Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
元禄江戸異聞 根来(五)
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「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(五)


 のんきな金魚売りの声が長屋を通り過ぎて行く。
 今年は空梅雨にあたったのか、大した雨も降らぬまま蒸し暑くなった。
 洗い終えた布巾を飯台に重ねると、お蝶は水桶片手に表へ出て行く。
 汗で額に張り付いた髪を片手で上げながら二度三度と打ち水を振った時、
「お蝶……」
 背中の声にお蝶の身体が凍りついた。

 いつの間にか、鳥追い傘に三味を抱えた女が縁台に座っていた。
 唇の朱の色だけが覗く深い傘が上向くと、その奥に切れ長の目が光っている。
「ひさしぶりだねえ」
「美津……」
 油断なく身構えながら、お蝶はゆっくりと後ずさる。
 その様子を見て、傘の下で色白の細面が微かに綻んだ。
「ふふ、あたしはそんな用事で来たんじゃないんだよう」
「なんだって……?」
「忍びを抜けた咎なら、もうとっくに解けてるんだ。あんたのお蔭で、もう随分前から丹波のお庭にも伊賀が入ってるんでね」
「じゃ、何の用だい?」
「ここじゃあそんな話も……。久しぶりに会ったんじゃないか、中に入れておくれよ」
 すらりと立ちあがった旅芸人風の女を、お蝶はじっと見つめた。

「な、なんだって!!」
 お蝶の目が宙を泳いだ。
「若が……、若がさらわれた!?」
「そればかりじゃない。後を追った脂の乗ったのが四、五人、訳も無くやられちまった」
「い、いったい誰が……?」
 美津は傍らの三味を手に取り、胴から竿を引き抜く。
 傾けた竿の中から一本の手裏剣が畳の上に落ちた。
「これは……」
 束を蛇の皮で巻いた一文字手裏剣を、お蝶はじっと見つめた。
「覚えてるかい……?」
「昔お通姉さんと一緒の時……」
「ああ。わざわざこいつらと山でやり合う事は無いって、珍しく姉さんが引き下がった時見たのと同じだ」
 お蝶は顔を上げて美津の顔を見る。
「根来……?」
 美津は鋭い眼差しを返すと小さく頷いた。
「羅紗様は江戸には知らせるなって意向だったらしいけど、お頭がね……」
「美津、よく知らせてくれたね」
「ふふ、そうなることが分かってるのさ」
 しかしお蝶は腑に落ちない顔で首を傾げる。
「しかし今の世にまだ根来なんて……」
「それがいるんだよ、残党が。もっとも今じゃ根来衆というより、女山賊さ」
「女山賊?」
「それにもうひとつ。羅紗様の話じゃ、城に紛れ込んだ奴はお通姉さんにそっくりだったという話なんだ」
「え!?」
 美津はお蝶の驚いた顔に続ける。
「20年前、あたしたちがまだ十四、五の頃、あのはねっ返りは伊賀を飛び出てって……」
 その言葉にお蝶はゆっくりと頷いた。
「鷹か……」

 美津は細い眉を寄せて、手拭いで額の汗をぬぐった。
 白い肌がほんのりと紅潮して、その鋭い目つきがむしろ色っぽく見える。
「しかし居所を探そうにも、山の中の洞はもう引き払った後のようだし、こうなるともう糸の切れた凧だね」
 お蝶は白い歯で下唇を噛んだ。
 その様子を窺うと、何故か美津は片頬に笑みを浮べる。
「ふふ、でもね。あたしがそんな事を伝える為だけに、わざわざここまで出張って来ると思うかい?」
「何か知ってるんだね!」
 お蝶は顔を上げて美津を見つめる。
「ああ……、だけどただ教える訳にはいかないよ……」
 美津の目に熱いものを感じて、お蝶の胸をふと不安が過ぎる。
「今あたしゃあ役目を上がって、若いもんの手解きに廻ってる。それも、面白い事にお床のね」
 お蝶は美津の顔から目を逸らした。
「だから返って心から楽しむことが出来ないんだよ……。それにそっちも、あの菊さん相手じゃ、あんたの身体が満足してるとは思えないしね」
「じょ、冗談じゃない!」
 お蝶は目をむいて美津を睨んだ。
「そうかい。じゃあ仕方ない、好きにするんだね。あたしはこれで……」
 美津は傘を被ると、立ちあがって三味を抱える。
 思い切ったように顔を上げるとお蝶は言った。
「もう半時もすると菊様が帰って来るんだ」
「ふふ、そうかい。じゃ、急いで待合にでも行こうよ。これはあんたの為に言ってるんだけど、大きな声を出してもいいようにさ」
 黙ってお蝶は立ち上がると前掛けを外す。
「どうしてあたしなんか……」
 お蝶の言葉を聞くと、美津は嬉しそうに呟いた。
「色事で一番おいしいのは、人のものを取ることなんだよ」
 二人の女の姿は、連れ立ってまだ午後の日差しの照りつける表へと消えた。

