Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
元禄江戸異聞 根来(二十)
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「元禄江戸異聞 根来」 作:八十八十郎(はちじゅう はちじゅうろう)


(二十)


 ふと我に返った羅紗は、夕日に染まった障子に向かって睫毛を二三度瞬かせた。
 それまでの気苦労が祟っているのだろう、つい書机にもたれたまま眠り込んでいたようである。
 その時、突然聞こえた子供の声に羅紗は大きく目を見開いた。
「あはは、お父上、こっちこっち」
 “鶴千代!!”
 立ち上がった羅紗が縁側の障子を開け放つと、外には幼少の頃から生まれ育った江戸屋敷の庭が広がっていた。
「ほら父上、お母様はあそこにいらっしゃいますよ」
 垣根の向こうから待ち望んでいた鶴千代が飛び出してきて、その後ろから懐かしい人の姿が現れた。
 “い、伊織様……”
 羅紗の瞳にみるみる熱いものが溢れた。
 “そうだ、伊織様が鶴千代を無事に連れ戻してくださったのだ。これからはこの江戸屋敷で、家族水入らずで暮らしていけるのだ……”
「母上、これから父上と釣りに行ってまいります。さあ父上、早く!」
「こ、これ鶴千代、もう少し落ち着いて……」
 羅紗は今にも駆け出しそうな鶴千代をたしなめると、伊織の方へまぶし気な眼差しを向ける。
「ははは、ご心配はいりません。若は私がお供しますので、それでは後ほど」
 あっという間に手を引かれて行く伊織の背中を、羅紗は胸を締め付ける思いで見送った。

「羅紗様……」
 いつの間にか夕闇が屋敷を包んで、背中の声に羅紗は振り返る。
「き、桔梗……」
 羅紗に向かって両手をついた大石桔梗が茣蓙の上に控えていた。
「お前も無事だったのですね。伊織様と共に若を無事に連れ帰ってくれて……、お前にはなんと礼を言えばよいか………」
 桔梗はその表情を少し和らげると、羅紗に向かって口を開く。
「私も無事お役目を果たして内心安堵しております……」
「ええ……。若の大事もさることながら、お前が無事に帰ったことも私は心から嬉しく思います」
「は、有り難き幸せ」
 一瞬体を低めた気丈な顔が、心なしか微かに赤らんだ。
「礼と言ってはなんだが、何か望みがあれば遠慮なく申してみよ」
 しばしの静寂のあと後、桔梗はゆっくりとその顔を上げた。
「私大石桔梗は、畏れながら……、畏れながら羅紗姫様に女にしていただきたく存じます」
「な、なに……!?」
 その言葉に羅紗は息を飲んだ。
 戸惑ったままの羅紗の前で桔梗はゆっくりと立ち上がった。
 裃を外して合わせを肩から滑らせる。
「き、桔梗……、お前何を……?」
 雪の様に白く滑らかな女の肌が羅紗の目にまぶしく映った。
 桔梗の両手が腰の物を緩めて、音もなく白い布が足元に滑り落ちる。
「羅紗様、桔梗を羅紗様のものにしてくださりませ……」
 小柄ではあるが引き締まった腰の括れから上に目を移すと、形よく盛り上がった両の乳房の先に乙女の恥じらいを映した桜色の乳首が煙っていた。
「桔梗……」
 羅紗はしばしうっとりとその裸体に見入っていた。
「い、いや」
 己が体に微かな変化を感じた時、羅紗は桔梗から目を逸らした。
「これからは伊織様と鶴千代とこの屋敷にて暮らして参るのじゃ。私にそのようなことは出来ぬ」
 首を振った羅紗の背中から別の女人の声がかかった。
「さて羅紗様、そのようなお暮しが待っているのでしょうか……」

 羅紗が後ろを振り返ると、そこには白い襦袢に身を包んだ初音が立っていた。
「伊織様はいずれお蝶のもとに帰っていくと思われます。命を懸けて好きおうた女同士の絆は、そうたやすく壊れぬものと……」
「初音」
 羅紗の瞳にみるみる悲しみの色が浮かんだ。
 初音は静かに白い合わせの帯を解き始める。
「私と桔梗は、一生羅紗様のそばでお仕え致します」
「し、しかし……」
 一糸まとわぬ姿になると、初音は音もなく次の間の襖を開け放つ。
 十二畳の座敷の真ん中に敷かれた白い布団が羅紗の目に入った。
「さ、大石様……こちらへ……」
 初音と桔梗は羅紗の両側から身を添わせると、ゆっくりとその身体を次の間へと誘っていった。

