Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
十日室(24)
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:*.☆。 6周年記念特別寄稿作品 。☆.*:


「十日室」作:八十八十郎(はちじゅうはちじゅうろう)


(24)


 亜希子は室の中を見回した。
「まあ……」
 排水路を流れる山水が急にその水かさを増していた。
 石積みの天端から30センチほど下だった水が、今は10センチまで水位を上げて勢いよく排水口へと流れている。
 そしてかがり火の火の粉が舞いあがる上には、不気味な暗紫色の煙が渦巻いていた。
「なんだか、恐い……」
「碧ちゃん、大丈夫よ。たぶん急に大雨が降ったせいでしょう。念の為に、今度のお祈りが済んだら扉の近くに行きましょう。その方がきっと換気もいいわ」
 亜希子は碧の不安を和らげるように、優しくその顔を覗き込んだ。

 その時突然、微かに二人の髪の毛が逆立った。
 続けて重力とは逆に身体が持ち上がる様な感覚が二人を襲う。
 碧の肩を抱き寄せて、亜希子は上を見上げた。
 暗い煙が渦を巻いて天井の排気口へ吸い上げられていく。
“ゴ……ゴリ……!”
 小さな地響きと共に重く軋む音が聞こえた。
「なに今の音……。や、山崩れかしら!」
「大丈夫よ碧ちゃん、そんな大規模なものじゃないわ。きっと外の風向きが変わったのよ」
「亜希子さん……」
「大丈夫、あたしが一緒だから。お祈りを済ませましょう、ね、碧ちゃん」
 そう言ってもう一度周囲を見回すと、亜希子は怯える碧の身体を支えて立ち上がった。


 ヘルメットのシェードを激しい雨が叩き、目の前の視界が大きく歪む。
 暗闇から突然急なカーブが現れて、思わず慶子はバイクのスロットルを緩めた。
 林道の両側から立ち上がる森の木々は、真夜中の豪雨でおどろおどろしくその姿を変えている。
“だぶだぶのズボンとサスペンダーに変えててよかったわ。もとのジーパンなら動きが取れなかったかも……。”
 目方慶子は路肩にバイクを止めてヘルメットを脱いだ。
 タオルで眼鏡を拭うと、曇り止めのスプレーをかける。
“でも八のおじさんが言ってた知らせって、この程度の事なのかしら?”
 再びヘルメットをかぶると、慶子は後輪をうねらせながらバイクを走らせ始めた。
“もう真夜中だけど、これから邪念を確かめるしかない……。”
 激しい雨音に混じって、バイクの排気音が暗い山中に消えていった。


 夜中の1時を廻っているにもかかわらず、その家の窓にはまだ煌々と明かりが灯っていた。
「どちら様ですか?」
 インターホンから抑揚のない女性の声がした。
「夜分に申し訳ありません。警察の者ですが、ちょっと危険な通報があったものですから」
 慶子は芝居を打った。
 規則上は違法な行動であったが、もう今夜から明日が山場だと判断したのだ。
「危険な通報……?」
「ええ。ここではちょっと申し上げにくいのですが……」
「…………どうぞ、お入りください」
 返事の後に門扉の電気錠が外れる音がした。

 玄関の框の上に、30代半ばの女性が慶子を待っていた。
 真夜中にも拘らず上品に髪を結い上げたその女性は、差し出した身分証明書から涼やかな視線を上げた。
「警察庁……、遅くまでご苦労様です」
「あの、村長さまは……?」
「あいにく篠崎はもう休んでおりますが、緊急のご用事でしたら起こしてまいりましょうか……?」
「いえ、それには及びません。ただ十日室の神事を妨害すると言う通報が入りましたもので、こちらにも何か変わったことがなかったかと思いまして」
「いえ、こちらには特に何も……。それに、篠崎からも何も聞いておりませんが」
「そうですか、分かりました……。あの、失礼ですが、奥様ですか?」
「ええ、妻の由紀恵です」
 そう答えたあと、女の目がゆっくりと慶子の全身を舐めた。
 その女は異常なほど落ち着いていた。
 いや、と言うより、人間的な内面の動きを感じることが出来なかった。
“家にいたのか……。”
 慶子はそう胸の内で呟いた。
“今夜半から明朝に動きがあるとすれば、怨念の主はこの女ではないのか……?”
 ふと慶子は、女の目が自分の濡れたTシャツの胸元に注がれているのに気付いた。
 誇らしく盛り上がった胸の膨らみに、濡れた黒のTシャツが張り付いていた。
「随分お濡れになって……。寒かったでしょう? どうぞ上がって少し温まって下さい」
「いえ任務がありますから、そういう訳には……」
「どうぞ遠慮なさらずに、少し温かいものをお出しするだけですよ。それにタオルで少し身体をお拭き下さい。そのままじゃ仕事にもお身体にも障りますよ」
 慶子は笑みを浮べた女の顔を見た。
 能面のようなきれいな顔に、ようやく微かな温かみを感じる。
“あたしを引きとめてる……。よし、少し様子を見るか。”
「さあどうぞ」
 村長の奥方は両膝をフロアに付いて、慶子の前にスリッパを置いた。
 ブラウスの胸元が浮いて、白い肌の上品な膨らみが垣間見える。
「有難うございます。それじゃ、少しだけ……」
 山奥の村には似合わぬコロンの匂いを嗅ぎながら、慶子は由紀恵に続いて屋敷の奥へと入って行った。