「ひ……、んぐううう~~~!」
 うつ伏せのお蝶の白い裸身が、まるで瘧でも付いたかのように強張った。
 ブルブルと震える尻たぶの狭間に、髷も解けて乱れた黒髪を揺らしながら、美津の顔が取り付いている。
 そのまま首を振って美津が貪り込むと、のけ反ったお蝶の頭から落ちた簪が畳の上で音を立てた。

 美津はお蝶のものから顔を上げると、尻の膨らみに白い歯を立てる。
 荒い息を吐くお蝶の身体が思い出した様にぶるっと震えた。
 美津の顔に淫らな笑みが浮かぶ。
「うっふふふ………」
 腹ばいから身を起こすと、お蝶の身体をゆっくりと転がした。
 大きく波打つ胸の上で、お蝶の豊かな乳房が弾む。
「何度気を遣ったか、覚えてるかい……?」
 お蝶は美津の声を遠くに聞いた。
「久しぶりによかっただろう? 心はともかく、忍びで覚えのあるあんたの身体は満足しちゃいなかったのさ……。なあに、恥ずかしいことでも、悪い事でもないんだよう」
 お蝶は目を閉じたまま下唇を噛んだ。
 口惜しいが美津の言う通りだった。
 二度極みに押し上げられた後は、泣きたい様な快楽に身を揉まれ続けて、もう何度気を遣ったかなど覚えてはいなかったのである。
「さあ、仕舞いはあんたと一緒にあたしも往生させてもらうよ。早くしないと、あんたの菊様に心配かけてもいけないからね。うふふ……」
 そういうと美津はお蝶の両足を開かせて、上から腰を降ろす様にして自分の両足を交差させていく。
 お蝶の左足首を掴んで、足の指を口元に引き寄せた。
「あっ……」
 小さな声を上げてお蝶の左足に震えが走った。
 足の小指と薬指の間に美津の熱い舌が滑り込んだのである。
 同時に、もうしとどに濡れそぼった美津の女のものがお蝶に吸い付いていく。
 ぶふぶふと空気のせめぎ出る音をさせながら、女同士の間から熱い露が滲みだす。
「はあ……、あうう……」
「ふうっ……、ああいい……。お蝶、あたしもこんなの久し振りだよ……」
 お蝶の背中が布団から反り上がり、美津は背筋に震えを走らせる。
「今日はお役目じゃなく、遠慮なく気を遣らせてもらうよ。お蝶、あんたもあたしの気持ちわかるだろう? ね? お蝶……」
 そう言いながら切れ長の目でお蝶を見おろすと、美津はつかんだ足の裏を白い歯で噛んだ。
 言われるままに身体を許していたお蝶であったが、微かにその目に輝きを宿すと、腰を振って下から美津の身体を揺さぶり始めたのである。

