2017.9.5(火)
「おおおおお」
恭子(のりこ)は仰(の)け反り、天を仰いだ。その顔は天と向き合い水平になった。顎先は何者かを糾弾するかのよう突き出され、喉元は剥き出しに、無防備に曝された。その反動か、恭子の胸は供物であるかに笹津由の顔に押し付けられた。恭子の左の乳房は笹津由の開いた口唇の、右のそれは笹津由の左手の中にある。柔らかな恭子の双丘は、笹津由の顔と左手の中で大きく拉(ひしゃ)げた。
「ぐむ」
これは笹津由。
その口と鼻孔を恭子の左の乳房に塞がれ、息を求めて漏らした喘ぎであった。取り込んだ息と入れ違いに漏らした喘ぎは、微(かす)かにをみな(女)の肉欲を載せていた。
「かはあああ」
これは恭子。
両の乳首を笹津由に蹂躙された、いや、半ば自ら押し付けた形になった恭子の喘ぎであった。その喘ぎには、をみなご(少女)の色合いはもはや無く、熟し初めた果実か、をみな(女)の肉欲をたっぷりと載せていた。
をみな恭子。
肉欲の何たるかは未だ知らずとも、その肉は自らの欲を露(あらわ)にする悦びに明らかに喘いでいた。いや、喚(おめ)いていた。
嬉しや。
楽しや。
よし。
良し。
好し。
佳し。
吉し。
嘉し。
慶し。
よし
心地よし。
心地良し。
心地好し。
心地、よし。
よきかな。
良きかな
好きかな
佳きかな。
佳き哉、良き哉、好き哉……。
ほしや。
欲しや。
ほしや欲しや欲しや……
おお、おお、おお、おお……
「おおおおおおおっ」
恭子は、我が肉の喚(おめ)きをそのまま口にし、喚いた。
をみな(女)恭子は、肉欲の悦びをその全身で喚いた。
花のをみな恭子、開花の瞬間であった。
笹津由が、その顔と左手を恭子の胸のふくらみから外した。恭子の背を支えていた右手で軽く恭子に合図を送る。
恭子はゆるゆると体を戻した。我が両腕を開き、しかし未練をたっぷりと残し、笹津由の体の離れるままにした。恭子の左の乳首から、光る液の筋が伝い降りてゆく。たっぷりと舐めまわした笹津由の唾(つはき)であった。恭子の乳首は左右とも、はち切れんばかりに勃起していた。をみなご(少女)恭子には、一度たりともみられなかった乳首の変化であった。恭子の両の乳首は、我れをみな(女)なり、と高らかに宣言しているとも見えた。
「姫、よ」
「あ、い……」
即答する恭子の声音(こわね)は、些(いささ)か嗄(しわが)れていた。知り初(そ)めたをみなの肉欲を、半ば剥き出しにしているかに聞こえた。
笹津由は、恭子のその声音に恭子の変化を感じ取ったようであったがそれには触れず、恭子に問いかけた。
「どうじゃな、姫」
どう、とは何が、とは恭子は聞き返さなかった。笹津由の問いの意図は明らかであった。
「心地よく……おじゃりました」
「さようか、それは重畳」
「かような心地よさ、生まれて初めての事」
「さもあらん」
「師よ」
「何か」
「この心地よさ、我らが只今の問答に関わりあることにおじゃりましょうや」
「無論のこと」
「をみな(女)とをのこ(男)にて子を成す、これに関わりある心地よさなり、と」
「さよう、姫よ」
「あい」
「姫の下腹、よおく御覧(ごろう)じられよ」
言われて恭子は己が視線を深く下げた。視線の先は下腹から両の内腿に行き当たる。目にも眩しく白い恭子の左の腿の内側は、濡れ濡れと光っていた。その光の筋は股間の中心から下へ延び、膝の辺りまで達していた。
「これ、は……」
それ以上の言葉の出ぬ恭子に、笹津由の声が被さる。
「ゆまり(尿)には御座りませぬぞ」
「………」
なおも言葉の出ぬ恭子に、笹津由の声が重なる。
「その液、子を成すための、支度(したく)の液とでも申そうか」
「支度の……」
「さよう、その液なくば、子を成すことは難儀なることになり申す」
「難儀に……」
「左様、特にをみな(女)にとりては大いなる苦痛と」
「これ、が……」
恭子は、つと右手を伸べた。右の示指(じし)と中指(ちゅうし)、二本の指先で我が内腿に軽く触れた恭子は手指を戻した。眼前に指先を翳す。二本の指の先は、恭子の内腿と同様、濡れ濡れと光っていた。
恭子は目を凝らす。睨むが如く見詰める我が指の先を濡らす液は無色透明。軽く鼻先を寄せるが何の香りも無い。恭子は、濡れた二本の指の先と、拇指とを擦り合わせた。液は軽く粘りつくように感じられた。笹津由の言葉の通り、ゆまり(尿)で無いことは明らかであった。
「これ、は……」
我が指の先から外した視線を笹津由に当て、恭子は問いかけた。
「何と申す液にありましょうや」
「さ、それは……」
「名は、御座りませぬか」