「ふう……」
 熱いコーヒーをすすりながら、慶子は大きな息を吐いた。
 由紀恵が言う通り、冷え切った身体に温かさが染み渡り、再び活力を取り戻すのに効果がありそうだった。
「どう? 少し温まりました?」
 背後から入って来た由紀恵の声に、慶子は慌てて振り返った。
「ええ、温まって、とても楽になりました」
「そう、よかった」
 目の前のソファーにゆっくりと腰を降ろす由紀恵に慶子は言った。
「十日室もあと少しですね。でもまだ碧ちゃんのこと、ご心配でしょう?」
 由紀恵は上品な細い眉を寄せた。
「ええ、最後にこんな大雨になって……。早く上がればいいんですけど」
「そうですね」
 慶子はもう少し由紀恵を押してみる。
「しかし奥様、お若いですね。とても高校生のお嬢様がいらっしゃるようには……」
 由紀恵の口元がほころんだ。
「いえ、碧は養子ですのよ。もっとも私も、その後に嫁いで来た後妻ですけど」
「まあ……。そ、それは失礼いたしました」
「いえ、どうぞお気になさらないで」
 涼しげな笑みを浮べる由紀恵の顔を、慶子はじっと見つめた。
 由紀恵の表情に全く動揺を感じる事は出来なかった。
“不審な感じはない……。でも……、でもやっぱり、何か落ち着き過ぎてる……。”
「じゃ、どうぞこちらへ。濡れたものを着替えて、乾いたタオルで身体を拭いて下さい」
「いえ、そんなこと、とんでもない」
「遠慮なさらないで、それにすぐ仕事に戻らなきゃならないんでしょう。コンディションを整えなくちゃ。フリーサイズのTシャツもありますから。さあ、こちらへ」
「あ……、お、奥様」
 立ち上がって部屋を出て行く由紀恵を目で追いながら、仕方なく慶子もその腰を上げた。

 6畳ほどのクロークに入ると、両側に壁収納の扉が並んでいた。
 由紀恵は一つのドアを開けると、中の棚からTシャツを取り出す。
「さあ、それは脱いで……」
 何故か由紀恵は小声で囁いた。
「え……こ、ここで脱ぐんですか……?」
 思わず慶子も小声で聞き返す。
「ふふ、隣の部屋で主人が寝てるのよ。じゃ、濡れたものを脱いでください」
「は、はあ……。あ、でもちょっと……」
「大きな体して気が小さいのね。さあ早く脱いで」
「え、じゃ、じゃあ……」
 慶子はバイクズボンのサスペンダーを外した。
 ズボンがずり落ちないように両膝を開いて、交差した両手でTシャツの裾を掴む。
 身体を揺すりながらTシャツを脱ぐ。
 Tシャツを脇に降ろして眼鏡を上げたとたん、由紀恵のバスタオルが身体を包んだ。
「さあ、冷えないうちに身体を拭きましょう」
「あっ、ちょちょ、奥様、自分で拭きますから。あ……」
 戸惑う慶子には構わず、由紀恵は腹筋の形さえ見える引き締まった体にタオルを使う。
「これも邪魔ね。外しちゃいましょう。じゃあなた、これ持って」
 思わず慶子がバスタオルの両端を持つと、その両脇の下から由紀恵の両手が慶子の背中に廻される。
 香しい由紀恵の髪の匂いが鼻先に漂い、背中でブラジャーのホックが外される。
「あっ、お、奥様、ちょっと……」
 戸惑った声と共に、解き放たれた慶子の乳房が誇らしげに揺れた。
 自然と由紀恵と慶子の目が合う。
 そのまま4,5秒由紀恵は慶子からその目線を外さなかった。
 慶子は背筋が震えるのを感じた。
「あら、あたしのブラウスも濡れちゃったわ。ちょっと失礼……」
 由紀恵はそう言うと、手早くブラウスのボタンを外してそれを脱ぎ去った。
 きめの細かい白い肌が露わになり、細身にうっすらと柔らかみのある肢体から女の色香が匂い立っていた。
 ちらっと眼を合わせると、そのまま目を伏せて慶子の身体にバスタオルを使い始める。

