Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
風楡の季節【第15章】
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「風楡(かぜにれ)の季節」作:ハーレクイン


第15章 由美と夏実4


 夏実は、浴室の天井の照明をぼんやり見上げている。
 由美のマンションの浴室は廊下側に面しているため窓がない。しかし、天井の照明は、この浴室の広さにしては不相応に大きく、浴室内は、外の陽光が差し込んでいるかのように明るい。

 夏実は、これも不相応に広い浴槽に浸り、ゆっくりと両脚を伸ばしていた。
 由美はその夏実の上体を背後から抱え、背中を浴槽内の縁にもたせ掛けている。両腕は、先ほどシャワーを浴びたときのように、夏実の胸前に廻し、夏実の両の乳房を、腹を、両腿を、愛おしそうに撫でている。
 夏実の両手は由美の両手を追い、縋り、捉え、捉えられ、逃げ、追われ……。由美の両手が夏実の両乳房を捉えると、夏実の両手は、夏実の腰を両側から挟み込んでいる由美の腿を、両膝を、脛をゆっくりと撫で下ろし、撫で上げる……。

 夏実は時折、頭を後方にのけぞらせ、由美の頬に頬を擦り付ける。顔全体を捩じるように横向け、由美の唇を求めて唇を突き出す。
 吐息とも、ため息とも、ささやきともつかぬ二人の声が、時折、浴室内に響く。
 浴槽を満たした湯は浴槽の底まで透き通り、浴槽内の二つの身体を万遍なく洗い、二つの身体の動きとともに波打ち、揺蕩い、浴槽の縁からこぼれていく……。

「由美さん……」
「なあに」
「さっきの……『わたしのことで気付いたことがある』って……」
「ああ、あれね。そうねえ、ただの推測だから、的外れかもしれないけどねえ」
「かまいません。教えてください」
「そうねえ、口で言ってもピンと来ないかもしれないし……」

 由美は少し思案したのち、夏実に声をかける。

「あなたの身体に聞いてみようか」
「え、由美さん、それって」
「あ、そうか『体に聞く』って、なんか江戸時代とかの拷問みたいだね、小伝馬町の牢屋敷……『きりきり、白状せい』とかね」

 夏実は、唇を引き結んだ後、きっぱりと答える。

「かまいません、由美さんにされるなら」
「ばかね、冗談よ、そんなことするわけないよ」

 二人は、互いの体をゆすり合いながらくすくすと笑う。

「体に聞くっていうのはね夏実、とりあえずあなたに、もう一度気持ちよくなって貰おう、ということよ」
「え、由美さん」
「なつみ……こっち向いて」

 夏実は、下半身を由美の両脚の間に置いたまま、上半身を捩じって由美に向かい合う。かなり無理な体勢だが、柔軟な夏実の身体にとっては何ということもない。
 二人は、両腕を互いの背に回し、しっかりと抱き合う。互いの両乳房が相手の乳房に押し潰され、乳首が擦れ合う。いや、ゆるゆると擦り合う。
 唇をしっかり重ね合い、舌と舌を絡め合う。その動きは、今まで数えきれないほど唇を重ねてきた者どうしのそれのように見える。呼吸が苦しくなると、僅かの時間、唇を離すが、そのまま離れていると相手がどこかへ消えてしまうのではないか。そんな思いに駆られるように、唇はすぐに合わさる。
 どちらからともなく呼吸がせわしなくなっていく。自らの体内の高まりを相手に教えるように、訴えかけるように、鼻孔から、唇の隙間から、切なげな吐息が漏れる。

「由美さん、ゆみさあん」
「なつみ、好きよ、大好き」
「わたしも、由美さん、好きです、この世で一番好き」
「ああ、なつみぃ」
「ゆみさぁん」

 夏実は、先ほどシャワーの時に、由美を触らせてもらえなかった。由美に厳しく命じられ、身動きすら許されず、一方的に高みに追い上げられたことを思い出していた。今、由美は積極的には夏実を愛撫しようとせず、どちらかというと夏実の愛撫に身を任せようとしている。
 夏実は、先ほどの焦燥感を生々しく反芻しながら、失われた時を取り戻そうとするように、狂おしく由美の身体を貪る。

