2012.10.24(水)
あけみ先生の指先は、カメラの載った机の下を指してる。
そこには、飴色の縄の束が、いく巻もうずくまってた。
4本の机の脚に囲まれた縄は、まるで檻の中の蛇のように見えた。
「早く!」
わたしは、恐る恐る檻に手を入れ、縄束を拾いあげた。
「1本は、その机の脚に結んで。
お団子結びでいいから。
そうそう。
そしたら、そのまま引っ張って、こっち来て。
あと、もう1本、束のまま持って来て」
あけみ先生は、机の脚に結んだ端を受け取ると……。
突っ伏した理事長の左足首を括り上げた。
もう1本の縄で右足首を縛り、そのままウィンチの載る作業台まで後退る。
理事長の頭が、持ち上がった。
「お目覚めですか、理事長。
でも、寝相が悪いですわね。
朝は、きちんと仰向けでむかえましょう」
あけみ先生は、持ってた縄を、大きく引っ張った。
縄は一瞬にして張り詰めると、理事長の右脚が持ちあがる。
「ほら、美里。
掛け声。
何て言うんだっけ?
綱引きのとき。
あ、そうそう。
これだ。
オーエス、オーエス」
あけみ先生は、両手を交互に移し変えて、縄を手繰り寄せた。
先生は、うつ伏せた理事長の左側に立ち、理事長の右脚を引っ張ってる。
理事長の左脚は逆に、右手にある机に縛られてる。
起こる事態はひとつだった。
理事長の身体は畳の上で裏返り、仰向けになった。
でも、あけみ先生は、綱引きを止めようとしなかった。
理事長の両脚が開いていく。
「オーエス、オーエス」
「い、ぃぃぃ」
「どうしました、理事長?」
「い、痛いぃ」
「そんなはずありませんでしょ。
その柔らかい身体なら、180度開脚も出来るはずよ。
ほら、もっと頑張って」
あけみ先生は、床にお尻を落とした。
両脚で床を蹴りながら後退る。
踵が空転し始めると、ボートを漕ぐみたいに上体を反らせた。
そこには、飴色の縄の束が、いく巻もうずくまってた。
4本の机の脚に囲まれた縄は、まるで檻の中の蛇のように見えた。
「早く!」
わたしは、恐る恐る檻に手を入れ、縄束を拾いあげた。
「1本は、その机の脚に結んで。
お団子結びでいいから。
そうそう。
そしたら、そのまま引っ張って、こっち来て。
あと、もう1本、束のまま持って来て」
あけみ先生は、机の脚に結んだ端を受け取ると……。
突っ伏した理事長の左足首を括り上げた。
もう1本の縄で右足首を縛り、そのままウィンチの載る作業台まで後退る。
理事長の頭が、持ち上がった。
「お目覚めですか、理事長。
でも、寝相が悪いですわね。
朝は、きちんと仰向けでむかえましょう」
あけみ先生は、持ってた縄を、大きく引っ張った。
縄は一瞬にして張り詰めると、理事長の右脚が持ちあがる。
「ほら、美里。
掛け声。
何て言うんだっけ?
綱引きのとき。
あ、そうそう。
これだ。
オーエス、オーエス」
あけみ先生は、両手を交互に移し変えて、縄を手繰り寄せた。
先生は、うつ伏せた理事長の左側に立ち、理事長の右脚を引っ張ってる。
理事長の左脚は逆に、右手にある机に縛られてる。
起こる事態はひとつだった。
理事長の身体は畳の上で裏返り、仰向けになった。
でも、あけみ先生は、綱引きを止めようとしなかった。
理事長の両脚が開いていく。
「オーエス、オーエス」
「い、ぃぃぃ」
「どうしました、理事長?」
「い、痛いぃ」
「そんなはずありませんでしょ。
その柔らかい身体なら、180度開脚も出来るはずよ。
ほら、もっと頑張って」
あけみ先生は、床にお尻を落とした。
両脚で床を蹴りながら後退る。
踵が空転し始めると、ボートを漕ぐみたいに上体を反らせた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2012/10/24 07:29
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律「電話で聞けばいいんじゃないの?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201210211128218be.jpg
み「アンケートじゃあるまいし……。
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112822667.jpg
み「電話で事情を聞く刑事がおるか!」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112744cf3.jpg
律「いないの?」
み「いないのって……。
刑事ドラマで、そんなシーン、出てこないでしょうが。
刑事が電話かけて……。
『あなた、昨日の夜10時ころ、どこにいました』なんて聞いてないでしょ」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112821850.jpg
律「そうなの?」
み「そうなの!」
律「メールすれば?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112742201.jpg
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2. Mikiko- 2012/10/24 07:30
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み「するか!
