2014.10.8(水)
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帰省する美弥子を東京駅に見送った由美は、ひとり美弥子のマンションに戻った。
夏休みの後半は、2人のために使うことに決めてあった。
そのためには、夏休みの前半に、帰省と宿題を済ませておかねばならない。
もちろん、由美も帰省するつもりだったが……。
懐かしい故郷の空気に包まれたら、なんだか宿題が出来なくなってしまいそうだった。
東京にいるうちに、少しでも進めておきたかった。
もちろん、すべて終わらせて帰るということは不可能だろう。
帰省してからも、続きはやらなければならない。
でも、手を付けてあるのとないのとでは、向こうで教科書を開くときの士気が違ってくるはずだ。
そこで美弥子に頼んで、部屋を使わせてもらうことにしたのだった。
もちろん、自分の学生マンションに戻ってもいいのだが……。
大方の学生は帰省してしまっており、あそこにいると、なんだか取り残された気がするのだ。
最上階のカフェテラスも、夏休みの休業に入ってしまっていた。
マンションの最寄り駅で降り、日盛りの商店街を歩く。
平日の昼間ということもあるのだろうが、人はみな、屋根の下に逃げこんでいるようだ。
商店街の幟は、そよとも動かない。
街路には、日傘がまばらに散っているだけだった。
由美は、美弥子と出会ったころの雨の季節を思い出していた。
あのころは、街を雨傘が覆っていた。
そして由美はひとりだった。
美弥子はまだ遠い存在で……。
由美は毎日、赤い傘を差して、ひとり通っていたのだ。
由美の胸に、鳥の翳が射すように、寂しさがよぎった。
この街には今、美弥子がいない。
自ら望んだこととはいえ、置いて行かれた思いを拭えなかった。
うっかりすると泣いてしまいそうだった。
この気持に流されたら、自分もこのまま故郷に逃げ帰りかねない。
もちろん両親は喜ぶだろうが……。
高校まで過ごしたあの部屋で、宿題をバリバリこなせる気はしなかった。
由美は背筋を伸ばし、歩幅を広げた。
日傘の柄を、トーチのようにかかげる。
踵が一直線の線上に下りるよう、歩みを進める。
いわゆるモデルウォークだ。
副業でモデルをやっているという学友に教えてもらった。
気合のいる歩き方で、意識していなければ、なかなか出来ない。
歩くことに集中しなければならないのだ。
だから、余計なことを考えずに済む。
さらに、目線が高くなることにより、気もちも持ちあがる気がした。
帰省する美弥子を東京駅に見送った由美は、ひとり美弥子のマンションに戻った。
夏休みの後半は、2人のために使うことに決めてあった。
そのためには、夏休みの前半に、帰省と宿題を済ませておかねばならない。
もちろん、由美も帰省するつもりだったが……。
懐かしい故郷の空気に包まれたら、なんだか宿題が出来なくなってしまいそうだった。
東京にいるうちに、少しでも進めておきたかった。
もちろん、すべて終わらせて帰るということは不可能だろう。
帰省してからも、続きはやらなければならない。
でも、手を付けてあるのとないのとでは、向こうで教科書を開くときの士気が違ってくるはずだ。
そこで美弥子に頼んで、部屋を使わせてもらうことにしたのだった。
もちろん、自分の学生マンションに戻ってもいいのだが……。
大方の学生は帰省してしまっており、あそこにいると、なんだか取り残された気がするのだ。
最上階のカフェテラスも、夏休みの休業に入ってしまっていた。
マンションの最寄り駅で降り、日盛りの商店街を歩く。
平日の昼間ということもあるのだろうが、人はみな、屋根の下に逃げこんでいるようだ。
商店街の幟は、そよとも動かない。
街路には、日傘がまばらに散っているだけだった。
由美は、美弥子と出会ったころの雨の季節を思い出していた。
あのころは、街を雨傘が覆っていた。
そして由美はひとりだった。
美弥子はまだ遠い存在で……。
由美は毎日、赤い傘を差して、ひとり通っていたのだ。
由美の胸に、鳥の翳が射すように、寂しさがよぎった。
この街には今、美弥子がいない。
自ら望んだこととはいえ、置いて行かれた思いを拭えなかった。
うっかりすると泣いてしまいそうだった。
この気持に流されたら、自分もこのまま故郷に逃げ帰りかねない。
もちろん両親は喜ぶだろうが……。
高校まで過ごしたあの部屋で、宿題をバリバリこなせる気はしなかった。
由美は背筋を伸ばし、歩幅を広げた。
日傘の柄を、トーチのようにかかげる。
踵が一直線の線上に下りるよう、歩みを進める。
いわゆるモデルウォークだ。
副業でモデルをやっているという学友に教えてもらった。
気合のいる歩き方で、意識していなければ、なかなか出来ない。
歩くことに集中しなければならないのだ。
だから、余計なことを考えずに済む。
さらに、目線が高くなることにより、気もちも持ちあがる気がした。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2014/10/08 07:36
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律「あの~」
爺「何やら、密談でしたな」
律「失礼ですが……。
