Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
風楡の季節【第2章】
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「風楡(かぜにれ)の季節」作:ハーレクイン


第2章 美玖と夏実


 美玖は、突っ込む勢いを急激に殺し、俯せに、夏実の足もとに自ら倒れ込んだ。両膝と両肘を地につき、頭を垂れ、祈るような、許しを請うような姿勢を取る。
 意表を突かれた夏実は、そのまま動けなくなった。

 地についた美玖の両手の先と、夏実の踏み出した右足先の距離はおよそ30cm。美玖は、頭を垂れたまま、両肘で躙りながらその距離を徐々に詰めた。
 夏実は微動だに出来ない。
 美玖の両手が、夏実の右足のスニーカーを抱え込む。

「なつみ……なつみいぃ……」

 押し殺すように呟きながら、美玖はその唇を、夏実の剥き出しの踝に押し当てる。
 夏実の身体に異様な感覚が走った。

 夏実の踝の皮膚感覚は、押し当てられた美玖の唇の感触を鮮明に捕らえた。夏実の右脚全体の滑らかな皮膚、鍛え上げられた筋肉、しなやかで強靭な骨格、そして俊敏極まりない神経系……。
 美玖の唇の感触は、これらのすべてに沿って、途中で何倍にも増幅されながら上方へ伝わり、夏実の体幹最下部に存在し体内で最も鋭敏な知覚を有する小さな肉芽を直撃した。
 鮮烈な感覚だった。

「んあっ」

 夏実は声を漏らしたことも、左脚をもとに戻して右脚に揃え、ほとんど直立の姿勢を取ったことも、全く意識していなかった。その姿勢は、柔道、というよりもすべての武道で決してとってはいけない無防備な姿勢なのだが……。

 美玖は、夏実の肉芽が受けた感覚を、どのようにしてか自分も受けていた。その感覚が美玖を励ます。美玖はさらに強く唇を押し付ける。
 夏実はさらに声を漏らす。

「んん、んっ」

 美玖は、夏実のスニーカーを抱え込んだ両手を夏実の足首に移した。そして夏実の両脚にすがりながら、じりじりと体を起こしていく。眼前の夏実の身体を見つめながら、未踏の頂上を目指すクライマーのように……。

 美玖の顔が夏実の腰の位置まで上がった。
 美玖は、夏実のジーンズの股間に強く顔を押し付ける。
 幼児がいやいやをするように、押し付けた顔を左右に振る。
 夏実の尻に回した美玖の両手が、鍛え上げた大臀筋を内に秘め、固く張りつめた夏実の尻をしっかり掴む。
 夏実が、また声を漏らしたようだ。

 美玖の顔は今、夏実の胸の位置にある。
 美玖は中腰で、夏実の胸のかすかなふくらみに頬を寄せる。
 今まで稽古中に偶然に何度か触れた、あのふくらみだ。
 稽古中の触れ合いとは全く異なる、とろけるような歓びが美玖を満たす。
 夏実が声を上げる。
 美玖にもはっきり聞こえた。

「あはあああ……んん」

 ここはまだ頂上直下だ。
 美玖はさらに自分を励まし、高みを目指す。
 楡の梢と、青い空が見えた。
 美玖は登り切ったのだ。ここが世界の果てだ。
 視線をやや下げると、世界の果てに君臨する孤高の女神がいた。

「なつみ……」

 美玖は両腕を大きく広げ、夏実を抱きしめた。
 見果てぬ夢でしかなかったものが、今ここにある。

「なつみぃ……」

 美玖は夏実の頭を抱え込むと、その髪に顔を埋めた。夏実の髪は日向の香りがした。美玖は、夏実の耳に唇を寄せ、その耳朶を軽く噛む。

「んんっ、あああああぁぁ…ん」

 夏実の唇からまた声が漏れたが、夏実はそのことも、美玖のふるまいも全く意識していない。世界のすべてが消失したような無感覚の状態にあった。
 美玖が夏実にささやく。

「なつみぃ。好き、好きよ、大好き。柔道部、やめてもいいよ、わたしもやめる。二人でどこか遠くへ行こう」

 夏実には聞こえていない。
 美玖の唇が夏実の耳朶を離れ、頬を伝い、唇を探り当てる。夏実の唇は乾いていた。乾いた夏実の唇に潤いを与えるように美玖の舌が這い回る。夏実の唇が自然に開き、美玖の舌は夏実の口腔内に忍び込む。夏実の舌を美玖の舌が捉える。美玖の吐息が荒くなる。