刑事なんて、パソコン使えないの!」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112743690.jpg
律「それは、差別発言じゃないの?」
み「“長さん”や“山さん”が、パソコン打ってるシーンなんて、出てこないでしょ」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201210211128222fa.jpg
↑『太陽にほえろ』の“長さん”こと、野崎太郎刑事(“長さん”は、巡査部長の愛称です)。
み「刑事は、足!
足で捜査するの」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20120923103909b92.jpg
律「そんなの、今どき流行らないわよ」
み「捜査に、流行り廃れがあるか!
王道あるのみ」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112823202.jpg
律「ほら、捜査会議のとき、偉そうにしてるのがいるじゃない?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201210211128234d9.jpg
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3. Mikiko- 2012/10/24 07:31
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み「誰よ?」
律「何とか官」
み「ぜんぜんわからないんですけど。
宦官?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20120505104113605.jpg
律「なんで宦官が、警察にいるのよ」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112744dc9.gif
み「じゃぁ……。
ロクタル管」
律「ぜんぜん違うけど……。
何それ?」
み「昔読んだ小説の題名に出てきた。
内容は忘れたけど、題名だけ覚えてる。
そうそう。
柴田翔の、『ロクタル管の話』だ」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112742af1.jpg
ここで余談。
柴田翔と云えば、なんといっても『されどわれらが日々-』ですね。
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121021112743d01.jpg
若かりしころ、わたしも読みました。
はい、お話続けます。
律「それと捜査と、関係あるの」
み「あるわけないでしょ」
続きは、次回。
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4. ハーレクイン- 2012/10/24 08:59
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理事長の姿勢と、縄の方向がわかりにくいぞ。
まず、理事長は俯せ、だよな。
で2本の縄はそれぞれ理事長の左右の足首を縛る。
問題は机と作業台の位置関係なのだが、
机は、俯せの理事長から見て「右手方向」、
作業台は、俯せの理事長から見て「左手方向」
これでいいのかな。
で、理事長の左脚首を縛った縄の反対端は、机に固定。
右足首を縛った縄の反対端は、あけみ先生が握って作業台方向に引っ張る、と(オーエスオーエス)。
どうだ!
これでよかろ。
しかしこれでうまく仰向けにできるかなあ。
で、最後の1行。
>踵が空転
は、踵が滑り始めた、ということかな。
ボート漕がんでも、そのまま綱引き、でええと思うが。
あ、すまん。こういう表現にまで立ち入って口を挟むのはいかんなあ。
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5. ハーレクイン- 2012/10/24 09:02
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これまた懐かしのフィンガー・ファイブ。
今、何してるんだろうね。
たいがい、ええおっさんになってると思うが。
銭形命(いのち)、と読んでしまったので、裏ルパンかなんかかと思ったよ。
そうじゃなくて、TVドラマ『ケータイ刑事銭形命(でか ぜにがためい)』。主演は岡本あずさちゃん。
>み「刑事なんて、パソコン使えないの!」
>み「“長さん”や“山さん”が、パソコン打ってるシーンなんて、出てこないでしょ」
そらあ「み」さん。時代がちゃいまんがな。
“右京さん”はバリバリ使(つこ)てはりまっせ。
「王道」の画像、どこだろう。
中国っぽいが。
おー!
柴田翔『ロクタル管の話』『されどわれらが日々―』。
懐かしすぎて涙も出ない。
「ロクタル管」は、いわゆる真空管の一種ですね。「真空管」何それ、と言われるお方もあるやもしれぬ。
トランジスタ(これももはや懐かしい)などの半導体が開発される以前、電気回路を構成する部品の一種だった。詳しい機能は、知らぬ。イネさんならご存知か、と。
『されどわれらが日々―』は1964年の芥川賞を受賞しました。
60年安保以後の、いわゆる全共闘世代を描いた青春群像劇。エッチシーンも、ちびっとあります。
主人公の元フィアンセは、節子さんといいます。この二人、いろいろあって(ま、この“いろいろ”が、この作品のポイントなのですが)別れちゃうんですよ。
で、節子さんが主人公に宛てた別れの手紙に、次の一節があります。
「……私が今あなたを離れていくのは他の何のためでもない。ただ、あなたと会うためなのです……」
で、作品の最期は、主人公の次の独白で締めくくられます。
「少し湿っぽくなってきたようだ。窓を閉めよう。東北の方は、まだきっと寒いのだろう。雨の日など、節子の傷の痕は痛まないだろうか。もし痛むのなら、抱いて暖めてやりたいのだが」
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6. Mikiko- 2012/10/24 19:55
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金曜日の『緊縛新聞』さんの写真を見れば、わかると思うんだけど。
わたしは、写真を見ながら書いてるので……。
写真を見てない段階の読者には、状況が伝わりにくいかもね。
綱引きの場面は、テレビなんかで見るシーンを思い出して書きました。
生身の人間にあんな引き方したら……。
股関節がどうかなっちゃうかもね。
ロクタル管は……。
まったく忘れてました。
そうか。
真空管のことか。
土管の一種かと思ってた。
オタク小説ですかね?
