2013.5.19(日)
エレベーターを出ると、広い廊下が左右に伸びていた。
大学の廊下に似た、白い床材が敷かれている。
一般住宅の雰囲気ではなかった。
3階は、外観に似つかわしい、モダンな造りなのかも知れない。
導かれた廊下を突きあたると、エレベーターと同じ側の壁面が、階段になっていた。
由美は、倉沢夫人の後ろについた。
夫人が足を滑らせたりしたときの用心だった。
そんな気遣いを起こさせるほど、夫人の足取りは頼りなかった。
手すりにすがりながら、身体を持ち上げていく。
後ろから押してやりたいほどだった。
しかし、会って間もない人の身体に触れるのは、やはりためらわれた。
「洗濯物、持って上がったんですか?」
「え?」
「この階段上がるの、大変だったでしょ?」
「あぁ。
ふふ。
秘密兵器があるのよ」
夫人は由美を振り向き、いたずらっぽく笑った。
後ろから見ると、夫人は妊婦には見えなかった。
ちゃんと、腰の括れがあった。
腹部は、前方にだけ突き出していて、横には張り出していないようだ。
お腹の子は、男の子かも知れない。
「やっと着いた」
夫人に続いて、由美も階段の上に立った。
そこには、3畳ほどのスペースがあるだけだった。
もちろん、畳は敷かれていない。
3階の廊下や階段と同じ、白いタイル貼りだ。
夫人が、床の隅を指さした。
「これよ。
秘密兵器」
そこにあったのは、大きな籠だった。
手で下げられる程度の籠ではない。
小さな子供なら、すっぽり入ってしまうだろう。
籠の側面には、布のベルトが2本付いていた。
「背負子(しょいこ)って云うらしいわ。
山菜採りなんかで使うみたい。
ネットで見つけたの。
洗濯物の持ち運びには、最適なのよ。
もっとも、主人には不評だけど。
家の中で、これ背負ってると……。
なんか、頭の病気の人に見えるんだって」
倉沢夫人は、目を細めて笑った。
綺麗な人だけに、どことなく危うさを感じさせる微笑みだった。
ご主人の気持ちが、わかるような気がした。
大学の廊下に似た、白い床材が敷かれている。
一般住宅の雰囲気ではなかった。
3階は、外観に似つかわしい、モダンな造りなのかも知れない。
導かれた廊下を突きあたると、エレベーターと同じ側の壁面が、階段になっていた。
由美は、倉沢夫人の後ろについた。
夫人が足を滑らせたりしたときの用心だった。
そんな気遣いを起こさせるほど、夫人の足取りは頼りなかった。
手すりにすがりながら、身体を持ち上げていく。
後ろから押してやりたいほどだった。
しかし、会って間もない人の身体に触れるのは、やはりためらわれた。
「洗濯物、持って上がったんですか?」
「え?」
「この階段上がるの、大変だったでしょ?」
「あぁ。
ふふ。
秘密兵器があるのよ」
夫人は由美を振り向き、いたずらっぽく笑った。
後ろから見ると、夫人は妊婦には見えなかった。
ちゃんと、腰の括れがあった。
腹部は、前方にだけ突き出していて、横には張り出していないようだ。
お腹の子は、男の子かも知れない。
「やっと着いた」
夫人に続いて、由美も階段の上に立った。
そこには、3畳ほどのスペースがあるだけだった。
もちろん、畳は敷かれていない。
3階の廊下や階段と同じ、白いタイル貼りだ。
夫人が、床の隅を指さした。
「これよ。
秘密兵器」
そこにあったのは、大きな籠だった。
手で下げられる程度の籠ではない。
小さな子供なら、すっぽり入ってしまうだろう。
籠の側面には、布のベルトが2本付いていた。
「背負子(しょいこ)って云うらしいわ。
山菜採りなんかで使うみたい。
ネットで見つけたの。
洗濯物の持ち運びには、最適なのよ。
もっとも、主人には不評だけど。
家の中で、これ背負ってると……。
なんか、頭の病気の人に見えるんだって」
倉沢夫人は、目を細めて笑った。
綺麗な人だけに、どことなく危うさを感じさせる微笑みだった。
ご主人の気持ちが、わかるような気がした。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2013/05/19 07:34
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み「そもそも、玄関に対面して脱ごうとするから……。
そういう疑問が生じるのよ」
律「後ろ向いたら、やっぱり座りたくなるじゃない」
み「すっと足を引いたら、脱げるでしょ?」
律「脱げないわよ」
み「鼻緒がキツすぎるんじゃないの?」
律「そもそも、そんな簡単に脱げたら、歩きづらくてしょうがないわ」
み「簡単に脱げなきゃ、お座敷に上がれないじゃないの」
律「やっぱり、片足ずつ上げて、手で取るのよ」
み「しないと思います」
↓脱ぎ履きにも、コツがありました。
http://kbr.seesaa.net/article/117831812.html
律「わかった。
こうやって脱ぐんだ。
ほれ」
み「草履を飛ばすな!」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130518190347a0d.jpg
律「あしたは晴れだわ。
じゃ、上がらせてもらいます」
み「片方しか脱いでないだろ」
律「バカね。
足袋裸足なんだから、タイルに下ろせないでしょ。
片足を框に上げて……。
それから、もう一方の足を……。
えい!」
み「家の中に飛ばすな!」
律「すっごーい。
ホームランよね。
今、天井に当たったわ」
み「このアマ……」
律「拾ってきて」
み「自分で拾え!」
律「お客さまの草履よ」
み「とても客とは思えん」
律「ほれ、拾ってきて」
み「ふんとにもう」
律「あ、何よ、その持ち方。
普通、お客さまの草履を、鼻緒摘んでぶら下げる?」
み「じゃ、どうやって持つのよ?」
律「口にくわえるんじゃない?」
み「犬か!」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130518190347edb.jpg
律「あと、懐に入れるとか」
み「木下藤吉郎か!」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130518190347f27.jpg
み「そもそも、着物じゃないから、懐には入りません」
律「何で着物じゃないの?」
み「何でって……。
着物じゃない方が普通でしょ」
律「いやねぇ。
日本人は着物じゃなきゃ。
これ、すっかり気に入っちゃったわ。
今度から、病院でもこの格好で診察しようかしら」
み「精神科行きになるわよ」
律「さてと。
お酒ある?」
み「すでに出来上がってるじゃないの」
律「まだまだ序の口です」
み「すでに横綱」
律「なに!
