2014.10.22(水)
細い園路の両脇から、アベリアが猛るように茂っていた。
剪定などは、ほとんど成されていないようだ。
園路は緩やかな曲線を描いているため、先が見通せなかった。
ようやく繁みが切れたところに、トイレが現れた。
しかし、由美の脚は、そこで止まった。
人がいたのだ。
しかも2人。
トイレの前には、入口の目隠しとして、コンクリートの衝立が立っている。
2人は、その衝立の前にしゃがんでいた。
そこは、大きく葉を茂らせたケヤキの陰になり、日差しも当たらなかった。
カビで黒ずんだ衝立をバックに、白い煙が上がっていた。
タバコの煙だ。
しゃがんでいる2人が、タバコを吸っているのだ。
2人とも、女性だった。
いや。
少女と言うべきかも知れない。
おそらく、高校生だろう。
夏休みに入って染めたのか、1人の髪は金髪。
もう1人は、緑だった。
由美は、すぐに踵を返そうとしたが……。
遅かったようだ。
金髪の方と目が合ってしまった。
眉間に皺を寄せ、口元を歪めている。
悪ぶった表情を作っているのは明らかだったが、普通の女性を脅すには十分かも知れない。
しかし由美は、害意を露わにした表情には慣れていた。
高校時代、拳法の試合では、こんな表情で襲い掛かってくる相手が大勢いたからだ。
もっとも、そういう相手は、顔ほど怖くはない。
怖いのは、頬の筋肉が溶けたような無表情な相手だった。
「何見てんだよ」
金髪の少女が、視線を斜に斬りあげながら吐き出した。
「別に……」
由美は視線を外し、園路を戻ろうと振り帰った。
「待てよ」
背中から聞こえた声は、位置が上がっていた。
少女が起ったのだろう。
由美はその声を無視し、歩き出そうとした。
たとえ追ってこられても、エスパドリーユなら逃げ切れる。
剪定などは、ほとんど成されていないようだ。
園路は緩やかな曲線を描いているため、先が見通せなかった。
ようやく繁みが切れたところに、トイレが現れた。
しかし、由美の脚は、そこで止まった。
人がいたのだ。
しかも2人。
トイレの前には、入口の目隠しとして、コンクリートの衝立が立っている。
2人は、その衝立の前にしゃがんでいた。
そこは、大きく葉を茂らせたケヤキの陰になり、日差しも当たらなかった。
カビで黒ずんだ衝立をバックに、白い煙が上がっていた。
タバコの煙だ。
しゃがんでいる2人が、タバコを吸っているのだ。
2人とも、女性だった。
いや。
少女と言うべきかも知れない。
おそらく、高校生だろう。
夏休みに入って染めたのか、1人の髪は金髪。
もう1人は、緑だった。
由美は、すぐに踵を返そうとしたが……。
遅かったようだ。
金髪の方と目が合ってしまった。
眉間に皺を寄せ、口元を歪めている。
悪ぶった表情を作っているのは明らかだったが、普通の女性を脅すには十分かも知れない。
しかし由美は、害意を露わにした表情には慣れていた。
高校時代、拳法の試合では、こんな表情で襲い掛かってくる相手が大勢いたからだ。
もっとも、そういう相手は、顔ほど怖くはない。
怖いのは、頬の筋肉が溶けたような無表情な相手だった。
「何見てんだよ」
金髪の少女が、視線を斜に斬りあげながら吐き出した。
「別に……」
由美は視線を外し、園路を戻ろうと振り帰った。
「待てよ」
背中から聞こえた声は、位置が上がっていた。
少女が起ったのだろう。
由美はその声を無視し、歩き出そうとした。
たとえ追ってこられても、エスパドリーユなら逃げ切れる。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2014/10/22 07:23
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律「どうやって払うつもり?
東京まで持ってくるの?」
み「アホ言いなさんな。
振り込みますよ。
ただし、手数料差っ引きでね」
律「何よそれ。
手数料くらい、自分で持ちなさいよ」
み「手数料引かれるのが嫌なら、集金に来てちょうだい」
律「新潟まで集金に行けるわけないでしょ」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141017074645600.jpg
↑1957(昭和32)年公開。原作は、井伏鱒二の同名小説。
み「だから、支払い方がその手間を省いてやってるわけだから……。
手数料引かれて当たり前なの。
それなのに!
最近の取引業者は、バカが多くて……。
『手数料は、お客さまの負担でお願いします』なんて、平気で書いてくる。
これは、失礼極まりないことなのよ。
『引かれるのが嫌なら、集金に来い!』って話よ。
先生、何銀行?」
律「茗荷銀行だけど」
み「あ、その支店なら新潟にもあるから、そこのATMから振り込んであげる。
3万円未満だから、手数料は324円だね。
振込金額は、8,980円÷2-324円で、4,166円になります」
律「納得できません。
現金で貰えば、324円引かれる必要なんてないじゃないの。
やっぱり、今払ってよ」
み「心底、ケチだね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201107292005564db.jpg
律「だって、銀行にみすみす324円取られる必要はないじゃないの」
み「さすれば、集金に来たまえ」
律「寝こんだあと、財布から抜いてやる」
み「あのな。
それは、れっきとしたドロボーですぞ」
http://blog-imgs-36.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011041710353799a.jpg
み「あ、そろそろ、いい時間になってきた。
なんとか広場に行ってみよ」
律「ごまかすんだから」
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2. Mikiko- 2014/10/22 07:24
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http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141017074643e00.jpg
↑中央に聳える樹木は、ドイツトウヒ。冬には、イルミネーションで彩られます。
律「さすがにもう、暗くなると冷えるわね」
み「そうだね。
やっぱり、お風呂入らないで正解だったな」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20120506094726e0c.jpg
み「湯冷めするとこだよ。
今夜は、地酒の熱燗かな」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2014101707464680e.jpg
律「ここのお店も、もう開いてるわね」
み「どんなお店があるのかな?」
律「ちょっと探検してみようか」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201410170746411c0.jpg
み「お~。
いい匂い」
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2015/01/06 16:43
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〔由美美弥〕1610回
なるほど
こうつながるのか。
で、この後、女教師に憑依された由美ちゃんの大立ち回り……と、こういうことだな。
〔東北〕988回
『集金旅行』。
井伏鱒二にそんなのあるのか、知らなんだ。
茗荷銀行。
そんなのないない。冥加銀行はあったりして(ないって)。
茗荷郵便局はあります。所在地は奈良市茗荷町。
ドイツトウヒはオウシュウトウヒ(欧州唐檜)、ヨーロッパトウヒとも。
モミと同様、クリスマスツリーに使われますが、いかんせん樹高が高い。50mに達するものもあるとか。飾り付けが大変だよな。
サル(もちろんニホンザル)と混浴する若い女性(若いよな)。こういう時のショートカット、いいね。ロングだと興ざめだよな。