2015.4.18(土)
由美は衣類を抱えたまま、ファンシーケースに飛びこんだ。
ケース前面のファスナーを引き上げる。
しかし、ファスナーはケースの外側に付いているので、途中までしか上げられなかった。
由美は、ケース前面のビニールを頭上で合わせた。
手で押さえているしか無かった。
扉が開いたのは、その時だった。
合わせたファスナーの隙間からは、部屋の中が見通せた。
入って来たのは、やはり千穂だった。
千穂は扉を開け放ったまま、部屋中央まで歩みを進めた。
「由美さん、いない?」
由美のサンダルは厨房口に脱いであるので、由美が戻っていることはわかっているのだろう。
何かの用で、探しているのかも知れない。
しかし……。
全裸のまま現れるわけにはいかなかった。
ファンシーケースは、手で押さえていなければ開いてしまうので……。
中で服を着ることもままならない。
「変ね。
窓が開いてる……」
千穂が、窓際に歩み寄った。
しかし、すぐに閉めようとはしなかった。
ひとりでに開いたとでも思ったのだろうか、窓枠に手を掛け、首をひねっている。
異常が見つからないので、窓の外側を確かめようとしたのだろう……。
千穂は、窓から顔を出した。
一瞬、下を向いた千穂の顔が、そのまま固まった。
「うそ……」
間違いなく、男はまだ下で寝ているのだ。
しかも、陰茎を勃起させたまま。
千穂の上体が、すうっと起ちあがった。
そのまま窓に背を向け、開いたままの扉に向かった。
警察にでも連絡するつもりだろうか。
いずれにしろ、ここからは脱出できそうだ。
しかし……。
扉の前まで歩んだ千穂だったが、扉を抜けて出ようとはしなかった。
逆だった。
開いていた扉が、千穂によって閉ざされた。
小さな金属音が立った。
アーム式のバーを回転させ、錠を下ろしたらしい。
どういうつもりだろう。
由美は、焦れるような思いだった。
ファンシーケースの中には熱が籠もり、全裸でいても汗が流れた。
ケース前面のファスナーを引き上げる。
しかし、ファスナーはケースの外側に付いているので、途中までしか上げられなかった。
由美は、ケース前面のビニールを頭上で合わせた。
手で押さえているしか無かった。
扉が開いたのは、その時だった。
合わせたファスナーの隙間からは、部屋の中が見通せた。
入って来たのは、やはり千穂だった。
千穂は扉を開け放ったまま、部屋中央まで歩みを進めた。
「由美さん、いない?」
由美のサンダルは厨房口に脱いであるので、由美が戻っていることはわかっているのだろう。
何かの用で、探しているのかも知れない。
しかし……。
全裸のまま現れるわけにはいかなかった。
ファンシーケースは、手で押さえていなければ開いてしまうので……。
中で服を着ることもままならない。
「変ね。
窓が開いてる……」
千穂が、窓際に歩み寄った。
しかし、すぐに閉めようとはしなかった。
ひとりでに開いたとでも思ったのだろうか、窓枠に手を掛け、首をひねっている。
異常が見つからないので、窓の外側を確かめようとしたのだろう……。
千穂は、窓から顔を出した。
一瞬、下を向いた千穂の顔が、そのまま固まった。
「うそ……」
間違いなく、男はまだ下で寝ているのだ。
しかも、陰茎を勃起させたまま。
千穂の上体が、すうっと起ちあがった。
そのまま窓に背を向け、開いたままの扉に向かった。
警察にでも連絡するつもりだろうか。
いずれにしろ、ここからは脱出できそうだ。
しかし……。
扉の前まで歩んだ千穂だったが、扉を抜けて出ようとはしなかった。
逆だった。
開いていた扉が、千穂によって閉ざされた。
小さな金属音が立った。
アーム式のバーを回転させ、錠を下ろしたらしい。
どういうつもりだろう。
由美は、焦れるような思いだった。
ファンシーケースの中には熱が籠もり、全裸でいても汗が流れた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2015/04/18 08:07
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み「でも……」
律「でも、何よ?」
み「やっぱり、秋はもの寂しい」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201504121900470d2.jpg
律「なに、乙女みたいなこと言ってるの」
み「太平洋側の人はいいんです。
わたしも東京にいたときは、ぜんぜん寂しくなかったもの」
律「どうして?」
み「秋来たりなば、冬遠からじ」
律「それは、“冬来たりなば”でしょ」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190045096.jpg
↑詩の一節だったとは知りませなんだ。
み「その格言は、すべての季節に言えるわけじゃない」
律「そりゃそうだけど」
み「秋は、まさしく冬を待つ季節。
新潟もそうだけど、東北の日本海側には、辛い季節がそこまで来てるの」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190048b96.jpg
↑冬の新潟市。雪の『古町(ふるまち)』界隈。わたしは小さいころ、“雪の降る町”だと思ってました。
律「冬は、太平洋側にも来るじゃない」
み「お天気がいいじゃないの。
雪が降らないでしょ」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2015041219011058b.jpg
律「だから?」
み「気分がぜんぜん違うってこと。
わたしは、東京にいたころ、秋になるとウキウキしたもの。
もうじき、大好きな冬が来るって。
で、ある朝、窓を開けると……。
匂いがするのよ」
律「秋刀魚を焼く臭いね」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190116e2e.jpg
↑東京都目黒区の『SUNまつり』。
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2. Mikiko- 2015/04/18 08:08
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み「違うわ!
