Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
続元禄江戸異聞(三十五)
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「続元禄江戸異聞」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(三十五)


伊織は道脇の木陰で足を止めると、額に浮かぶ汗を拭った。
鈴鹿に向かう道は緩やかなつづら折りに上りながら、ふと気づけば三間に足りぬほどその道幅を狭めている。
傍らのお蝶と目を合わせると、また振りかえって見晴らしの中に姫とお通の姿を探した。
「ふう・・。」
「見当たりませんねえ・・・。」
“無事であっても、もうどこかで追い抜いているはずだ・・。”
亀山から先は、もうずっと上りが続いている。通常の姫の足では、早発ちした伊織たちより先へ進んでいるとは思えなかった。
仮に森の中を進んで来るとしても、もうそろそろ街道に近づいて、山の切れ目を土山に抜ける進路を取る位置加減なのだ。
そんな思いを巡らす伊織がふと見ると、お蝶は手ごろな岩に腰かけて緩んだ脚絆を締め直している。
山道で顔を火照らせて、十分な身仕舞も出来ぬままの黒髪が二三本耳の脇に垂れていた。
“ああ、きれいだ”と思いながら、伊織はお蝶に問いかける。
「どうだお蝶・・、少し疲れたか?」
「え・・? いいええ~、なんのこれくらいで。でも伊織様、さっきまでむっつりしてたのに、優しいのね。」
眩しげに見上げるお蝶から目を逸らすと、再び下の眺望を眺めながら伊織は言った。
「お蝶・・・、しばらく時を待った方がよさそうだ。少し手分けして、この辺りを探ってみよう。」
「ええ、あたしもそう思います。では、あたしはこの右の方を・・・。」
「よし、では私は左の方を。くれぐれも気をつけてな。」
「分かりました。では伊織様もお気をつけて・・・。」
二人は周囲に気を配りながら、各々左右の林に入って行った。


坂下の手前から北東に分け入った細い山道。
老齢の百姓が乗った一台の牛車が、藁を山積みに積んでゆっくりと進んでいる。
その藁の表面が不自然に揺れ動くと、ひょっこりとお通の頭が覗き上がった。
目だけ出して用心深く辺りの様子を窺うと、今にものんびりと歌でも歌いだしそうな爺さんに声をかける。
「暑いねこりゃどうも・・・。ねえ爺さま、今どの辺りだい・・?」
「うんだなあ・・・、あと半時もすれば峠を越えるんじゃないかのう。」
「助けて貰ってこんな事言うのも何なんだけどさあ・・、この牛、もうちっと早く走れないのかい? どうもこう暑くっちゃ、藁の中で湯だっちまうよ。」
「馬鹿言うでねえ。どこの世の中に走る牛車なぞあるもんかい。そんなもんがありゃあ、あんたたち目立って困った事になろうがの。心配せんでも、日が暮れるまでにゃあ、ちゃあんと土山まで送ってやるがの・・。」
「へえ~、そんなもんですかね。爺さん寝ぼけたみたいでも、ちゃんと考えちゃあいるんだね。亀の甲より年の功か・・。仕方ない、お姫様今大丈夫ですから、ちょっと顔を出して涼んだ方がいいですよ。」
とたんにお通の横で藁が盛り上がったかと思うと、愛らしい顔を真っ赤に上気させた羅紗姫の頭が現れた。
「ふうう~・・、ほんとに暑いこと・・。」
「姫様、辛いでしょうけど、今はこの爺様の亀の甲に頼る他ありません。土山まで、んっ!」
お通は言葉を区切るとにわかに目を見開いた。
しかしその険しい眼光が、みるみる明るい輝きに代わっていく。
“お蝶っ!”
お通は急いで指を咥えると、何やら鳥のさえずりを奏でた。
久しぶりに聞く指笛にお蝶が顔を向ける。
“あっ、ねえさん!”
遥か先の林道で、牛車の荷台に、藁を頭に載せた二つの顔が覗いていた。
お蝶は用心深く周りの様子を窺うと、牛車へ向かって走った。
「お姫様、ねえさん、無事でよかったっ!」
「お蝶さんっ!」
再会に顔を輝かせた姫であったが、すぐに伊織の安否をお蝶に問いただす。
「い、伊織さまは?」
「大丈夫、伊織さまもご無事ですよ。この下でお姫様たちを探しています。」
「はあっ、よかった・・・。」
羅紗姫はやっと胸を撫で下ろして笑みを浮かべた。
「ありゃあ、また一人、随分べっぴんが出て来たのう・・。」
「ふふ、ありがと。おじいちゃん、こんにちは。」
「あはは、爺さん、焼酎一甕で頼み込んだんだよ。年ももう八十だってのに、まだ奇麗どこに気が向くのかい・・? まったく、しょうがない爺さんだね。」
斜に爺やを見やったお通は、また呆れ顔を真顔に戻して言った。
「すぐにでも一緒にと言いたいとこだけど、もう敵も間近に迫ってるに違いないよ。あいつら、今度は遠慮なく襲って来るはずだ。四人で目立つより、あたしたちゃあ土山まで爺さんに世話になって行くことにする。ここは分かれて、今夜向こうで落ち合おう。」
「ええ、分かりました。じゃあ伊織様に伝えて、あたしたちも土山に向かいますよ。」
「ああ、気をつけて。」
お蝶はお通と羅紗姫の目を見ると、周囲を窺いながら林の中へと消えて行った。
「ありゃあ? あのべっぴんは一緒じゃないのかの・・?」
「うんっもうっ、土山に着いたら爺さんにはあたしがうんと優しくしてあげるから、さあもう、行って行って。」
「うんにゃあ、わしゃあ、あっちの方がよかったがの・・。」
思わず噴き出す羅紗姫の横で、お通はじろりと爺さんを睨むと、また呆れ顔で藁の中へと引っ込んだ。