「ああ! もうだめ!」
 桔梗の左手と握り合わせた右手に力を入れて、布団の上で上向きの羅紗の乳房が弾んだ。
 匂い立つ様に美しい女の下半身に、桔梗と初音の顔が取り付いていた。
 熱くいきり立ったものを桔梗の口中に吸い含まれて、その脇では精の溜まったふぐりを初音にしゃぶられている。
「お願い、やめて!」
 たまらず腰のくびれをひねったとたん、桔梗の口から羅紗のいきり立った物が弾み出た。
 しかしそれまでふぐりに吸い付いていた初音が、桔梗の代わりに怒張を舐め上がる。
「ああ~~!」
 泣き声を上げた羅紗のものを吸い離して、初音は紅潮した顔を桔梗に向ける。
「さあ桔梗様、お迎えする準備は私が……。あなたは羅紗様のお胸やお口と睦まじく」
 片手を握り合わせたまま、桔梗は羅紗に上体を添わせる。
 いとおしく豊かな乳房に頬ずりしながら、硬く殺気立った乳首を目の周りに擦り付けた。
 それを見た初音は、ふぐりを手で弄びながらまるで串刺しの魚を食べる様に羅紗の強張ったものを横ぐわえに咥える。
 まだ粗相させない程度にぷりぷりとした肉棒を揺さぶりあげた。
「ああ、もう許せ、初音。もう……もう……」
「切のうて堪りませぬか……?」
「ああもう……そ、そのような……ああ……」
 意地の悪い初音の問いかけに、羅紗はもうほとんど泣き声で答えた。
「さあでは羅紗様、桔梗様にお情けを……」
「し、しかし……あううう……」
「ここからこの様に露をお流しになられて、まだその様なことを」
 先走る露を吸いだしながら、初音の唇がずるずると羅紗の怒張を吸い含んでいく。
「ああああ………!」
 尻たぼの肉を震わせて、羅紗の腰が布団から浮き上がった。
「ああ! 悲しゅうございます羅紗様。そんなに私のことをお嫌いになるなんて……」
 頬ずりされながら桔梗の甘酸っぱい吐息を吸い込んだ時、羅紗の心の糸が音もなく切れた。
「桔梗! ああ桔梗!!」
 夢中で桔梗の身体を抱き寄せると、その唇を荒々しく奪った。
「んふう!」
 切ない吐息を頬に感じながら、二人の身を回して上から小柄な裸身を組み敷いていく。
 初音の唇から弾み出た怒張が、ぶるっと下腹に跳ね上がった。
「さあ羅紗様。桔梗様のここへ」
 深く桔梗と唇を重ねたまま初音に身を導かれたとき、羅紗は心の中で叫んだ。
 “許して伊織様……。もうあなたと私は、別の世界の人間なのです!”
 強ばったものが桔梗の繊毛に触れた時、もう羅紗は背筋を激しく貫き上がる愉悦を感じた。
「ああ、もうだめ! 果てる!!」
 しかし、そのまま熱いぬめりに滑り込む感触がふと遠のいていった。

「は………!」
 漆黒の闇の中で羅紗は目を開いた。
 夜具に包んだ全身にびっしょりと汗をかいている。
 羅紗は夢と同じように、自分自身がこの上もなくいきり立っているのを感じた。
 手を添えるともう自分を抑えることが出来なかった。
 途端に耐えがたい愉悦が体を縛り始める。
 急いで枕もとの手拭いを左手に掴むと、右手で熱くたぎったものをしごき上げる。
 乳房の先が熱く燃えるのを感じながら、耐えがたい快感に羅紗の身体が痙攣した。
「う! ……ぐ……ぐ!」
 声を殺してあてがった手拭いに幾度も精を放つと、羅紗は密かに大きく息を吐いた。
「ら、羅紗様……? どうかなされましたか?」
 隣室で控えていた腰元から訝し気な声がかかった。
「い、いや大事ない。少し悪い夢を見たようじゃ……」
「ご気分はいかがですか? 何かお湯でもお持ちいたしましょうか?」
「いいえ、大丈夫。心配をかけたな。お前も少し休みなさい」
「はい。では、羅紗様」
 腰元が歩き去る音を聞きながら、羅紗は固く目を閉じた。
 瞼の裏に熱いものを感じる。
 “このような時に私は何ということ……”
 そんな情けない気持ちを味わうとともに、あの双子のくノ一に呼び覚まされた肉欲の術が恨めしく思われた。
 “伊織様……、桔梗……、どうか鶴千代を助けて……”
 心の中でそう祈りながら、羅紗は再び今夜も眠れぬ目を閉じたのである。