「由美さん、由美さん、ゆみさぁん」
「はあっ、ああっ、ああっ」
「ゆみさんっ、んんっ、んんっ」
「いい、いいよなつみ、気持ち、いいっ」

 由美の全身を思う存分くまなく愛撫した夏実の手は、今、由美の股間を集中的に責めている。
 夏実は女性器の構造の細部はまだよくわかっていない。唯一頼りになるのは、昨日、あの公園のトイレでのオナニーの経験だ。夏実は、あの時探った自らの体の構造を、もどかしげに思い出そうとしていた。どこにどのようなものがあり、どこをどう触れれば気持ちよくなるのかを。

(もどかしい……)

 夏実に、由美の心中のつぶやきが聞こえた気がした。

(ああ、もう少しそこを……)

 夏実は、泣き出しそうになった。
 こんなに好きなのに、気持ちよくなってほしいのに、気持ちよくしてあげたいのに、こんなに……。

(そうよ、そこよ、そう、いいわよ、気持ちいいわ)

 夏実は、その声にならぬ声に励まされるように、次第に的確に、由美の身体のより敏感な部分を探り当てていく。

(いい、いいよなつみ、気持ちいい、あ……いきそう)

「ゆみさんっ」
「なつみっ、わたし、いきそう」
「いって、いってゆみさん」

 その時、夏実の股間の最も鋭敏な部分を、由美の指先が的確に探り当て、一気に夏実を追い上げる。

「あ、いやあ、ゆみさん、いいっ」
「なつみ、いくよ、わたしもう、いくよ」
「ゆみさんっ、わたしも、いきます」
「いいいいっ、いっ、くうううっ」
「いやあ、いくっ……いきますっ」

 ほぼ同時に、互いに高みに追い上げられ、追い上げた二人の嬌声と、激しく立てる湯の音が浴室に響いた後、静寂が訪れた。


 先ほどと同じ体勢、浴槽に尻を下ろして両脚を前に伸ばした夏実の上体を、由美が背後から抱きかかえている。

「夏実、気持ち、よかったねえ」
「はい、あの……わたし、またいっちゃいましたけど、由美さんは……」
「わたしも、とっても気持ちよかったよ」
「ほんとですか、私、まだよくわからないので……」
「こらこら、また泣くなよ、ほんとに気持ちよかったって、それに、何度もやればどんどん上手になるから」

 由美は、夏実の腰の上あたりを両腕で巻いて、大きく夏実の身体を左右に揺さぶる。励ますように、大好きな遊び相手をかまう幼女のように……。

「で、夏実、わかった?」
「え、何がですか」
「うーん、だからね、女の子どうしの関係っていうのは、大きく分けて二通りあるの、相手を気持ちよくさせる事に喜びを感じる人と、相手に気持ちよくさせてもらうことに喜びを感じる人と、の二通りね、それぞれ、『タチ』『ネコ』っていう呼び方があるんだけどね」
「へえ、全然知りませんでした」
「もちろん、そんなに単純に真っ二つに分かれるものでもないんだけどね、その中間タイプの人もいるし……ま、ある程度の傾向、というところかな」

 夏実は、初めて聞いた話を、刻み付けるように記憶する。

(タチとネコ、ネコとタチ……)

「で、夏実、あなたは自分をどちらだと思う?」
「え、わたしですか、うーん、そうですねえ」
「よく考えてごらん、さっきのシャワーでの時と、今の浴槽内での時と、どちらが気持ちよかったか」

 夏実は思案する、思い返す。
 シャワーの時と、浴槽内……。
 一方的に由美の愛撫を受けるままだった時と、夏実の方から積極的に由美を愛撫した時と……。

「うーん、そう……」

 夏実の記憶は、さらに遡る。
 先ほど、縛られ身動きできない状態で、一方的に由美の言うがままになったときと、その前に、気を失ったままの由美を愛撫した時……。

 夏実はようやくまた一つ、自分という人間の本質が見えた気がした。

(わたしは、女性の服に憧れる『女性』であり、そして、女性を愛したい『女性』であり、そして……)