今日、これからのご予定は、ございますか?」
爺「いえ、特に。
うちに帰って、1杯やるだけですな」
律「奥様はもう、夕食の支度とか、されてるんでしょうか」
爺「そんな気の利いた者はおりませんがな。
気楽な一人暮らしです」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141004095852154.jpg
↑同感です。わたしの老後も、こうなるんだろうな。
み「逃げられたわけ?」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201410040959154dd.jpg
律「こら!」
爺「ははは、当たりです。
熟年離婚というやつですな。
定年退職して、わたしが一日中家にいるようになったら……。
向こうの方が、鬱っぽくなっちゃいまして」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201410040959145d7.gif
爺「こういうボランティアガイドみたいなことを、ハナっからやってれば良かったんですが……。
定年退職した直後は、何していいかわかりませんでね。
町内のつきあいも無かったですし」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141004095855444.jpg
↑これから、町内会の草取りが始まります。
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2. Mikiko- 2014/10/08 07:37
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爺「幸いにというか、不幸にもというか……。
子供がいなかったこともあって、離婚に反対する者もおりませんでね。
あっさりしたもんでした」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201410040958538b4.jpg
律「はぁ」
爺「というわけで、わたしが何時に帰ろうが……。
心配する者も、待ってる者もおりません」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141004095850bc0.jpg
↑ご主人の帰りを待つワンコ。こんな待たれ方をしたら、帰らずにはおれませんね。
律「それでしたら、これから夕食をご一緒していただけませんか?
送っていただいたお礼をさせてください」
爺「いやいや。
これは、わたしが好きでやったことですから。
一人で帰っても、ガソリン代に変わりはありませんよ」
http://blog-imgs-66.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20141004095849e14.jpg
↑最近、ほんとに高いですよね。わたしのパッソは、年に3回くらいしか給油しないのですが、ガソリンを入れた月は財布が苦しくなります。
爺「気にしないでください」
律「それじゃ、わたしたちの気が済みません」
み「わたしは済むけど」
律「あんたは黙ってなさい!
わたしたち青森は初めてで、お店も知らないんです。
どこか、ご案内いただけるとありがたいんですけど」
爺「そうですか。
そこまで言っていただいているのを断るのも……。
なんだか無粋ですな。
わかりました。
安くて美味しい店にご案内しましょう」
律「ありがとうございます」
爺「ところで、今日の宿は、どのあたりですか?」
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2014/12/29 17:56
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〔由美美弥〕1600回
そだねえ由美ちゃん。
二人が出会ったのは、あれは雨の季節だったねえ。
で、今は夏まっさかり……。
♪今は夏そばにあなたの匂い
しあわせな夢におぼれていたけれど……
(大橋純子『たそがれマイ・ラブ』)
ゆっくりだけど、『由美美弥』にも時間が流れているんだねえ。
で、この夏はどんな出会いがあるんだろう。
美弥ちゃんのは聞かせてもらったけど由美ちゃんは……。
〔東北〕978回
ほお、お一人暮らしですかいな津島の爺様。
「ちょっぴり楽しい♪手酌酒」ですか。
ま、家内にもめ事もなく、気楽でええですわの。
>わたしが一日中家にいるようになったら……。
>向こうの方が、鬱っぽくなっちゃいまして
ははあ、ぬれ落ち葉になったわけですか、津島の爺さま。
あっさり成立、熟年離婚。
一寸先は闇、ですか。
そういえば、うちは何で一緒にいるんだろう。
「今更めんどくせえ」というところかな。
別れるんなら、こないだの入院騒ぎなんかチャンスだったんだけどね。
部屋イヌの中には、こんな風に待つ犬もおるそうな。
>一人で帰っても、ガソリン代に変わりはありませんよ
そんなことなかろう、津島の爺さま。
重量物を載せていたら、負荷がかかって燃費が悪なるはずでっせ。
遠慮なしにゴチになんなはれ。