「さよう、をみな(女)の液、愛の液、などと云うことあるようじゃが」
「をみな、の……」
「淫水、なる言の葉もおじゃるが」
「いんすい……」
「淫らなる水、と書き申す」
「淫ら……?」
「淫ら、の意はまた追い追いお教え申そう」
「あい……」
「じゃが淫水は、をのこの成す精の液を表すとも云うがのう」
「………」
「名はとりあえず宜しかろう、我らの間にてはをみなの液、にしておこうぞ」
「あい」
恭子は少しく言葉を改めた。師に対する弟子の声音になった。
「して、師よ」
「おう」
「このをみなの液、子作りには欠かせぬ、と」
「左様」
「で、をみなの液は……」
「うむ」
「先ほどの如く、心地よさを感じたときに成されるものにありましょうや」
「左様、姫よ、御覧じられよ」
言うなり、笹津由は敷き栲(しきたえ;敷布団)にその身を横たえた。仰臥位である。そして左右の脚を大きく開き、両の膝を軽く立てた。
両膝立て開脚位。
をみな(女)が、まして笹津由が為すとは思いもかけぬ姿勢に、恭子は大きく両の目を見開いた。言葉は無論無い。恭子は無言、吸い寄せらるるかの如く、笹津由の姿態を見詰めるばかりであった。その身は、何ものかの呪縛にあったかの如く、微動だにしない。
「さ、姫、我が脚の間に来られよ」
「………」
「早う、為されよ」
重ねての指示に、ようやく恭子の呪縛が解けた。それでも恭子の動きはぎごちない。ゆるゆると両の膝で躙(にじ)り、少しずつ動き、ようやく恭子は笹津由の開いた両脚の間に身を移した。
笹津由は、些かの苛立つ風情も無く、悠然と恭子に声を掛けた。
「宜しきか、姫、ようく御覧(ごろう)じられよ」
「………」
「我が両の脚の間、脚の付け根を、じゃ」
言われて恭子の目は、吸い寄せらるるが如くに笹津由の股間を見詰めた。
股間は黒く煙(けぶ)っていた。
笹津由の陰毛は、さほど豊かなものではなかった。その陰部の腹側の上縁を軽く取り巻き、まさに煙の如き陰りを見せていた。その様は、恭子には馴染みのものであった。
近頃は無くなったが、幼い頃の恭子は、笹津由に抱かれて湯浴みするのが決まりであった。湯浴みの折節(おりふし)、恭子は笹津由の陰部を彩る陰毛について問うたものであった。
それは何か。
名は何と。
なんの為の。
我が身にはなぜに無きか。
答えを逸らす笹津由ではなかった。
陰毛。
いんのけ。
陰部を覆う毛。
陰部は大事なる処。
その陰部を守るための。
いずれ。
いずれ姫にも。
大きゅうならるればいずれ。
こは、大人の証。
はよう、大きゅうなられよ。
沢山に食されて。
元気よく遊ばれて。
さすれば。
姫もすぐと大人じゃ。
毛も生えられようぞ。
はよう、大きゅうなられよ……。
「宜しきか、姫」
改めて声を掛けられ、恭子は我が両目を手指で軽く拭う。恭子の目は薄く涙に覆われていた。懐かしさゆえの涙であった。
コメント一覧
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1. 手羽崎 鶏造- 2017/09/05 09:15
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(やったぁ コメント一番乗りだっ)
童謡?「結んで開いて」の中に、
股(まーた)開いて、手を打って♪
という部分がありましたな。
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2. ハーレクイン- 2017/09/05 09:27
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恭子-笹津由
性に目覚める頃、の恭子と、ベテラン笹津由の絡み。
本格的に始まりました。
が、時間切れ。
邪魔が入るのか。いや、そうじゃなくてわたしがもう出かけねばならぬのです。
続きは後刻。ひとまずさらばじゃ。
いや、手羽崎 鶏造さんに再度ご登場願いたく、伏して御願い奉りますぅ~。
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3. ハーレクイン- 2017/09/05 17:29
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陰毛
いんのけ。
陰部を覆う毛。
アイリス平安京編
何の考えも無しに始めました、雅な物語(どこがや)。
困っております。
苦慮しております。
それは言葉遣い、それにファッション。
わかりません。