 細身で謎めいた、少し年上の女性。
 慶子にとって由紀恵は、まさに好みの女性であった。
 細いうなじから撫で肩が緩やかな曲線を描き、その下の上品な胸の膨らみにつながる。
 慶子はブラジャーを押し上げて、片手に馴染むその乳房を掴みたい衝動に駆られた。
“悔しいけど、すごくいい女だわ。”
 由紀恵の横顔をじっと見つめながら、慶子は妄想に捕らわれていった。
 荒々しく由紀恵を床に組み敷く自分の姿が見える。
 全裸の細い腰のくびれが捩れて、その下で慶子が由紀恵の股間を貪っていた。
 眉を寄せて快感に耐えながら、しどけなく開いた唇の間から白い歯が覗く。
 隣室の夫に気付かれないように、由紀恵の手が口を覆う。

「あなた、すごくいい身体ね」
 ふと由紀恵の横顔が呆然としている慶子へと向けられた。
「あ、いえ、ありがとうございます……」
「ね、下も脱いで。拭いてあげる……」
 由紀恵の妖しい眼差しが、じっと慶子の心を覗き込んでいる。
 慶子は静かに唾を呑みこんだ。
「ええ……」
 下を脱ぐことの意味は分かるような気がした。
 曲げた膝の力を緩めると、ずり落ちた緩いズボンから半分お尻が脱ぎ出る。
 ズボンを降ろそうとして前のボタンに両手をかけた時、
“は……! 知らせ……。”
 慶子はその手を止めた。

“この女、いい女だけど………やっぱり、クロだ……。”
 悪夢から覚めて、慶子はそう直感した。
 ここ数年の調査から、この女は今まで少なくとも3人の殺害に関係した疑いがあった。
 婚約者、義父、夫の死亡に対する保険金の受領。
 慶子は由紀恵の顔を見つめた。
“この土壇場にあたしを引き止めてるってことは、この女とここに居る間に事が起きるんだ。やはりこの女の邪念に結びついた別の怨念が……。”
「ねえ、早く……」
 もう由紀恵の顔は、慶子から30センチと離れていなかった。
“でも惜しいわ、この女……。”
「奥様!」
 慶子は由紀恵の身体を強く抱いた。
 荒々しくその艶やかな唇を奪う。
 唇を揺さぶりながら舌を割り込むと、ねっとりと甘い舌が絡み付いて来る。
 胸を押し付けながら由紀恵の両手が慶子の首に巻き付く。
 慶子は思わず熱い鼻息を由紀恵の頬に吹付けた。
“凄い、気が遠くなりそう……。毒があるほど美味しいってことか……。”
「奥様、ごめんなさい。もう行かなくちゃ」
 慶子は由紀恵の身体を離してそう言うと、Tシャツを掴んで玄関へと向かう。
 ブーツを履いて出て行こうとする慶子の背中に、由紀恵の声がかかった。
「お願い、まだ行かないで……」
 玄関ドアを開けたまま慶子が振り返る。
「大丈夫です、奥様。またすぐ会えますよ」
 そしてその笑顔は、土砂降りの雨音と共にドアの向こうに消えた。
十日室(23)目次十日室(25)



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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2014/11/19 20:10
    •  慶子は、警察の人間だったんですね。
       由紀恵。
       また一人、怪しい人物の登場です。
       義理の娘、碧との間には、何事も無かったんでしょうか?
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