2013.2.9(土)
レイラにとって、この日が自分の運命が変わることになるとは思いもせず、1週間後の試合に向けてチアダンスとフォーメーションの最終確認を打ち合わせするためにフィールドに向かった。
フィールドに着いて、彼女は目を細めながら見わたし捜した。
そう、オーウェンの姿だ。
彼はQBドリルを行っていた。
パスする方向に顔を向けながら足元を見ず6つの小さい三角のポールの間をステップを踏みながら駆け巡り、練習相手にパスをするというクオーターバックの練習をしていた。
彼の入院していたブランクは思っていた以上、彼に対しダメージを与えているように見えた。
他の選手が軽やかな動作に比べ、素人のレイラが見ても“軽やか”とは言えない動作だった。
そんな彼を渋い顔でヘッドコーチのスミスは睨んでいた。
(あの動きではスタメンは無理だろう。だが、あの動きをカバーできるとしたら、サミーとのコンビネーションが以前の様に復活すれば帳消しになるのだが・・うーむ)
スミスは一方のサミーの様子を見ることにした。
彼らオフェンシブルラインの選手たちは“ワン・オン・ワン”での練習を行っていた。
1対1で向き合い対峙した選手の足元には台形をした長いブロック状の障害物が置いてあり、
ボールを持った選手は左右を好きなルートを選び相手のラインに到達しようとする、
それを防ぐ選手は、瞬時の判断で相手の選手の動く先を判断し相手を阻止するというものであった。
彼らは交代で行っていたが、いざサミーの番になると他の選手はお互いに譲り合って、相手の選手が決まらない場面がおきた。
あの一件以来、サミーはヘッドコーチからさんざん罵声を浴びていた上に、オーウェンがこともあろうに病室でレイラと良いムードになっていたという噂を耳にしていたからだ。
そんな時オーウェンが復帰してきたので彼は怒りの頂点に達していた。
練習でさえ容赦なく相手にぶつかっていたので、少なくとも2人の選手は病院に送られていたからだ。
(サミーのやつ、何があったか知らないが彼によってチームに悪い影響与えていることは確かだ。サミーも外すか・・。あの二人が以前に戻ってくれれば・・そう、オーウェンに相談してみるか。サミーに今、私が色々と言っても聞く耳を持たないだろう。ただし1週間の間に出来るか・・だな)
スミスは決断した。
彼は手を後ろに組んでゆっくりとオーウェンに向かった。
「オーウェン、ちょっと来い」
彼はオーウェンを手招いた。
呼ばれた彼はハッとした。ボスに呼ばれるのはいい知らせではないだろう。
彼は鼓動が早くなった。
「実は他でもない。オーウェン、君のことだ。
正直な話、今の君の実力ではスタメンは無理だと思う。
君自身も、それに気づいていると思う。
そこでだ、君に猶予を与えたいと思う。
サミーもご覧通りに荒れている。彼によってチームが空中分解になる恐れが出始めている。
オーウェン、君に彼を任せるから以前の君らの様にしてもらえないか。
今度の試合は君ら二人の肩にかかっていると言っても過言ではない。
期間が短いのは申し訳ないのだがオーウェン、君ならできると思い頼んでみた。後は君次第だ」
オーウェンはスタメン落ちという言葉に愕然とした。
予想はしていたのだがヘッドコーチの口からその言葉が出てきた今、その現実を受け入れるしか方法は見つからなかった。
「分かりました。ボス。やって見ます」
と覚悟したオーウェンは答えた。
「そうか。やってくれるか。私からもサミーに一言、言っておくから、あとは君に任せたぞ」
スミスはこれで一つの問題に明るい兆しが見えたと思った。
一方レイラはオーウェンの姿を一目見てからチアリーダーたちのいる部室へ向かった。
そのころにはサミーが彼女に対して異常な感情を持っていることに薄々感じ始め、公用でない限り、サミーには近付かないよう心掛けていた。
練習が一通り終わったころ、オーウェンはサミーへ近づいた。
「やあ、サミー。かなりエキサイトして練習していたようだね」と笑顔を保ちながら彼の様子を探った。
「ふん!」サミーはオーウェンを一瞥するとさらに、不機嫌になった。
「サミー、相談があるから聞いてくれ。僕も君も今の状態が続けば二人ともスタメンから外されることは間違いないと思う。
それで今日、皆が帰った後、今後のことで君と二人きりで話し合いをしたいと思う。
承知してくれるか?」
オーウェンは実のところ彼と二人きりになるのを恐れていた。
以前のようになるのが怖かった。
「分かった。ロッカー室で会おう」
と彼は一言、残し通路に消えた。
誰もいないロッカー室にオーウェンはやってきた。
時間が許す限り、一人で練習をしていたので汗を流すためシャワー室へ衣服を脱いで向かった。
シャワー室から水が流れる音が聞こえてきた。
湯気の向こうに揺らめく黒人の大きな体の男がこちらに背を向けていた。
振り返った男の顔を見てオーウェンはギョッとした。
サミーだった。
レイラはいったん家に帰ったものの、再びフットボール場へ戻ることにした。
大事なものがバッグの中に無かったからだ。
部室に忘れてきたらしい。私らしくないな。
と思いながら駐車場に来ると一台の車が見えた。オーウェンの車だった。
それを見た彼女は彼に会いたくなり急いで部室に向かい忘れ物を見つけてから彼がいるだろうと思われるロッカー室へ向かうことにした。
ただこの時彼女はもう一台の車の存在を見落としていた。
ときめきながら彼女はロッカー室のドアを押し開けた。
本来ならば女性は入ることは出来ないのだがオーウェン一人だけだと思い込んで彼女にそうさせた。
奥に行くに従い聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「サミー、分かってくれ! 君にもわかるだろ?」
「いや! 分からない! 俺という男がいるのに、あの忌々しい女の尻を抱え込んでいるのがムカつく」
レイラは、来たことに後悔をした。
オーウェンだけではなかったからだ。
踵を返して帰ろうとしたところ怒鳴り声が聞こえてきた。