「ふううん、んんん、うんん」

 夏実は微動だにしない。何も聞こえていない。何も見えていない。ただ、美玖の愛撫に無意識に応え、時折微かな声を漏らすだけだ

「ううっ、むん、うふう」

 美玖は、夏実を抱きしめた両腕で、夏実の背を、腰を、尻を狂おしく撫で回す。

(このまま……夏実と溶け合い一つになれたら)

 美玖は、夏実との稽古を反芻していた。これまで美玖が夏実に勝てたことは一度もない。一方的に美玖が投げられるだけの稽古だった。

「わたし……いつまでも夏実に投げられたい……」

 その言葉を聞いた瞬間、夏実は覚醒した。
 両手で美玖の両肩をつかみ、無理やり引きはがす。

「やめろ、何をするんだ」
「なにって、なつみ、いまあんなに感じてくれたのに」
「何をわけのわからんことを言ってる。さっさと稽古に戻れ、ボクは帰る」

 夏実は美玖を突き放し背を向ける。

「いやぁ、行かないで、いっちゃいや!」

 美玖は、背を向ける夏実にむしゃぶりつこうとした。だがその動きは、先ほどの俊敏な動きとは比べるべくもない、無様なものだった。欲しくて欲しくてたまらないものが得られないときの幼児が、地団太を踏むような……。

 夏実は、両腕を伸ばして掴みかかってくる美玖の右袖を左手で掴んで引き下ろし、右手で左襟を取って吊り上げる。くるりと体を左回りに反転させて美玖の懐に入り、軽く腰を落とし、右脚を側方に伸ばす。
 美玖は夏実の右脚に膝のあたりを遮られ、自らの勢いで頭から前方に回転し、背中から地面に落ちた。左腕は無意識のうちに地を叩き、受け身を取っている。
 夏実は美玖が頭を打たないように上体を支えてやったのち、そっと地面に横たえた。

 教科書を見るような、きれいな「体落とし」だった。理想的な「体落とし」に力はいらない。相手の突っ込んでくる勢いと、それに合わせて脚を出すタイミングがすべてである。美玖には、瞬時に世界が反転したように思えただろう。

 夏実はキャップを拾い、土を払ってかぶり直す。バッグを拾うと、一言も発さずに美玖に背を向け、校門に向かった。その直後、背後の楡の木の根元から、異様な、断末魔の獣が上げるような声が聞こえた。
 肺腑を抉られるような、美玖の号泣だった。

 夏実は振り向かなかった。


 川沿いの通学路、桜吹雪の中を足早にゆく夏実は、歩みを進めるうちに、自らの苛立ちの原因が、先ほどの美玖とのことだけではないことに気付き始めていた。
 夏実は思う。


 自分はなぜ柔道をやめたのだろう。
 なぜ母に背いてまで柔道をやめたのだろう。
 母のことは好きだった。
 今でも大好きだ。
 家にいるときは口もきいてくれない母になってしまったが、
 それでも好きだった。
 ただ。
 母が好きだ、というその思いが、
 幼いころのそれとは異質なものに変わっていることに、
 夏実は気付いていた。
 それがどう変わったのか、夏実にはよくわからない。

 厳しい母だった。
 強い母だった。
 父亡き後、女手一つで自分を育ててくれた強い母だった。
 それよりなにより、強い柔道家だった。

 母には今まで何千回、何万回投げ飛ばされ、
 締め落とされたことだろう。
 夏実にとって母は、母であって父であり、
 人生のすべての規範であり、柔道の師であった。
 厳しい師だった。
 褒められたことなど一度もなかった。
 かけられる言葉は、厳しい叱責と叱咤だけだった。
 その強い母から、数本に一本取れるようになったのは、
 中学3年の頃だったろうか。
 そして。

 自分は強くなった、母よりも……。
 そう思えるようになったのは高2の冬、
 正月の、母と二人きりの寒稽古の頃だろうか。
 この前年、
 夏実はインターハイの個人戦で優勝を果たしていた。
 夏実は強くなった……。
 それは母も認め、寒稽古の最後の日、ぽつりと夏実に言った。

「強くなったねえ、夏」と。

 その言葉を聞いた瞬間、夏実は天にも昇る心地だった。
 嬉しかった。
 たまらなく嬉しかった。
 しばらくは「強くなったねえ、夏」という、
 その母の言葉が脳裏を駆け巡り、木霊し、去らなかった。