「由美さん、わたし……えーと『ネコ』なんだと思います」
「そうね、私もそう思う、シャワーの時の夏っちゃんの反応って、すごかったもんね」
「やだ、由美さん」
「あなたはね、夏実、
 相手に気持ちよくさせてもらい、『気持ちいいです』と、相手に言葉で、振る舞いで、素直に伝えることで、自分を気持ちよくさせてくれた相手に逆に大きな喜びを与える、そういう人だと思う。そういう人をひとことで『ネコ』っていうの」

 夏実は由美を振り返る。その両眼からは涙が吹き零れている。

「由美さぁん」
「あらあら、また泣いているの、ほんとに泣き虫夏っちゃんねえ。今度はどうしたの」
「嬉しいんです、とっても嬉しいんです、嬉しくって嬉しくって、どうにかなっちゃいそうです」

 由美には、よくは理解できないが、夏実の手放しの喜びは何となくわかる気がした。

「夏実、わたしまで嬉しくなっちゃいそうよ」

 二人の少女は、改めて抱き合う。由美の舌は夏実の涙を掬い、舐め上げ、夏実の舌を求める。浴槽内には二人の唇と舌の立てる軽やかな、それでいて隠微な音が広がっていく……。


「でもね、夏実、あなたについて気付いたことって、もう一つあるのよ」
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2012/02/14 19:53
    •  やっぱり、いたたまれないほど恥ずかしいぞ。
       尻の毛が逆立つわい。
       夏実の正体ってのは……。
       結局、ネコだったってことなの?
       由美と美弥子は、結果的に、お互い以外の相手とヤッてしまってますが……。
       お互い以外の相手に対し、「好き」と言ったことは無いと思います。
       そのあたり、ちーっとばかし違和感を感じました。

    • ––––––
      2. ハーレクイン
    • 2012/02/14 20:39
    • そうです。
      しかもフェムネコでバリネコ。
      これが私の結論です(も一つありますが、これは次回)。
      で、母親のせいで、性的には全くの未成熟。
      しかも「フェム」は許されず「ボイ」として振る舞うことを強制されていた。
      そのおかげで、精神的にねじくれ、異常をきたす恐れまであったところを、柔道に縋り、ひたすらストイックに生きることで自らを保とうとしていた……。
      これがわたしの夏実像です。どうでしょう。
      由美ちゃんが夏実に「好き」と言ったことについては、ま、“夏実は特別”ということでご了解いただきたい。
      ご本家では、由美ちゃんが女教師に変身し、ゆっくり語り合う間もないまま、夏実をほっぽらかして話が進んじゃいましたよね。
      その裏では、女教師から由美ちゃんに戻った後、二人の間でこのような雰囲気のやり取りがあったと……そのようにお考え下され。 

    • ––––––
      3. Mikiko
    • 2012/02/15 07:48
    •  なるほどねー。
       頭の中に、ちゃんと夏実像があるとは大したものです。
       わたしの中で明確な像を結んでる登場人物は、誰一人いないもんね。
       でも、こんなとこで解説しちゃっていいの?
       これって……。
       夏実が、自分の本質を理解したときの告白として、使えると思うんだけど。
       女教師から由美に戻った後の話が4月じゃ、やっぱり妙だよな。
       冒頭の桜のシーンさえなければ、すんなり繋げられるのにね。
       桜のシーンが捨てがたければ……。
       回想シーンにするとかさ。

    • ––––––
      4. ハーレクイン
    • 2012/02/15 11:21
    • になるかどうかはわかりませんが、次回(たぶん)最終回で書きます、まとめます“夏実の正体”。
      前コメはその予告編でおます。
      >回想シーンにするとかさ
      そですね。今更手遅れですが、その手がありましたよね。
      なんせ連載開始当初は無我夢中、とてもそこまで思いが至りませんでした。
      で、今、書きながらふと思ったのですが、『風楡』part2「夏実それから」なんて、いけるんではないかと……。
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