何とか「らしく」あるようにはしておりますが、しょせん付け焼刃の胡麻化し。まさに噴飯物の昔語りです。
とっとと店じまいしたいのですが、始めてしまったものを無理やりに「幕」にはできません。
せめて恭子に、人生初のエクスタシーを味わわせてやりたい。それまでは、ということで、今しばらくお付き合いをお願い申し上げます。
で、今回の問題は、陰毛、
わたしの古語辞典(高校の古文の時間に使ったもの)には記載が無いようです。
いいのかなあ。
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4. Mikiko- 2017/09/05 19:55
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いんのけ
対義語は、陽の毛。
陽毛(羊毛にあらず)。
頭髪のことであろうと思いましたが……。
どうやら、「陽毛」という言葉自体が無いようです。
「陽毛」の無い人もいるため、憚られるからでしょうか?
外人は、潔く禿げてるのに……。
日本人で、未練たらしくバーコードにする人が多いのはなぜなんでしょうね。
ただ禿げてるより、はるかにみっともないです。
最近は、丸刈りにする人が増えてますが、これも一種、裏返しですよね。
ショーン・コネリーなんて、堂々と禿げてて格好良かったですよ。
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5. ハーレクイン- 2017/09/05 22:43
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未練たらしい日本人
潔い欧米人。
そういう問題ではありません。
根源的には、遺伝子の歴史的変遷の問題でしょう。いわゆる「ルーツ」(ほんまかあ?)
「○○な日本人」とか称する“日本人もの”がいっとき流行りました。古くは『菊と刀』とか。
ピント外れなのが多いと見ますが、どうでしょう。
そういえば『話を聞かない男、地図が読めない女』ってのも流行りましたが、これは関係ないか。
手羽崎 鶏造さんへの返歌
♪ひらいたひらいた
なんの花がひらいた
…………
ひらいたとおもったら
いつのまにかつぼんだ
…………
つぼんだとおもったら
いつのまにかひぃらぁいたあ
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6. Mikiko- 2017/09/06 07:25
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欧米人にも……
↓バーコードはいました。
http://ccpics.net/node/52
どう見ても、みっともないです。
潔く禿げた方が、1000倍マシ。
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7. ハーレクイン- 2017/09/06 15:56
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欧米式バーコード
原理?はこちらと同じでしょうが、「足掻き方」が半端じゃないですな。
かなりキモい。
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8. 手羽崎 鶏造- 2017/09/07 06:51
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身を立て 名を上げ やよ禿げめよ
今こそ 分かれ目 いざ さらば ♪
これって、抜け毛の歌だったんだ。
(この無礼者っ!)
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9. ハーレクイン- 2017/09/07 15:56
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やよ励めよ
『仰げば尊し』
さっぱり歌わなくなったようです。
時の流れでしょうか。
「仰がれる」ようなセンセがいなくなったのでしょうか。
わたしの大学卒業の折。
ゼミのお別れコンパで大?合唱しました。
半ばからかい半分だったんですが、聞き入る教授連中は涙ぐんでいました。
いい歌なんでしょう。
映画『二十四の瞳』、大石センセ役の高峰秀子。袴姿、涙ぐんで聞き入る姿が印象的でした。
わたしも一応センセの端くれ。
誰か仰いで(アホ)。