2010.7.16(金)
「わたしは今、京都にいるんだけど……。
心配になって来てみたの。
さっき、会って来たんだけどね。
やっぱりおかしくて……。
膝抱えて座ってるだけなのよ。
目に精気が無いって言うか……。
で、部屋にあの子残して、フロントに事情を聞きに来たの。
でも、いつもいらっしゃる方がお休みみたいで、要領を得ないのよ」
そう言って姉は、フロントのスタッフに、咎めるような視線を投げた。
スタッフは、この姉から、ずいぶんと問い詰められていたようだ。
姉の視線を受けた瞳が、怯えていた。
「藤村さん……。
こちらの方と一緒に、棚橋さんのお部屋に行ってもらえないかしら?
若宮に連絡取ろうとしたんだけど……。
携帯が通じないの」
縋るような瞳を向けられ、心ならずも由美はうなずいていた。
もちろん、ミサがああなってしまったことへの、後ろめたさがあった。
しかし、その理由を明かすことが出来ないのも事実だ。
由美は、姉に伴われ、ミサの部屋に向かった。
□
ミサは、ベッドの傍らに、膝を抱えて座っていた。
一見しただけでは、ことさらな変化は感じられない。
しかし、ミサの瞳は、カーペットの一点を見つめたまま、揺らごうとしなかった。
「ずっと、こんな調子なのよ。
何言っても上の空で……。
ときどき、ひとりごと言うだけ。
あなた、えーっと、藤村さんだったわよね。
ちょっと話しかけてみてくれない?」
姉に見下ろされ、由美はうなずいた。
姉は、人に命じることに慣れているようだった。
由美は、ミサの傍らに身を屈めた。
「ミサちゃん。
お姉さんが心配して、来てくれたんだよ」
「ミサ?
この子、ミサって呼ばれてるの?」
そう言って姉は、傍らのベッドに、勢いよく腰を落とした。
スプリングの軋みと共に、マットレスが揺れた。
心配になって来てみたの。
さっき、会って来たんだけどね。
やっぱりおかしくて……。
膝抱えて座ってるだけなのよ。
目に精気が無いって言うか……。
で、部屋にあの子残して、フロントに事情を聞きに来たの。
でも、いつもいらっしゃる方がお休みみたいで、要領を得ないのよ」
そう言って姉は、フロントのスタッフに、咎めるような視線を投げた。
スタッフは、この姉から、ずいぶんと問い詰められていたようだ。
姉の視線を受けた瞳が、怯えていた。
「藤村さん……。
こちらの方と一緒に、棚橋さんのお部屋に行ってもらえないかしら?
若宮に連絡取ろうとしたんだけど……。
携帯が通じないの」
縋るような瞳を向けられ、心ならずも由美はうなずいていた。
もちろん、ミサがああなってしまったことへの、後ろめたさがあった。
しかし、その理由を明かすことが出来ないのも事実だ。
由美は、姉に伴われ、ミサの部屋に向かった。
□
ミサは、ベッドの傍らに、膝を抱えて座っていた。
一見しただけでは、ことさらな変化は感じられない。
しかし、ミサの瞳は、カーペットの一点を見つめたまま、揺らごうとしなかった。
「ずっと、こんな調子なのよ。
何言っても上の空で……。
ときどき、ひとりごと言うだけ。
あなた、えーっと、藤村さんだったわよね。
ちょっと話しかけてみてくれない?」
姉に見下ろされ、由美はうなずいた。
姉は、人に命じることに慣れているようだった。
由美は、ミサの傍らに身を屈めた。
「ミサちゃん。
お姉さんが心配して、来てくれたんだよ」
「ミサ?
