2015.3.29(日)
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由美と美弥子は、連れ立って夕食の買い出しに出かけた。
と言っても、メインとなる魚介類は、すでに宿の生け簀に泳いでいる。
由美たちが調達するのは、付け合せのサラダなどの惣菜だ。
地元の商店街を覗きながらの買い物は、半分息抜きのような楽しい時間だった。
相変わらずの酷暑続きで、歩いているだけで汗が頬を伝う。
しかし、すでに由美たちは、その汗を気にしなくなっていた。
もちろん、ノーメイクだ。
メイクもせず、汗を流しながら歩くなど、東京では考えられなかったことだ。
こういう人生もあるのだ。
このバイトのおかげで、行く手の視野が拡がった気がする。
叔母に感謝しなければ。
由美は、美弥子と顔を見合わせながら、そう思った。
宿に着き、買い物袋を手に下げたまま、厨房脇の裏口に回ろうとした。
すると、宿の玄関から男が出てきた。
男ということは、客ではありえない。
白のカッターシャツに、グレーのスラックスという姿は、観光客でも無いだろう。
まだ若い男だった。
由美たちと擦れ違うとき、男は、ちらりとこちらを見た。
由美が思わず頭を下げると、男は頷く程度の会釈を返した。
しかし、目は逸らしたままだった。
お世辞にも、明朗な青年には見えなかった。
「おかえり」
千穂が、宿の玄関から出てきた。
おそらく、今の男と玄関先で話していたのだろう。
「暑かったでしょ。
いいお惣菜、見つかった?」
「ええ。
今の方、どなたです?」
「あぁ。
農協の人。
積み立てに、もう一口入ってくれって。
そんな余裕ないって、何度も断ってるのに」
「えー。
営業の人だったんですか」
「そうは見えないでしょ。
だから、成績も芳しくないみたいなの」
「でしょうね。
すれ違う相手に、笑顔も見せないんじゃ。
まず、態度から改めなきゃダメです」
「由美ちゃん、偉そう」
「へへ。
ちょっと言い過ぎ?」
「いいのよ。
ほんとのことなんだから」
由美と美弥子は、連れ立って夕食の買い出しに出かけた。
と言っても、メインとなる魚介類は、すでに宿の生け簀に泳いでいる。
由美たちが調達するのは、付け合せのサラダなどの惣菜だ。
地元の商店街を覗きながらの買い物は、半分息抜きのような楽しい時間だった。
相変わらずの酷暑続きで、歩いているだけで汗が頬を伝う。
しかし、すでに由美たちは、その汗を気にしなくなっていた。
もちろん、ノーメイクだ。
メイクもせず、汗を流しながら歩くなど、東京では考えられなかったことだ。
こういう人生もあるのだ。
このバイトのおかげで、行く手の視野が拡がった気がする。
叔母に感謝しなければ。
由美は、美弥子と顔を見合わせながら、そう思った。
宿に着き、買い物袋を手に下げたまま、厨房脇の裏口に回ろうとした。
すると、宿の玄関から男が出てきた。
男ということは、客ではありえない。
白のカッターシャツに、グレーのスラックスという姿は、観光客でも無いだろう。
まだ若い男だった。
由美たちと擦れ違うとき、男は、ちらりとこちらを見た。
由美が思わず頭を下げると、男は頷く程度の会釈を返した。
しかし、目は逸らしたままだった。
お世辞にも、明朗な青年には見えなかった。
「おかえり」
千穂が、宿の玄関から出てきた。
おそらく、今の男と玄関先で話していたのだろう。
「暑かったでしょ。
いいお惣菜、見つかった?」
「ええ。
今の方、どなたです?」
「あぁ。
農協の人。
積み立てに、もう一口入ってくれって。
そんな余裕ないって、何度も断ってるのに」
「えー。
営業の人だったんですか」
「そうは見えないでしょ。
だから、成績も芳しくないみたいなの」
「でしょうね。
すれ違う相手に、笑顔も見せないんじゃ。
まず、態度から改めなきゃダメです」
「由美ちゃん、偉そう」
「へへ。
ちょっと言い過ぎ?」
「いいのよ。
ほんとのことなんだから」
コメント一覧
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1. Mikiko- 2015/03/29 07:58
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律「6メートルのうち……。
空腸が、5分の2、回腸が、5分の3よ」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2015032507515528e.jpg
み「なんで、いきなり分数になるのよ」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200301d4d.jpg
↑なぜ、こうなる……。
み「6メートルの5分の2ってことは、2.4メートルじゃない。
2.4メートルと3.6メートルって言えばいいでしょ」
律「だいたいでいいの。
そもそも、空腸と回腸には、明確な境界は存在しないんだから」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200241ee2.jpg
↑カフェの脇を通る国境線。右がベルギー、左がオランダ。
み「なんじゃそりゃ!」
律「小腸の中で、少し太くて腸壁が厚い部分を空腸って呼ぶの。
連続してるわけだから、ここまでが空腸っていう、明確な位置は無いのよ」
み「スッキリせんのぅ。
“くう腸”の“くう”って、どんな字を書くの?」
律「空っぽの“空”」
み「“空海”の“空”ではないか」
律「ここは、食物が早く通過するから、内部が空っぽの場合が多いのよ」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200242f48.jpg
↑千仏鍾乳洞(福岡県北九州市)。国の天然記念物(昭和10年指定)。洞内は、四季を通じて気温16度、水温14度。
律「だから、空腸」
み「回腸は、聞かずともわかるな。
“空海”の“海”ではなく……。
回虫の“回”で、回腸でしょ?」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200236caf.jpg
↑絶対に見たくないシーン。薬を飲ませると、こう出るようです。
み「ここに回虫がいるから回腸」
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2. Mikiko- 2015/03/29 07:59
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律「ま、確かに回虫は、回腸にいることもあるわ。
でも、回虫の語源は、回腸にいるからじゃないの?」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200238148.gif
