね。
友人は天然系だったので、悪気はなかったと信じてますが……。
ひょっとしたら騙されたんじゃないかという疑念も、捨てきれずにいます。
掲示板。
ぜひご覧になってください。
みなさんも試してみたくなること必定です。
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4. ハーレクイン- 2012/09/18 20:23
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ただでさえ匂いがきついのに、燗をつけたら大変だわ。
せめてお湯割りにしとけばなあ。
でも、結局燗づけ泡盛を飲みきった、と。
人は何にでも慣れるものですねえ。
ま、何にしても、ウィスキーでもそうですが、温めた酒、というのは飲むのにコツが要ります。くれぐれも希美ちゃんの二の舞にならないように、ごちうい。
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5. Mikiko- 2012/09/18 20:30
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焼酎の豊富なお店で、飲み放題でした。
泡盛もあったので、注文しました。
ロックを頼んだんですが……。
興味を惹かれて、わたしのグラスを嗅いだ同僚は、ことごとく……。
「無理!」
燗を付けた泡盛と比べたら、水みたいなもんだったんですけどね。