横綱。
それじゃまず、土俵入りをしなければ」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201305181903468df.jpg
み「せんでいい!
キャラまで変わっちゃってるじゃないの。
昼酒は回るんだから……。
ペースを考えなきゃダメだって」
というわけで……。
続きは、次回。
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2. ハーレクイン- 2013/05/19 09:30
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ほんとに気になるなあ、倉沢邸の間取り。
とりあえず3階には何があるんだ? と思ったら屋上に直行か。
それにしても「『広い』廊下が左右に『伸びて』いる」。どれほどの大邸宅なんだろう
胎児の性別で妊婦の腹の出具合が違う……よく聞く話だけど、あまり興味ないんで具体的には知らなかった。
そうか、男の子だと前方に突き出すのか。
ふーん。
じゃあ、女の子だと横に張り出すのかね。
洗濯もの運搬用の籠背負子。
よく山菜取りとかで里山歩きをする人が、担いでいるやつだよね。
物を運ぶ場合「担ぐ」というのは、最も体に負担の少ない合理的な方法なんだけど、やはり都会の、しかも家の中で籠背負子は違和感大きいか。
このあたりからも、倉沢夫婦の心のすれ違いが……。
(alert! alert! 自粛自粛)
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3. ハーレクイン- 2013/05/19 09:32
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ほんとにいろんなサイトさんがあるんだなあ。
和服についても、こんなサイトさんで勉強できるんだから、早くやらんとなあ。
何でって、書きたいんですよ、和物のエロ小説を。
しかし、酔った勢いなのか、『東北』菌に大脳皮質まで冒されたのか、ボケキャラ律子叔母さん、やりたい放題し放題。
絶好調だな。
ま、「振袖で診察」は面白いからぜひ拝見したいものだ。いいよね、産婦人科なんだし(なんの関係が)。
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4. Mikiko- 2013/05/19 12:53
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将来の子供部屋スペースかな。
今はまだ、内装もされてなく、ガランとしてると思います。
背負子。
↓こういうやつですね。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130519124055981.jpg
和物エロ。
ぜひ、書いてください。
でも、知識は仕入れられるとしても……。
それを、文章で読者に伝えるのは難しいと思うぞ。
こないだ見た2時間ドラマで……。
杉本彩が、和服の書道教授役で出てました。
色っぽかったぞー。
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5. ハーレクイン- 2013/05/19 17:34
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>それを、文章で読者に伝えるのは難しい
いやあ、きついなあ。
そのあたり、日々痛感しているところです。
以前に書きましたけど、もともと『リュック』でやるはずだったんですよね。機会を逸してしまったから、次の(または次の次の、または次の次の次の……)作品で、ですね。
杉本彩の和服姿ねえ。
ドラマということは、脱ぐ場面はなかったんだろうね。
でも、あの人の場合、衣装をまとっている方がかえって色っぽいかもしれない。それが和服なら特にね。
脱いで色っぽいのはもちろんなんだけど。
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6. Mikiko- 2013/05/19 19:41
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「次の次の次の」って……。
寿命が持つんかいな。
金沢が舞台なら、いくらでも着物は出せましょうに。
杉本彩。
↓これです、これ。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130519192846a1f.jpg
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7. ハーレクイン- 2013/05/19 21:58
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寿命がもたなければ黄泉の国から投稿、または生まれ変わって書けばよいではないか。
金沢を舞台にしなくても、和服物の舞台ははいくらでも考えられるよ。女子高の茶道部とか、それこそ『元禄』の向こうを張って時代劇とかね。
そういえば、例の、城代家老の老亭主を殺して若侍と出奔する色ボケ若妻の話。書きたいんだけど、どう考えてもビアンものにならん。残念なことじゃ。
問題は、どこまでいっても中身ですね。
お、なかなか凛々しいぞ、書道教授役の杉本彩。
筆をもつ手つきがちょっと素人っぽいけど、こればっかりはね、一夜漬けでは無理だよ。それに文鎮を使ってるのがね、どうもね。
わたくしめ、小学校二年生まで書道塾に通ってました。何かのコンクールで賞をもらったこともあります。三年生からは、以前に書いたそろばん塾に変わりました。
昔は今みたいに、学習塾や進学塾なんてなかったんだよね。
そういえば以前に書いた渡辺淳一の『失楽園』。
ヒロインはカルチャーセンターの書道教授役でした。名前は「凛子」。
映画では黒木瞳がやりました。相手役のおっさんは役所広司。
杉本彩に凜子役をやらせたらどうなるかなあ。おっさん役なんか喰ってしまって、ストーリーそのものが変わっちゃうだろうな。
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8. Mikiko- 2013/05/19 22:17
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お断りします。
気味が悪いので。