2013.9.11(水)
「暑っつい。
暑くない?」
もちろん、冷房は入っているに違いないが……。
舞台を取り巻く観客の熱気が、空調能力を上回っているようだ。
美弥子は、額に当てた指先を眼前に翳した。
指が光っている。
額には、汗が滲んでいたのだ。
「わたし、脱ぐね。
暑いから」
「ちょっと……」
由美は、その場に起ちあがった。
思わず、顔を見上げる。
表情には、少しも変化が見えなかった。
澄まして電車に乗っているときの顔だ。
しかし、美弥子にはわかっていた。
由美の無表情は、激しい興奮の裏返しであることを。
小鼻が、かすかに膨らんでいるのが何よりの証拠だ。
そして、由美がこの表情を見せたとき……。
必ず、暴走する。
美弥子の脳裏には、アベリアの繁る公園が蘇っていた。
雨に打たれる芝生の上で、2人が交わった公園だ。
以来、この公園を通るたび、美弥子も妙な気分を覚えた。
しかし由美は、美弥子以上の情動を抑え切れないようだった。
雨を予感させる重い雲が垂れこめたある日……。
由美は美弥子の腕を引いて、園路を逸れた。
向かったのは、繁みの奥に埋もれたトイレだった。
尿意を催したのかと思ったが、由美はコンクリートの入口を潜ろうとはしなかった。
手引かれたまま、トイレの裏に回る。
『どうしたの?』
『したくなっちゃった』
『おトイレ?』
『ううん。
ここで、オナニーしたい』
『ちょっと……』
『だから、その繁みの切れ目から見てて。
人が来ないか』
美弥子は、まじまじと由美の顔を見た。
教室で辞書を繰るときと同じ、静かな表情だった。
小鼻だけが、かすかに膨れている。
暑くない?」
もちろん、冷房は入っているに違いないが……。
舞台を取り巻く観客の熱気が、空調能力を上回っているようだ。
美弥子は、額に当てた指先を眼前に翳した。
指が光っている。
額には、汗が滲んでいたのだ。
「わたし、脱ぐね。
暑いから」
「ちょっと……」
由美は、その場に起ちあがった。
思わず、顔を見上げる。
表情には、少しも変化が見えなかった。
澄まして電車に乗っているときの顔だ。
しかし、美弥子にはわかっていた。
由美の無表情は、激しい興奮の裏返しであることを。
小鼻が、かすかに膨らんでいるのが何よりの証拠だ。
そして、由美がこの表情を見せたとき……。
必ず、暴走する。
美弥子の脳裏には、アベリアの繁る公園が蘇っていた。
雨に打たれる芝生の上で、2人が交わった公園だ。
以来、この公園を通るたび、美弥子も妙な気分を覚えた。
しかし由美は、美弥子以上の情動を抑え切れないようだった。
雨を予感させる重い雲が垂れこめたある日……。
由美は美弥子の腕を引いて、園路を逸れた。
向かったのは、繁みの奥に埋もれたトイレだった。
尿意を催したのかと思ったが、由美はコンクリートの入口を潜ろうとはしなかった。
手引かれたまま、トイレの裏に回る。
『どうしたの?』
『したくなっちゃった』
『おトイレ?』
『ううん。
ここで、オナニーしたい』
『ちょっと……』
『だから、その繁みの切れ目から見てて。
人が来ないか』
美弥子は、まじまじと由美の顔を見た。
教室で辞書を繰るときと同じ、静かな表情だった。
小鼻だけが、かすかに膨れている。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2013/09/11 07:23
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み「ま、あれだけ晴れりゃ、放射冷却があるからね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191943589.gif
み「でも、昼間はグンと気温が上がるでしょ」
律「そうね。
冬の陽が、部屋の奥まで差しこむから……」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191942a0b.jpg
律「昼間は、暖房がいらないくらい」
み「それよ」
律「何が?」
み「新潟にマンションを建てる業者に言いたいことがある」
律「わたしに言ってどうすんのよ」
み「とりあえず、聞かっしゃい。
ええか。
新築マンションのチラシを見ると……。
どれもこれも、リビングが南向きだよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191924837.jpg
み「アホじゃないの」
律「どうして?
それが当たり前でしょ」
み「それは、太平洋側の話。
冬場、部屋の奥まで日が差しこむようにってことでしょ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201309071919230a1.jpg
律「いいじゃないの。
暖房費が節約出来て」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191921292.jpg
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2. Mikiko- 2013/09/11 07:24
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み「だから!
日本海側は、陽が差さないのよ。
晴れる日なんて、10日に1日もあればいい方。
1ヶ月に2,3日だよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191940e7f.jpg
↑冬の新潟市街。暗い……。
み「そのために、南側にリビング作って、何の意味があるの?」
律「少しでも節約になるんじゃない?」
み「アホきゃ!