レイラは彼らから見えない位置に体をずらし様子をうかがうことにした。
ゆっくりとロッカーの隙間から覗いた。
彼女は悲鳴を上げそうになった。
腰にタオルを巻いたオーウェンとサミーが取っ組み合いをしていたからだ。
サミーにとってオーウェンは赤子の手をひねるほどたやすい存在で、彼の左手はオーウェンの胸を押し右手は顎を掴んでロッカーへ彼を押し付けた。
彼女は飛び出していこうと思った矢先、サミーの予想しない行動に身がすくんだ。
オーウェンの掴んだ顎を無理やり上向かせ、彼に口づけをしたのだ。
オーウェンは嫌がって顔を振り解こうとするものの、彼の力に圧倒されていた。
オーウェンの顔から離すとサミーは体全体を彼に押し付け左手で彼のタオルをはぎ取った。
オーウェンの顎を右手で掴み押し上げたまま、サミーは頭を彼の体を押し付けながら膝を折り曲げて行った。
オーウェンの垂れ下がっているコックをこともあろうにサミーは口に含みしゃぶり始めた。
「や、やめてくれー! サミー!」
必死の形相でサミーの頭を両手で押し離そうと試みているが微動だにしないサミーの頭はオーウェンの下腹部で揺れていた。
「お願いだ! サミー、僕を離してくれ!」
サミーは聞こえないかのように彼のコックをしゃぶり続けた。
レイラは助けられない自分に絶望感が広がり始めたころ、オーウェンの様子に変化が表れ始めた。
彼の垂れていたコックが徐々に首をもたげ始めていたからだ。
それに伴い、サミーを押し離そうとしていた彼の腕の力が徐々に抜け、サミーの短く切った頭を撫で始めていた。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2013/02/09 17:55
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サミーくんって、えーっ、そうだったん!!
んじゃ、オーウェンにイラついていたのは、レイラを取られた怨みというよりも、逆か!
レイラにオーウェンを奪われた嫉妬ぉぉぉ!
ま、向こうじゃけっこう多いとは聞くけどね。
うーむむむむ。
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2. Mikiko- 2013/02/09 19:58
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ハードゲイの世界ですね。
ご興味がおありの方は、↓こちらへ。
http://satomitsu.com/gayartnavi/
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3. ハーレクイン- 2013/02/09 20:42
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やめときゃいいのに、怖いもの見たさで覗いちゃいましたよ。
あれはいつ頃やったかなあ。
まだ結婚する前、大学はもう出てたかな。
そのころ、ストリップに凝ってまして、ま、ちょこちょこ見に行ってました。
ある年の正月、暇を持て余して覗きに行ったところ、なんと「ゲイ特集」。んなもん見とないわ。
なら帰りゃええのに「一本くらい女の子のもあるやろ」とスケベ心を出して入っちゃいましたよ。
そしたら、出てくるのが男ばっかし(せやから「ゲイ特集」って)。中には3人プレイなんてのまでありました。
高い正月料金取られて、見たくもない野郎どもの絡みをたっぷり見せられて帰宅しました。あとにも先にも、“黒黒”を実物で見たのはその時だけです。未だにその時の映像!が脳裏に……。忘れたーい。
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4. マッチロック- 2013/02/09 21:28
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ハーレクインさん
正直、このページに対しハーレクインさんから
「わしやったら、このコーナーで、そんなとこ恐ろしゅうて、よう書けへんわ」
または
「自分凄いなぁ。わては、そないなこと、よう書けへんわ」
と言われるかと正直、ビクビクしておりました。
意外と受け入れていることにホッとしております。
Mikikoさん
ハードゲイの世界は興味ないです。
すみません。
ただ、今興味があるのは・・・・・・です。
(・・・・・・は御想像にお任せします)
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5. ハーレクイン- 2013/02/09 21:52
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困ったなあ。
どないお答えしてええもんやら。
ま、とりあえず。
個人的にははっきり言って、パ~~~~~~~~~~ッス!
「なにが悲しゅうて男の絡み読まんならんねん」ですがね。
しかし今の段階は、将来の「凄絶なビアン」に至る女装、じゃなくて助走だと、そう捉えることにしております。
Mikiko’s Roomファンの一人としましては、「管理人さんが何も言わはらへんもんを、わたしなどが口出す筋合いやない」てとこですかね。
で、こんなこと言うたら誠に失礼ですが、まさかここまで書けるお人やとは思てませんでした。
今後も力いっぱいの力作(「力」を「力作」に被せるでねえ!)を読ませて下さいませませ。
一緒に、Mikiko’s Roomを盛り上げていきマッチロックショー。
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6. Mikiko- 2013/02/09 22:31
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今はいいですが……。
夏場は避けて欲しいですね。
モロキューが不味くなりますから。