 六畳のお茶屋の一室に、焼け付く様な荒い吐息が交差していた。
 三十路の女体が湯気を立てて絡み合い、押し付け合った下半身が躍動している。
「ああ、お蝶……」
 上から美津が両手を伸ばすと、お蝶はしっかりとその両手を握り合せた。
 美津の下腹の肉を震わせるようにして、揺すり上げる腰の動きが速くなる。
「ああ……、たまらない。ああ、もう……」
 下から攻められて、美津の喘ぎに切羽詰まった響きが加わって行く。
「いいよ美津、さあ……」
「ああ……、あああもう……ああおちる!!!」
 美津の上半身がお蝶の上に崩れ落ちる。
 お蝶は美津の身体をしっかり抱くと、なおも尻を押し上げる様にして美津に競り合わせていく。
「あっああ! ………あ……くうう……!!!」
 美津の白い裸身が筋を立てて強張る。
 声も無く両手で布団を鷲掴みにしたまま、幾度も美津を極みの痙攣が襲った。
 やがて大きな息を吐きながら、ゆっくりと美津の身体から力が抜けて行く。
 お蝶はじっと目を閉じてそんな美津の重みを受け止めていた。

 姿見の前でもう一度自分を確かめると、美津はお蝶を振り返った。
「じゃあ、お蝶、あたしは先に……」
 お蝶は美津の顔に小さく頷いた。
「さっき言ったように、そこに書いてある所が奴らが現れた手がかりさ。きっとこれからも姿を見せるはずだ」
「ありがとう、恩にきるよ美津……」
 それを聞くと美津は珍しく戸惑った表情を浮かべる。
「お蝶、それはあたしの台詞だ。きょうはありがとうね。じゃあ……」
 そう言って座敷を出ようとした美津は、ふと戸襖の前で足を止めた。
「今更こんなこと言ってなんだけど、あんたもあたしも三十路半ばになる。羅紗様は知らせるなっておっしゃったそうだけど、今回の一件は……」
 口ごもった美津にお蝶は口を開く。
「死にに行くようなもんかい……?」
 美津はお蝶を振り返って静かに頷いた。
 お蝶の顔に微かな笑みが浮かぶ。
「ありがとう、美津。でも今のあたしは……、まるであん時のお通姉さんと同なじだ」
 潮が引く様にその顔から笑みが消えると、眉を吊り上げたお蝶は斜に美津を見上げた。
「今あたしが行かなきゃあ、死んだ姉さんは浮かばれないのさ」
 美津の非情な顔が緩んだ。
「ふっ……、そう言うと思った。あんたはもう忍びじゃない。好きな人と自由に生きればいい。じゃあ、達者で……」
 お蝶は襖を開けて出て行く美津の背中を黙って見送った。
元禄江戸異聞 根来(四)目次元禄江戸異聞 根来(六)



コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2015/01/29 11:40
    •  「金魚ぉ~ えー金魚ぉ~」
       聞いてりゃのんきそうですが、実際にはきつい商売のようです。夏場だけの仕事だしねえ。
       美津?
       誰だっけ。
       忘れてるなあ。
       これは早急に読み返さんとなあ『続元禄』。
       『十日室』も読まんならんし、入院のつけは大きいなあ。
       根来衆といいますと反射的に忍者と思ってしまいますが、鉄砲集団だったそうですね。で、最盛期は信長・秀吉の頃。江戸期には細々とですが存続していたようです。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2015/01/29 19:43
    •  水を入れたタライを、天秤棒でぶら下げて歩くんですからね。
       屈強な若者でなければ務まらなかったようです。
       ほかの季節には、別の物を売っていたようですね。
       金魚売りのタライの金魚は、庶民向けの並金魚でしょうが……。
       富裕層の間では、とんでもない値段で取引される金魚もいたようです。
       今のお金に換算して、1匹100万円の値段がつくこともあったとか。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2015/01/30 03:20
    • わたしには分かりませんねえ。
       高価な金魚というのは、たいがい「なんじゃこれ」と思うものばかりです。
       金魚1匹に100まんえん。狂気の沙汰としか思えません。ま、好き好きですがね。
       夜店(よみせ;縁日)の金魚すくいの水槽には、「赤いやつ(何ていうんだ?)」に混じって、真っ黒の「出目金(でいいのかなあ)」がいましたが、あの程度でもパスでした。あれは少し体がでかいから「すくい網を破るやくざ者」くらいにしか思っていませんでした。
       そういえばあの掬うやつ、網はおかしいね、なんて云うんだろう。地方によって物も違うようで、こちらでは輪っか状の針金の枠に半紙みたいなのを張ったやつでした。
       金魚の祖先は鮒。
       フナの変異体を基に、人為交配を繰り返して作出されたものですね。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2015/01/30 07:39
    •  たぶん、1度もしたことがありません。
       試さなくても、上手く出来ないのがわかってたからかも。
       金魚すくいの金魚は、色は赤いけど、形は鮒のままです。
       あれの実態は、鮒そのものですから……。
       デカくなります。
       友達の家の玄関脇に、小さな水槽がありました。
       金魚すくいで取ってきた金魚を飼ってるとのことでした。
       しかし、水が緑色に濁り、中がまったく見えません。
       友達が、じっと見てると見えるというので、睨んでいると……。
       ぼうっと、赤い色が浮かびあがりました。
       その大きさは、ほとんど水槽の端から端までありましたね。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2015/01/30 10:25
    •  それはまたなんとも。
       できる出来ないは二の次、とりあえずやりたいと、子供なら思うんでないかい。
      >水槽の端から端まで
       へえー、それはまたなんともかんとも。
      金魚って、そんなに大きくなるのか。
       金魚すくいの金魚って、すぐ死んじゃうんだよね。わたしの金魚は、秋までもったことありませんでした。
       で、死んだ金魚は庭の柿の木の根元に埋めるんだよ。墓標までは建てないけどね。んで、翌年また同じことをやる。庭の同じ場所を穿り返すんだけど、前の年のやつは骨すら残ってなかったよ。当たり前か。
      ♪赤いべべきたかわいい金魚……
       水槽の大きさがわからんけどしかし……、よくあるあの丸いやつだとしても、とんでもない大きさだな、友達の金魚。
      与太ではなかろうな。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2015/01/30 19:32
    •  「よくあるあの丸いやつ」ではありません。
       ↓これです。
      http://blog-imgs-79.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201501301629424c9.jpg
       ヒブナ(緋鮒)と云うようです。
       ↓48㎝のヒブナが釣れたという記事。
      http://animalch.net/archives/24239019.html
       ↓水槽で育ててる動画がありました。
      http://www.youtube.com/watch?v=H-X_X_4HbVs
       今、思い出しましたが、子供時代、金魚のことを……。
       “キントト”と呼んでました。
       全国的な習わしでしょうかね?

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2015/01/30 22:30
    •  金魚を掬う道具を言ってるのではありません、水槽です。全体に球形で、縁が張り出して波打って色がついてるやつのことです。
       問題文はよく読みましょう。
       水槽で育ててる動画。
       「態度もデカい」が面白かった。そうは見えなかったけど。
       ごく普通の赤い金魚は「和金(ワキン)」というそうです。
       あと、リュウキン(流金?琉金?竜金?)なんてのもいるよね。
       キントト。
       こちらでもいいますね。イントネーションは→→↑↓、アクセントは↑の位置にあります。
       「トト」は関西語(関西幼児語)で「魚」のことです。オトトなんて丁寧語もあります。“父親”のことではありません。
       徳島では父親かなあ。
       「あ~い~ ととさんの名は阿波の十郎兵衛……かかさんの名はお弓と申しますぅ~」(人形浄瑠璃『傾城阿波の鳴門、巡礼おつるのセリフ)
       昔の(調べましたら1969年)テレビドラマに『ややととさん』てのがありました(日テレ系)。
       「やや」は赤子、「ややちゃん」なんて言い方もします。転じて「小さい」。だから、ドラマのタイトルは、直訳すると「小さな魚ちゃん」ですが、「チリメンジャコ」のことですね。
       特に「京都では『小柄で、若く愛くるしく、心の優しい女性』という意味」だそうです。主演は八千草薫サン。八千草さんは、例のプール学院出身なんですね、知りませんでした。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2015/01/31 08:00
    •  金魚の形のことだと思ってました。
       水槽は、普通に四角でした。
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