お蝶は木立を縫って街道へと走り降りて行く。
“早く伊織様に知らせてあげなくっちゃ。”
羅紗姫たちの無事が分かった今、その足取りは自ずと飛ぶ様に軽くなっていた。
しかし、ようやく木立の間に街道が見え始めた時、
“はっ!!”
鋭く何かが風を切る音に、突然お蝶は地面に身を転がした。
翻った着物の袖を黒い矢が引き裂いた。お蝶はそのまま転がって木の陰に身を隠す。
「ほう、よく避けたね。さすがお蝶と呼ばれるだけの事はある。でも、次もそううまくいくかね・・?」
聞き覚えのある声に、お蝶は注意深く相手の居場所を探った。
と丹念に探すまでもなく、一本の木の梢から白い煙が立ち昇っているのだった。
“仲間を呼びやがった・・。”
そう唇を噛んだお蝶に、相手は追い打ちをかける様に言った。
「お蝶・・・、あんたの名前は伊織から寝物語に聞いたよ。もっともそのすぐ後にゃあ、伊織さまはあたしの腕の中でたっぷり気をお遣り遊ばしたけどねえ・・。
あっははは・・・。」
「な、何だってっ!!」
その嘲笑いにお蝶は思わず叫びを上げた。
「いい女だったねえ・・・、目に焼き付く様な身体だった。何ならもっと話して聞かせようか?」
黒麗は仲間を呼ぶ時間稼ぎをしながら、お蝶の様子を窺った。
しかしその話は、そんな意図に反するものである事に黒麗は気付いていなかった。
「ちくしょうっ!!」
お蝶は無謀にも木の陰から身を踊りださせた。怒りに目を燃え上がらせて、狼煙の上がった木に突進してくる。
慌てて黒麗はつがえた矢をお蝶に向けて放った。
ひょうと風を切った矢を、信じられぬ事にお蝶は目の先三寸で交わして木に飛び上がる。
「くそっ!」
動きの速さなら黒麗も負けていない。弓を投げ捨て、短刀片手にお蝶に襲いかかる。
上下から二人の刃物が軋んだ音を立てて噛みあった。
飛び上がったお蝶の勢いが、たちまち幹を蹴った黒麗に押し返される。
お蝶の身体が逆落としに宙に舞った。
頭が地面に落ちるかと思われた瞬間、危うく片手をついた身体が落ち葉の上に転がる。
その隙を衝いた黒麗がうつ伏せのお蝶の上に襲いかかった。
「覚悟しなっ!」
逆手に振り下された短刀を、振り向きざまに飛ばしたお蝶の右足が払いのける。
一瞬黒麗がよろけた隙に、お蝶は素早く身を起して走り出した。
「くそっ!」
血相を変えて黒麗はその後を追う。