↑イメージです。
み「じゃ、何の“回”よ?」
律「回遊の回ね」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201503262002391b4.jpg
↑対馬海流に乗って佐渡近くを通過するマグロ。
律「回虫は、体中を回遊するの」
み「にゃにー。
回虫の胎内巡りってこと?」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200300221.jpg
↑京都清水寺は、舞台だけではありません。本堂地下には、こんなディープなスポットも。
律「ま、そうね。
まず、回虫の雌が、1日にどれくらい卵を産むか知ってる?」
み「知るわけおままへんがな。
100個くらい?」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200303301.jpg
↑北海道上川郡比布町『大熊養鶏場』産。熊が産んだ卵ではありません。
律「桁が違います。
1日最大、25万個と云われてます」
http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150326200258ed9.jpg
↑テムズ川を埋め尽くす25万個の青いアヒル。募金集めのイベントだそうです。
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2015/03/29 10:07
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千穂民宿のエピソードは、まだ続くようです。
なんと、胡乱な若い男の登場。
男は嫌だなあ。わたしだって、男を書くときはほんとに嫌なんだよ。
でも、しょうがないよね。人類の半分は男なんだから。
しかし、ほんとに農協の職員なのかね。怪しそー。
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4. ハーレクイン- 2015/03/29 10:13
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分数の割り算は、ひっくり返して掛ける。
なぜか。
これを説明できればノーベル数学賞だよ(ない無いそんなの)。
ベルギーの漢字表記は「白耳義」、略記は「白」。オランダは「和蘭、または和蘭陀」、略記はご存知「蘭」。ということで、ベルギーとオランダの国境線は“白蘭国境”といいます(いわんいわん)。
筒井康隆に(またかい)『国境線は遠かった』というドタバタ短編があります。
からっぽだから「空腸」。なんか当たり前すぎて有難味が無いなあ「千仏鍾乳洞」さん。
分類学上、回虫くんは……あ、フライングの可能性があるな、じしゅく自粛。
それにしても、現在「み」「律」コンビは、朝の食事中のはずだよね。こんな話をしながらよく食べれるなあ。
25万個のアヒルって……オモチャだよね。
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5. Mikiko- 2015/03/29 12:11
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捜査会議の場面なんか、男ばっかりだったではないか。
分数の割り算。
↓説明されてます。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n64021
さっぱりわかりませんが。
回虫の話は、少し続きます。
食事しながらは読まないでください。
アヒル。
おもちゃだから、“個”なんです。
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6. ミーヤ- 2015/03/29 16:20
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大きな回虫を美弥子さんのショーツの中に放して ムズムズしてもらいながら 外出デートしたい
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7. ハーレクイン- 2015/03/29 17:51
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ヤル場面です。
金輪際書きとないんですが、『アイリス』を締め括るには書くしかないんですね。ラストシーンと、そこに至る過程はもう決まっていますから。
しかしよく考えたら……もう書いてるんだよね、男女の交合シーン。しかも2回も。
一つは#37。舞台は鞍馬の料亭「かわふ路」。あやめの兄健三と、兄嫁潔子がヤリまくるシーンです。
それと#51。「花よ志」女将志摩子と、狂犬源蔵とのシーンですね。
そうかあ、書いてるんや(ええかげんなやつ)。
ひっくり返る分数。
解説記事、読みましたが(途中までですが)失礼ながら説明になってませんね。
「なぜひっくり返るのか」を心の底から納得するには、そもそも「分数とは何者なのか」の理解が必要です。これは大変ですよ。
只者じゃないんですよ、分数くんというやつは。もちろんわたしには、説明できません。
回虫くん。
しゃべりたいなあ。でもしゃべれないんだなあ。
そういえば昔「弁士、注意!」→「弁士、中止!」→「解散!!」ってのがあったよね。
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8. Mikiko- 2015/03/29 18:26
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> ミーヤさん
むむ。
スゴい嗜好をお持ちですね。
回虫くんたちは、あらゆる穴から入りこもうとするんじゃないですかね。
さすがに、その描写はできかねます。
> ハーレクインさん
解説記事、途中まではわかりそうな気がしたんですが……。
通分のあたりから、さっぱりわからなくなりました。
分数は、社会に出てからも有用ではありますが……。
分数の割り算だけは、生涯、使う用事は無いでしょう。
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9. ハーレクイン- 2015/03/30 10:55
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塾の授業でもね、「やり方」は教えるけど、分数で割ることの「意味」は教えないです。ていうか“教えられない”です。
本当は「意味」が大事なんだけどね。でも、「やり方」さえ知っていれば、入試には十分だからなあ。