この子、ミサって呼ばれてるの?」
そう言って姉は、傍らのベッドに、勢いよく腰を落とした。
スプリングの軋みと共に、マットレスが揺れた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2010/07/16 07:28
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『城橋』では、勢いをつけて坂を上るためにスピードを上げたんですが……。
ここは、逆です。
川に向かって下り坂になってるので……。
自然とスピードが出るようです。
橋が見えてきました。
欄干の無い、低い橋です。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20100710211148fd4.jpg
「こん橋は、『沈み橋』と云います。
その名のとおり、大水の時は水の中に沈む橋です」
沈下橋というやつですね。
以前にも書いたと思うけど……。
わたしは、橋が苦手なんです。
欄干の近くには寄れない。
特に、欄干の隙間から見える水面には、恐怖を覚えます。
ましてや……。
欄干のない橋なんて、とうてい渡れません。
実は、高知の四万十川の見所のひとつに……。
沈下橋があったんですが……。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20100710211148d1b.jpg
怖いのでパスしました。
まさか、こんなとこで、沈下橋が待ち受けてるとは……。
でも……。
飛び越せそうな狭い川に掛かる橋は短く……。
恐怖を感じる間もなく渡り切ってしまいました。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201007102111495bf.jpg
程なく、第一の立ち寄り場所、仏山寺に着きました。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201007102112113a9.jpg
「降りてもらう前に、馬車の向きを変えますけん、少々お待ちください」
お馬さんが、ゆっくりと回り始めました。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2010071021115101d.jpg
狭い道幅ですが、毎回ここでUターンしてるんでしょう。
ウマいもんです。
やり直すこともなく、馬車は石垣に沿って反対を向きました。
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2. Mikiko- 2010/07/16 07:29
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お客さんは、ひとまず下車し、仏山寺の見学です。
見学時間は10分。
子供たちは、お寺より馬の方に興味があるらしく……。
馬の顔近くまで寄って、熱心に見てます。
わたしたちは大人なので……。
とりあえず、お寺を見てきましょうか。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201007102112104a9.jpg
臨済宗のお寺のようです。
山門は古そうで、古刹の雰囲気を期待したんですが……。
本堂は、新築間もないようでした。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2010071021121054c.jpg
馬車に戻りましょう。
子供たちは待ちきれない様子で、すでに座席に座ってました。
中には、座席から立ち上がって、わたしたちを恨めしげに迎える子も……。
まだ10分経ってないからね!
さて、出発進行です。
お馬さんは、石垣沿いに左側を歩みます。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20100710211147d59.jpg
狭い道ですが、これならクルマともすれ違えますね。
かと言って、寄りすぎたら、馬車が石垣を擦っちゃいます。
馬車は、石垣と絶妙な間隔を保って進みます。
偉いもんです。
もと来た道を戻ります。
また、『沈み橋』が見えて来ました。
馬車のスピードが上がります。
さっきは、下り坂で自然にスピードが上がるのかと思ってましたが……。
よく考えたら、橋を境に、今度は上り坂になるわけですから……。
そのために勢いを付けているようです。
橋を渡りきったところで、道がY字に分かれてます。
先ほどは右の道から来たんですが……。
お馬さんは、迷うことなく左の道を選びました。
http://blog-imgs-46.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201007120900582de.png
続きは、次回。
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3. フェムリバ- 2010/07/16 20:34
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こんな高圧的な人だと、私なら疲れを理由に断っちゃうな(汗)
角が立たないようにやんわりですけどね。
あと
断りの最後に「許してください・・・」を使えば、しつこい方でも必ず引き下がってくれちゃいます♪
こういう小川みたいな所の橋でも駄目とは・・・
筋金入りの橋恐怖症ですな。
しかし
「沈下橋」・・・欄干が無い!!
ちょっと危ないな(汗)
お寺はけっこう好きですけど・・・
今回は、子供達に混じってお馬さんに張り付いちゃうかもー
でも
お馬さん、馬車の横幅を認識してるのでしょうか?
賢いですねぇ(驚)
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4. Mikiko- 2010/07/16 20:56
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角が立たないように断れる人は、なかなかいないと思うよ。
うらやましいです。
わたしなんか、断れずに引き受けて……。
結局、潰れちゃうタイプだな。
欄干があると、水の抵抗や漂着物で、橋が流されちゃうからね。
でも、欄干が無いのは、吊橋より怖いよな。
夜なんか、どうやって渡るんだろ?
匍匐前進か?
ほんまに、賢いお馬です。
人間でも……。
自分の横幅を認識してないオバハンとか、いるのにね。