2008.6.15(日)
扉から出てきたのは、美弥子だった。
由美は動転した。
『こんなところで会うなんて……』
由美は目を伏せ、ぎこちなく会釈すると、逃げるように真横の個室に入った。
扉の向こうを、美弥子の靴音が通り過ぎていった。
まだ心臓がドキドキしている。
無意識に鍵を掛けたものの、この和式トイレで用を足す気にはなれなかった。
その時だった。
突然、ある想念が由美の脳裏をよぎった。
『奥の個室では、ほんの少し前まで、美弥子さんが性器を曝していた……』
一度浮上したそのイメージは、みるみる膨らんで由美の頭を一杯にした。
由美は天井を見上げた。
心臓の鼓動が急激に高まっていた。
由美は両手で胸を押さえた。
『美弥子さんが性器を……』
ついさっきまで、美弥子が裸の尻を載せていた便器。
そこに自分も剥き出しの尻を載せ、美弥子と同じように性器を曝したい。
そうすれば二人の性器は、同じ空間で曝されたことになるのだ。
由美は天井から目を下ろした。
もう、ためらいは無かった。
震える指で鍵を外し、扉を開く。
気配から誰も居ないことは判っていたが、踏み出す爪先まで震えていた。
懸命に何気ない振りを装って扉を出た由美は、そこに人が居ないことを確認すると、猫のように身を躍らせ奥の個室に滑り込んだ。
背中で扉を閉め、後ろ手に鍵を掛ける。
その瞬間、由美の両目は大きく見開かれた。
個室の中は、噎せ返るような濃厚な香りで満たされていたのだ。
大便臭である。
『美弥子さんは、ここで……』
ほんの少し前、美弥子がここで脱糞していた。
美弥子の肛門から排泄された大便が、まだ香っているのだ。
もちろん、その実体は下水管の彼方に失われてしまっていたが、残り香は満々と個室に満ちていた。
馥郁たるその香りは、濃霧のように由美の身に降り注ぎ、鼻孔の粘膜を浸し、そして染みた。
由美は、持っていたバッグをかなぐり捨てた。
フレアスカートをたくし上げようとして、それが両手に纏わるのが厭わしく、躊躇無く腰から外して下に落とす。
尻の周りに邪魔者は要らなかった。
由美は動転した。
『こんなところで会うなんて……』
由美は目を伏せ、ぎこちなく会釈すると、逃げるように真横の個室に入った。
扉の向こうを、美弥子の靴音が通り過ぎていった。
まだ心臓がドキドキしている。
無意識に鍵を掛けたものの、この和式トイレで用を足す気にはなれなかった。
その時だった。
突然、ある想念が由美の脳裏をよぎった。
『奥の個室では、ほんの少し前まで、美弥子さんが性器を曝していた……』
一度浮上したそのイメージは、みるみる膨らんで由美の頭を一杯にした。
由美は天井を見上げた。
心臓の鼓動が急激に高まっていた。
由美は両手で胸を押さえた。
『美弥子さんが性器を……』
ついさっきまで、美弥子が裸の尻を載せていた便器。
そこに自分も剥き出しの尻を載せ、美弥子と同じように性器を曝したい。
そうすれば二人の性器は、同じ空間で曝されたことになるのだ。
由美は天井から目を下ろした。
もう、ためらいは無かった。
震える指で鍵を外し、扉を開く。
気配から誰も居ないことは判っていたが、踏み出す爪先まで震えていた。
懸命に何気ない振りを装って扉を出た由美は、そこに人が居ないことを確認すると、猫のように身を躍らせ奥の個室に滑り込んだ。
背中で扉を閉め、後ろ手に鍵を掛ける。
その瞬間、由美の両目は大きく見開かれた。
個室の中は、噎せ返るような濃厚な香りで満たされていたのだ。
大便臭である。
『美弥子さんは、ここで……』
ほんの少し前、美弥子がここで脱糞していた。
美弥子の肛門から排泄された大便が、まだ香っているのだ。
もちろん、その実体は下水管の彼方に失われてしまっていたが、残り香は満々と個室に満ちていた。
馥郁たるその香りは、濃霧のように由美の身に降り注ぎ、鼻孔の粘膜を浸し、そして染みた。
由美は、持っていたバッグをかなぐり捨てた。
フレアスカートをたくし上げようとして、それが両手に纏わるのが厭わしく、躊躇無く腰から外して下に落とす。
尻の周りに邪魔者は要らなかった。