2013.9.27(金)
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由美は腰を浮かせ、机の前に掛かるカーテンを開いた。
夜だった。
明るい室内から、窓の向うは見えない。
夜の窓は鏡となり、由美の姿を映していた。
期末試験が近づいていた。
それに向けて、机に向かっているのだが……。
集中力が途切れ始めていた。
高校生のころは、もっと長時間集中できてたはずだ。
息を止めて沈んでいられる時間が、すっかり短くなってしまったようだ。
窓に映る自分を見つめる。
見た目は、高校時代とさほど変わっていない。
しかし、その内奥は大きく変化していた。
呼吸が短くなってしまったのは……。
あまりにも刺激の多い日々が続いたせいだろうか。
上京してからの出来事が、次々と脳裏を掠めた。
美弥子の姿が、窓に映った。
裸体だった。
あわてて由美は、カーテンを閉じた。
集中するため、試験勉強は別々にしようと言い出したのは由美だった。
今ごろは美弥子も、マンションの一室で机に向かっているに違いない。
こんなことではいけない。
由美は椅子に座り直し、教科書に目を落とした。
しかし……。
一旦切れた集中の糸は、容易に繋がってはくれなかった。
由美は、音を立てて教科書を閉じると、椅子から起ちあがった。
ワンルームの小さな部屋は、振り返ればすぐにベッドだ。
枕元に、しゃがみこむ。
柔らかな羽根布団では、可愛いお客様が眠っていた。
赤黒い顔をした、一つ目のお客様。
そう。
美弥子の持つディルドゥだった。
別れて試験勉強をするにあたり、互いの分身を交換したのだった。
美弥子には、ミッフィーの縫いぐるみを渡してあった。
幼児のころから一緒に寝てきた人形だ。
ミッフィーを抱き取った美弥子は、代わりにビスクドールを預けようとした。
やはり、子供のころから一緒に過ごした人形だそうだ。
しかし、由美はそれを断り、ディルドゥを所望したのだ。
美弥子は、吊り合わないと言って不服そうだったが……。
強引に押し切った。
幾度となく美弥子の胎内に埋もれてきたディルドゥだ。
これ以上の分身が、ほかにあろうか。
由美は腰を浮かせ、机の前に掛かるカーテンを開いた。
夜だった。
明るい室内から、窓の向うは見えない。
夜の窓は鏡となり、由美の姿を映していた。
期末試験が近づいていた。
それに向けて、机に向かっているのだが……。
集中力が途切れ始めていた。
高校生のころは、もっと長時間集中できてたはずだ。
息を止めて沈んでいられる時間が、すっかり短くなってしまったようだ。
窓に映る自分を見つめる。
見た目は、高校時代とさほど変わっていない。
しかし、その内奥は大きく変化していた。
呼吸が短くなってしまったのは……。
あまりにも刺激の多い日々が続いたせいだろうか。
上京してからの出来事が、次々と脳裏を掠めた。
美弥子の姿が、窓に映った。
裸体だった。
あわてて由美は、カーテンを閉じた。
集中するため、試験勉強は別々にしようと言い出したのは由美だった。
今ごろは美弥子も、マンションの一室で机に向かっているに違いない。
こんなことではいけない。
由美は椅子に座り直し、教科書に目を落とした。
しかし……。
一旦切れた集中の糸は、容易に繋がってはくれなかった。
由美は、音を立てて教科書を閉じると、椅子から起ちあがった。
ワンルームの小さな部屋は、振り返ればすぐにベッドだ。
枕元に、しゃがみこむ。
柔らかな羽根布団では、可愛いお客様が眠っていた。
赤黒い顔をした、一つ目のお客様。
そう。
美弥子の持つディルドゥだった。
別れて試験勉強をするにあたり、互いの分身を交換したのだった。
美弥子には、ミッフィーの縫いぐるみを渡してあった。
幼児のころから一緒に寝てきた人形だ。
ミッフィーを抱き取った美弥子は、代わりにビスクドールを預けようとした。
やはり、子供のころから一緒に過ごした人形だそうだ。
しかし、由美はそれを断り、ディルドゥを所望したのだ。
美弥子は、吊り合わないと言って不服そうだったが……。
強引に押し切った。
幾度となく美弥子の胎内に埋もれてきたディルドゥだ。
これ以上の分身が、ほかにあろうか。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2013/09/27 07:31
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食「あ、そうそう。
この杉のかたわらに、板碑(いたび)が並べてあって……」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195400fc9.jpg
食「『関の古碑群』と呼ばれてます」
み「“こひぐん”ってのはなんじゃい?」
食「古い碑(いしぶみ)の群と書きます」
み「古いっていつごろ?」
食「14世紀前半です」
み「室町時代?」
食「鎌倉時代の末期ですね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195334d4c.jpg
↑鎌倉の大仏さま。高さは、11.39メートル。鎌倉市の津波想定は14.5メートル。大仏さまは、完全に水没します。
み「そりゃ古いわ」
食「菅江真澄も、この碑を見ていったようです」
み「何の碑なわけ?」
食「『津軽大乱』と呼ばれる安藤氏の内紛があって……。
そこで討ち死にした武者の霊を慰めるために作られたようです」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201309211953542ee.jpg
