2009.4.12(日)
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永遠に続くかと思われた煉獄の日々は、唐突に終わりを告げた。
女教師が死んだのだ。
事故だった。
小雨の降り続く夕刻……。
学校近くのS字カーブだった。
女教師の運転する赤いクーペは、センターラインを越えて突っ込んできた大型トラックと、真正面から激突した。
赤いクーペは激しく炎上し、美弥子を苛んだ肉体は、その場で骨になった。
事故の日も、美弥子の携帯には呼び出しメールが入っていた。
しかし、重い生理に苦しんでいた美弥子は、どうしても女教師の前に性器を曝す気にはなれなかった。
美弥子は放課後、黙って帰宅した。
あの日、女教師の命に従っていれば……。
あの時間、女教師がクーペを駆ることは無かった。
自分が殺した……。
美弥子は苦しんだ。
もちろん、女教師を愛していたからではない。
憎んでいたからこそ、苦しんだのだ。
ただ、「自分が殺してしまった」という事実だけが、冷たく美弥子を浸した。
そこは氷の海だった。
しかし、時と共に、自分の心ではなく、身体が悲しみ出したことに気づいた。
あの指を、あの唇を失ったことを、身体が悲しみ始めていた。
誰からも触れられなくなった身体が、悲鳴を上げていた。
新たな煉獄の日々が始まった。
夜ごと、狂ったようにオナニーに耽った。
それでも昼間、身体は泣き出した。
ある日の放課後。
ついに耐えきれなくなった美弥子は、保健室に忍び込んだ。
新しい養護教諭はまだ赴任しておらず、保健室は無人だった。
そっと物入れを開けた。
空のままだった。
微かな尿臭もそのままだ。
隣のロッカーを開いた。
女教師の白衣が、まだ下がっていた。
一枚を取り出す。
小さな白衣だった。
突然、美弥子の頬を涙が伝った。
女教師が死んでから、初めて流れる涙だった。
「先生……」
美弥子の涙が白衣に落ちた。
白衣には、そこここに染み跡があった。
この白衣に涙を零しに来たのは、美弥子だけではなかったのだ。
美弥子は、泣きながら全裸になった。
白衣を抱き締めて物入れに入った。
「ごめんなさい!
ごめんなさい、先生。
許して……。
美弥子を許して」
白衣に顔を埋め、泣きながらオナニーした。
保健室を後にするとき、美弥子の顔からは表情が消えていた。
その日を境に、美弥子は誰からも心を閉ざした。
そう、この日、由美と出会うまで……。
永遠に続くかと思われた煉獄の日々は、唐突に終わりを告げた。
女教師が死んだのだ。
事故だった。
小雨の降り続く夕刻……。
学校近くのS字カーブだった。
女教師の運転する赤いクーペは、センターラインを越えて突っ込んできた大型トラックと、真正面から激突した。
赤いクーペは激しく炎上し、美弥子を苛んだ肉体は、その場で骨になった。
事故の日も、美弥子の携帯には呼び出しメールが入っていた。
しかし、重い生理に苦しんでいた美弥子は、どうしても女教師の前に性器を曝す気にはなれなかった。
美弥子は放課後、黙って帰宅した。
あの日、女教師の命に従っていれば……。
あの時間、女教師がクーペを駆ることは無かった。
自分が殺した……。
美弥子は苦しんだ。
もちろん、女教師を愛していたからではない。
憎んでいたからこそ、苦しんだのだ。
ただ、「自分が殺してしまった」という事実だけが、冷たく美弥子を浸した。
そこは氷の海だった。
しかし、時と共に、自分の心ではなく、身体が悲しみ出したことに気づいた。
あの指を、あの唇を失ったことを、身体が悲しみ始めていた。
誰からも触れられなくなった身体が、悲鳴を上げていた。
新たな煉獄の日々が始まった。
夜ごと、狂ったようにオナニーに耽った。
それでも昼間、身体は泣き出した。
ある日の放課後。
ついに耐えきれなくなった美弥子は、保健室に忍び込んだ。
新しい養護教諭はまだ赴任しておらず、保健室は無人だった。
そっと物入れを開けた。
空のままだった。
微かな尿臭もそのままだ。
隣のロッカーを開いた。
女教師の白衣が、まだ下がっていた。
一枚を取り出す。
小さな白衣だった。
突然、美弥子の頬を涙が伝った。
女教師が死んでから、初めて流れる涙だった。
「先生……」
美弥子の涙が白衣に落ちた。
白衣には、そこここに染み跡があった。
この白衣に涙を零しに来たのは、美弥子だけではなかったのだ。
美弥子は、泣きながら全裸になった。
白衣を抱き締めて物入れに入った。
「ごめんなさい!
