2017.9.12(火)
「ここが陰部じゃ」
ここ、と笹津由は大きく開いた我が両脚の付け根を指差した。
「ほと(陰)とも申すが」
「ほ、と……」
「陰部の陰は『ほと』とも読み申す」
「ほと」
呟くように、言葉を零す恭子(のりこ)。生まれて初めて口にする言葉はしかし、ほろりと恭子の唇から漏れ出た。
(ほと)
(ほと)
(ほ、と……)
一言漏らしたのみ、後は幾度も心の内で呟く恭子であった。言葉はともかく、「ほと(陰)」の実態はよくは分らぬ恭子であった。
その心中を見透かしたか、笹津由は声音(こわね)を改めた。
「姫よ」
「……あい……」
「宜しきか。ようく御覧(ごろう)じられよ」
重ねて、我が陰部を見よ、と笹津由は呼び掛けた。その笹津由の両腕は我が股間に伸べられた。
「陰部は、子を成すための大事なる処」
「あい」
「故に、その大事を守らんと、幾重にも門の如きものがあり申す。これ、このように」
言いつつ笹津由は、伸べた両腕の先、左右の示指と中指、合わせて四本の指の先で我が大陰唇を掻き開いた。小陰唇が転(まろ)び出る。笹津由は巧みに指を使い、小陰唇をも左右に開いた。
「ようく御覧(ごろう)じられよ」
よく見よ、と笹津由は重ねて恭子に命じた。
恭子は、その笹津由の開かれた陰部をまじまじと見詰めた。我が体にもむろん陰部はある。が、このように開かれた状態を目にするのは初めての事であった。
「どうじゃな、姫」
「あ……い……」
「如何に、見られる」
言葉を探す恭子であったが、漏れ出た言葉は更に一言。
「如何に、と云うても……」
「触れて、確かめられよ」
「触れて……よろしきか」
「無論。ただし強くはなりませぬ、そおっと、の」
言われて恭子は、おずおずと手を伸べた。開かれた笹津由のほと(陰)の中央当たりに指先を伸ばす。柔らかく湿ったものが指先に触れた。
「む……」
笹津由は微かに声を上げ、僅かに身じろぎをした。
その動きに誘われるように、恭子の指先は濡れた柔肉の上を滑る。滑った指の先は、やはり湿った肉の洞に吸い込まれた。
「おう」
これは笹津由。
恭子は言葉もなく、捉われた指の感触に我が全身を委ねた。
(これは……)
(なんと、これは……)
(締まる)
(締め付けらるる……)
(これは、なんと……)
(指、が……)
(動かぬ)
(おおお)
指に加わる圧力は、決して不快なものではなかった。
無論、痛みなどは無い。
その圧力は、無理に抗えば脱することの出来るほどのものであろう。
だが恭子はそうはしなかった。
(我が指を捉えおりしは……)
(笹津由が……ほと〔陰〕)
(これは……)
(心地……よし)
恭子がそのように感じたその時、締め付けが緩んだ。
恭子の指は、自然に押し出される。
今少し、と思ったとき、恭子の指は笹津由のほと(陰)の外にあった。
「姫、よ」
「……あい……」
「いま、姫が指のありし所は……」
「あい」
「ちつ(膣)と申す」
「ち、つ……」
「左様、しかしてそのさらに奥には子袋があり申す」
「こぶくろ……」
「左様、しきゅう(子宮)とも申すが、をみな(女)が子を宿すところじゃ」
「子、を……」
「姫、子は如何に為さるるものにあったかの」
「それは……」
すぐとは答えの出ぬ恭子に、笹津由はすかさず助け舟を出した。
「をみな(女)の卵と、をのこ(男)の……」
「精の液! それらが合わさることで子が出来まする」
「左様じゃのう、で、何処にて両者は合わさるのか」
「無論、をみな(女)の胎内」
「左様、より正しくはをみな(女)が子宮のさらに奥じゃが、今はそこまでは宜しかろう」
「あい」
「では、をのこ(男)の精の液じゃが、如何様にしてをみな(女)が子宮の奥にまで辿り着くか……」
「…………」
黙り込む恭子に、笹津由は答えを促した。
「どうじゃな、姫」
「わかり、ませぬ」
「姫、思い出されよ」
「先ほど、我は兵部殿の男根を口にしておったが」
恭子は瞬時に反応した。
「あい!」
「その折、我の口より白き液が漏れ零れたが……」
「あい」
「あの白き液が、あれが精の液」
「あの、あれ、が……」
「左様」
「ならば、師よ」
「む」
「精の液は、をのこ(男)の男根より出(いづ)ると……」
「左様」
「ならば師よ」
「ふむ」
「男根を出(いで)し後、如何にしてをみな(女)の胎内に……」
「それじゃが……」
笹津由は、再び言葉を切った。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2017/09/12 11:11
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大陰唇
【アイリス212】
小陰唇、膣、子宮。
笹津由センセの実践的性教育講座、今回は女性器の解説です。
が、ここで旗と、いや、はたと困りました。
と申しますのは他でもない、初めにあげました女性器各部の名称です。
この『アイリス平安京編』、用語や言葉遣いは極力平安期のものを用いる、という方針で書き進めて参りました。
無論、わたしの拙い古文の能力では、はなはだ心もとないと申しますか、テキトーと申しますか、になっておりますが、方針は方針。
そこで古語辞典をはじめ、各種辞書類を引きまくっておりますし、ネット検索も活用しております。が、さすがに生殖器官の名称は発見できませんでした。
女性の外部生殖器は「ほと(陰)」、男性のそれは「はせ、玉茎」などは分りましたが、上記の部分構造となりますとお手上げでした。そこでしょうこと無しに大陰唇、等の現代語を用いましたわけで「能なしめ」と、笑ってご寛恕いただきたいと思います。
もし、ご存知の方是おいでになれば、ご教示いただければ望外の喜びでございます。
作者軽薄、いや敬白
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2. Mikiko- 2017/09/12 18:46
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新刊で買える辞書では……
↓『新修隠語大辞典』というのがありました。
http://books.rakuten.co.jp/rb/15022560/
↓高槻市の図書館にもありましたが、貸出不可でした。
https://www.library.city.takatsuki.osaka.jp/opw/OPW/OPWSRCHTYPE.CSP?DB=LIB&MODE=1&PID2=OPWSRCH2&FLG=LIST&SRCID=1&SORT=-3&HOLD=NOHOLD&WRTCOUNT=10&PAGE=1&LID=1&HOLDSEL=2