↑なぜか楽しそうに討ち死にする松平弾正(山梨県笛吹市『川中島合戦戦国絵巻』より)
み「群っていうからには、たくさんあるわけ?」
食「42基ですね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195338778.jpg
み「縁起悪る。
何でそんな数にしたんだ?」
食「田畑の開墾などのとき、土の中から発掘されたものなんです。
それを、1箇所に集めたんですよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201309211953538c5.jpg
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2. Mikiko- 2013/09/27 07:34
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み「なるほど。
焚付にはしなかったわけね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195332727.jpg
↑『箱根関所資料館』
食「出来るわけないじゃないですか。
石ですよ」
み「さっき、板の碑って言っただろ」
食「石を板状に加工してるから、板碑です。
第一、木の板で作った碑なんか、何百年も残ってるわけないですよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2013092119535740a.jpg
↑まれには残ります。長岡市『八幡林遺跡』で出土した「沼垂城」と書かれた木簡(720年頃のもの)。
み「石なら、何千年残ってても、不思議なかろ。
わたしはやっぱり、千年生きてる木の方に、興味があるな」
食「実は、もう1本、見ておきたい木があるんです」
み「まだあるのか。
それも巨木?」
食「ま、そこそこ大きいですが……。
樹齢は100年程度です」
み「何だ大したことないじゃん。
何の木?」
食「タブノキです」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195331595.jpg
↑芽吹きは美しく、花が咲いたようです。
み「おー。
日本海側の海っぱたで見かける木だ。
新潟にもあるよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195335681.jpg
↑新潟市内の民家に聳えるタブノキ。
み「でも、樹齢100年くらいのは、別に珍しくないでしょ?」
食「北限のタブと云われてます」
み「あ、そうか。
青森だったな。
タブは暖地系の常緑樹だもんね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130921195356987.jpg
↑野槌神社の大タブ(高知県香南市)。幹囲9.2m。樹齢300年。
続きは、次回。
P.S.東北楽天、優勝おめでとうございます。今日は、帰りが少し遅くなるかも知れません(楽天の優勝とは関係ありません)。
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3. ハーレクイン- 2013/09/27 10:01
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宣言通り、すぱっと切り替わりましたな。
あの後、女教授がどうしたとか、よけいな未練を残さない潔さ、ということでしょうか。
「裏窓」に引き続き、新章題は「階上の散歩者」。
ヒッチコックの次は乱歩ですか。
ミステリー物が続きますねえ。
それにしても由美ちゃん、大丈夫か、期末試験は。勉強というのは、誰も助けてはくれんのだぞ(説教はよせ)。
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4. ハーレクイン- 2013/09/27 10:05
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誰だってそう思うよなあ「み」さん。
薄い板状の石碑ねえ。
はい、ここで問題です。
室町時代と鎌倉時代は、どちらが古いでしょう。
正解者には、東大寺、奈良の大仏観光ツアーにご招待します(なんで奈良やねん!)。
追加問題です。
奈良時代の次の時代を何というでしょう。
正解者には、叡山電鉄鞍馬駅前の巨大天狗面観光ツアーにご招待します。
安藤氏は、室町期以降は安東氏と表記されるようです。
それにしても、松平弾正(何者だあ?)。真面目に死ねよ、仮にも松平だろ。
ははあ、これは懐かしい、「沼垂城」の木簡。
たしか、『東北』の始めの頃に出てきたのでは。
それにしても沼垂。
「ぬたり」ではダメで「ぬったり」で変換しおるなあ、PCの奴め。
タブ、タブノキは照葉樹林帯を代表する樹種です。照葉樹林(常緑樹)は西日本、東日本には夏緑樹林(落葉樹)が分布します。
ただし、“海っぱた”は、かなり北の方(福島県、新潟県あたり)まで照葉樹林帯です。学べよ、受験生諸君。
ですから確かに、青森でタブは珍しい。間違いなく「北限のタブ」ですね。それにしても、どうやって生育したんだろう。誰かが植えたのかなあ。
椿とかサルとか、北限が多いなあ、青森。
東北楽天ゴールデンイーグルス。
球団成立の経緯を考えれば、わずか9年でリーグ優勝したというのは東北の奇跡ともいえるのでは。
しゃきっとせんかい!タイガース!!