鍛えた黒麗の足がみるみるお蝶との差を詰めていく。
もうすぐ片手が届きそうにお蝶に迫った。
黒麗が右手に持った短刀を振り上げた時、お蝶は目前の木に向かって身を飛ばした。
次の瞬間、両足で木の幹を蹴ったお蝶の身体が、逆さまに黒麗と対峙する。
二人の身体の間で、ぎらつく様な刃物の輝きが起こった。
跳ね飛ばされたお蝶が宙を舞い、地面に落ちたその身体がもんどり打って落ち葉の上に転がった。
その時黒麗は自分の身に何が起こったのか分かず、向こう向きに茫然と立ち尽くしていた。
そして自分の胸に半ば輝きを隠している刃物を見つめた。
「ち、ちくしょうっ!!」
黒麗は顔を歪めてそう叫ぶと、刺さった短刀の柄に手をかけた。
「黒麗っ!抜いてはだめですっ!!」
それは狼煙を見て駆け付けて来た赤蛇尼の声であった。
お蝶は仲間の出現に慌てて走り去って行く。
「待てっ!!」
黒麗は仲間の叫びも耳に入らぬがごとく、胸の短刀を抜き放った。
「待ちなさいっ!黒麗っ!黒麗っ!!」
黒麗は短刀を投げ捨てると、まるで不死身であるかの如く、お蝶を追って走り出したのである。
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コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2012/08/16 09:55
    • 牛車って、牛が大八でも曳いてるのか。
      べっぴんさんに目のない牛曳爺様。
      こういう爺さん、好きだよ。
      >伊織さまはあたしの腕の中でたっぷり気をお遣り遊ばした
      黒麗の挑発に逆上するお蝶。
      あーあぁ、刺しちゃったよ、短刀。
      白蝋衆vs.チーム羅紗姫、初の犠牲者か!
      待て、次回。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2012/08/16 19:31
    •  ↓は、現在も活躍する、ミャンマーの牛車。
      http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20120816103939a5b.jpg
       確かに、藁の中は暑そうですが……。
       ミャンマーだと、直射日光を浴びるよりはマシかもね。
       現在、新潟の水田で、藁束を目にすることはほとんどありません。
       稲刈りのとき、コンバインが細かく裁断し、そのまま田んぼにまき散らすんです。
       後で、トラクターで田んぼに鋤き混まれ、肥料になります。
       昔は、刈り取った稲藁は、しばらくの間、田んぼ脇に積まれてたそうです。
       昭和30年代生まれの叔父は……。
       高校時代、学校をサボって、よく稲藁の上で寝てたとか。
       秋の空が高く澄んで、寂しいような嬉しいような、妙な気分だったそうな。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2012/08/16 21:35
    • というと、どうしてもあれを思い出すのだがね。
      ほれ、二輪の、平安時代に、やんごとなきお方が乗った、あれ。
      牛車(ぎっしゃ)。
      叔父さんって、あの、車の中に肥料を零した、ナデシコ屋敷の。あの叔父さんですか?

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2012/08/17 07:26
    •  これも牛車。
      http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201208170627505fb.jpg
       牛が引くことに、変わりおまへん。
       零したのは、肥料ではなーい。
       石灰硫黄合剤という農薬です。
       わたしの雑学の先生ですが……。
       高校時代は、文学青年だったそうです。
       似合わねー。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2012/08/17 09:28
    • 文学青年に、
      似合うも似合わんも無かろうと思いますがのう
      先生には、きちんと師弟の礼をとらにゃならんぞ。
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