夏のことを考えなさいよ。
南側に窓があったら、暑いじゃないの」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201309071919386df.jpg
み「冷房費が、どれだけかかると思ってるの。
暖房費の節約分とじゃ、とうてい釣り合わんでしょ」
律「じゃ、北向きに作れって?」
み「さよう。
冬はどうせ陽が当たらないんだから……。
窓はどっちを向いてても、大して変わらんのよ。
ところが、夏場は大違い。
南向きの部屋と北向きの部屋で、どれだけ室温が違うか。
実際、欧米では、リビングを北向きに作るのが当たり前なのよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130907191944282.jpg
み「南向きにこだわるのは、日本だけ」
律「ほんとに?」
み「ま、欧米には、別の理由もあるんだけどね」
律「なによ?」
み「年代物の家具や絨毯を、大切に使ってる家庭が多いでしょ。
そういうのにとって、一番怖いのは、日焼けよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201309071919208c0.jpg
み「だから、リビングに日が入るのを嫌がるわけ。
日本だって、カーテンとかの持ちがぜんぜん違うと思うよ。
北向きと南向きじゃ」
律「それは、あるかもね」
み「新潟では、素晴らしい北向きの座敷が見学できるから……。
ぜひ、真夏に行って、北向きリビングの良さを体感してほしい」
律「住宅展示場?」
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2013/09/11 10:41
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いやあ、懐かしいですねえ。
200回だよ200回。
コメ欄も、まさに百花繚乱(これは曰く、淡雪さま)
で、どうするのだ『由美美弥』。
過去に遊ぶと、間違いなく百花繚乱だが。
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4. ハーレクイン- 2013/09/11 10:43
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と思ったがなるほど、そういうことか。
冬はさほど恩恵がない、逆に夏は暑うてたまらん、と、こういうことだな。
>欧米では、リビングを北向きに作るのが当たり前
ふううむ。
説得力あるなあ。ほんまかどうかは貞子、じゃなくて定かではないが。
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5. Mikiko- 2013/09/11 19:38
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わたしが、ヨタばっかり飛ばしてると思ったら、大間違い。
↓マイホームコンサルタントという人も、ちゃんとそう書いてました。
http://www.homeconsul.com/newblog/2009/04/post_152.html
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6. ハーレクイン- 2013/09/12 00:36
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ヨタばっかりなどと、とんでもない。
たまにでんがな、たまに。
で、「コンサルタント」ねえ。
こういうお人が最も与太を飛ばしそうな……。
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7. Mikiko- 2013/09/12 07:29
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北向観音のお告げです。
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130912072248f34.jpg
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8. ハーレクイン- 2013/09/12 09:13
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北向観音(きたむきかんのん)は、長野県上田市の別所温泉にある天台宗の寺院。
寺伝によれば、平安時代初期の天長2年(825年)円仁(慈覚大師)によって開創されたという(無茶苦茶古いな)。源頼朝により再興。鎌倉時代の建長4年(1252年)には北条国時(誰や、これ)によって再建されたと伝えられる。
北向観音という名称は、堂が北向きに建つことに由来する(そらそやろ)。
これは「北斗七星が世界の依怙(よりどころ)となるように我も又一切衆生のために常に依怙となって済度をなさん」という観音の誓願によるものといわれている(北斗が世界の依怙というのもようわからんけど「観音の誓願」というのはヤバそうだなあ。観音ほど危ないもんはないぜ)。
ふうむ。普通は南向きだもんなあ。
「天子南面」っていうんだよ。
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9. Mikiko- 2013/09/12 19:38
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信州最古の温泉だそうです。
ホームページの『別所温泉の歴史(http://www.bessho-spa.jp/history/)』には……。
「景行天皇の時代、日本武尊の東征の折りに発見された」など、とんでもねーことが書いてありました。
新潟を、13時13分の新幹線で発てば、上田電鉄の別所温泉には、16時07分に着きます。
余裕で行けますね。
天子南面。
これは、顔が影にならぬよう、南を向いたということでしょうか?
眩しくても、眩しそうな顔は出来なかったんでしょうね。
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10. ハーレクイン- 2013/09/12 20:04
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ヤマトタケル。
温泉まで見つけてたか。
昔の皇帝や天皇は、南を向いて席に着き、政を行ったそうだよ。何で南なのかわからんがね。
で、天子南面。
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11. ハーレクイン- 2013/09/12 22:26
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別に急ぎませんが、訂正お願いします。
『アイリス』#24、上から18行目、
「焦れた香奈枝が叱咤した」
とありますが、この「香奈枝」を「あやめ」に訂正いただきたく、お願い申し上げます。
いやあ、全く気づきませんでした。香奈枝せんせがお貴さんを叱咤などするわけないのになあ。第一、この時香奈枝せんせは豆腐を買いに出かけてるのに。
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12. Mikiko- 2013/09/13 07:52
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臣下が振り仰ぐ天子の顔が翳らないよう、南を向いたのではないか?
アイリス、訂正しました。
しかし、よく読み返してますね。
わたしも、連載回数が2桁のころはそうだったと、懐かしく思いました。
でもそろそろ、先の方も具体化しましょうね。
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13. ハーレクイン- 2013/09/13 10:10
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書いてますよ、着々と。
まだ三枚ほどですがね。
ゆっくりのんびり話を進めようと思っていたのですが、序盤、一気に盛り上げることにしました。やはり、書きはじめると次々とアイディアが出てきますねえ。
>連載回数が2桁のころはそうだった
あれ?
今は全く読み返さないんですか?
こんなこと言っちゃなんですが、自分の書いたものが一番しっくりきますね。
『風楡』だって読み返すもんね。
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14. Mikiko- 2013/09/13 20:31
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着々なんじゃ!
2桁というか、50回くらいまででしたかね。
今は……。
読み返すと直したくなるので、一切読み返しません。
そもそも、1,300回分も読み返せるかい。
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15. ハーレクイン- 2013/09/13 21:07
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それはそのとおりです。
また直していい?
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16. Mikiko- 2013/09/14 07:59
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気の済むまでやりなはれ。
ヒマ人は、うらやましいのぅ。