「さあ、この岬の向こうが潮影になります」
 桔梗は蔓の肩越しに白い波の打ち寄せる海岸を見やった。
「そうか。お前、なにやらその場所に不審な動きがあると言ったが、若様のかどわかしと何か関係があるのだろうか?」
 蔓は振り向いて顎に手をあてる。
「潮影は丹波の借りてる港なんでね。私は何かつながりがあると睨んでいます」
 青白い顔の中に鋭い眼差しが光る。
「うむ。では、若もそこにおられると?」
「う~ん、それはどうでしょう。一番の仕事場にその手数まで一緒にするかどうか……。まあ調べなきゃ分かりませんが」
 蔓は再び海に目を向けると桔梗に続ける。
「港ですから、海に、そして交易に関係あると思うのですが、何故か丹波以外の人間が動き回ってるところが気になるんです。貸主の丹後だってそうでしょう」
 桔梗は一歩足を踏み出すと蔓の横顔に話しかける。
「丹後? ではお前、丹後の……?」
「ふふ……、さあそろそろ参りましょうか」
 薄笑いを浮かべて足を踏み出した蔓に続いて、桔梗も訝し気な表情のまま歩き始めた。
丹波と丹後

 海岸端を潮影に向かう道の途中、肩を並べて歩く二人の遥か前方に一人の行商の女が現れた。
 女が近づくにつれ、次第にその居住まいが見え始める。
「潮影からの行商でしょうか? いやしかしこいつは……」
 蔓はその表情を険しく変化させた。
 桔梗様、ちょっとその切り株に座って休憩しましょう」
「休憩って、先ほど休んだばかりではないか」
「まあいいから、さあ桔梗様」
 引っ張られて切り株に座らされた桔梗の横で、蔓はのんびりと手拭いを取り出して首筋に使い始める。
 背袋を負った女が徐々に近づいて来た。
 細身の体と顔の前に深く垂れた黒髪が陰鬱な雰囲気を醸し出している。
 いよいよあと十歩ほどに近づいて来た時、突然桔梗はその女に殺気を感じた。
 切り株に腰を降ろした二人の前を、ゆっくりと女が通り過ぎていく。
 横の蔓は相変わらずのんびりと竹筒の水を口にしていた。

 小さくなった女の後ろ姿を見やりながら、やっと蔓が口を開いた。
「あの女、ただの行商女とは違います。そして近づくにつれあの足の運び、かなり腕の立つ奴だと感じました」
 先ほど感じた殺気を思い出して桔梗も深く頷いた。
「あの女もこちらのことを感づいただろうか?」
「ええ、おそらく」
 そう聞いて顔を険しくした桔梗に、蔓は少し眼差しを和らげて言った。
「例え忍びだと分かっても、そいつが敵だとは限りませんからね。わざわざ争うことはありませんよ」
「なるほど……」
「ただし私の感では今の女……、潮影と小浜を仕切っている一味のような気がします」
 桔梗はもう遥か米粒の様に小さくなった女の後ろ姿に目をやった。
 “小浜に戻っていくのだろうか?”
 心の中で桔梗はそうつぶやいた。
「おそらく小屋で出会った奴と同じ根来の仲間……、時に不思議な体術を使うことがあります。あの蜂を素手で握り潰すなど、普通の人間には出来ないことです」
 蔓の話を聞いて桔梗は黙ってその眼差しを海に向けた。
 勢い込んで単身若の救出に飛び出してきたものの、それは生半可な事では成し得ない事に思えたからである。
 そんな桔梗の気持ちを感じたのか、蔓は笑いながら腰を上げる。
「少し腹が減りましたね。早いとこ潮影に着いて美味い魚でも食べましょうか」
「うん」
 肩を並べて歩き出しながら、蔓はまだ暗い顔の桔梗に笑いかける。
「あはは、桔梗様は真面目で考え過ぎですよ。なあに根来だって人の子、腹も減るし、怖いもんだってあります」
「うむ、そうか」
 桔梗はいつものように背筋を伸ばして蔓の顔を見た。
「相手の弱いところを見つけて戦うのも忍びの戦い方の一つです」
 黙って蔓の話を聞きながら、桔梗は困難な密命への恐怖が少しずつ軽くなるのを感じていた。
元禄江戸異聞 根来(十九)目次元禄江戸異聞 根来(二十一)

コメント一覧
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2016/11/10 07:56
    • 丹後と丹前
       文中に、丹後と丹波の位置関係を示す図を掲げさせていただきました。
       ひとことで言って、丹後は海、丹波は山です。