下手したらカープに抜かれて3位に終わるぞ!
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5. Mikiko- 2013/09/27 20:35
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場を散らかしたまま逃げ去るという得意技ですね。
後は野となれ戦法。
すんません。
松平弾正ではありませんでした。
↓正解は、松永弾正(松永久秀)です。
http://kotatu.jp/hyo/isawa/report/2007/13.htm
東北楽天、あっぱれでした。
それにしても……。
クライマックスシリーズというのは、納得できん。
田中投手には、ぜひ巨人打線をねじ伏せてほしいです。
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6. ハーレクイン- 2013/09/27 22:50
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実はわたしもこう言いたかったんですよ。
「あとは野となれ」というよりも、「三十六計逃げるに如かず」。
松永弾正は、戦国時代の武将。
いろいろあって織田信長の家臣になり、またいろいろあって信長に反逆。最後は信貴山城の天守で爆死。
信貴山(しぎさん)は、大阪・奈良の府県境に聳える標高437mの山です。『信貴山縁起』で有名ですね。
松平弾正もいました。
本名、池田喜長(よしなが)。天保7年(1836年)に没した旗本。知行七千石。
しかし、旗本の分際で松平とは……。
>クライマックスシリーズというのは、納得できん
ごく当たり前の感想ですね。
集客手段以外の何物でもありません。こいつのおかげで「日本シリーズの覇者」「日本一」の値打ちが落ちたんだよ。
ま、ともあれ田中将大(まさひろ)投手、マー君(この呼び方、何とかならんか)に「驕れるジャイアンツ」を叩きのめしてほしいという思いは同感ですが、難しいかもしれんぞ。
マー君の嫁さん、里田まいちゃん。よかったのう、苦労が報われて。
タイガースがCSを制する可能性は限りなくゼロに近い。一勝もでけんかったりして。
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7. Mikiko- 2013/09/28 08:10
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律令時代、弾正台という監察・警察機構が作られました。
すごく怖そうですが、実際には、ほとんど機能せず……。
結局、皇族の名誉職みたいになってしまったようです。
弾正台の長官は従三位相当官で、親王が任ぜられることが多く……。
弾正宮などと称されたそうです。
単に「弾正」と称する場合は、弾正台の職員を指したものだとか。
松永久秀が、弾正を名乗ったのは……。
弾正台の次官のひとつ、弾正少弼(しょうひつ)に任ぜられてたからだそうです。
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8. ハーレクイン- 2013/09/28 10:46
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えらい由緒ある官職ですなあ。
ほとんど名前だけ、という感じもしますが。
松永弾正は弾正少弼。
政務次官、みたいなものかなあ。
政務次官は2001年に廃止されました。現在は副大臣、および大臣政務官。
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9. Mikiko- 2013/09/28 12:44
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長官は、尹(いん)。
次官が、弼(ひつ)で、大弼(だいひつ)と少弼(しょうひつ)がいます。
少弼は、弾正台のナンバー3という地位ですね。
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10. ハーレクイン- 2013/09/28 19:56
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尹(いん)、大弼(だいひつ)、少弼(しょうひつ)……。
うーむ。