『されどわれらが日々―』。
こちらも、忘却の彼方。
芥川賞をとった小説とは知らなんだ。
しかし……。
女性の名前の“節子”には、時代を感じますね。
エッチシーン。
微かに覚えてるのは、ラブホというか、旅館のシーン。
初めてのエッチのときの場面だと思います。
結局、布団では目的を果たせず、旅館を出てしまいます。
で、道を歩いてたら、節子さん(?)が突然感じだして……。
“ああ、今ごろになって……”とか言うんじゃなかったかな?
ほんまかいなと思ったものです。
手紙の一節や、最後の独白。
なんちゅーか……。
青臭い!、の一言ですね。
若い時にしか読めない小説でしょうね。
もちろん、それはそれで価値があります。
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7. ハーレクイン- 2012/10/24 22:14
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おたく小説ではありません。
うーん、何と言えばいいのか、ま、青春の苦悩、悩み、迷いなどなどがモチーフの、かなり暗ーい作品です。
あ、でも、主人公は「ロクタル管の美しさ」に魅せられていますから、「おたく」と言えなくも……。
『されど……』の節子さん。
ま、今は「子」の付く名前自体が少なくなりましたからねえ。
それにしても、将来子供が迷惑するような名前は付けないほうがよろしかろう、と。
エッチシーンは……そんな感じでしたかねえ。
>手紙の一節や、最後の独白。
なんちゅーか……。
青臭い!、の一言
いいんだよ。
甘っちょろい小説があってもいいんだから、甘っちょろい表現にも意味はあるのだ。
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8. Mikiko- 2012/10/25 06:29
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落語家のネタになかったっけ?
林家三平?
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9. ハーレクイン- 2012/10/25 11:00
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「よし子さ~ん」ですね。
節子さ~ん、は聞いたことないなあ
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10. Mikiko- 2012/10/25 19:46
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ネットで検索したところ……。
↓“節子さん”は、橘家円蔵(当時・月の家円鏡)のネタだったようです。
http://blog.livedoor.jp/isogaihajime/tag/%E6%A9%98%E5%AE%B6%E5%86%86%E8%94%B5
叔父が酔っぱらうと……。
昔のギャグをしつこく繰り返し、よく母(叔父の姉)に怒られてました。
そのとき、刷り込まれたのかな?
“秘曲「ソナタコナタ」”というネタもあったけど、あれは誰のパクリなんだろう。
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11. ハーレクイン- 2012/10/25 22:57
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八代目橘家圓蔵(たちばなやえんぞう)とは懐かしい。五代目月の家圓鏡(つきのやえんきょう)の方が通りがいいよなあ。
初代三平の「よし子さん」に対抗し、愛妻の節子夫人をネタにした「ウチのセツコが」というギャグがウケた。
らしいが、全然記憶にない。
“しつこい”というのは酔っぱらいの性(さが)ですね。叔父さんも立派な酔っぱらいかと。
お笑い用語では、同じボケを繰り返すことを“かぶせ”“かぶせる”といいます。
学生の時の合同コンパで(何が合同や、もちろん男女でんがな)、しつこく同じ歌を歌いまくって顰蹙を買ったのを思い出しました。
歌ったのは中日ドラゴンズ応援歌『燃えよ!ドラゴンズ』。
この歌の最期のフレーズが「もっえーよ どぉらぁーごんずぅ~」。
私はもちろんタイガースファンですから、これを「もっえーよ たぁいぃがぁーすぅ~」と歌い替えて、ムリョ数十回、歌いまくりました。参加者は笑って手拍子しとりましたが、腹の中では「このバカ、たいがいにせえよ」だったでしょうね。
甘酸っぱい(おい!)青春の思い出ですなあ。