ごめんなさい、先生。
許して……。
美弥子を許して」
白衣に顔を埋め、泣きながらオナニーした。
保健室を後にするとき、美弥子の顔からは表情が消えていた。
その日を境に、美弥子は誰からも心を閉ざした。
そう、この日、由美と出会うまで……。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2009/04/12 07:41
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保健室シーン、ついについに完結しました。
思えば、保健室のシーンが始まったのは、第25回のことでした。
25回を投稿したのは、昨年の7月16日。
それから今日まで、回数にして149回、期間にして9ヶ月弱……。
原稿用紙に換算すると、500枚近い分量になるかと思います。
長かった……。
長すぎました。
それは自分でもわかってたけど……。
筆が止まらなかった。
この保健室シーンを書き始める前は、ほんとにちょっとした寄り道のはずだったんです。
美弥子が、パイパンの女性にトラウマを持ってるって事情だけ書いたら、すぐに女子大トイレに戻るはずだった……。
それが、戻れなくなったんです。
すべては、女教師さんのせい……。
最後まで固有名詞を与えなかったことからもおわかりのように、この女教師、ほんのちょい役のつもりで出しました。
ところがあなた、思いがけない大活躍始めて、9ヶ月も居座っちゃった。
いえ、女教師のせいにしちゃいけませんね。
わたしのせい。
わたしが、この女教師さんに惚れちゃったせい。
この女教師は、わたしの理想の女性なんです。
こうなりたいっていう理想じゃありませんよ。
こんなふうに責められたいって願いを、すべて叶えてくれる人だったんです。
だから、わたしのほうで離れられなくなった。
これが、保健室が長引いた真相。
でも、もう止めなきゃって思った。
まだいくらでも書けちゃうけど、これ以上やったら、小説自体を壊してしまうって……。
で、女教師さんにお別れを言うことにしました。
生きてられると未練が尽きないので、殺すしかありませんでした……。
女教師さん、ご苦労さまでした。
心から愛してました。
さて、次回から、ようやく女子大トイレに戻ります。
2008年7月13日投稿の、第24回に続くシーンが始まります。
視点の主は、由美です。
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2. もんぷち- 2009/04/12 14:22
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衝撃的な結末でした…
最後は「女教師と美弥子が愛欲に耽っている…→他教師に見つかる→事情を聞かれた美弥子は、女教師から持ちかけられた関係だと話してしまう→女教師は教壇を去る」くらいかと思ってましたが…。
まさか殺してしまうとは…。
激しい恋愛をしてきたmikikoさまならではですね。
忘れるべき人の存在を心の中で殺すのだって苦しいのに、理想の女性を(小説の中とはいえ)殺すのは辛かったでしょう。
読者の反応も気になるかとは思いますが、書きたいだけ膨らませたい気持ちもあってもよいと思いますよ…φ(..)
この後、「嘆く美弥子を後ろから抱き締める万里亜様…2人は女教師のくれた快感を思い出すように貪りあう」とか「嘆く美弥子を物陰から見つめ、女教師のかわりに攻め立てるキャプテン」とか、膨らみに膨らんでしまう、学校というストーリー性のある舞台。
いつか番外編でその後の学園物語とかどうですか?
ひとまずお疲れさまでした\(^o^)/
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3. Mikiko- 2009/04/12 17:54
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休み時間に読んでくれたのかな?
しかも、携帯から長文のコメントまで入れてくれて……。
いつもやさしいね。
ありがとう。
ひどく辛かったけど……。
自分の気持ちにケジメをつけるためには、殺すしかありませんでした……。
ははは。
実生活でこれやったら、タイヘンですよね。
しかし、こんなことできちゃうのって、ほんと作者の特権だよね。
なんでも出来るんだって、少し怖くなりました。
小説を壊してしまうことだって、簡単にできる……。
番外編の件。
いいね!
保健室なら、いくらでも書けるし。
それに、万里亜さまの生徒会室の中も、ホントは書きたかったんだ。
ああ、身が2つあればなぁ。
片っぽで由美美弥の蜜月書いて、もう片っぽで学園物語書けるのに……。
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4. shiku- 2009/04/12 19:36
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おつかれです。。Mikiko姫。
…まさか死ぬなんて‥あまりのビックリさに、、コメント書いております。
本当に女教師サマ…Mikiko姫おつかれさまでしたm(_ _)m。。
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5. Mikiko- 2009/04/12 19:48
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なんで急に姫なの?
どっちかっていうと、毒リンゴ食わせる意地悪な王妃キャラだろ?
そんなにびっくりした?
でも、美弥子が記憶を扼殺するほどのトラウマ抱えたわけだからさ。
ありきたりな別れじゃ、収集つかんでしょ……。
ケータイ小説だと、やたらと登場人物が死ぬみたいだけどね。
できればMikiko姫は、登場人物を殺したくありません。
みんな、わたしの分身だから。
これだけは誓いますが、由美と美弥子は絶対に殺しません。
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6. 淡雪- 2009/04/12 21:31
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ほんの数日事情でこちらにこれなかったのですが、(律儀なわたしは欠席届提出済み)とてもびっくりしました。
死んでしまったのね。しかも事故で。(TT)
ハト派のわたしには、考えられない展開でした。
保健室のセンセイのご冥福をお祈りいたします。
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7. Mikiko- 2009/04/12 21:53
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欠席届は受領済みでした。
いつも真っ先に入る淡雪さんのコメントが無いので、読者のみなさんのほうが心配したんじゃないですか?
ひょっとしてあの女教師は、淡雪さんじゃなかったのかって思った人も……。
でも、女教師の死って、そんなに以外でした?
3人とも、すごい驚かれたみたいで……。
わたしのほうが、ちょっとびっくり。
でも、考えてみれば、9ヶ月も主役を張ってきたんですからね。
主演女優の死。
やっぱ、インパクトあるか……。
今日、4月12日は、女教師忌として、長く偲んでいきたいと思います。