       ここで不思議なのは、丹前の国が無いことです。
       越前があって、越後。
       備前があって、備後。
       豊前があって豊後。
       肥前があって肥後。
       筑前があって筑後。
       なのに……。
       丹前がなくて丹後だけってのは、どういうことなんでしょう。

       ちなみに、防寒用の着物に、“丹前”というのがありますが……。
       あれは、丹前の国とは関係がありません。
       勝山という江戸の湯女(ゆな・ソープ嬢)の着物が起源です。
       勝山所属の風呂屋は……。
       堀丹後守(堀直寄)の下屋敷前にあったことから、「丹前風呂」と呼ばれていました。
       ここでは、勝山にならって、湯女がみんな同じような着物を着ており……。
       この着物が、“丹前”と呼ばれるようになったものです。

       さて、丹前の国です。
       図にあるように、元々は、丹波、丹後、但馬が合わさって、丹波国だったわけです。
       これが分割されたわけで……。
       本来なら、今の丹波が丹前になったはずです。
       なんでそのまま、丹波という国名が残ったのでしょう?
       どうやら、分割が、均等分割ではなく……。
       一部割譲のようなかたちだったからのようです。
       でもそれなら、丹後も但馬みたいに、別の名前にすれば良かったのにね。

    • ––––––
      2. 釜焚きおやじHQ
    • 2016/11/10 14:21
    • 勝山風呂
       “丹後前風呂”が適切と思われますが如何。

      但馬の国
       これを“たんばのくに”と読んだやつがいました。
       気持ちはわからないでもないです。ていうか「たじま」の方が、読みとしては無理があるよね。

       小まめの志摩子は丹後の出です、とさりげなく番宣。

    • ––––––
      3. Mikiko
    • 2016/11/10 19:47
    • 江戸っ子は……
       長ったらしい言い回しが嫌いなんです。
       なんでも短く略します。
       「あたりめぇだ! べらぼうめ」が、「あたぼうよ」になります。
       “丹後前風呂”なんぞ、論外ですな。

       但馬と云えば、柳生宗矩の名乗りが、但馬守(たじまのかみ)でした。
       前にも書きましたが、この“守”や“介(上野介など)”ですが……。
       本人とその地は、何の関係もありません。
       勝手に名乗れるんです。

    • ––––––
      4. 八齢摂津守狗淫
    • 2016/11/10 22:01
    • あたぼうよ
       まったく論理的ではありませんな。

      勝手に名乗れる「守」
       となると、やはり人気・不人気が出るのでは。
       「守一覧」。誰か作って表にしてくれんかのう。図なら、さらによろしかろうて。

    • ––––––
      5. Mikiko
    • 2016/11/11 07:34

    •  ↓いちおう、暗黙のルールはあったようです。

      ・そのときの大老や老中と同じものは名乗らない。
      ・朝廷のある山城国、幕府のある武蔵国の守は名乗らない。
      ・常陸介は紀州徳川家初代の官名だったので名乗らない。
      ・筑前守は、実際に筑前国を丸ごと領地にしている黒田家と秀吉から「羽柴筑前守」の称号をもらった加賀前田家以外は名乗らない。
      ・薩摩守・大隈守は島津家、陸奥守は伊達家、土佐守は山内家がその国を実際に領地にしているので他の大名は名乗らない。
      ・三河守・越後守は2代将軍秀忠の兄の家系である美作松平家が名乗っているので他の者は使わない。
      ・尾張守は、主君を裏切り不幸な末路を辿った陶隆房や松田憲秀が名乗っていたので使わない。

       越後守がどうして無いのかと思ってたんですが、こういう理由だったんですね。


    • ––––––
      6. 越後守ハーレクイン
    • 2016/11/11 11:56
    •  ↑おぬしもワルじゃのう
        あ、あれは越後屋か。

      不在越後守
       美作松平家なんてあったのか。
       秀忠の兄の家系なんてそんな傍系、知らんもんなあ。

    • ––––––
      7. 八十郎
    • 2016/11/12 18:34
    • Mikikoさん、地図を入れてくださって有難うございました。
      こうやって拝見すると、分かりやすいですね。

      ここのところ、桔梗ちゃんと蔓ねえさんがよく喋ってくれて助かってる八十郎でした。
      まだ六十郎ですが・・。


    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2016/11/13 07:39
    • 丹後と丹波
       丹波に海がないという位置関係を、もう一度確認した方が良いと思いました。

       たしかに、登場人物が会話してくれると、捗りますよね。
       わたしの場合、調子に乗ると地の文が無くなってしまうので要注意ですが。
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