わたしが知ってるのは、「さね」でしょうか。
クリのことです。
↓雅語では、「ひなさき」と称するようです。
http://www.weblio.jp/content/%E3%81%B2%E3%81%AA%E3%81%95%E3%81%8D
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3. ハーレクイン- 2017/09/12 22:37
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『新修隠語大辞典』
高槻市には、主な図書館が5館ありますが、そのうちの2館にありました。
しかし、ネット経由で借りるんならともかく、窓口で閲覧申し込みはやりづらいね。
『さね』
核、ですね。
『ひなさき』は広辞苑にありました。雛尖、と書くそうです。
なかなか平安っぽいですね。使わせてもらおうかなあ。
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4. Mikiko- 2017/09/13 07:26
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大阪府立や茨木市の図書館にもありましたが……
やはり、貸出不可でした。
『新修隠語大辞典』だけじゃなく、辞典類は貸し出ししないんだと思います。
でも、開架式の図書館であれば……。
本棚から取り出して見れると思いますよ。
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5. ハーレクイン- 2017/09/13 12:05
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開架式
なるほど。
とりあえず一度偵察に行ってみるかな。
しかし、平安京編もそろそろクランクアップだしなあ(ホンマかーい)。
どちらにしても、行き当たりばったりに書いてるというのがバレバレですね。
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6. Mikiko- 2017/09/13 19:40
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高槻市立図書館
小寺池と中央にありますね。
小さい図書館が閉架式ということは、まずありません。
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7. ハーレクイン- 2017/09/13 21:22
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高槻市立中央図書館
市内最大、ハブ図書館?という立場で、わたしの行きつけです。
蔵書は開架と閉架の併用ですね。
小寺池(こでらいけ)図書館
市内の西方、茨木市との市境近くにあります。市バスの終点の前に立地し、阪急電車の駅近。交通至便です。
この図書館の裏に広がるのが小寺池。さほど大きな池ではありませんが、冬場はカモ類が飛来します。池の周りには遊歩道が整備されていまして、いわゆる「市民のオアシス」です。
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8. Mikiko- 2017/09/14 07:18
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池と云うからには……
人工の水溜まりなんですね。
農業用の溜め池だったんでしょうか。
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9. ハーレクイン- 2017/09/14 08:28
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小寺池
大阪府のHPに記載がありました
●大阪府のため池紹介
【古寺池(高槻市】
緒元:堤高2.0m、堤長120m、貯水量0.9万m3、満水面積1.1ha
あとは写真が2枚、
所在場所を示す地図(国土地理院1/25,000)が1枚。
これだけ。
由来とか、利用状況などは書かれていません。あっさりしたものです。
高槻市のHPに至っては名称のみでした。
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10. Mikiko- 2017/09/14 19:47
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0.9万m3
これって、9千m3のことですか?
なんで、0.9万なんて書くんですかね?
満水面積の1.1haは、11,000㎡。
9,000m3÷11,000㎡=0.82m。
平均、82㎝。
こんなに浅いんですか?
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11. ハーレクイン- 2017/09/14 22:52
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0.9万
少しでも多く見せよう?という、さもしい魂胆じゃないですかね。
平均水深0.82m
確かに、計算するとそうなりますね。
元は人造のため池なんじゃないでしょうか。
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12. Mikiko- 2017/09/15 07:28
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この水深では……
夏は、そうとうに水質が悪化するのでは?
魚は住めるんですかね?
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13. ハーレクイン- 2017/09/15 13:02
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水清ければ……
魚棲まず、とか。
何かはいるんでしょうが、釣り人は見かけたことありません。
「魚釣り禁止」なのかもしれません。
夏の水質悪化
夏場に行ったことないんですよね。次の夏に確認しましょう(鬼が笑うわ)。