 しかし数日して愕然とした。
 夏実はその時の思いをはっきりと覚えている。

(ボクは強くなった、うぬぼれではない、それは確かだ)
(しかし、母さんが弱くなった、とも言えるのではないか)

 “格闘家の最大の敵は年齢である”という言葉がある。
 母は世間一般から見ると、まだそれほどの年ではない。
 しかし、長年苦労を重ねてきた母の体力の衰えは、格闘技の世界では無視できないものになっていた。

(ボクは強くなった、でも、母さんは弱くなった)

 今度はこの思いが夏実の脳裏を去らなくなった。
 夏実が柔道と決別したのは、この三箇月後のことである。


 川沿いの道、桜吹雪の中、夏実は改めて思う。

(母さんは……弱くなった)

 美玖のことはもう脳裏にない。しかし、得体のしれない苛立ちと怒りは、変わらず夏実を離れようとしない。夏実は、数日前の国語の授業で習った宮沢賢治の詩の一節を、繰り返し呟いていた。

 …………………………………………
 いかりのにがさまた青さ
 四月の気層のひかりの底を
 唾(つばき)しはぎしりゆききする
 おれはひとりの修羅なのだ
 …………………………………………
 …………………………………………
 まことのことばはうしなはれ
 雲はちぎれてそらをとぶ
 ああかがやきの四月の底を
 はぎしり燃えてゆききする
 おれはひとりの修羅なのだ
 …………………………………………

 夏実は思う。

(ボクは……ひとりの修羅なのだ)

 さらに思う。

(母さんは……弱くなった……)
風楡の季節【第1章】目次風楡の季節【第3章】




コメント一覧
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    • ––––––
      1. 淡雪
    • 2011/11/15 08:00
    • なかなかパソコンをあけられない日が続いております。
      今朝携帯でチェックしてたら、ハーレクインさんのコーナーを見つけました。
      刺激的です。
      わたしも書こうかな。
      嘘です。

    • ––––––
      2. ハーレクイン
    • 2011/11/15 08:17
    • ううっ(涙)。
      何日、何か月ぶりでしょうか。
      淋しかった。
      お読みになっておられたんですねえ。
      お元気そうで何よりでございます。
      是非ぜひ、毎日お越しください。
      お待ち申し上げております。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2011/11/15 09:32
    • 淡雪さまの創作って、想像を絶するような文章になりそうな……。
      是非、読ませていただきたいものです。
      「淡雪の部屋」とか、「あわわルーム」とか、「鬼雪語り」とか。
      どうでしょう。何か、ぞくぞくしますねえ。

    • ––––––
      4. 八十八十郎
    • 2011/11/15 16:53
    • 夏美は我に返ってしまいましたねえ。
      残念でしたが、まだまだこれから楽しみです。
      美玖との束の間の陶酔、魅力的でした。
      お母さんに対する気持ちのくだり。
      精神的な支柱に対する揺らぎ、
      僕らも感じるものがあります。
      ある程度の年齢になってから、
      改めて血の濃さを知ることがありますよね。
      失礼しました。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2011/11/15 17:42
    • 以前のコメでも書かせていただきましたが、この段階でのエッチシーンは夏実に拒否されてしまいました。作者の言うことを聞かぬ、やっかいな頑固者です。
      これくらいの根性があるから、柔道も強くなったんでしょうけど。
      ま、いずれ、ということで、どうぞお楽しみに。
      ご声援、ありがとうございました。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2011/11/16 07:53
    •  “楡”は、ニレ科ニレ属の植物の総称です。
       代表的な種類は、ハルニレやアキニレ。
       ニレ属は、枝を大きく広げた樹形になるので……。
       並木ではなく、単木で植えられる場合が多いようです。
      http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111116063009c15.jpg

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2011/11/16 10:11
    • ですよねえ、やっぱり。
      それを承知であえて楡にしたのは、ベタベタのベタですが、あの、ウルトラスーパー超メガヒット曲のせい。やはり高校といいますとこれでしょう。
      ♪赤い夕陽が校舎を染めて
       楡の木陰に弾む声
       ああ高校三年生
       ボクら離ればなれになろうとも……
      うう。美玖と夏実の切ない別れ。
      作者までもらい泣きだわ。
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