どうしてそう、即物的かね」
律「医者だからよ。
秋刀魚じゃなければ、何の臭いよ?
あ、わかった。
銀杏の臭いでしょ。
あれだけは、ちょっとね」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190044532.jpg
み「せめて、金木犀とか言えないもんですかね」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2015041219004354e.jpg
律「だから、何なのよ?」
み「冬の匂いです」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190111443.jpg
↑これは、“冬の臭い”。
律「は?」
み「キンと冷えた空気の匂い」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201504121901136fa.jpg
律「さっぱりわからないわ」
み「鼻が詰まってるんじゃないのか?」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150412190114828.jpg
↑ティッシュケースです。
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3. ハーレクイン- 2015/04/18 09:58
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入り口を施錠する千穂さん。
ファンシーケース内、全裸なのに汗まみれの由美ちゃん。
戸外、窓の下には農協勃起男。
季節は真夏、時は午後(かな?)。
現場は千穂の千葉民宿(あ、逆や)。
さあ、何が始まる。
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4. ハーレクイン- 2015/04/18 10:17
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>西風に寄せる頌歌」
の、」が、返り点のレ点に見えた。
「冬来たりなば If winter comes……」がシェリーだとはわたしも知りませんでした。ことわざだと思ってた。
シェリーはもちろん、18世紀末から19世紀にかけて活躍した英国の詩人。
後妻のメアリ・シェリーは、かの名作『フランケンシュタイン』の作者ですね。後妻というよりも、下世話な言い方ですが「浮気の末の駆け落ち相手」ですね。
>古町は“雪の降る町”
違いない。
♪雪のふるまちを
雪のふるまちを
想い出だけが通りすぎて行く……
ようやく雪も終わりましたね。
目黒区の『SUNまつり』。
「秋刀魚は目黒に限る」。
>み「せめて、金木犀とか言えないもんですかね」
『君のひとみは10000ボルト』
作詞:谷村新司
作曲:堀内孝雄
歌唱:堀内孝雄
♪鳶色の瞳に誘惑のかげり
金木犀の咲く道を……
>キンと冷えた空気
寒いのは分かるけど、「匂い」まではなあ……。
「鼻が詰まってる」。
そりゃ、寒いからなあ。
走ってる電車は何だろう。
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5. Mikiko- 2015/04/18 13:01
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↓この歌が思い出されます。
http://www.youtube.com/watch?v=myIG9PEwXZw
朝ドラのヒロインは、エリーでしたね。
本日、ウィスキーの『竹鶴(安いやつ)』を買ってきて、ただいま試飲しております。
心なしか、美味しいです。
金木犀。
新潟では、冬の寒風に晒されると傷んでしまいます。
冬は、寒冷紗で巻いた方がいいですね。
わが家にも、1本植えようかな。
東京の冬の匂いは、ぜったいにありますよ。
大好きな匂いでした。
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6. ハーレクイン- 2015/04/18 15:28
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シェリー酒。
白ワインの一種ということですが、ワインよりアルコール度数が高い。発酵終了後にアルコールを添加するそうです(アル添かい)。
一説によると、ちんちんの機能を低下させるとか(参考文献:『ゴルゴ13』、タイトルと話の内容は失念)。
>ヒロインは、エリー
これの放映中、わたしは入院していましたので、まったく見ておりませぬ。今のも、はじめの2,3回は見たんだけど、根気が続かず撤退しました。
『いとしのエリー』はサザン。
♪エリー My love so sweet……
金木犀。
その昔(どの昔や)、臭いよけに厠の裏によく植えられたとか。
この香り(厠じゃなく金木犀)は、ほんとに独特のものです。一発で覚えますね。
東京の冬の匂い。
どんなだろう。
五感のうち、最も説明が難しいのが「匂い」でしょうね。何かよく知られた匂いに例えるしかないのでしょうか。
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7. Mikiko- 2015/04/18 18:50
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1年の内、2週間くらいしか効かないではないか。
しかし……。
金木犀と厠の臭い。
混ざったら、濃厚すぎませぬか?
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8. ハーレクイン- 2015/04/18 21:34
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市販のトイレ用芳香剤も、けっこうな匂いの物がありますね。芳香「消臭」剤、というのがよく売れるそうです。
「金木犀の香り」と謳ったものはあるのかなあ。
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9. Mikiko- 2015/04/19 08:05
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うちのトイレは、まだ汲み取りでした。
イチゴの匂いの芳香剤を入れたら、吐き気を催す臭いが合成され……。
ただちに撤去されました。
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10. ハーレクイン- 2015/04/19 11:53
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イチゴ味、じゃなくて匂いの芳香剤はないやろ。やはり素直にレモン、オレンジ、シトラスなど柑橘系でしょう。
でなきゃ無臭。「ムシューダ」という秀逸な名前の製品があります。
あ、あれは防虫剤か。